いまインディアナポリスのルーカス・オイル・スタジアムでは、ドラフト候補生329人を集めたスカウティング・コンバインが開催されている。球団首脳まで集結しているのは各レベルの年次会合がここで開催されるためで、必ずしも選手を見に来るためとはかぎらない。代理人も周辺にうようよ集まっていて、タンパリングになりかねない内緒話もあちこちで交わされているはず。
参加選手はすべて招待によるもので、たとえば2002年のDEアーロン・キャンプマン(5巡指名)は招待されなかった。選手たちが行う種目は以下のとおり。ワークアウト種目は強制ではなく、たとえば40yds走だけは走らずにプロ・デイでやります、という選手もいる。なにかに怒って途中で帰ってしまう選手も稀にいるが、べつに罰則はない。
40yds走に限らず、コンバインでの数字で「評価」が上下するのは主にメディアやファンやブロガーの間のことで、プロは意外なほど左右されないもの。プロにとって大事なのはなんといってもゲーム映像やシニアボウル練習であり、コンバインやプロデイでの体力測定は多少修正するためのものにすぎない。NFLにとっては、ニュース枯れの時期にファンやメディアを盛り上げる一大イベントなので、そうした事情をわかった上で楽しむのがいい。
以下のワークアウト種目は、選手たちはシーズン終了以来専門のコーチについてみっちり練習を重ねてくる。2000年以降の各種目のトップ10記録はこちら。
ジミー・ロビンソンの移籍で空席となったWRコーチに、エドガー・ベネットRBコーチが横滑りで就任することをマッカーシーHCが発表した。空いたRBコーチには、アシスタントOLコーチだったジェリー・フォンテノーを充てることに。2人ともそのポジションのプレー経験もコーチ経験もなく、サプライズ人事と見なされている。ほとんどの球団が組閣を終えているため、いまフリーでいる中にふさわしい人物が見当たらなかったのかもしれない。
アシスタントコーチの仕事は、担当ポジションの選手を指導する時間より、大量の映像やデータを分析してゲームプラン作成に貢献する、分析・立案スタッフとしての時間が圧倒的に長い。連日の泊まり込みも辞さない精力と忠誠心が重要で、ときに経験豊富なベテランよりも若造がコネで選ばれるように見えるのもそうした要素のためだ。
マイク・マッカーシーHC。「ただ外に出かけて最高のWRコーチを探してくるだけでは十分ではない、と私は思っている。その人物が我々のコーチング・ルームにフィットしなければ意味がない。そうしたことが非常に重要なのだ。我々スタッフは6年間にわたって一緒にやっている。我々は向上を続けたいし、向上の機会を常に求めている。ジョー・フィルビンOCとも長時間話し合った」
◆ ◆ ◆
エドガー・ベネット新WRコーチ Edgar Bennett はフロリダ州ジャクソンヴィル出身の42歳。フロリダ州立大から'92年ドラフト4巡でパッカーズに入団、2年目からエースRBとして活躍し、'96年のスーパーボウル制覇にも貢献した。'99年のベアーズを最後に引退すると、"director of player programs"として、パッカーズ選手の私生活も含めたアドバイザー役(2002年の記事へ)を4年間務めた。'05年に念願のRBコーチとなり、ヘッドコーチがシャーマンからマッカーシーに代わってもRBコーチを続けてきた。
ベネットといえば、徹底したボールセキュリティ重視とブリッツのピックアップ指導で大きな成果を挙げている。昨季はエースRBグラントがランプレーでのファンブルゼロ、今季もRB陣は一度もファンブルロストを犯さず、ターンオーバーレシオに貢献した。今季ファンブルの多かったWR陣のボールセキュリティを改善することも重要な役目、とマッカーシーHCは認めている。
キャリアのためにはポジションの幅を広げることも重要で、RB一筋のベネットにとっては願ってもないチャンスだ。「私がポジション変更のアイディアを切り出したところ、エドガーの反応は熱烈なものだった。彼はいずれコーディネーター候補と見なされるようになるだろう。1つのポジションに留まっていては、結局それだけの人になりやすい。今回は彼にとっては大きなチャンスだが、そのためにこの仕事を与えたわけじゃない。我々のスタッフにとって、我々のオフェンスにとって最善だと考えたからだ。私もジョー(フィルビンOC)もQB-WRミーティングに出るし、トム(クレメンツQBコーチ)とエドガーは長い時間を共に過ごすことになる」とマッカーシーHC。
◆ ◆ ◆
ジェリー・フォンテノー新RBコーチ Jerry Fontenot はルイジアナ州ラファイエット出身の44歳。テキサスA&Mから'89年ドラフト3巡でNFLに入り、ベアーズとセインツとベンガルズでセンターとして16年239試合にわたって活躍した。マッカーシーとのセインツ時代の縁で'06年夏にインターンとしてキャンプに参加すると、すぐに働きが認められてフルタイムとなり、'07年1月にはアシスタントOLコーチに就任。キャンペンOLコーチやベネットRBコーチと連携して、ランニングゲーム強化に努めてきた。
彼にとってスキルポジションの指導は初めてのこと。マッカーシーHCは、「私は持論を証明するためにこうしたわけではない。全幅の信頼がなければ彼を選んだりはしない。私はジェリー・フォンテノーを昇格させたかった。他球団に獲られることも心配していたし」と説明している。
◆ ◆ ◆
2年間"Quality Control"を務めてきたジョン・ラッシング John Rushing がアシスタントWRコーチ兼アシスタントSTコーチに。ワシントン州立大でDBをプレーしたあとコーチの道に進み、ユタ州立大など5つの大学で13年間にわたってDBコーチなどを務めた。NFLのマイノリティ・コーチング・インターンシップ・プログラムで'08年夏のキャンプに参加し、翌'09年1月から"Quality Control"としてフルタイムのコーチとなった。
◆ ◆ ◆
ジョエル・ヒルゲンバーグ Joel Hilgenberg がオフェンスの"Quality Control"として上記ジョン・ラッシングの後任を務める。アイオワ大から'84年のドラフト4巡でセインツに入団、センターおよびガードとして9年間で142試合に出場。'92年にはプロボウルにも選ばれ、今ではセインツの殿堂入りも果たしている。昨年のミニキャンプからインターンとしてパッカーズに加わり、OL指導をアシストしてきた。すでに48歳で、コーチの道に入るにはかなり遅い。
"Quality Control" とは、要はいちばん下っ端のアシスタントコーチであり、NFLコーチへの入り口といっていい。コンピューターを駆使した映像やスタッツの分析などが主な役目。1つか2つ先の対戦相手のための準備を先に進め、相手ディフェンスの性質、フォーメーションの頻度やプレー選択の傾向などを分析して下準備しておく。練習フィールドではポジションコーチたちのアシストもする。
今年パッカーズからフリーエージェントになる予定の選手たちをまとめて紹介する。パッカーズは今春FA予定だったうち、CBトラモン・ウィリアムズ、ILBデズモンド・ビショップ、LSブレット・グードとの再契約をすでに済ませている。フリーエージェントの区分などについては契約用語集のページも参考のこと。
昨年は労使協定最終年の規定により、本来なら無制限FA(UFA)となるはずの4年目終了選手が制限付きFA(RFA)にしかなれず、球団側は有力選手の引き留めが容易だった。しかし今春は、昨年損をした5年目終了組と4年目終了組がいちどにFAとなるため、この表にあるようにどの球団もFA選手の数が非常に多い。(2週間前の記事なので、その後変動している)
新労使協定で変更される可能性もあるが、2009年まで長く続いた「通常ルール」のまま、4年目終了でUFAになれるものと仮定して下表を作成した(選手にとって重要な権利なので譲歩しないと見る)。今年のパッカーズはRFA選手がいない模様で、今回紹介する選手はすべてUFAだ。(IR入りしたCBジョシュ・ベルがRFAなのかEFAなのかはっきりしない)
なお、新労使協定の締結が3月4日直前または以降になった場合には、FA市場を開くまでに何日間か猶予期間を設けると見られている。その期間を使って、新サラリーキャップ枠に応じた再契約を進めるつもりでいるチームが多いはず。そのため、現在のFA予定選手がすべてFA市場に出ていくとは限らない。
フランチャイズ指名(用語集へ)の期間が今日で終了したが、パッカーズは誰も指名せず。NFL全体では14人がフランチャイズ指名されている。(リスト)
Green Bay Packers 2011 Free Agents | |||
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Name | Pos | Age | 備考 |
Brandon Jackson | RB | 25 | 優秀な3rdダウンバックに成長。スターターが無理なことは証明済み |
John Kuhn | FB/RB | 28 | 今季はボールキャリー機会が激増。カルト的人気を誇る |
Korey Hall | FB | 27 | スペシャルチームでの活躍は貴重だが、ケガが多い |
James Jones | WR | 26 | 派手な落球が目立ち、評価は微妙。ドライバーの衰えをどう見るか |
Daryn Colledge | OG | 29 | 先発OLの最大の弱点になった観も。相変わらずランブロックが弱い |
Jason Spitz | C/G | 28 | 腰の負傷以来キャリアが下り坂。ガードで失敗し実質センターのみ |
Cullen Jenkins | DE | 30 | 再契約交渉は進まず。この中では最高額オファーが来るはず |
Matt Wilhelm | ILB | 29 | 10月下旬に緊急補強。主にスペシャルチーム |
Charlie Peprah | SS | 28 | SSバーネットのケガで先発昇格、予想外の活躍で優勝に貢献 |
Atari Bigby | SS | 29 | ケガから復帰もSSペプラーから先発を奪えず。移籍濃厚 |
Anthony Smith | FS | 27 | 控えFS兼スペシャルチーマー |
Mason Crosby | K | 26 | 成功率80%を超えたことなし。勝負弱さもちょっと気になる |
FA選手リストの中から主な10人について、以下にまとめてみた。
ドラフト外入団からの叩き上げで、NFLヨーロッパ派遣も経験。3年目の2005年からスターターを務めてきた。スピンムーヴなどクイックネスを活かした鋭いパスラッシュが身上。サイズが小さめなので3-4のDEは不向きかと思われたがこの2年間よい働きを見せ、今季は5試合欠場ながらDL陣トップの7サックを記録。真面目な選手でしかも4-3/3-4両方でいけることを証明しているため、FA市場に出ればけっこうな人気になりそうだ。(ランク1位に挙げる記事も)
CBウィリアムズの次に交渉が進むものと見られていたが、じっさいに契約延長したのはILBビショップの方で、チーム側は交渉をまったく進めなかった。トンプソンGMが好まない30歳に達したこと、ケガが多いこともネックなのだろう。さらに、2巡指名ルーキーのDEマイク・ニールがシーズン中盤にIR入り(肩回旋腱板の損傷)するまで高い能力を見せていたので、チーム側は世代交代をすでに決断したのかもしれない。今日のインタビューでジェンキンズ本人は、「ここまで来たら再契約は99%ないと思う。自分を望んでくれるチームでやりたいし、新しいスタートの時、ということなのだろう」と率直な気持ちを語っている。
プロ4年目の今季も3番手WRの座をネルソンと分け合った。パスキャッチ50回・679yds・5TDはどれもキャリアベストだが、大きく数字が伸びたわけではない。派手な落球のせいかターゲット回数が次第に減少し、プレーオフでのパスキャッチ11回144ydsはネルソンの約半分。ルート取りなど進歩してきた部分は多く、3番手としてならどこに出しても恥ずかしくないが、スターターを任せてくれるチームがあるのかどうか。
残すべきか見送るべきか、記者やファンの間でも意見は分かれる。再契約するかどうかは、本人がどれだけの金額を望むか、FA市場でどれだけの値が付くか、ドライバーの衰えやネルソンの将来性をどう見るか、といったことを考えあわせる必要がある。昨年のLTクリフトンのようにいったんFA市場に出るのを許し、市場に値段を決めさせることでオーバーペイを防ぐ方法を採るかもしれない。(他の選手たちも同様)
2006年から3年間控えセーフティを務め、2009年のファルコンズを経て昨年春にパッカーズに出戻り。昨春唯一のFA補強ながら、メディアもファンもまったく期待していなかった。ところが新人SSモーガン・バーネットの戦線離脱で第5週から先発昇格すると、驚くほど安定感あるプレーを見せ、チームディフェンスはかえって良くなった。今春は比較的安価に再契約し、SSバーネットと先発の座を争わせるのが妥当と見られている。
ただしFA市場では、そこそこの選手であっても惚れ込むチームが出てくることは珍しくないので、簡単に再契約できるとは限らない。SSバーネットが前十字靭帯断裂のリハビリ途上、SSビグビーのFA移籍が確実であることを考えると、彼との再契約は意外に重要かもしれない。
エースRBグラントが開幕戦で戦線離脱し、新人以来3年ぶりにスターター昇格。しかし703yds(平均3.7)は褒められた数字ではなく、1回平均3ydsを下回るゲームが7回、とくにシーズン後半は1回平均4ydsを超えたゲームがわずか1回しかない。スターターの器でないことを自分で立証してしまい、プレーオフでは新人RBスタークスにスターターの座を完全に奪われた。ただし、ブリッツのピックアップ、パスキャッチ、ドロー、スクリーンといった3rdダウンバック能力にはますます磨きをかけている。
エース役でこれだけ走れないとスターター級のオファーが来ることはなさそうなので、再契約はさほど難しくないのではないか。いまや3rdダウンバックとしての能力はかなりのもので、とくにパス主体のパッカーズにとってプロテクションの確かさはきわめて重要。来季のRB陣はグラントとスタークスが先発を争い、3rdダウンバックを彼に任せる形が順当ではないか。
昨季スランプだったパスプロが改善(被サック責任3回)したいっぽう、馬力に欠けるランブロックで相手に押されまくる、という傾向は今季も変わらない。プロ5年間で欠場ゼロ、不動の先発左ガードではあるものの、いつのまにか先発OLで最も低レベルの選手になった。もう伸びシロはないので、T.J.ラングまたはその他若手を後釜に据えるべき時ではないか。ドラフト上位でOT(OGでもよいが)を指名し、LTクリフトンが元気な間はその選手かRTブラガを左ガードに回す、という手もある。
チームからは信頼が厚いが、成功率80%を超えたシーズンがなく(前任者のロングウェルは通算83.5%)、プロ4年間の成長もあまり見られない。ゲーム終了直前の決勝FG成功はデビュー戦のわずか1回だけで、チームがここ数年競り合いに弱いのは彼の勝負弱さによるところも大きい。得意だったキックオフもなぜか飛距離が落ちてきた(タッチバックわずか4回)。いなくなって困る可能性もあるが、高額の長期契約を結ぶような実績ではない。1年か2年契約で引き留めておき、ドラフト(候補リスト)下位でチャンスがあれば指名してよいのでは。
RB不足となった今季はショートヤーデージのボールキャリアーとして84回281yds・4TD、レシービングでも15回97yds・2TDの活躍で、"Kuhhhhhhhn!"の合唱が名物になった。昨季までは年間キャリー8回が最多。ただRBスタークス台頭後は出番が減り、プレーオフ4戦のキャリー数は3回、2回、1回、0回と先細りに。値段をつけるのは難しいところだが、いちばん能力を活かしてくれる、つまり高い価値を見出してくれるのはパッカーズだろう、という見方が多い。
デプスチャート上では1番手FB。ランブロッキングは着実に向上してきたが、レシービング機会は少なく、今季はパスキャッチわずか1回9ydsだった。大学時代にLBが本職だっただけあってスペシャルチームでは中核選手として活躍し、4試合欠場ながらチーム2位のタックル数を記録。ただサイズが小さいせいかケガが多く、フル出場したことが一度もない(4年間で欠場16試合)。プロ2年目のFBクイン・ジョンソンが一人前になりきれていないこともあり、安い値段ならば再契約も。
先発両ガードを経験したあと2009年に先発センターとなったが、すぐに腰を痛めてCウェルズの復活を許し、それ以来控えに留まっている。今季も先発Cウェルズはハイレベルの活躍。いっぽう彼は代役左ガードとして途中出場したゲームで不振のため交代させられ、控えセンターだけの存在になった。経験豊富な控えC/Gがいなくなるのはデプス的にマイナスだが、本人は先発できるチャンスを求めて出ていくのではないか。FA市場で期待外れだった場合にのみ再契約の可能性が出てくる。
昨年はRFAオファーへのサインを渋ったあげく、トレーニングキャンプで合流したとたんに足首を痛めて手術となり、新人SSバーネットと先発を争うことはできなかった。復帰後も代役スターターのSSペプラーから先発の座を取り戻すには程遠く、スペシャルチーマーとして冴えないシーズンを終えた。けっきょくのところ彼がよかったのは2007年の後半だけで、その後の3年間で24試合欠場し、元気なときもプレー内容はパッとしない。引き留めるべき理由が見当たらないが、FA市場に出ても先発オファーはないのでは。
Journal Sentinel紙の集計したスタッツ集から、今回はディフェンス編。但し書きがないかぎりプレーオフを含めた20試合での数字であり、主観を含んだデータであることにも注意。2010年シーズンを「今季」、2009年シーズンを「昨季」と表記する。
Journal Sentinel紙の集計したオフェンスに関するスタッツ集を紹介する。但し書きがないかぎりプレーオフを含めた20試合での数字であり、パス落球やブロッキングミスなどは主観的なデータであることにも注意。オフになるといつが「昨季」なのかややこしくなるが、2010年シーズンが「今季」、2009年シーズンが「昨季」としておく。
カリフォルニア州チコの街で、スーパーボウルを控えたある日のこと。市民リーダーの集まった政治集会の席で、商工会議所会頭であるジョリーン・フランシスが声を挙げた。「話し合いを始める前にすこし時間をいただいて、我々全員の団結を確かめたいと思います」 みなポカンと顔を見合わせた。彼女は祈りの言葉でも唱えるのだろうか。ところがフランシスは叫び始めた。"Go Pack Go!" 集会にいた全員が声を合わせた。
ここカリフォルニア州チコ(地図)はサンフランシスコの北200kmほどに位置する人口8万人の街だ。QBアーロン・ロジャースはここで生まれ育ち、高校時代を過ごし、コミュニティ・カレッジに通った。そこから名門カリフォルニア大、そしてNFLへと巣立っていったのだ。今でもアーロンの両親、エドとダーラがここに住み、通称"Green Bay West"として街ぐるみでアーロンの応援団になっている。
しかも今回はスーパーボウル応援とあって、グリーン&ゴールドが街にあふれている。あるスポーツ用品店では、胸に"Go Pack Go!"、背中に彼の母校の名を書いたTシャツが1000枚も売れた。品切れとなったTシャツの追加発売はいつから始まるか地元TV局が伝え、追加分も7分で売り切れた。フォルクスワーゲンのディーラーは"Go Aaron"のプラカードをつけた黄色いビートルを飾り、馬具店では馬の像にパッカーズのジャージを着せ、チーズヘッドをかぶらせている。「ウィスコンシンのど真ん中に来たかと思うだろ?」と住民は笑う。
◆ ◆ ◆
かつて幼稚園でアーロンを見守ったベティ・ロウラー先生は思い出し笑いをこらえながら言う。「あのころ、お母さんのダーラに言ったんです。アーロンは誰にでも優しくて、お行儀もいい。ただお伝えしておかなきゃいけないのは、彼が○×でフットボールのプレーを図に書いている時間がすごく多いということなんです、ってね」
「街全体がすごい盛り上がりだ。素晴らしいことだよ」と語るのは、80年代に49ersで活躍した元DLジェフ・ストーヴァー。彼はチコでスポーツ・クラブを所有し、彼の娘は高校時代にアーロンと一緒にプロムに行ったことがある。
高校卒業時にディビジョンI校から誘いのなかったアーロンだが、大学側の見る目のなさばかりを責めるわけにはいかない。彼は高校4年でも身長178㎝、体重75kgだったのだ。プレザント・ヴァレー高校で校長を務めるジョン・シェパードは、かつてバスケットボールチームでアーロンを指導した。身長157cm、体重59kgで足ばかり大きな、高校1年のアーロン少年の写真が飾られている。「やせっぽちだったが、とてもよく話を聞き、足の速い子だった」
アーロンを高校で教えた教師たちは、彼の身体能力よりも、心優しく熱心な学生であったことを今の生徒たちに言い聞かせている。「ありきたりに聞こえるだろうけれど、ウチの学校の子供たちが、アーロンと同じような性格や特質を備えるようになってほしいと願うばかりだ」とシェパード校長。
◆ ◆ ◆
かつてビュート・カレッジでヘッドコーチを務め、現在は同大の体育局長を務めるクレイグ・リグズビーは、いまも頻繁にアーロンと連絡を取り合っている。NFC決勝で勝利したあと、アーロンはビュート・カレッジのTシャツを着て記者会見に出た。その晩本人から、「あれを見た? あれはあなたのためだよ」とメールが届いた。もちろんリグズビーは見ていた。それどころか、以前そのTシャツを着たアーロンの写真がSports Illustrated誌に掲載されたのを、額に入れて飾っているほどなのだから。
「ウチの大学に来たときには200ポンド(91kg)ぐらいに増えていた。練習初日、決定的瞬間があったのをよく覚えている。彼は右に走って踏ん張り、左の狭いところに50ydsぐらいのパスを投げたんだ。私は思わずオフェンシブ・コーディネーターの顔を見たよ。ワオ、今のはどっから来たんだ?とね」
アーロンは同大を10勝1敗の好成績に導いた。唯一の敗戦だったフレズノ・シティ・カレッジ戦でも468ydsを投げまくっている。「アーロン・ロジャースが1年で辞めたと聞いて、正直とてもホッとしたよ」と語るのはフレズノ・シティ・カレッジのヘッドコーチだ。
カリフォルニア大のジェフ・テッドフォードHCが、ビュート・カレッジのTEギャレット・クロス(2005年にパッカーズのドラフト外)のフィルムを見ているときにアーロンを見つけたのは、今では有名なエピソードだ。クイックリリース、しっかりした体格、信じられないほどの落ち着き。惚れ込んだテッドフォードは車に乗り込み、州道99号を北に走ってビュート・カレッジの練習にやってきた。
QB指導の実績で知られるテッドフォードHCが視察に来たときのことを、リグズビー元HCはよく覚えている。「月曜にやってきて、アーロンが投げるのを25分ほど見ていた。そして私を振り返って言った。『私がこれまで見たジュニア・カレッジのQBの中で最高の選手だ。彼はいつかNFL選手になれる』 とね。 『そう思うかい?』 と私が聞き返すと、『いや、"思う"のではなくそう"わかって"いるんだ』 という答えだった」
アーロンは高校卒業時にGPA(平均成績点)3.6点、SAT1310点(当時1600点満点)の成績があったため、カリフォルニア大への編入はすぐに認められた(コミュニティ・カレッジからは2年が普通)。その後の活躍はよく知られているとおりだ。
「今ではどれだけ多くの有力大のリクルーターが、『あのときロジャースを逃したから、今度はチコにも行っておかないと、今度見落としたらクビになりかねん』 と言いながらここへやってきてくれることか」
◆ ◆ ◆
こうして迎えたスーパーボウル当日。チコの街じゅうでパッカーズ応援の観戦パーティが開かれている。クレイグ・リグズビー元HCの家にも40人以上の応援団が集まった。プレザント・ヴァレー高校のスターリング・ジャクソンHC、アーロンの個人トレーナーを長く務めたスティーヴ・ヘンダーソンも顔を揃えた。1プレーごとに大きな歓声やため息が漏れる。
そして最高のエンディング。ニーダウンの際には"M-V-P! M-V-P! M-V-P! M-V-P!"のコールが沸き起こった。われらがチコ出身、プレザント・ヴァレー高校出身、ビュート・カレッジ出身のアーロン・ロジャースがスーパーボウルのMVPに選ばれたのだ。地元高校のQBとして活躍するネルソン・フィッシュバックは言う。「鳥肌が立った・・・。まるで僕らがスーパーボウルを、チコがスーパーボウルを勝ったみたい。僕もいますぐトレーニングを始めなきゃっていう気持ちになった」
「彼が積み重ねてきたハードワークの成果さ。彼はどこからともなく現れたわけじゃない」とリグズビー元HCは強調する。高校ヘッドコーチのスターリング・ジャクソンには友人から、「ヘイ、あんたはスーパーボウルMVPを指導したんだ! どんな気分だい?」と声がかかる。「オレもディズニーランドに行かなきゃならんかもな」と誇らしげにジョークを飛ばすジャクソン。「今日は素晴らしかったが、まだ彼は始まったばかりだ。これからだよ」
賑やかなパーティが散会する前に、リグズビー元HCがグラスを掲げて乾杯の音頭をとった。
「アーロンに。そして、関わったすべての人々に」
今季パッカーズのチームスタッツのまとめ。プレーオフは含まない。今季前半終了時・2009年・2008年・2007年のスタッツも参照のこと。
オフェンス | ||||||||||||||||
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Total | 得点 | ラン | ラン(1回) | ランTD | Fum | FumLos | パス | パス% | パスavg | パスTD | INT | Rate | サック | 3rd% | Red | TOP |
358.1 | 24.2 | 100.4 | 3.8 | 11回 | 19回 | 9回 | 257.8 | 65.1% | 8.0 | 31回 | 13回 | 98.9 | 38回 | 41.5% | 60.4% | 32:01 |
9位 | 10位 | 24位 | 25位 | 18位T | 10位T | 9位T | 5位 | 6位 | 3位 | 4位T | 9位T | 3位 | 19位T | 8位 | 6位 | 7位 |
開幕戦でRBグラントが離脱したことでラン攻撃が悪化し、その分だけトータルオフェンスも得点力もダウンしている。2009年の最低得点は17点だったが、今季は10点以下が3試合。TEフィンリー不在もあってオフェンスが手詰まりになりやすく、1stダウン回数も335回から312回へと減少している。タイムオブポゼッションは前年の33分03秒(2位)より下がったが、7位をキープできているのはディフェンスの頑張りもあるのではないか。
総タッチダウン数は2009年の54回(3位)から46回(8位)へとダウン。ディフェンスによるTD数は4回ずつで変化しておらず(両年ともINT3回・ファンブル1回)、オフェンスによるTDが50回から42回に減っている。
ラン攻撃はどの数字も悪化していて、QBロジャースによる4回を除けばラッシングTDはわずか7回。ラン回数(20位の421回)が2009年(15位の438回)から意外に減っていないのは、苦心のプレーコールの結果か。ファンブルは今季も非常に少なく、RB陣のファンブルロストがゼロだったのは立派(内訳は後述)。QBロジャースは前年を上回る356ydsを走り、ファンブルが前年の10回(ロスト4回)から4回(ロスト1回)に減ったのもいい。
シーズン前半は不振だったパス攻撃だが、後半はWRジェニングスの活躍もあって大きく盛り返し、2009年とほぼ同じ成績で終えることができた。QBロジャースは2年連続でレーティング100超を達成。TEフィンリー抜きでこれだけの数字を残したのはすごいとしか言いようがない。後半7試合(1試合欠場)のうち5試合でレーティング110以上、プレーオフを含めると11試合中8試合でレーティング110以上を記録するものすごさだった。
2009年のサック数はNFL最多だったが、新人RTブラガの加入もあってパスプロテクションが向上。インターセプトが増えてしまっているが、シーズン前半が9回、後半が4回(うち2回はQBフリン)なので、あまり心配する必要はなさそう。
ターンオーバー | 反則 | |||||||
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Takeaways | Giveaways | DIFF | 回数 | ヤード | ||||
Total | Int | FumRec | Total | Int | FumLos | |||
32 | 24回 | 8回 | 22回 | 13回 | 9回 | +10 | 78回 | 617yd |
6位 | 2位 | 24位T | 10位 | 9位T | 9位T | 4位 | 3位T | 3位 |
ターンオーバーレシオは、ダントツ1位だった2009年よりは悪化したとはいえ、+10でNFL4位をキープ。テイクアウェイが8つ減り、ギブアウェイが6つ増えている。ファンブルロストはWR陣が5回とかなり多く、リターナーが3回、QBロジャースが1回、RB陣はゼロとよく頑張った。とくにRBジャクソンのボールセキュリティの良さが光る。
前述のようにオフェンスのインターセプトはシーズン前半が9回、後半が4回。そのうち2回は代役QBマット・フリンによるもので、QBロジャースは後半わずか2回しかインターセプトを投げていない。
ディフェンスによるインターセプトの内訳は、CBトラモン・ウィリアムズ6回(NFL5位タイ)、FSコリンズ4回、ILBホーク3回、CBウッドソン2回、CBシールズ2回、SSペプラー2回。その他OLBマシューズ、ILBビショップ、ILBチラー、SSバーネット、Sマーティンが1回ずつ。CBウッドソンは前年の9回から大きく減らしたものの、ファンブルフォースではチームダントツ1位の5回を記録している。(その他はOLBマシューズとILBビショップとOLBゾンボが2回ずつ)
反則では3年連続でNFL最下位クラスに甘んじてきたが、今季はどちらも3位と非常に大きな改善が見られた。2009年は回数が32位、ヤードが31位だったが、今季は40回440ydsも減った。40回減の内訳は、オフェンスが13回減、ディフェンスが15回減、スペシャルチームが12回減と、チーム全体の努力が実ったといえる。2009年はディフェンスのフェイスマスク反則が8回もあったが、今季はわずか2回だった。
今季レギュラーシーズンのチームスタッツのまとめ。プレーオフの数字は含まない。今季前半終了時・2009年・2008年のスタッツも参照のこと。
ディフェンス | |||||||||||||||
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Total | 失点 | ラン | ラン(1回) | ランTD | Fum | FumRec | パス | パス% | パスavg | パスTD | INT | Rating | サック | 3rd% | Red |
309.1 | 15.0 | 114.9 | 4.7 | 6回 | 22回 | 8回 | 194.2 | 56.2% | 6.5 | 16回 | 24回 | 67.2 | 47回 | 36.2% | 48.4% |
5位 | 2位 | 18位 | 28位 | 3位 | 15位T | 24位T | 5位 | 4位 | 5位T | 4位 | 2位 | 1位 | 2位T | 9位 | 12位 |
昨年2位へと飛躍したトータルディフェンスが5位に下がったが、失点2位は文句なしに素晴らしい。ドム・ケイパースDCによる3-4導入から2年目となって選手がシステムに習熟したこと、若手の成長でパス守備が向上したことが最大の理由だろう。今季前半は平均失点17.0点、後半は13.0点。スケジュール的にはむしろ後半の方がキツかったにもかかわらずだ。
ギブアウェイ(ターンオーバー献上)は2009年の16回(1位)から22回(10位)へと増えているので、失点が減ったのは純粋にディフェンスの向上によると見ていい。ラン・パスともに「曲がっても折れない」ディフェンスが勝利に結びついた。
ただしラン守備は1位(83.3yds)から18位(114.9)へと悪化し、1回平均も3.6yds(2位タイ)から4.7yds(15位)へとダウン。理由はよくわからないが、LB陣のケガ人続出や先発ノーズタックル交代(ピケット→ラジ)と関係があるのかどうか。しっかり止める場面と、コンテインをしくじって10yds以上走られる場面がはっきり分かれていた印象で、ずるずるとランで圧倒されたゲームは少ない。TDランをわずか6回に抑えたゴール前の強さも評価できる。
パス守備は素晴らしい数字が並び、優勝の原動力となったことがよく表れている。相手QBレーティングはNFL1位の67.2。2009年は未熟なQBをコテンパンにするゲームと優秀なQBにコテンパンにされるゲームが両極端だったが、今季は粘り強さが増した。パスTD数が29回から16回へと激減、レッドゾーンTD率も28位から12位へと向上。そのおかげで、2009年は30失点以上のゲームが6回(プレーオフ含む)もあったのが、今季は1回(NE戦)だけだった。
サックは大幅に増えてNFL2位タイの47回に。マシューズの逆サイドは相変わらず物足りないが(それでもゾンボとウォルデンで計7サック)、NTラジ(6.5)とDEジェンキンズ(7)がよく頑張った。インサイドからのパスラッシュ向上がサック増につながり、3メンラッシュでもそれなりにプレッシャーがかけられるため、3rdダウンロングでのパス守備が安定した。
テイクアウェイは計32回でNFL6位。"Ball Hawk"軍団は今季も健在で、インターセプトはすこし減ったものの2位をキープ。ただしファンブルリカバーはわずか8回で24位タイ。ラン守備でのファンブルフォースが少なく、相手QBのファンブルも少ない。右OLBによる背後からのサックが少ないからだろうか。
スペシャルチーム | |||||||||||||
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Kickoff | Punt | Kickoff Ret. | Punt Ret. | Field Goals | |||||||||
Avg. | TB | Coverage | Avg. | In20 | TB | Coverage | Net | Avg. | Long | Avg. | Long | 成功率 | 回数 |
61.6 | 4回 | 21.8 | 43.9 | 25回 | 5回 | 11.0 | 37.6 | 20.1 | 51 | 7.9 | 52 | 78.6% | 22回 |
29位 | 29位 | 12位T | 11位T | 16位 | 10位T | 25位T | 16位 | 26位 | 22位 | 22位 | 17位T | 23位T | 24位T |
スペシャルチームはパント部門で大きな進歩が見られたものの、それ以外は2009年とさほど変わらず、チームの足手まといという状況から抜け出せていない。Football Outsider によるスペシャルチーム総合ランキングでパッカーズは27位。Dallas Morning Newsのリック・ゴセリン記者の集計によるランキングでは29位(2009年のセインツも29位で優勝した)。今年こそショーン・スローカムSTコーチを解任すべき、という声はまだくすぶっている。
キックオフの飛距離は2009年よりさらに悪化し、タッチバックはわずか4回だけ。新人の頃はあんなによく飛んでいたKメイソン・クロスビーだったのに、なぜこんなに飛ばなくなったのか。ただ、コーナーを狙ったり転がしたり高く蹴ったりと、小技はうまくなった。今季1回だけ蹴ったオンサイドキックも成功させている(NE戦)。
明るい材料はPティム・マステイのパント。序盤はやや苦しんだものの、シーズン半ばから安定感を増し、ピンチにも強くなった。平均飛距離はさほど変わっていないが、相手リターンを差し引いたネットが37.6ydsと大幅アップしたのはハングタイムがあるせいだ。ネットNFL16位は地味に見えるが、寒冷地のチームとしては優秀な成績。当たったときの長距離パントだけでなく、敵陣レッドゾーンに落とすプーチパントが非常に上手い。2009年のPカピノスは「インサイド20 : フェアキャッチ : タッチバック 」の比率が15:7:10と最悪だったが、今季のPマステイは25:18:5。とくに第7週NYJ戦と第17週CHI戦では、好パントの連続でヒーローの1人になった。
12位タイのキックオフカバレッジは及第点だが、前述のように飛距離が出ていないので、少々カバレッジがよくても相手に良いフィールドポジションを与えてしまっている。パントカバレッジ(相手がリターンした場合のみ)は第3週CHI戦でTDを許すなどやや悪化したものの、敵陣エンドゾーン手前でボールを押さえる好カバレッジもあり、ネット平均の向上に貢献した。
Kメイソン・クロスビーのフィールドゴール成功率は2009年より回復したものの、NFL23位タイの78.6%と今年も今ひとつだった。失敗6回のうち、20yds台が1回(SF戦)、30yds台が1回、40yds台が2回、50yds台が2回。WAS戦では53ydsの決勝FGを決められず。これまで彼が終了直前の決勝FGを決めたのは、依然として2007年デビュー戦の1回だけだ。今年はフリーエージェントとなるので、再契約するかどうか考えどころだろう。
毎年同じことを書いているが、今年もリターンゲームはパンチに欠け、オフェンスを助けることができなかった。CBトラモン・ウィリアムズに任せたパントリターンは、キャッチングの確かさを加味すればまずまずか。
キックオフリターン不振は明らかに人材不足で、フロントの責任もあるだろう。ケガのCBウィル・ブラックモンを開幕前に放出すると、ロクなリターナー候補が残っていなかった。WRネルソンは平均22.5ydsと一番よかったが、第4週DET戦で2回もファンブルロストを犯し、コーチの信頼も自信も失ってしまった。代わったCBパット・リー(13回平均20.4yds)は横に逃げる走りが目立ち、CBサム・シールズ(21回平均21.5yds)もブロッカーの使い方にセンスが感じられない。
3月3日いっぱいまでに新労使協定を締結できず現労使協定が失効した場合、3月4日からロックアウトに突入することがほぼ確実とみられている。そこで、労使交渉の現状やロックアウトの影響について、管理人にわかっている範囲で以下に書き出してみた。
以下は余談。というか私見というか。
NFL球団の経営について、日本のプロスポーツの状況をもとに想像するのはとんでもない間違い。NFLは世界でもっとも経済的に成功したプロスポーツリーグであり、(ボーナス支出が特別に多い年を除いて)毎年全球団が何億円(チームによってはもうひとケタ上)も黒字を出すのが当たり前、という状態が長く続いてきた。その利益は、(すべてをチーム強化に還元できる)パッカーズを除いて、すべてオーナーの懐に入る。
「このオーナーは1000億円も資産があるのだから、これ以上金が欲しいわけはない」などというのはわれわれ貧乏人の誤った思い込みにすぎない。アメリカの富豪は自分の強欲さをむしろ自慢にしていて、だからこそ自分は競争を勝ち抜いてこれだけの財を築けたのだ、と誇りに思っているのが普通。「あいつはForbesランキングの全米何位」などとライバルを意識し、もっともっと資産を増やしたいと執念を燃やしている。景気が悪化したとたんに球団職員を何十人も解雇するのは、赤字になるからではなく、儲けを減らしたくないからだ。グループによるオーナーであっても事情は同じ。
強欲な大富豪たちも、「地元ファンに尽くす太っ腹なオーナー」と世間に思われたいのが人情で、経営状況を明らかにしないのはそういった事情もあるのだろう。また、比較的裕福でなくチーム優先の「古き良きオーナー」タイプであっても、その息子たちがそうであるとは限らない(いずれ資産を兄弟で分け合わなくてはならないので)。 代替わりで多額の相続税→球団を手放す、というパターンに陥らないためにも、利益を上げていく必要が常にある。
パッカーズの来季16戦の対戦相手は下表のとおり。来季のNFC北地区チームは、NFC南地区およびAFC西地区と対戦するローテーションとなっている。それに加えて同カンファレンス同順位の2チームと対戦する仕組みなので、パッカーズは東地区2位のジャイアンツおよび西地区2位のラムズと対戦する。
対戦相手の2010年成績は合計130勝126敗で勝率.508となっている。とはいえ、来季どの相手が強くなるかはやってみなければわからない。2010年開幕時点でパッカーズの"Strength of Schedule"は勝率.488と比較的ラクなはずだったが、シーズン終了時点で計算してみると勝率.520。NFL全体で難しい方から9番目、プレーオフ進出チームでは最も難しいスケジュールだった。
なお、具体的な日程は毎年4月に発表される。
Packers 2011 Regular Season Opponents | |||||||
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Opponent | Division | 2010 | 前回の対戦 | ||||
New Orleans Saints | NFC南 | 11 | 5 | L | 29-51 | '08 | |
Tampa Bay Buccaneers | NFC南 | 10 | 6 | L | 28-38 | '09 | |
St. Louis Rams | NFC西2位 | 7 | 9 | W | 36-17 | '09 | |
Denver Broncos | AFC西 | 4 | 12 | W | 19-13 | '07 | |
Oakland Raiders | AFC西 | 8 | 8 | W | 38-7 | '07 | |
Minnesota Vikings | 同地区 | 6 | 10 | 2勝 | |||
Chicago Bears | 同地区 | 11 | 5 | 1勝1敗 | |||
Detroit Lions | 同地区 | 6 | 10 | 1勝1敗 | |||
@ | Atlanta Falcons | NFC南 | 13 | 3 | W | 48-21 | '10 |
@ | Carolina Panthers | NFC南 | 2 | 14 | L | 31-35 | '08 |
@ | New York Giants | NFC東2位 | 10 | 6 | W | 45-17 | '10 |
@ | Kansas City Chiefs | AFC西 | 10 | 6 | W | 33-22 | '07 |
@ | San Diego Chargers | AFC西 | 9 | 7 | W | 31-24 | '07 |
@ | Minnesota Vikings | 同地区 | 6 | 10 | 2勝 | ||
@ | Chicago Bears | 同地区 | 11 | 5 | 1勝1敗 | ||
@ | Detroit Lions | 同地区 | 6 | 10 | 1勝1敗 | ||
計 | 130 | 126 | |||||
Strength of Schedule | .508 |
薬物問題で無期限出場停止(昨年の記事へ)となっているDEジョニー・ジョリーが、NFLに復帰願いを提出していることを代理人が明らかにした。「無期限」といっても実情は1年出場停止にちかく、シーズンが終了すれば復帰願いを提出できる。ただし、復帰が認められるためには、更生してトラブルなく暮らしていることをコミッショナーに認めてもらう必要があり、すんなり復帰できる保証はない。たとえば2007年のLBオデル・サーマン(CIN)は、薬物カウンセラーの勧告によりコミッショナーは復帰を認めず、さらに1年間待つことになった。
昨年DEジョリーは制限付きFAとして1年契約を結んだあと出場停止となったので、パッカーズとの契約はそこで停止したまま、という扱いになるらしい。そのため復帰が可能になった場合、今春はFAとならず、改めてパッカーズとの1年契約が再スタートとなる。
トラブルメーカーを嫌ってパッカーズが解雇する可能性もあるが、本人がクリーンである限り迎え入れてくれるだろう、と代理人は自信を示している。「チームはジョニーのキャリアを通じてよく支えてくれたし、今回のトラブルの間でさえそうしてくれた。だから、もしチームに戻れなければ私は驚くだろう。しかしそのためには責任が伴うことも本人は理解しているし、必ず責任を果たすはずだ」
地元記者たちの反応は、「セカンドチャンスを与える分には構わないのでは。厳しく目を光らせておき、更生していないようならいつでも解雇はできるのだし」といったところ。ジョリーの場合チームでの振る舞いが問題になったことはなく、課題は地元ヒューストンの悪い友人たちと手を切れるかどうか、ではないか。
戦力的には、実績あるDEジョリーがチーム復帰となればDL陣の層はかなり厚くなる。そのため、無制限FAとなる予定のDEカレン・ジェンキンズと再契約する必要性が多少下がるかもしれない。
優勝チームを作り上げた立役者、テッド・トンプソンGMが契約延長にサインした。契約年数や金額など詳細は不明。実際には12月に合意していたが、両者とも発表をシーズン終了まで待ちたかったからだ、とマーク・マーフィ社長は明かしている。「テッドをフットボール部門のリーダーとして確保でき、我々は心から喜んでいる。彼はこのチーム建設において素晴らしい仕事を続けている。この契約は12月に合意していたが、今日こうして発表できることを喜んでいる」
「私はテッドに全幅の信頼を置いている。感心させられるのは、彼とマイク(マッカーシーHC)が非常によい協力関係を築いていることだ。近いうちにマイクとも契約できることを私は確信している。テッドがリーグ最高のGMの1人であることは疑いの余地がない。彼と一緒に働けることは私にとって大きな喜びだ」
テッド・トンプソンはサザンメソジスト大出身の58歳。1975年のドラフト外でオイラーズに入団、主に控えLB兼スペシャルチーマーとして10年間プレーした。当時のチームメイトにはOLBマシューズの叔父ブルースや、タイタンズ新ヘッドコーチのマイク・ムンチャックもいる。引退後はコーチの道に進むことができず、フィナンシャルプランナーとして7年間働いたあと、オイラーズ時代の同僚にして親友のマイク・ラインフェルト(当時パッカーズCOO・現タイタンズGM)の推薦で1992年にパッカーズへ。(2005年の記事へ)
ロン・ウルフGMの指導のもと、またたく間に頭角を現した彼は、プロ人事部長、人事部長と順調に出世を重ねた。1998年にはマイク・ホルムグレンHCとともにシーホークスに移り、事実上ドラフト戦略の責任者としてスーパーボウル進出に大きく貢献。2005年にパッカーズのGMに就任すると、翌2006年にはマイク・シャーマンを解任してマイク・マッカーシーを新HCに選び、2008年夏にはファーヴ復帰を拒んでロジャース時代の幕を開いた。FA補強に消極的で徹底したドラフト重視、ロッカールームのケミストリーを重視するチーム作り、話下手のメディア嫌いでも知られている。
ジミー・ロビンソンWRコーチがカウボーイズに移ることが明らかになった。まだパッカーズとの契約が残っていたので、ヘッドコーチ昇進以外は拒否することも可能だが、本人の意向をマッカーシーHCが尊重したということなのだろう。WRコーチにアシスタントヘッドコーチの肩書が加わる(当然昇給も伴う)、とも報道されているが、カウボーイズ公式サイトには特にそう書かかれてはいない。ジェイソン・ギャレット新HCの現役QB時代、彼らは2000年から4年間ジャイアンツで一緒だった。
管理人注: その後カウボーイズ側が記事を訂正し、「WRコーチ兼アシスタントヘッドコーチ」となった。
ジミー・ロビンソンはジョージア工科大出身の58歳。かつてWRとしてジャイアンツなど3球団で6年間プレーし、ジャイアンツ・スタジアム完成最初のTDレセプションを決めたこともある。1984年からコーチの道に進み、2006年のマッカーシーHC初年度からグリーンベイへ。今回のカウボーイズでNFL6球団目となる。じつはカウボーイズの前WRコーチはレイ・シャーマンで、彼は2004年まで5年間パッカーズのWRコーチを務めていた。
マイク・マッカーシーHCがシーズンまとめの記者会見を行った。スーパーボウル勝利で終わっただけに反省点に関するコメントが少ない代わり、下記の2番目から5番目までのリーダーシップに関するコメントがきわめて興味深い。マッカーシーHC自身がヘッドコーチとして成長してきた、と地元メディアが評している部分がこのあたりに具体的に表れているのではないか。
スーパーボウル制覇から2日経った火曜午後、祝勝イベント"Return To Titletown"がランボーフィールドで盛大に開催された。晴天とはいえ-13℃とたいへんな冷え込みのなか、約56000人のパッカーズファンが集まって英雄たちを迎えた。学校をサボって遠くの街からやってきた、と胸を張る高校生たちも少なくない。
入場トンネルには"Super Bowl XLV Champions"と特別の飾りつけ。コーチ、スタッフ、そして選手たちが紹介されたあと、マイク・マッカーシーHCがロンバルディ・トロフィーを掲げて登場。"Go Pack Go!!!"の大合唱が沸き起こった。
司会進行はラジオ実況でおなじみのラリー・マッカレン(元センター)とウェイン・ラリヴィーのコンビ。マーク・マーフィ社長を筆頭に、コーチたち、有力選手たちが次々と壇上に上がり、ちょっとしたコメントを残していく。なかでもQBアーロン・ロジャースが登場すると、"M-V-P! M-V-P!"のコールが起こり、興奮は最高潮となった。「グリーンベイのみなさん、僕たちは来年も全く同じことをして、ここに戻ってくるつもりです」
このイベントはウィスコンシンじゅうで生放送もされている。CMブレークの間には、C/Gジェイソン・スピッツが上半身裸で雪の中をヘッドスライディングし、観客を楽しませる場面も。スコット・ウォーカー知事は、「この2月を"Green Bay Packers Month"とする」と宣言。グリーンベイ市長のジム・シュミットは、「街路の名を"McCarthy's Way"と名付ける」と明言した。(街路の選定はこれから、マッカーシーHC本人の意向も聞く、と当局者)
イベントの最後には選手たちがフィールド外周を一周。FSニック・コリンズがトロフィーを持ってファンにも触れさせている。
試合後は祝賀関連の話題が主体だったので、この2日間に取り上げそこねた話題を中心に(重要な話が多いのに恐縮)。ほとんどがゲーム直後のロッカールームでのコメントだ。
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | Total | |
---|---|---|---|---|---|
Steelers | 0 | 10 | 7 | 8 | 25 |
Packers | 14 | 7 | 0 | 10 | 31 |
パッカーズは第1QにWRネルソンへのTDパスとFSコリンズのINTリターンTDで快調にリード。第2QにもCBブッシュのインターセプトから7点を追加するが、WRドライバー、CBシールズ、CBウッドソンと負傷退場して攻守ともリズムを崩す。前半最後に11点差とされると、WR陣が手痛い落球を繰り返してQBロジャースの足を引っ張り、追加点を奪えない間に追い上げを許して4点差に。しかし第4Q冒頭にファンブルリカバーからWRジェニングスへのTDパスが成功。いったんは3点差に追い上げられたものの、再びパス攻撃の頑張りで3点を追加すると、最後はQBロスリスバーガーのパスを守り切って勝負あり。
試合中盤から重要な選手が次々と退場し(CBシールズは復帰)、スペシャルチームも終始劣勢。後半は追いかけられ通しだったパッカーズだが、けっきょくはターンオーバーが勝敗を分けた。オフェンスは1つもターンオーバーを犯さず、FSコリンズとCBブッシュがインターセプトを奪い、追い込まれた第4Q初めにはOLBマシューズが値千金のファンブルフォース。31得点のうちターンオーバーから挙げた得点が21点だった。
パッカーズは13年ぶり4回目のスーパーボウル制覇、13回目(NFL最多)のNFL制覇を果たし、パス落球に苦しめられながら3TD・0INTと大活躍したQBロジャースがスーパーボウルMVPに選出。途中退場の両ベテラン、WRドライバーとCBウッドソンに若手たちが優勝リングをプレゼントする格好となった。
いよいよゲーム前日。街ではさまざまな催しやセレブリティ・パーティが開催されているが、両チームはウォーク・スルー練習のほかに表立った動きはまったくなし。
この日もダラス地域は寒波の影響が続き、5インチほどの積雪に見舞われた。カウボーイズ・スタジアムでは屋根から氷の塊が落下して6人が負傷、うち1人が重傷とのこと。中西部でも悪天候が続いたため、選手の家族の現地入りが大幅に遅れるなどしている。
Green Bay Packers Injury Report | |||||||
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Player | Pos | Injury | Wed | Thur | Fri | Status | Notes |
Erik Walden | LB | Ankle | △ | △ | △ | Questionable | 微妙 |
Donald Driver | WR | Knee | - | △ | △ | Probable | 出場 |
Chad Clifton | OT | Knee | △ | △ | ○ | Probable | 出場 |
Jason Spitz | C/G | Calf | △ | △ | ○ | Probable | 出場 |
Frank Zombo | LB | Knee | ○ | ○ | ○ | Probable | 出場 |
Pittsburgh Steelers Injury Report | ||||||
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Player | Pos | Injury | Wed | Thur | Fri | Status |
Maurkice Pouncey | C | Ankle | × | × | × | Out |
Aaron Smith | DE | Triceps | △ | △ | △ | Out |
金土日のパッカーズのスケジュールはおおよそ以下のとおりらしい(すべてダラス時間)。マッカーシーHCはふだんから「習慣」の重要性を強調していて、今回もできるかぎり通常のサンデーナイトゲームと同じスケジュールとなっている。
管理人が風邪ぎみのため、要点だけかいつまんで。
今週最初の練習日。ふだんの取材タイムは練習終了後だが、この日は練習前に行われ、練習後の会見はマッカーシーHCだけだった。朝8時からホテルでマッカーシーHC、QBロジャースの会見があり、その他の選手たちはポジションごとに数人ずつテーブルに座って取材を受ける(写真)。「昨日の(喧噪の)メディアデーよりずっとよい取材ができた」と記者たちは口々に語っている。
前日ほど荒れてはいないものの、最高気温-7℃・最低気温-11℃と依然としてたいへんな寒さで、強い風も吹いている。「Highland Park高校の屋内練習場を使う。とても無理だとわかっていたので、昨日はサザンメソジスト大スタジアムを視察さえしなかった。今週の練習はすべて高校でやることになるだろう。パンターとキッカーはカウボーイズ・スタジアムを使って練習する」とマッカーシーHC。
カウボーイズ・スタジアムにおいてメディアデーが盛大に開催された。この日のダラス地域は大寒波に見舞われ、寒さと強風と雪・みぞれで大変な騒ぎ。ダラス-フォートワース国際空港が閉鎖され、学校は休みとなったが、メディアデーは中止にならない。1日を通して道路は真っ白のままで、なんとグリーンベイより寒い時間帯もあった。
1時間のあいだ、選手やコーチが1人ずつブースに陣取り、記者は好きな場所へと歩き回って取材できる仕組み。クリス・バーマンやリッチ・アイゼンといった有名キャスター、ディオン・サンダースやダリル・ジョンストンやウォーレン・サップやロッド・ウッドソンといった元選手/コメンテーターのほか、海外メディアやEntertainment Tonightといった普段は来ない人々も。その間を新勢力の有力ブロガーたちが歩き回っている。
ブースを割り当てられた18人は、マッカーシーHC、フィルビンOC、ケイパースDC、スローカムSTコーチ、QBロジャース、WRジェニングス、WRドライバー、FBクーン、LTクリフトン、Cウェルズ、NTラジ、DEジェンキンズ、DEピケット、OLBマシューズ、ILBホーク、CBウッドソン、CBウィリアムズ、FSコリンズ。それ以外の選手・コーチは広いエリアをブラつき、自由に取材を受けている。
いよいよ両チームの選手たちが現地入り。スーパーボウルウィークがスタートした。