選手たちは木曜にセントノーバート大に集合し、金曜にフィジカルチェックとミーティングとコンディショニングテストを受けた。フットボール練習は土曜から始まる。
キャンプ練習開始前日、1巡23位指名のLTブライアン・ブラガがパッカーズとの契約にサインした。ESPNによると総額$14.75ミリオンの5年契約、そのうち$8.76ミリオンが保証されている、とのこと。これで今年のパッカーズはホールドアウトなく全員がキャンプ初日から参加することになった。以下は過去10年間の1巡指名選手のホールドアウト日数をまとめたもの。
2001年 | 10位 | DEジャマール・レイノルズ | 0日 |
2002年 | 20位 | WRジャヴォン・ウォーカー | 0日 |
2003年 | 29位 | LBニック・バーネット | 1日遅れ |
2004年 | 25位 | CBアマド・キャロル | 2日遅れ |
2005年 | 24位 | QBアーロン・ロジャース | 2日遅れ |
2006年 | 5位 | LB A.J.ホーク | 1日遅れ |
2007年 | 16位 | DEジャスティン・ハレル | 0日 |
2008年 | 1巡指名なし。2巡の3人とも遅れずに合流 | ||
2009年 | 9位 | NT B.J.ラジ | 13日遅れ |
2010年 | 23位 | LTブライアン・ブラガ | 0日 |
LTブラガと入れ替わりに、パッカーズはドラフト外ルーキーのNTアレリック・マリンズ(ノースカロライナ大)を reserve / did not report listに入れ、同じくドラフト外のLBジョン・ラッセル(ウェイクフォレスト大)を解雇して、ロースターを80人枠に収めた。
ふつう reserve / did not report list には、現役続行を迷っているなどの理由でキャンプ合流が遅れている選手が入ることが多いが、今回の場合、マリンズ本人が別の道に進むことに決めた、とマッカーシーHCは説明している。コンバインの際に心雑音が見つかった(ただしミニキャンプではフィジカルチェックに合格)選手なので、健康面での不安による決断かもしれない。解雇や引退扱いにしないのは、本人の気が変わったときに備えてのことだろう。
毎年恒例、グリーンベイ・パッカーズ株主総会が開催され、約8300人の株主がランボーフィールドに集まった(写真集1・写真集2)。1人の株主につき4人のゲストを同行できるため、出席したファンの数はもっとずっと多い。今年は特別ゲストとしてNFLコミッショナーのロジャー・グッデルも出席し、総会終了後にはファンとのQ&Aセッションも行われた。
今春パッカーズからオファーされたRFAテンダーにSSアタリ・ビグビーがようやくサイン。チームの制限つきフリーエージェント(RFA)8人の中で彼だけがサインを渋り、ミニキャンプも欠席していた。ビグビーがサインしたことで、今週末からのトレーニングキャンプには(新人LTブラガを除いて)全員の初日からの参加が確定。過去5年間で4回目のことだ。(2007年にはRBグラントがキャンプ序盤をホールドアウトしている)
契約延長を望むSSアタリ・ビグビーだが、球団からの評価は決して高くはなく、まともな長期契約の話は全くなかったらしい。ここまで意地を張ったことで、3巡ルーキーのSSモーガン・バーネットに1stチームでプレーするチャンスを与えただけ、という結果になった。ダレン・ペリー・セーフティコーチは、「スターターの座はビグビーのものだが、激しい競争が待っている」としている。
今トレーニングキャンプの見どころ、最後はディフェンシブバックとスペシャルチームについて。
チャールズ・ウッドソンがNFL最優秀ディフェンス選手に選ばれる最高のシーズンを過ごしたいっぽう、相棒のアル・ハリスはヒザの前十字靭帯(ACL)断裂で長期リハビリを強いられることに。今季はトラモン・ウィリアムズをスターターとしてプレーさせつつ、ハリスの回復を待つシーズンになりそうだ。とりあえず Physically Unable to Perform(PUP) リストでキャンプ初日を迎えるのではないか。
同じくACL断裂のウィル・ブラックモンはセーフティにコンバート。3番手/ニッケルバックはブランドン・アンダーウッド(昨年6巡)とパット・リー(2008年2巡)が争うことになりそう。もし彼らの成長がイマイチでベテランのジャレット・ブッシュの出番が増えるなら、来春ドラフトではCBを1巡指名する可能性が高くなる。
ロースター枠は通常6人。ハリスがキャンプ途中でロースターに復帰できたとすると、ウッドソン、ハリス、ウィリアムズ、アンダーウッド、リーまでがほぼ当確。最後の枠をブッシュ、ジョシュ・ベル、ドラフト外ルーキーのサム・シールズあたりが争う。ハリスがPUPリストのまま開幕を迎えるなら、もう1つ空きができる。シーズンが進んでケガ人が増えたら、ブラックモンをCBに戻す手もある。
ラジオ解説ラリー・マッカレン : 「相手選手にぴったりついて走れるかだ。クォーターバックを振り向いていたら速くは走れない。レシーバーがボールを見て、DBも見る。それからどう反応するか。ボールに手が届いているか。それとも相手WRが常に勝ってしまうか」
「いつだって、スピードがすべてじゃない。スクリメージ上で強くジャムして相手をルートから押し出してしまうようなコーナーバックが望ましい。それから、7on7のような練習を見るときは気を付けることだ。パスラッシュがないのだから、オフェンスが80%は勝って当たり前なんだ」
FSニック・コリンズはインターセプトを量産して2年連続プロボウルに選ばれ、今春は大型の契約延長も手に入れた。対照的にSSアタリ・ビグビーは物足りないシーズンが2年続き、契約最終年を迎えている。チームはドラフト3巡でトレードアップしてSSモーガン・バーネットを獲得し、ビグビーと競わせる構え。そのうえビグビーがRFAテンダーへのサインを拒んでOTAやミニキャンプを休んだため、SSバーネットは1stチームでプレーする機会がたっぷり与えられ、これまでの評判は非常にいい。ディフェンスでは今夏もっとも注目される先発争いとなった。
ロースター枠は通常4人で、5人になることは滅多にない。上記3人が当確とすると、最後の枠をデリック・マーティン、チャーリー・ペプラー、ウィル・ブラックモン(CBからの転向)の3人が激しく争うことになる。セーフティとしてのプレー内容よりスペシャルチームでの働きが重要になるのではないか。
ロングスナッパーのブレット・グードはまったく問題なし。キッカーのメイソン・クロスビーも、プレシーズンでよほど不調に陥らなければ大丈夫そう。問題は、ティム・マステイとクリス・ブライアンのパンター争いだけだろう。今のところほぼ互角だが、どちらかが勝つと決まったわけではなく、外部から獲得した選手で決まる可能性はかなりある。今年もキャンプ後半から開幕まで、他球団から解雇されてくるパンターに注目せざるをえない。
もうひとつの問題はリターナー。キックオフリターナーは控えWR/RB陣で何とかなるかもしれないが、パントリターナーは技術的に格段に難しく、ただスピードや突破力があればよいというものではない。CBトラモン・ウィリアムズは実績があるが、先発CBをリターナー起用するのはできれば避けたい。となるとやはりブラックモンだが、ACL断裂からのリハビリ途上、しかもCBからSへのコンバートとあって、ロースター入り自体が危うい状況にある。
2巡指名のDEマイク・ニールがパッカーズとの契約にサイン。おそらく総額$3.4ミリオン前後の4年契約と思われる。彼の直前および直後に指名された選手が相次いで契約して金額が判明したため、ニールも時間の問題であろうと見られていた。地元記者がTwitterでニール本人に交渉の様子を聞くと、数分後に「合意したよ! レッツゴー、ブラガ!」と本人。非常に現代風な成り行きで契約判明となった。
ニールが言っていたように、残るは1巡23位指名のLTブライアン・ブラガだけとなった。すでに1巡24位のWRデズ・ブライアント(DAL)が契約しているので、目標金額がわかりやすく、交渉は進めやすいはず。
1993年から95年まで先発右ガードを務めたハリー・ガルブレイスが45歳で死去。彼がトレーニングコーチをしていたテネシー大が発表した。死因は明らかにされていない。
テネシー大から1988年ドラフト8巡指名でドルフィンズに入団した彼は、1年目からスターターとなってオール・ルーキーチームにも選出。プロ6年目の1993年、大学の先輩DEレジー・ホワイトとともにパッカーズにFA移籍し、先発右ガードとして3年間活躍した。RGアダム・ティマーマンの前任者ということになる。
パッカーズ退団後ジェッツで1年プレーしてから引退すると、テネシー州立大やハンプトン大などのOLコーチを務め、2年前に母校テネシー大に移っていた。
今トレーニングキャンプの見どころをポジションごとに紹介する第3回。また、練習ではどこを見ればよいか、という専門家のアドバイスも。
昨季は期待を大きく上回る働きでラン守備NFL1位の原動力となった。その一角の左DEジョニー・ジョリーが出場停止で今季出られないのは痛いが、チーム側は処分を予想してそれなりに準備してきた。ドラフト2巡でDEマイク・ニール、7巡でDE C.J.ウィルソンを指名し、ライアン・ピケットをNTから左DEに移してB.J.ラジを先発NTに固定。ジョリーがいてもいなくても今季の課題は3rdダウンでのパスラッシュ向上であり、ラジの先発昇格やニール指名はパスラッシュ強化の意図もある。
1年目にあまり活躍できなかったNTラジ(1巡9位指名)がポテンシャルを発揮してくれればDL陣全体の破壊力がアップするが、タフなポジションでシーズンを通して働ける耐久性があるのかどうか。今年はピケットをNTに固定できないだけに、ラジの健康とタフネスが重要になりそう。DEニールは期待の2巡指名といっても、ポジションの性格からして1年目から大きな貢献は期待できない。DEジャリアス・ウィン(昨年6巡)の成長は見込めるが、DEジャスティン・ハレル(2007年1巡20位)の腰痛がぶり返さない保証はない。
3-4転換2年目なのでよくわからないが、ロースター枠は通常6人ぐらい。昨季は開幕時が6人、途中でNTアンソニー・トリビオがプラクティス・スクワッドから昇格して7人だった。今年は、左DEピケット、NTラジ、右DEジェンキンズ、DEニールまでの4人は当確。残りの2枠(または3枠)をDEウィン、7巡指名DEウィルソン、DEハレル、DEロナルド・タリー、NTトリビオの5人で争うことになりそう。
ラジオ解説ラリー・マッカレン : 「練習で見るのは、その選手が相手をヒットしたとき何かが起きるかだ。ただ押しただけなのか、それとも相手が後ろへ崩されるか。サイズがあるだけではダメ。デカくてケンカ好きって奴なら酒場でも見つけられる。サイズとクイックネスだ。そうなると簡単には手に入らない」
「パスラッシャーは手と足を激しく動かし、優位になれるところを探る。この手がダメならあちら、とね。デカいオフェンシブラインマンを相手に正面から揉み合うだけでは、相手の思うつぼだ」
昨季は新人OLBクレイ・マシューズが右サイドで大活躍し、10サックを挙げてプロボウルにも選ばれた。左OLBでは元プロボウルDEのアーロン・キャンプマン(11週にACL断裂)がいまひとつで、彼の負傷後に台頭したOLBブラッド・ジョーンズ(7巡ルーキー)の方が3-4ディフェンスに合っていた。今春はキャンプマンと再契約せず、ジョーンズが名実ともにスターターに。ジェレミー・トンプソンは首のケガで引退を余儀なくされた。層が薄くなったのにドラフトでパスラッシュLBを指名しなかったのは意外だ。
課題のパスラッシュ向上にもっとも必要なのはジョーンズのパワーアップだ。先発の2年目コンビに続くのはベテランのブレイディ・ポピンガ、昨季途中でプラクティス・スクワッドから昇格したシリル・オビザー、ドラフト外ルーキーのフランク・ゾンボ(セントラルミシガン大)とジョン・ラッセル(ウェイクフォレスト大)。ロースター枠は4人または5人だが、現状では低レベルの控え争いに見える。スターターが負傷した場合、不器用なポピンガを昇格させるより、オールラウンドなILBブランドン・チラーをアウトサイドに回す方が得策だろう。また、開幕までに補強するとしたら、このポジションが最も可能性が高い。
OLBクレイ・マシューズ : 「大学を出たばかりで、パスラッシュができてカバレッジにも下がれる真のアウトサイドLBを見つけるのは難しい。どちらかが得意という選手ならいるけれど、両方兼ね備えている選手はまれだ。パスラッシュができ、カバレッジに下がることができ、タイトエンドと真っ向からやりあえる選手が望ましい」
「4-3のDEとは違って、全プレーでパスラッシュするわけじゃないからね。非常に動きが柔らかく機動力に富んだ、なんでもこなせる選手でないと。セーフティとラインバッカーとラインマンを合わせたようなプレーが必要なんだ」
昨季はニック・バーネットがACL手術から復活を果たし、ディフェンス躍進に貢献。A.J.ホークもまずまずの働きを見せたが、パスシチュエーションではブランドン・チラーがホークに代わって入る。今年も似たような起用法になるものと思われ、前述のようにチラーがアウトサイドを兼ねるかどうかだけ。4人目はプロ4年目のデズモンド・ビショップで、4人枠だとすれば、ここまでの4人でほぼ決まり。OLBの控えが低レベルなら、ILBの5人目としてドラフト外ルーキーが食い込む可能性はある。
ドム・ケイパースDC : 「プレーコールを出す選手たちだ。フロントラインをセットさせ、アジャストメントの指示も出す。セーフティがセカンダリーのアジャストメントをするようにね。相手の意図を読み、チームメイトとコミュニケートする、リーダーシップとインテリジェンスがなければならない」
「オールラウンドなエリート級アスリートが望ましい。チームによっては、ガードに勝てるような大きくフィジカルなILBを求めるチームもあるが、我々は違うんだ。私はウチの4人全員を気に入っている。彼らはサイドラインからサイドラインまで追いかけることのできるアスレチックな選手だから」
今トレーニングキャンプの見どころをポジションごとに紹介する第2回。また、練習ではどこを見ればよいか、という専門家のアドバイスも。
グレッグ・ジェニングスとドナルド・ドライバーの先発コンビと、ジョーディ・ネルソンとジェームズ・ジョーンズの3番手争い、という図式は昨年とまったく同じで、(トレードでもないかぎり)上位4人のロースター入りは確定している。ネルソンは2年目の昨季伸び悩んだが、今春のOTAやミニキャンプではもっとも評判がよかった。実質3番手レシーバーのTEフィンリーがいるので数字を稼ぐのは大変だが、将来スターターになれることを証明してほしいシーズンだ。ジョーンズは今年が契約最終年。
例年どおり5人枠とすれば、最後の枠を残り6人で争うことになる。順当ならばブレット・スウェイン(2008年7巡)が5番手だが、昨年10月にヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂してリハビリ途上。カナダ人ルーキー、ショーン・ゴアはけっこう評判がいい。RB陣同様、リターナーとしてアピールできれば5番手争いで有利になる。場合によっては6人枠もなくはないが、OL等の枠を増やす方が重要だろう。
ジョー・フィルビンOC : 「その選手がオープンになれるかだ。コーチは(机上で)プレーを組み立てることはできるが、じっさいは選手がフィールド上で相手を打ち負かすことができるかだ。フットボールは今でも1on1の競技だよ。欲しいのはマンカバレッジを破れる選手、スクリメージラインで勝てる選手、スピードで相手を引き離せて、最終的にはボールをキャッチできる選手だ。大事なのは結果を出せることだ。サイズがすごくても、40yds走が速くても、フィールドで結果を出せなければね」
「よいルートランナーとは、見えないラインをきっちりなぞることだけではないんだ。ルートの一番最初のスクリメージ上のところで(相手に勝てるかが)勝敗が分かれる。プレスカバレッジが相手なら、相手のバンプに対抗し、正しいテクニックを使って抜け出せるかが、よい目安になる」
ジャーマイケル・フィンリーがエースTEに成長し、2番手は元スターターのドナルド・リー。3番手をスペンサー・ヘイヴナーと新人アンドリュー・クウォレスが争う。ドナルド・リーは昨季落球率14.6%のスランプだったうえ$2ミリオンの(控えにしては)高額サラリー。そのためクビが危ないとの見方もあるが、TE転向2年目のヘイヴナーと新人クウォレスに控えを任せるのはリスクが大きすぎるのでは。
通常ロースターは3人枠だが、ベテランの安心感とクウォレスの将来性をどちらも犠牲にしないために、4人枠とすることも考えられる。昨年のFB陣(3人体制)と似た状況だ。バイクで飲酒事故を起こしたヘイヴナーは、スペシャルチームでも存在価値をアピールしたい。
TEドナルド・リー : 「いちばん大事なところ? パッドレベル(笑)。それじゃつまらない? でも実際、そこを見ればその選手の多くがわかるんだよ。ブロッキングでもルートを走るのでも、パッドレベルを一番低くしたヤツが常に勝つ」
LTクリフトンとRTタウシャーの両方と再契約できたうえ、ドラフト1巡でLTブライアン・ブラガ、5巡でG/Tマーシャル・ニューハウスを獲ったことで、ぐっと層が厚くなった。そのため、ここ数年と比べると控え組が複数ポジションを兼任することが少なくなりそうだ。
今のところ先発は昨季と同じで、LTクリフトン、LGカレッジ、Cウェルズ、RGシットン、RTタウシャーの5人。ブラガは左タックル修業に専念する予定で、ジェイソン・スピッツは左ガードの先発争いとセンターの控え。2年目T.J.ラングは右タックルでタウシャーを脅かせるかどうか。スターターが最も危ないのはLGカレッジだが、これまでもピンチに陥るたびに奮起して先発の座を守ってきたので侮れない。しかも今年はコントラクト・イヤーなので、なおさら必死に頑張ることだろう。
ここまでに挙げた8人がロースター合格圏内で、例年どおり9人枠ならばあと1人、10人枠でもあと2人しか残れない。最後の枠を争うのは、5巡ルーキーのG/Tニューハウス、昨季ドラフト外からロースター入りしたG/Cイヴァン・ディートリック=スミス、昨季先発RTで大コケしたT/Gアレン・バーバー、今春かなりの成長を見せた(らしい)RTブレノ・ジャコミニ。ただジャコミニは右タックルしかできないのが弱み。
ラジオ解説ラリー・マッカレン(元センター) : 「左タックルの(パスプロテクションに退がる)フットワークでは、1歩目が45度のアングルでなければならない。あまり後ろすぎてはダメだ。決してクォーターバックへの道を開けるな! 必要なのは力強い横への動きだ。逆に1歩目が前に行ってしまったら、あっという間にかわされて窮地に陥る」
「私がブライアン・ブラガのためにパスブロッキングの教材テープを探すなら、チャド・クリフトンが素晴らしいお手本だ。最初にセットするときの両足の動き、それから相手に手を置き、パンチする、そのタイミング。相手に合わせて両足をスライドさせ、相手の動きを逸らす。足と手をうまく使う、それがタックルというポジションだ」
今年は全ポジション全選手を紹介するのは断念し、各ポジションの先発争いやロースター争いに絞って、今トレーニングキャンプの見どころを紹介する。また、練習を見学するときにどこを見ればよいか、という専門家のアドバイスも取り上げてみた。
エースのアーロン・ロジャース、2番手マット・フリン、3番手グレアム・ハレルという序列はまったく動かない。テキサス工科大で大活躍したハレルが控えQBとしてやっていける器だとしても、今年2番手を争うのは無理だろう。今年は3番手としてロースター入りできるか、それとも2人枠としてプラクティス・スクワッドに留まるか、そのどちらかだ。ロースター入りするためには、「他球団に獲られたくない有望な若手」ということを証明するしかない。
ラジオ解説ラリー・マッカレン : 「まず見るのはリリースだ。余計なワインドアップで時間をかけていたら、それはよくない。レシーバーがカットを切る前にボールを投げているか。よいQBは予測に優れ、ワイドオープンになる前に、カットを切る前に投げられる。それは、レシーバーとの呼吸が合っていて、ディフェンスの先を行っている、ということも意味する。パスの軌道が直線的なのと弧を描くのとどちらがいいか? それは結果を見るしかない。軌道がどちらであろうと、大事なのは結果だ」
今オフはアーマン・グリーンとの再契約を見送り、ドラフト6巡でジェームズ・スタークスを指名した。昨季1253yds、11TD(どちらもNFL7位)を記録したライアン・グラントは不動のスターターで、ブランドン・ジャクソンも3rdダウンバックとしての安定感が買われているので、ロースター入りはおそらく大丈夫。例年どおり3人枠だとすると、最後の枠をスタークス、ドラフト外のクイン・ポーター、昨季プラクティス・スクワッドにいたクレッグ・ランプキンの3人が争うことになる。
順当なら3人目は万能型のスタークス。ポーターはディビジョンIIながら通算24TDを挙げ、WR経験もあるのでレシービング(通算68回887yds)が上手く、キックオフリターナー実績(平均32.0yds)もある。ランプキンは在籍3年目になるので、伸びシロの点でむしろ不利かもしれない。さほどレベルの高いユニットではないので、4人目でロースター入りするにはプレシーズンでキックオフリターナーとして活躍する必要がありそう。
RBライアン・グラント : 「優れたランナーはパッドレベルがよく、よい脚がある。穴に飛び込み、抜け出すところでそれがわかる。力強い動きはよいパッドレベルから生まれる。フットボールは低いところで行われるんだ。パッドレベルを低くしろ、というのはタックルをかいくぐるためだ。ヒザをしっかり曲げればパワーも増し、瞬発力も生まれる。こういうふうにヒザを曲げ、頭は高くするんだ」
RBブランドン・ジャクソン : 「ボールセキュリティのために、ボールを高くタイトに抱えているかどうか。RBがボールを持ったときには必ずそこを見るべきだよ。片手でしっかり持ち、もう片方の手でそれをカバーする。そうした基本をすべて実行しなきゃならない」
プロ5年目のジョン・クーン、4年目のコーリー・ホール、2年目のクイン・ジョンソンの3人で新戦力はなし。昨季は超異例の3人体制だったが、今年はそんな贅沢は無理だろう。ハマったときのランブロッキングの迫力ではジョンソンが勝るものの、昨季のレシービングはひどいものだった。ベテラン2人はどんぐりの背比べといってもいいが、スペシャルチームでの貢献はかなり大きい。元RBのクーンはショートヤーデージでボールが持てる。大学でスターLBだったホールはまだ多少伸びシロがあるかもしれない。
5巡指名のジョンソンが成長するのを待ってベテランのどちらかを切る、というのが既定路線だったと思われるが、今春はジョンソンのスペシャルチームでのさらなる成長を求める首脳陣コメントがあったところを見ると、ジョンソンの現状に不満があるのかもしれない。ジョンソンが競り負けて解雇されるようでは、ユニットとしては今年も伸び悩みが続くことになってしまう。逆にベテランを引き離して先発の座を固めるようなら、ラン攻撃はさらに上を狙えるかもしれない。
ふつう選手が心配するケガといえば、ヒザや足首やハムストリングそれに脳震盪。感染症を心配せずに済んでいるのは、エクイップメントマネージャー(用具担当)のレッド・バティがいてくれるおかげだ。彼はヘルメットやパッドなど用具のフィッティングを担当するだけでなく、選手の知らないところで、用具の洗浄や殺菌消毒にも気を配っている。4年前にSani Sport社の大型マシンをNFLで初めて導入したのも彼だった。
このマシンは、危険で感染力の強いブドウ球菌、大腸菌、インフルエンザウィルスなどを殺す効果があるという。これをいちはやく導入できたのは、自分がホッケー狂であったおかげだとレッド・バティは言う。NHLモントリオール・カナディアンズの本拠地から数分のところで育った彼は今でもNHLを熱心に観戦し、そこでジョー・ソーントンという選手が感染症のために手術が必要になった、という話を聞いたのだ。「そうなると当分は動けなくなるからね。他にも症例はたくさんある」
細菌の恐ろしさを再認識したバティはSani Sport社のことを聞いて開発者と面会した。開発者であり社主であるスティーヴ・シルヴァーもまたモントリオール出身で、スケート研磨のマシンも作っている。「レッド・バティはNFLで最初に我々のテクノロジーを採用したエクイップメント・マネージャーだった。彼はあの世界で非常に高い尊敬を集め、同業者たちから敬愛されている」
バティが球団に戻って報告すると、すぐに小切手が用意された。「私はスティーヴをNFLエクイップメント・マネージャー会議に招き、その後の採用例はうなぎ上りになった」とバティは振り返る。現在ではNHL27球団に加えてNFL13球団が同社のマシンを採用している。
アスリートの感染症など一般ファンにはあまり馴染みがないが、NFLではこれまであちこちで問題が起きている。QBトム・ブレイティは2008年、前十字靭帯再建手術の後に感染症を起こして何度も手術を受けなければならなかった。同じく2008年にはブラウンズでTEケレン・ウィンズロウを含む7、8人が感染症にかかって話題となった。中でもWRジョー・ジュレヴィシャスは、ブラウンズとその医療施設が予防措置を怠った(そのせいで7回の手術のすえに解雇)として訴えを起こし、現在も係争中だ。
どの感染症と闘うのも大変だが、最近とくに懸念されているのはMRSA、つまり通常の抗生物質への耐性がある病原菌だ。「MRSAは日常生活のどこでも感染しうる。フットボールはその特性からすり傷や切り傷がつきもので、それだけ細菌が体内に入りやすい」とシルヴァーは語っている。
バティはSani Sport社の殺菌マシンを1年中回し続けている。1回のサイクルでヘルメットなら10個、ショルダーパッドなら5、6個。シューズなら20足。まるで巨大なオーブンのようだが、このマシンはオゾンを使って細菌をやっつけ、その後で保護コーティングを施す仕掛けになっている。
「トレーニングキャンプでは、今日はこのポジションの選手たち、と決めて殺菌作業を行っている。我々はヘルメットとパッドをターゲットにしている。このマシンのほかにも、洗濯機の水温を155度(68℃)に保つことも大事だ。120度(49℃)や130度(54℃)では殺菌に十分ではない。水温が高ければそれだけ洗剤が活発に働き、細菌を殺す役目を果たしてくれる、というわけだ」
先発3年目のQBアーロン・ロジャースはミニキャンプ後の1か月をバケーションに使うことなく、サンディエゴでのフットボールキャンプに参加して7月を過ごしている。その集まりにはQBドリュー・ブリーズ、RBラダニアン・トムリンソンら有力選手たちが参加してトレーニングに励んでいる。「すごくハングリーな気持ちになるね。ドリューを見ていると、優勝には何が必要かがよくわかる。普段からのハードワーク、オフシーズンにどれだけの時間をつぎ込んでいるか、どれだけフットボールを大事にしているか」
「付き合いは長くないけど、そういった面でドリューは僕にとって知識の泉だ。自分のプレーオフ敗退はつらかったけど、彼がトロフィーを手にしたのは慰めになった。常に正しいやり方で物事を進める、チーム第一の立派な選手だ。彼があのような成功を手にしたのを見て本当に嬉しかった」
ロジャースは先発2年間で8472yds、58TD、20INT、QBレーティング98.5と申し分ない数字を残し、昨季は初プレーオフとプロボウル出場も経験した。最近は全米メディアからの注目度も高く、パッカーズを優勝候補の一角に挙げる声が多いのも、やはり彼がいるからだ。「僕は長きにわたって素晴らしい選手でありたい。容易なことでないのは承知してる。一朝一夕にできることじゃない。時間と労力をつぎ込まなきゃいけない。精神的にも身体的にも」
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ロジャースは昨季50サックを喰らいながらフル出場したタフネスも高く評価されている。現役時代に160サックを挙げたケヴィン・グリーンOLBコーチは次のようにロジャースを称賛する。「優勝するためには、度胸があってパスの正確なクォーターバックが必要だ。アーロン・ロジャースはクォーターバックのユニフォームを着たラインバッカーだよ。叩きのめされるのがわかっているし、実際そうされてもすぐ立ち上がる」
「私は個人的にジョン・エルウェイ、ジョー・モンタナ、フィル・シムズといった連中を叩きのめしてきた。しかし彼らはすぐに立ち上がり、すぐまた倒されると知りながらポケットに留まってパスを投げ続けた。そうした闘うメンタリティがアーロン・ロジャースの中にもあるのが、私にはわかる。オレは逃げない、オマエがどれだけハードにヒットしてもオレは戻ってきて投げ続けてやる、といった怖れを知らないメンタリティがね」
グリーンOLBコーチの言葉を記者から聞いたロジャース。「史上最多サック級のケヴィンがそう言ってくれるのは大変な賛辞だね。僕としてもケガを押してプレーし続けたことは誇りに思っている。自分がいることで勝利の可能性が最大になるなら、どれだけ苦しくても僕はフィールドにいるべきなんだ。昨年はかなりのサックを喰らった。(自分次第で)避けられたものもあったし、そうでないのもあった。でも過去2年間全試合出場し、望ましいレベルでプレーできたことは自慢できると思う」
賛辞といえば、先日はCBチャールズ・ウッドソンの発言もあった。「去年マンデーナイトの時にも言ったんだ。もしウチがA-Rodを普通に守ってやりさえすれば、彼はリーグ最高のクォーターバックだ、とね。その主張は今も変わらない。50サックも喰らいながら、彼は4000yds以上投げたんだ。信じられないことだよ」とウッドソン。ただロジャース自身は、トム・ブレイディがダントツでNFL最高、と語っている。
昨季ロジャースはラッシングでも316yds、5TDを挙げた。「ポケットの外でも大きなプレーができることは誇りに思っている。ただ、ぎりぎりまで大きなプレーを狙うことと、ボールを持ちすぎることは紙一重だからね」と本人は自戒するように語っている。
◆ ◆ ◆
ロジャースが楽観しているのは、若いタレントの台頭についてだ。昨季TEジャーマイケル・フィンリーは55回676ydsを挙げ、3年目の今年はさらに伸びるものと期待されている。「彼のポテンシャルの高さは誰の目にも明らかだよね。昨季は彼の成長が我々のオフェンスを変えてくれた。彼を止めるのは難しいよ。彼がフィールドにいれば、ドナルド(WRドライバー)やグレッグ(WRジェニングス)やジョーディ(WRネルソン)がフリーになりやすいし、ランニングゲームの助けにもなる」
「僕らには大きな目標がある。チームの将来について、僕らはみな興奮しているんだ」
関係ないが ESPN Magazine表紙の撮影風景
DEジョニー・ジョリーを無期限の出場停止とすることをNFLが発表した。出場停止期間は少なくとも1シーズン。復帰願いの提出は早くてもスーパーボウル終了後と決められている。出場停止期間中のサラリーは支払われない。DEジョリーは今年が契約最終年であるため、もうパッカーズでプレーすることはなさそう。それどころか、NFL復帰さえ難しいという見方が少なくない。
テッド・トンプソンGMは以下の声明を発表し、それ以外はコメントを避けている(規定により、出場停止処分の内容や詳細について球団側やコーチが話すことは禁じられている)。「ジョニーはフットボールのすべてを愛する良い選手だ。過去4年間のパッカーズへの貢献に、我々は感謝している。しかし今はフットボール以外の部分(裁判や更生)を優先し、集中しなければならない。彼がこの難しい時を乗り越えられるよう我々は願っている」
DEジョリーは鎮痛剤コデインの大量不法所持事件の裁判が今月30日から始まるが、事件後2年間お咎めがなく、それなのに判決を待たずに処分が下されたのが意外なところ。NFL Networkによると、今回の処分はNFL個人行動規定(2007年の記事)の違反によるのではなく、薬物検査によるもの、とのこと。しかし薬物乱用発覚による処分は、1アウトで薬物プログラム入り、2アウトで4試合出場停止、3アウトで1年、4アウトで無期限と決まっている。NFL Network説が本当だとしても、途中をすっ飛ばしていきなり無期限出場停止ということができるのかどうか。
今回の裁判において、DEジョリーが200グラムのコデインを所持していただけでなく、ドラッグ売買に積極的に関わっていたことを示すたしかな証拠がある、とハリス郡(ヒューストンを含む)の地方検事補が語っていることも、今回の処分と関係があるかもしれない。「彼は2006年頃から2008年5月にかけて、コカインとマリファナを含む違法薬物を買い、売り、資金を用意し、運搬していた。さらに、同じ期間にマリファナを吸い、液体コデインを飲んでいた目撃証言も、裁判の中で明らかにする」と地方検事補は自信満々に述べている。
さてDEジョリーを失うパッカーズについては、しっかり準備をしていたので戦力ダウンは小さいという見方が一般的だ。昨年予想以上の働きでディフェンス躍進に貢献したDEジョリーだったが、パス守備での派手な働き(パスティップは球団記録の11回)と比べ、ラン守備はやや過大評価という見方もある。チーム側はおそらく出場停止を見越して、NT/DEピケットと高額で再契約、ドラフトでは2巡でDEマイク・ニール、7巡でDE C.J.ウィルソンを指名した。OTAやミニキャンプではB.J.ラジを先発NTに据えてピケットを左DEにコンバートし、DEジェンキンズを左サイドでテストしていたのも、ジョリー不在に備えてのことだ。
Press-Gazette紙によると、パッカーズ選手が1年間の出場停止処分を受けたのは球団史上これで3人目。2007年のWRコーレン・ロビンソンはシアトルとミネソタ在籍時の事件によるものなので、実質的には1963年のRBポール・ホーナング(ギャンブル)以来2人目と言ってよさそうだ。
3巡指名のSSモーガン・バーネットがパッカーズと正式契約を結んだ。4年契約で契約ボーナスは不明、ベースサラリーは毎年最低額(3巡以下はそれが普通)と見られている。パッカーズはこれでドラフト指名7人のうち5人の契約がまとまり、残るは1巡のLTブラガと2巡のDEニールだけ。2巡指名選手がもめることは滅多にないので、問題はLTブラガがキャンプ初日に間に合うかどうかだ。
ウィスコンシン大を含めた中西部の有力校がひしめく名門ビッグ10カンファレンス。2011年シーズンにはネブラスカ大が加わって12校となり、2ディビジョンに分けて最後にカンファレンス決勝を行えることになった。11月いっぱいでレギュラーシーズンを終えた後、SECのようにカンファレンス決勝を12月初めにやって大きく盛り上げたい、というのがネブラスカ大を誘った最大の動機だったのだ。
SECの決勝がジョージア・ドームで行われているように、カンファレンス決勝となれば中立地で開催するのが自然。そこで、ビッグ10の決勝をランボーフィールドでやりたい、とパッカーズのマーク・マーフィ社長が名乗りを上げた。収入増の狙いがあるのは言うまでもない。「我々は非常に興味がある。ビッグ10は長い歴史と伝統を誇っている。その決勝を歴史あるランボーフィールドで行えれば、さらに素晴らしいものになるだろう。我々のコミュニティにとってもカレッジ・フットボール界にとってもよいことだ」
ランボーフィールドが大学フットボールを開催したのは1983年が最後らしい。(パッカーズのキャンプ地)セント・ノーバート大と、ヴィンス・ロンバルディの母校フォーダム大というカトリック対決だった。フットボール以外なら、2006年2月にアイスホッケーのウィスコンシン大対オハイオ州立大を開催したことがある。(記事へ)
すでにシカゴのソルジャーフィールドとクリーヴランドのブラウンズ・スタジアムも興味を示し、インディアナポリスのルーカス・オイル・スタジアムも候補となりそう。ただ、マーフィ社長はかつて(同カンファレンスに属する)ノースウェスタン大の体育局長をしていたため、コネクションの面で有利と見る向きも少なくない。
寒さの懸念について聞かれると、「12月の初めといえば、グリーンベイはさわやかな季節だろう」とマーフィ社長はジョーク。「私に言わせれば、そうした要素の中でプレーすることも、カレッジ・フットボールの魅力の1つだ。(2014年には)スーパーボウルがニューヨークで開催される。たいした違いはないはずだ」
8月2日と3日にシカゴで会議が開かれ、ビッグ10役員と各大学の体育局長が2011年の正式スケジュールを決めることになっている。ESPNブログやCollegeFootballTalk.comもランボーフィールド開催に賛意を示している。
労使交渉がらみでこれまでになく大きな注目を集めるなか、グリーンベイ・パッカーズの昨会計年度(3月末まで)の収支報告が発表された。パッカーズは昨年に続いてなんとか黒字を確保したものの、経常利益の大幅ダウンや選手コストの増加、ローカル・レベニューの伸び悩みが目立っている。全体としては、労使交渉におけるオーナー側の主張を裏付ける内容といえそうだ。(昨年や一昨年の記事も参照)
毎年夏のトレーニングキャンプでパッカーズはセント・ノーバート大(地図)に宿泊し、そこから6マイルほど北のランボーフィールドにバスで通い、そこから(子供たちの差し出す)自転車でレイ・ニチキ・フィールドへと向かう。セント・ノーバート大で行うキャンプは53年連続となり、NFL最長だ。選手たちは3階建ての Victor McCormick Hall で生活するが、定員225名の学生寮なので、学生たちとは違って4人部屋に2人ずつ入るだけでよい。
24人のスタッフを率いて80人の選手たちの料理を作る料理長はダン・フローリッチ(51歳)。同大に勤務して22年になるが、パッカーズとの関係はもっとずっと長い。「子供のころ初めて観に行ったのが1967年のアイス・ボウルなんだよ。あれでハマってしまってね」
熱愛するプロ球団に料理を提供する仕事は、世界中のシェフの夢と言っていいだろう。「22年前に勤め始めたときはまだ料理長ではなかったが、当時はキャンプはもっと長く、我々が出すべき料理はもっと多かった。大変な仕事だが名誉なことだ。こんな仕事ができる者は多くないのだから」
「毎年パッカーズのキャンプが始まる前に、スタッフを集めてオリエンテーションを行う。ちょっとした注意喚起のためにね。行動規範はこれこれであり、こうした振る舞いが期待されている、それを離れることのないように、といった内容だ。我々はチームと問題を起こしたことは一度もないんだ。スタッフには、選手と話をするなとは言わない。ただ、フットボールの話題を持ち出したりはするな、ということだ」
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ダイニング・サービス副部長のマシュー・ドイルは、パッカーズのキャンプにかかわって10年。彼の下にはフルタイムのスタッフ7人と学生アルバイト5人がいる。彼もまた、プロフェッショナルな振る舞いの重要性を強調している。スタッフを採用する際には、選手にサインを求めたりフットボールのことを話したり、といった禁止行為についてしっかりと話しておくという。
「選手にとってキャンプ地とはファンたちから離れて安心できる場所であり、我々は彼らのプライバシーを保つよう常に努力している。実際には我々スタッフと人間関係を築く選手もいる。それでも関係はプロフェッショナルなものでなくてはならないのだが、選手はスタッフ相手に軽口を叩くこともある。まあそうしたフレンドリーな環境ということだ」
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フレンドリーではあるが、非常に忙しい職場環境でもある。セント・ノーバート大は選手たちに朝食とディナーと軽い夜食を出し、絶え間なく飲み物を補給しなければならない。今年もキャンプ入りまで半月となり、フローリッチ料理長はすでに準備に突入している。7つか8つの業者と常に連絡を取り合い、その他にも12社ほどと話をしている。とりあえず120ケースの水を注文し、メニューもほぼ完成しつつある。
ディナーには毎晩3種類のメイン料理が用意される。シーフード、鶏肉、その他の肉料理だ。バラエティに富んだ炭水化物、サラダバー、デザート。それにもう1種類の主菜が用意されたヘルシー・バー。軽い夜食にはサンドイッチ、サラダ、それから日替わりメニューがある。キッチンで作る自家製ソースのほかに、週3回材料が配達されてくる。
長年チームを見つめてきた自分にとって、忘れられない年があるとフローリッチ料理長は言う。「優勝した1996年のキャンプだね。チーム内でも期待のレベルは非常に高く、なにか特別なことが起こりそうな予感があった。キャンプ初日からそうだったよ。選手たちの集中ぶりがすごかった。まだ始まってはいないが、今年のキャンプもちょっと似たような雰囲気を感じている。なにかとてもよいことが起こりそうな雰囲気がね」
1960年代後半から70年代前半、パッカーズ戦のある日曜になると、スタジアムから通り1本を隔てたティナの一家はドライブウェイを仮設駐車場としていた。小さかったティナは、3人の姉と交替で1台25セントずつ徴収する役目を受け持った。ロードゲームは父と一緒にポップコーンのボウルを抱え、テレビで熱心にパッカーズを応援した。
「子供が4人全員女の子であろうと、父にとっては関係なし。父にとってはパッカーズがすべてでした。私は父とフットボールを観て育ち、ニッケルやダイムディフェンスのことや、バート・スターのことを話して過ごしたものです」
しかし、子供のころティナはランボーフィールドで観戦したことがなかった。親族で持っていたシーズンチケットは、大人だけのものと決まっていたからだ。そのころ、父ローウェルが娘たちのためにウェイティングリスト登録しておいてくれたシーズンチケットが、今年ついにティナのものになった。申し込みからちょうど40年、父が亡くなって16年が経っていた。
パッカーズはNFLダントツ最長、83881人のウェイティングリストを誇り、今年新たにシーズンチケットを手にしたのはティナを含めてわずか126人。更新率は驚異の99.6%だ。不況に入った昨年でさえ更新率99.4%を保ち、新たにシーズンチケットホルダーとなったのは192人だけだった(不況前は毎年50人から70人)。いまや多くの球団がチケット完売に苦しみ、公式サイトのトップページで大々的に購入を呼びかけたり、TVブラックアウトを避けるためチケット費用を球団が自費負担する裏技を使うことさえある。しかしパッカーズは半世紀にわたってそうした苦労をしたことがない。
2003年のランボーフィールド大改築によって12000席が増設され、新たに数千人(ティナの姉たちを含む)がウェイティングリストから繰り上がったものの、その後はふたたび牛歩ペースに逆戻り。リストに登録している人々の多くは存命中にシーズンチケットを手にできず、子供や孫が権利を受け継ぐのが普通なのだ。
パッカーズは毎年8月から9月にかけてウェイティングリスト全員にハガキを送り、引っ越し等で所在不明の人には1年間の猶予期間が与えられ、翌年になっても連絡がなければウェイティングリストから外されることになる。「キャンセルする人よりもそうしたパターンの方がずっと多いのです」と語るのはチケット部長のマーク・ワグナー。チケットを手にできるのはいつ?という質問を頻繁に受けると彼は言う。「答えるのは不可能なんですよ。以前は35年から40年ぐらいでしたが、(90年代以降にリストがふくらみ)将来はどうなるか我々にもわからない」
ティナの一家はずいぶん前にグリーンベイを離れ、4人姉妹はそれぞれ結婚、母アンもフロリダに住んでいる(それでもシーズンチケットは手放さない)。ティナがゲーム観戦の際、かつて住んでいたShadow Laneを覗いてみると、多くの家がゲーム・ウィークエンドだけ貸し出されるなど、通りは様変わりしてしまったが、懐かしい思い出はたくさんよみがえってくる。そして今年は初めて、自分のシーズンチケットでランボーフィールドを訪れることができるのだ。「残る難問は、誰を一緒に連れて行くか。希望者があまりにも多くてね(笑)」
5巡a指名のTEアンドリュー・クウォレスが契約にサイン。契約ボーナス$18万ドル強を含む総額$2.7ミリオンの4年契約、と報じられている。これで今年のドラフト指名7人のうち下から4人の契約が完了し、残るは1巡LTブラガ、2巡DEニール、3巡SSバーネットの3人となった。NFL全体では今年は出だしは早かったものの、ようやく数日前に2巡指名選手の契約が初めて報じられたばかり。今はどこの球団首脳も(記者たちも)休暇の真っ最中で、今月後半に入るとペースが上がってくる。
最近充実してきている National Football Post では、かつてパッカーズやレッドスキンズなどでプレーした元セーフティのマット・ボウエンも主要ライターの1人として活躍している。なかでも"Inside the playbook"シリーズの図解付き戦術解説がわかりやすくて素晴らしいので、各ページへのリンクだけ紹介。
前回の記事で取り上げたSan Diego Union-Tribune紙のデータベースに基づき、2000年以降のパッカーズの不祥事をまとめてみた。同紙による逮捕12件に、禁止薬物での出場停止なども付け加えた。Packer Zoneの始まった2001年2月以降分は「過去の記事」の"scandal"カテゴリにあるはずなので、そちらも参照のこと。
San Diego Union-Tribune紙が2000年以来約10年半の間に逮捕されたNFL選手506人のリストを公開しているので、球団ごとのランキングにまとめてみた。同紙によると掲載条件は、「スピード違反切符よりも重い」事件で逮捕または召喚されたこと(有罪・無罪・司法取引などの結果は無視)。ただし表沙汰にならない事件もあり、必ずしもすべてを網羅できているとは限らない、と同紙は注釈を加えている。
下表では逮捕者数にくわえ、2000年以来10年間のレギュラーシーズン勝率とプレーオフ進出回数(*印はスーパーボウル優勝あり)、ヘッドコーチを付記した(逮捕者数が同数の場合はアルファベット順)。不祥事の数とチーム成績には関連性があまりない、と言えるのではないか。
NFL Players Arrests since 2000 | |||||
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Team | 逮捕 | 勝率 | P.O. | Head Coaches | |
Cincinnati | 32 | .428 | 2 | Coslet, LeBeau, Lewis | |
Minnesota | 30 | .525 | 4 | Green, Tice, Childress | |
Denver | 25 | .581 | 4 | Shanahan, McDaniels | |
Jacksonville | 25 | .475 | 2 | Coughlin, Del Rio | |
Kansas City | 25 | .438 | 2 | Cunningham, Vermeil, Edwards, Haley | |
Miami | 25 | .494 | 3 | Wannstedt, Saban, Cameron, Sparano | |
Tennessee | 24 | .569 | 5 | Fisher | |
San Diego | 23 | .531 | 5 | Riley, Schottenheimer, Turner | |
Cleveland | 20 | .356 | 1 | Palmer, Davis, Crennel, Mangini | |
Tampa Bay | 19 | .494 | 5* | Dungy, Gruden, Morris | |
Chicago | 18 | .506 | 3 | Jauron, Smith | |
New Orleans | 18 | .518 | 3* | Haslett, Payton | |
Indianapolis | 17 | .719 | 9* | Mora, Dungy, Caldwell | |
Pittsburgh | 16 | .648 | 6* | Cowher, Tomlin | |
Baltimore | 15 | .575 | 6* | Billick, Harbaugh | |
Carolina | 15 | .494 | 3 | Seifert, Fox | |
Atlanta | 13 | .472 | 3 | Reeves, Mora, Petrino, Smith | |
Buffalo | 13 | .413 | 0 | Phillips, Williams, Mularkey, Jauron | |
Seattle | 13 | .513 | 5 | Holmgren, Mora | |
Green Bay | 12 | .594 | 6 | Sherman, McCarthy | |
Oakland | 12 | .388 | 2 | Gruden, Callahan, Turner, Shell, Kiffin, Cable | |
New England | 11 | .700 | 7* | Belichick | |
NY Giants | 11 | .550 | 6* | Fassel, Coughlin | |
Washington | 11 | .438 | 2 | Turner, Schottenheimer, Spurrier, Gibbs, Zorn | |
Arizona | 9 | .388 | 2 | Tobin, McGinnis, Green, Whisenhunt | |
Dallas | 9 | .512 | 4 | Campo, Parcells, Phillips | |
Houston | 9 | .383 | 0 | Capers, Kubiak | |
San Francisco | 9 | .425 | 2 | Mariucci, Erickson, Nolan, Singletary | |
Detroit | 7 | .263 | 0 | Ross, Mornhinweg, Mariucci, Marinelli, Schwartz | |
NY Jets | 7 | .500 | 5 | Groh, Edwards, Mangini, Ryan | |
Philadelphia | 7 | .648 | 8 | Reid | |
St. Louis | 6 | .444 | 4 | Martz, Linehan, Spagnuolo |