Journal Sentinel紙の集計による雑多なスタッツ集、今回はディフェンス編。但し書きがないかぎりプレーオフを含めた17試合での数字であり、記者が映像を見て判定した主観的なデータが多いことにも注意。
Journal Sentinel紙の集計したオフェンスに関する雑多なスタッツ集を紹介する。但し書きがないかぎりプレーオフを含めた17試合での数字であり、記者が映像を見て判定した主観的なデータが多いことにも注意。
契約延長交渉の難航していたTEジャーマイケル・フィンリーが、パッカーズとの総額$14ミリオンの2年契約に合意した。Journal Sentinel紙によると、ボーナスとベースサラリーを合わせて今年が$5.75ミリオン、来年が$8.25ミリオンとのこと。ボーナス(具体的な名目は不明)は今年が約$4ミリオン、来年が$4.45ミリオンとのことなので、引き算するとベースサラリーは今年が$1.75ミリオン、来年が$3.8ミリオンとなる。
いかにも短い2年契約はいわば妥協の産物。TEフィンリーとしては現在の評価よりも能力が高いことを証明できる自信があり、2年後に再びFAになるときにもまだ26歳と若く、そこでビッグマネーが期待できる。パッカーズとしては、メンタル面で危うさの残る彼に数十ミリオン保証の賭けをすることなく、今後2年間彼とともに優勝を狙うことができる。2014年にFAになる前に契約延長してもいいし、そうでなくても後継者を育てる時間を稼ぐことができる。
パッカーズがフランチャイズ指名した場合には、「TE扱い($5.4ミリオン)でなくWR扱い($9.4ミリオン)のフランチャイズ指名でなければおかしい」とTEフィンリー側は上訴する構えだった。今回の年平均$7ミリオンはその間を取った数字ともいえる。なお、フランチャイズ指名選手は「前年のサラリーの120%以上でなければならない」という規定があるため、契約が切れる2014年に指名すると約10ミリオンになってしまい現実的でない。
TEフィンリーをフランチャイズ指名せずに済んだことで、QBフリンを「フランチャイズ指名したうえでドラフト指名権とトレード」する上での障害が1つ減ったのはたしか。しかしそのためにはベテランの契約を整理してかなりのキャップスペースを作り出さなければならず、やはり簡単なことではない。
今年パッカーズからフリーエージェントになる予定の選手たちを以下にまとめて紹介する。今春FA予定だったうち、RGシットン(開幕直前)、WRネルソン(10月初め)との再契約はすでに完了し、現在はTEフィンリーおよびCウェルズとの交渉が焦点となっている。なお、今年のパッカーズは制限つきFA(RFA)がおらず、全員が無制限FA。
フランチャイズ指名(用語集へ)できる期間は2月20日から3月5日まで。新労使協定で算定方法が変更されたため、彼らのサラリーはこれまでよりかなり減額されることになった。ポジションごとの金額リストはこちら。フランチャイズ指名選手はすべて契約ボーナスなしの1年契約。
今年のサラリーキャップ総額は昨年とほぼ同じ$120ミリオンあたりと言われ、パッカーズは$7ミリオンほどの空きがあるようだ。契約延長や新規契約にくわえ新人の獲得もしなければならないので、今のキャップスペースでやっていくのはおそらく無理。LTクリフトン(計$5.7ミリオン)やWRドライバー(計$5ミリオン)といったベテランを解雇したり契約を見直したりしなければならないだろう。CBウッドソンのロースターボーナス$4ミリオンも考えどころ。3月13日のFA解禁(新リーグ年度突入)に向け、彼らベテランとの交渉を進めることになる。
フランチャイズ指名すると、選手側がサインする前であってもサラリーキャップに加算されてしまうルール。上記のようなキャップ事情では、QBフリンをフランチャイズ指名したとたんに$14.4ミリオンが加算されキャップが破たんしてしまうので、「フランチャイズで引き留めた上でトレード交渉してドラフト指名権をゲット」という手は使えない。(2008年にはDTコーリー・ウィリアムズをこのようにしてトレードできた)
Cウェルズをフランチャイズ指名する手もなくはないが、OLのフランチャイズ指名はタックルもガードもセンターも区別がなく、一律$9.4ミリオン。いくらウェルズが優秀でも超一流タックルたちと同じ金額を払うのは現実的でない。といったわけで、今年フランチャイズ指名するとすればTEフィンリーだけだろう。
Green Bay Packers 2012 Free Agents | |||
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Name | Pos | Age | 備考 |
Matt Flynn | QB | 27 | 今年のFA市場では若手QBのトップらしい。新天地で頑張れ |
Ryan Grant | RB | 29 | 2011年限りと見られていたがシーズン後半に調子を上げた |
Jermichael Finley | TE | 24 | まだ若く今年のFA市場のトップTE。フランチャイズ指名か |
Scott Wells | C | 31 | 初プロボウルも経験したOLの中心。年齢は微妙だが後継不在 |
Howard Green | NT | 33 | 巨漢NTも移籍2年目は大いに期待を裏切った |
Erik Walden | OLB | 26 | 15試合先発もパスラッシュは期待外れ。不祥事もマイナス |
Jarrett Bush | CB | 27 | 4番手CB 兼 優秀なスペシャルチーマー |
Pat Lee | CB | 27 | 5番手CB 兼 まずまずのスペシャルチーマー |
プロボウラーへのブレークが期待された復帰シーズンだったが、後半は彼らしからぬ落球にも苦しんで数字が伸びなかった。100ydsゲームは一度もなく、レシービング767ydsは全TE中12位に留まっている。ただ、人材豊富なレシーバー陣の中でキャッチ機会が回ってこない面も大きく、キャッチ1回あたり13.9ydsは全TE中4位、タッチダウン8回は3位の好成績だった。
アウトサイドでWRネルソン(1263ydsに躍進)が1on1勝負に持ち込めたのは、彼とWRジェニングスがダブルチームを引き付けてくれるから。パスオフェンスが手詰まりになりにくいのもこの強力トリオが揃っているからだろう。アンドリュー・クウォレスが12月にヒザ前十字靭帯(ACL)断裂したためフィンリーに代わる先発TE候補はおらず、長期契約交渉がダメならばフランチャイズ指名で引き留めるのは必至の状況となっている。
フランチャイズ指名された場合、「ワイドにセットすることの方が多く実質WRなのだから、WRとしてのフランチャイズ指名を求めて不服申し立てをする」と本人と代理人は公言している。WR扱いならば$9.4ミリオンだが、TE扱いでは$5.4ミリオンとかなり低く抑えられてしまうからだ。しかし、その訴えが実際に認められる可能性は低いらしい。
毎年着実に進歩を続け、プロ8年目にしてついにプロボウル初出場を果たした。低い当たりのランブロックは力強く、パスプロテクションも安定していて、スナップ前のアジャストメントの指示も的確。大型DTに圧倒される場面はほとんどなくなり、2009年開幕時にスターターの座を失った選手とは思えない。いまや31歳となったが息の長いポジションでもあり、後継候補も育っていないので再契約は必須だろう。
比較的容易に契約延長がまとまるタイプと見られていたが、両者の隔たりは大きいとの情報もあり、意外に難航しているらしい。プロ3年目の2006年秋に総額$15ミリオンの6年契約を結んでいて、結果としてはかなりのディスカウントだった。それだけに本人としてはビッグマネーを手にする最後のチャンス。ぎりぎりまで強く出るのは当然かもしれない。
2007年シーズンのシンデレラボーイも29歳。今季はスタークス(プロ2年目)とともに並立スターターを務めたが、シーズン半ばまでは今ひとつ弾けるものがなく、この分では今季限りと見られていた。しかし終盤にスタークスが足首負傷で苦しんだのと対照的に、彼の方はタックラーを振り切るナイスゲインが増えた。キャッチングは以前より上手くなり、パスプロテクションもそれなりにミスが減った。ただ3rdダウンでは首脳陣の信用がないのか出番が相変わらず少ない。
29歳という年齢もあってどうしても契約延長したい選手ではないものの、FA市場で人気になる見込みも薄いので、安価に再契約するかもしれない。ただパッカーズの傾向からすれば、再契約を見送ってドラフトでの補強を選ぶかもしれない。
4番手CBとしてまずまずの働きを続けるチーム有数のハードワーカー。CB陣ではウッドソンに次ぐサイズがありフィジカルなので、ブリッツァーとしての起用も多くタックリングもいい。カバレッジではボールが来た瞬間のプレーに相変わらず不安定さが残る。2010年に一皮むけて以来、スペシャルチームのエースとしての活躍は立派なもので、チーム最多タイの12タックルを記録し、反則1回のみ。
パス全盛のNFLでは3番手・4番手CBを充実させることがますます重要になっており、FA市場では意外な高値をつけるチームが出てきてもおかしくない。昨年4巡指名のCBデヴォン・ハウスが控えているとはいえ、ブッシュを手放した場合のダメージはディフェンス・スペシャルチームともに大きいのではないか。
2008年2巡指名選手も、ディフェンスでは相変わらずパッとせず5番手CBにとどまっている。途中出場したスーパーボウルでは効果的な働きを見せたので多少期待されたが、やはりスピードとクイックネスの不足は明らかで、スロットなら悪くないがアウトサイドではスピードについていけない。いっぽうスペシャルチームでは進歩を見せ、上記CBブッシュと並ぶ12タックルを挙げた。再契約の優先度はかなり低く、最低額クラスの1年契約なら、といった程度か。
2010年シーズン半ばでFA加入し、今季は右アウトサイドLBで15試合に先発出場。課題だったラン守備はよく頑張ったが、肝心のパスラッシュでわずか3サック。決して手を抜かない激しいプレーぶりは好感が持てるものの、嗅覚に難があるのかリバースなどに引っかかりやすく、コンテインを怠ってロングゲインを許すプレーが目立つ。11月には同棲相手への暴力事件で逮捕され、先日有罪を認めて司法取引が成立したばかり。
控えOLBとしてなら申し分ないが、スターターには物足りないことがはっきりしている。不祥事もマイナス材料で、パッカーズが積極的に再契約に動くとは考えにくい。安い1年か2年契約で引き留めて、ドラフト上位指名ルーキーと争わせるなら悪くないかも。
これまで10回の解雇を経験した渡り鳥。上記ウォルデンと同じく2010年シーズン半ばにFA加入し、スーパーボウルではFSコリンズのインターセプトにつながるブルラッシュが印象的だった。ところが移籍2年目は不振で、光るプレーがほとんど見られず。ラン守備ではポイントオブアタックでの踏ん張りが健在だが、パスラッシュでの貢献はゼロに近い。33歳という年齢なので高額契約する必要はない。控えノーズタックルとしての存在価値を認めるなら安価な1年契約だろう。
一番最後に回したのは再契約の可能性がほぼゼロだから。2010年ペイトリオッツ戦、そして2011年ライオンズ戦の大活躍(球団新記録の6TD)で人気が沸騰し、若いフランチャイズQBを求めるチームたちの注目を集める存在となった。素晴らしいのはポケットでの落ち着き、ヒットを恐れないガッツ、リーダーシップといった部分。コントロールや判断力も向上してきた。肩は(入団時より強化できたとはいえ)あまり強くない。効果的なスクランブルを繰り出せる足はあるが、左に流れながら強いパスを通せるほどの身体能力はないように見える。
前述のように、いったんフランチャイズ指名してトレードする手が使えない以上、パッカーズとしてはだまってFA移籍を見送るしかない。数十ミリオンのビッグマネーに値するQBなのかはわからないが、少なくともこちらは来年 Compensatory Draft Pick を手に入れることはできる。
スーパーボウルMVPとシーズンMVPを立て続けに受賞し、QBアーロン・ロジャースはいまやNFLを代表するスターの1人となった。「当時からすごかった」 「こうなると思っていた」的な回顧談ばかりがあふれているが、2008年までは決して高い評価ばかりではなく、これほどの成功を予見した者はむしろ少数派だった。「NFL1年目を終えたとき、彼がスターになるかバストになるかと聞かれたら、私はバストと答えたかもしれない。多くの人事担当者もそう答えただろう」と Journal Sentinel紙のボブ・マッギン記者は言う。
彼のややユニークな経歴や、2005年のドラフト指名が24位まで落ちたこと、そして2008年ファーヴ騒動の苦しみはよく知られているものの、NFL最初の3年間がどうだったか、どう評価されていたかを取り上げた記事は少ない。先発昇格までの彼について、他球団の人事担当者(GMや人事部長やカレッジスカウト部長など)から聞いたコメントをまじえ、マッギン記者が以下のように振り返っている。
◆ ◆ ◆
ロジャースがドラフト指名されたのは21歳4か月のときで、高校を出て3年しか経っていなかった。未熟なくせに自信がありすぎ、物腰も如才なさすぎると受け取られていた。シャーマンHCからミニキャンプ参加を免除されたファーヴについて、「怠けている」とまずい冗談を言ってしまったこともある。さらに悪いことに、プレー失敗のあとでレシーバーに対し、「お前のミスだ」とボディ・ランゲージで示しまう場面もよくあった。
ドラフト前のコンバインでの計測では身長6フィート2(188cm)、体重223ポンド(101kg)。ただその体重は「よくないウェイト」(ぜい肉でできている)と見る球団もあった。40yds走は4.73秒を記録したが、トップクラスのアスリートと見る球団はほとんどなく、厳しいNFLの世界では耐久性に問題ありと見る向きも多かった。
2005年秋には殿堂入りの名コーチ、ビル・ウォルシュが、「ロジャースは伸びシロがもうないのかもしれない」という見方を示した。 「見た通りの選手だ。彼には、いま示しているより大きなポテンシャルは隠れていない。彼はカレッジ界の素晴らしいコーチによるシステムの産物にすぎない」
◆ ◆ ◆
2005年、ルーキーシーズンのロジャースがプレーしたのは、ビルズとの合同スクリメージ、プレシーズン4試合、第15週BAL戦の第4Q(大敗でファーヴが早く退いた)の6回。どの出場機会でも、彼の出来は散々だった。プレシーズンで初めて得点できたのはようやく4試合目のテネシー戦、33ydsのパスインターフェアに助けられてのもの。合計20シリーズ目のことで、それまでの19シリーズはパント16回、インターセプト2回、ファンブルロスト1回という体たらくだった。
ドラフト指名順でなくキャンプやプレシーズンのパフォーマンスだけで決まるなら、2番手QBは楽々とクレイグ・ノール(2002年5巡指名)のものになっていただろう。ファーヴが第3Q途中で退いた第15週レイヴンズ戦では、ロジャースはインターセプト1回、ファンブル3回(ロスト2回)、被サック3回に終わった。
◆ ◆ ◆
2006年ドラフトの前、マッギン記者は18人のNFL人事担当者にアンケートを取り、ヴィンス・ヤング(3位でTEN)、マット・ライナート(10位でARI)、ジェイ・カトラー(11位でDEN)とロジャース(プロ2年目)をランク付けしてもらった。ロジャースの1位票はゼロ、2位が1票、3位も3票だけだった。11人が彼を4位とし、残る3人にいたってはブロディ・クロイル(3巡でKC)とチャーリー・ホワイトハースト(3巡でSD)よりもロジャースを下に評価していた。
ロジャースはドラフト前のインタビューで、「1巡5位でQB指名するという噂も聞いた」と語った。テッド・トンプソンGM自身もQB指名の可能性を否定しなかった。けっきょくドラフト本番ではA.J.ホークを指名したが、QB指名が話題になってもおかしくない状況だったのだ。
◆ ◆ ◆
プロ2年目の2006年、パッカーズではヘッドコーチがマイク・シャーマンからマイク・マッカーシーに交代。49ersのOCとしてアレックス・スミスの方を高く評価したマッカーシーだけに、ロジャースの立場がなおさら厳しくなってもおかしくない。彼はオフシーズンにマッカーシーHCとクレメンツQBコーチのいわゆる"Quarterback school"にフル参加したが、2年目のキャンプでも彼のパフォーマンスは不安定で、1年目よりわずかにマシになったにすぎなかった。
プレシーズン初戦のSD戦の内容がよかったため楽観論が出始めたものの、第2戦の出来は平凡で、第3戦、第4戦とどんどん悪くなっていった。レギュラーシーズン唯一の長い出番は第11週NE戦(第2Q半ばでファーヴが負傷退場)だったが、ここでもプレー内容はひどいものだった。3回サックされ、オープンのレシーバーに何度もパスを投げ損ね、パス成功は4/12のわずか32ydsでけっきょく完封負け。さらに左足を骨折してしまい、手術を受けてシーズンエンドとなった。
あるAFC球団の人事部長は、「彼は(新ヘッドコーチの)新しいシステムでプレーしているので、あまり厳しいことは言いたくない。しかし彼が成長するのは・・・もし成長すればだが・・・時間がかかりそうに見えるね」と語っていた。同じ人物が先日つぎのように振り返っている。 「彼が2年目のプレシーズンを終えたあとパッカーズから解雇されたとしても、誰もショックを受けなかったかもしれない。当時はあまりよい選手ではなく、よいプレーを決められなかった」
こうして迎えた2007年ドラフトの直前、トンプソンGMはまたもQB指名の可能性を否定しなかった。18人のNFL人事担当者のうち12人が、ブレイディ・クイン(22位でCLE)の方をロジャースよりも高く評価した。
◆ ◆ ◆
プロ入りから2年間、ロジャースはどちらかというと型にはまったクォーターバックだった。カリフォルニア大のジェフ・テッドフォードHCの教えにより、投げる前にボールを右耳のそばまで高く上げて構えていたのは有名だ。(写真右)
こうすることでリリースがより速くなり、正確性もアップするとロジャースは主張していたが、プレッシャーに対して多様なリリースポイントで投げる能力が制限され、ダウンフィールドへ力強いパスを投げることもできにくかっただろう。マッカーシーHCたちはその構えを低く下げるようフォーム改造を続け、この3年目には問題でなくなっていた。
当時は多くのNFL人事担当者が、ロジャースはポケットでの感覚がよくないと指摘していた。早く逃げ出しすぎる、ボールを持ちすぎる、スクランブルが効果的でない、パスの正確性に失望させられた、などなど。3年間のプレシーズンでファンブル7回(ロスト4回)というボールセキュリティの悪さもあった。
◆ ◆ ◆
2007年、足の手術からの復帰途上のロジャースはカリフォルニアに帰った。ケガ人としてだけでなく、謙虚な男として故郷に帰った。スターターとして成功できるだけのものを自分が持っているかどうか、まだ疑問を持っていた、と本人は振り返る。同時に、3年目はもっとナチュラルにプレーしようと心を決めてもいた。
「試合に出られないことで、出ても良いプレーができなかったことで、僕は謙虚にならざるをえなかった。プロ入りしたとき僕はまだ21歳のうぶな若造で、なのに自分では何でも分かっているつもりでいた。新人のころと比べると、僕のボディ・ランゲージは練習を含めてかなり進歩したと思う」とロジャースはこの2007年夏に語っている。
体重と体脂肪率を落としつつ、筋肉量を増やして実戦でのヒットに耐えられる体を作った。よりタイトなスパイラルで投げられるようになった。衝動的なミスが減った。ポケットに長く留まるようになった。チームメイトのミスを責めたり自己弁護することをやめ、チームメイトに自分のポジティブな面を見せるようになった。
そうした努力の成果は目覚ましいものだった。プレシーズン第1週PIT戦では、75yds、71yds、57ydsの得点シリーズを成功させた。彼は大きな自信をつけ、リーグ中の人事担当者たちが彼の大きな変化に注目するようになった。
レギュラーシーズン第13週DAL戦、不振のファーヴが負傷退場すると、10-27の劣勢からロジャース率いる若いオフェンスがよく追い上げ、これがキャリアの大きな転機となった。カウボーイズのLBブレイディ・ジェームズは、「僕に言わせればブレット・ファーヴよりアーロン・ロジャースの方がずっとよいプレーをしたよ」と感想を漏らした。
シーズンが終わるまでには、トンプソンGMもマッカーシーHCもロジャースに惚れ込むようになっていた。翌2008年3月にファーヴが引退を表明すると、ロジャースは優れたリーダーシップをもってチームを率いた。ファーヴがエースQBへの復帰を求めても、球団はそろってノーと言った。
◆ ◆ ◆
そしていま、ロジャースの肩はかつてとは比べ物にならない強さがある。一朝一夕にできたことではない。彼は生体力学の専門家とスローイングの強化に取り組み、同時に肩まわりの小さな筋肉群の強化も熱心に続けてきた。
クレメンツQBコーチとマッカーシーHCの素晴らしい指導のもと練習を重ね、ポケットの外でのプレーは驚くべきレベルに達し、(フリーのレシーバーを探していく)プログレッションの能力も並外れたものになった。
ターンオーバーへの気配りは並々ならぬもので、インターセプトとファンブルの回数は最小限に留めている。唯一の欠点だった「ボールを持ちすぎること」も2010年あたりから減少し、対戦相手としては手の施しようがなくなってきた。あるNFC球団の人事担当者は言う。 「サックはできる、というのが唯一の救いだったが・・・それさえもあまりなくなってきた」
ここに至るまで、批判を覆してみせるという気概をロジャースは一度たりとも失ったことがない。
サイズや知性において彼とよく似たリッチ・ギャノンやカート・ワーナーといった選手と同じように、NFLのMVPへと花開くまでには時間がかかった。高校や大学フットボールの様相が変わるにつれ、全般的にQBたちは即戦力に近くなってきたが、心身のタフネスで欠点を乗り越えていく遅咲きの選手はこれからもずっと出てくることだろう。
アーロン・ロジャースは間違いなくそのパターンに当てはまる。
パッカーズは残っていた新コーチ人事をまとめて発表した。ベン・マカドゥーのQBコーチ就任で空席となったTEコーチにはジェリー・フォンテノーRBコーチが移り、新RBコーチにはかつてビルズでプレーした元QBのアレックス・ヴァンペルトを招くことになった。
複数のポジションを経験させる「クロス・トレーニング」は、最近のマッカーシー人事の特徴となっている。今ではQB育成のエキスパートと目されるマッカーシー自身も、QBのプレー経験など一度もない。リーグ屈指のオフェンシブ・マインドの幕僚として多様な経験を積むことはアシスタントコーチのキャリアにとって重要であり、逆に「その道ひとすじのポジションコーチ」のままでは出世はまず望めない。昨年RBコーチからWRコーチに移ったときのエドガー・ベネット(元エースRB)の喜びようはその重要性をよく示している。
◆ ◆ ◆
新RBコーチのアレックス・ヴァンペルトはピッツバーグ出身の41歳。地元ピッツバーグ大ではマイク・マッカーシー(当時QBコーチ)の下で、ダン・マリーノの持つ同大記録をいくつも破った。1993年の8巡指名でスティーラーズに指名されるが開幕前に解雇され、短期間のチーフス在籍(ここにもマッカーシーがいた)を経てビルズへ。主に控えQBとして10年間プレーし、2001年には8試合先発出場してチームは2勝6敗、レーティングは76.4だった。
2003年かぎりで引退すると、ラジオ解説を経て2006年から古巣ビルズのアシスタントコーチに。同年にはパッカーズQBコーチの候補にもなっている。2008年にはビルズでQBコーチに昇格、翌2009年にはOCも務めたが、ディック・ジャウロンHC解任とともに退団。この2年間はバッカニアーズでQBコーチとしてジョシュ・フリーマンたちを指導していた。
とんとん拍子の出世のあと、最近はOC→QBコーチ→RBコーチとキャリアダウンしてきた印象がなくもない。先日はベアーズでQBコーチ候補として面談したがジェレミー・ベイツに敗れている。今回は恩師マッカーシーHCとの縁で誘われたのだろう。クレメンツの後任QBコーチ候補と見られていたが、マッカーシーHCはベン・マカドゥーを選び、OC経験者の彼がRBコーチに甘んじる結果に。それだけマカドゥーの才能を高く評価しているということだろうか。
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新TEコーチのジェリー・フォンテノーはルイジアナ州ラファイエット出身の45歳。テキサスA&Mから1989年にドラフト3巡指名され、ベアーズ(8年)、セインツ(7年)、ベンガルズ(1年)と計16年間センターとして活躍し、193試合に先発出場した。引退後の2006年、セインツ時代のマッカーシーHCとの縁でパッカーズのインターンとしてキャンプに参加し、その後正式採用に。アシスタントOLコーチの4年間を経て、昨年はRBコーチに昇格していた。
先日ベン・マカドゥー新QBコーチの記事で述べたように、パッカーズのTEコーチからはアンディ・リード、マイク・シャーマン、そして今年のジョー・フィルビンと、3人のNFLヘッドコーチを輩出している。
◆ ◆ ◆
その他のアシスタントコーチ人事も2件発表された。
昨年から"Quality Control"を務めていたジョエル・ヒルゲンバーグはアシスタントOLコーチに昇格。昨年は同職が空席だった代わり、フィルビンOCがOL指導をアシストしていた。ヒルゲンバーグはセインツで長く先発センターを務め、1992年にはプロボウルにも選出。セインツの殿堂入りも果たしている。兄ジェイもベアーズでプロボウルに7回選ばれた名センターだった。
昨季から"Assistant Wide Receivers/Special Teams"だったジョン・ラッシングは "Offensive assistant/Special teams" という肩書に。なにがどう変わるのかはよくわからない。ワシントン州立大でDBとして活躍した彼は卒業後すぐにコーチの道に進み、ユタ州立大など5つの大学で13年間にわたってDBコーチなどを務めた。NFLのマイノリティ・コーチング・インターンシップ・プログラムで2008年夏にパッカーズのキャンプに参加し、翌2009年からフルタイムで採用されていた。
ここ数日のパッカーズの話題をまとめて。
先日37歳の誕生日を迎えたWRドナルド・ドライバーは今年でプロ14年目。あいかわらずのファン・フェイバリットであり、本人は現役続行の意思を明確にしているが、実質4番手WRにサラリーキャップ額$5ミリオンは高すぎる。有力選手との契約延長を優先するため、サラリーキャップの犠牲となって解雇されるだろう、という見方は少なくない。それを感じてか、「残留のためなら減俸も受け入れる」との考えを本人が明らかにした。
「フィールド内外での僕の実績を球団はよく知っているし、できるだけ長く僕をキープしたいと思ってくれている。残留のため話し合いをしてペイカットを、ということであれば、それを受け入れて残留するよ。ずっと言ってきたように、僕にとってお金はもう問題じゃない。僕がいま求めているのは、ウィスコンシン州やこの世界で、(よりよい形で)みんなの記憶に残ること。だから、お金のことは大きな問題じゃない」
2011年シーズンの成績はパスキャッチ37回445yds、6TDで、どれもWR陣の4位だった。契約最終年の今年は、ベースサラリーが$2.6ミリオン、3月に発生するロースターボーナスが$2.2ミリオン、ワークアウトボーナスが$20万ドル。すべて足した合計のキャップ額が$5ミリオンとなる。よく似た立場のWRハインズ・ウォード(PIT)はちかく解雇されるというのがもっぱらの噂だ。今回のドライバー発言はそれを意識してのことかもしれない。
ただ、サラリーの問題がなくなっても彼が残留できる保証はない。WRジェニングスとWRネルソンが強力コンビに成長し、今年は3番手WRジョーンズをWRコブが脅かすかもしれない。昨季ドラフト外入団のWRトリ・ガーリーやWRディオンドレ・ボレルも面白そうな素材で、12月には他球団からロースター契約の誘いを断ってプラクティス・スクワッドに残留している。若手の伸びシロを重視するパッカーズの方針からして、ベテランがその妨げになると判断されてしまう可能性は常にあるのだ。
今季パッカーズのチームスタッツのまとめ。今季前半終了時・2010年・2009年のスタッツも参照のこと。
オフェンス | ||||||||||||||||
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Total | 得点 | ラン | ランavg | ランTD | Fum | Lost | パス | パス% | パスavg | パスTD | INT | Rate | サック | 3rd% | Red | TOP |
405.1 | 35.0 | 97.4 | 3.9 | 12回 | 15回 | 6回 | 307.8 | 68.1% | 9.3 | 51回 | 8回 | 122.6 | 41回 | 48.1% | 65.2% | 30:29 |
3位 | 1位 | 27位 | 26位 | 16位T | 6位 | 5位T | 3位 | 2位 | 1位 | 1位 | 2位 | 1位 | 21位T | 3位 | 4位 | 12位 |
トータルヤーデージ3位、得点1位という素晴らしいオフェンスが15勝シーズンの原動力となった。QBレーティングは個人・チームともNFL新記録。560得点、パス4924yds、パス成功率68.1%、パスTD51回はどれも球団新記録。8インターセプトも16試合制になって以来球団史上最少タイ。
総タッチダウン数も昨季の46回(8位)から70回(1位)へと大きく伸びた。内訳はパス51回(1位)、ラン12回(16位タイ)、ディフェンス5回(4位)、スペシャルチーム2回(3位タイ)。
ラン攻撃はほぼ昨年並み。グラントとスタークスの併用制にした効果は、すくなくとも数字には表れていない。ランTD12回のうち4回はQBのスクランブルが占めていて、RBによるTDはわずか3回(あとはFBクーン4回、FBラジ1回)。敵陣ゴール前でもランをせずパスで勝負を決めてしまうので、RBたちには気の毒なシーズンだった。後述のように、今季もファンブルが少なかったのはRB/FB陣とQBロジャースの頑張りによるもの。
QBロジャース率いるパス攻撃の威力はさんざん報じられたとおり。ほとんどのカテゴリーでトップ3に入り、同じく記録破りシーズンとなったセインツと双璧だった。パス成功率(2位)が高く、TD数(1位)が多く、INT(2位)が少ない。だからレーティングは当然1位。表にはないが40yds以上と20yds以上のパス成功数がともにNFL2位で、長打力も存分に発揮した。これ以上のシーズンを期待するのはちょっと難しいのではないか。
やや不満があるとすれば被サックが41回(21位タイ)もあったこと。もともとQBロジャースは被サックが多いプレースタイルであるうえ、今季はOL陣にケガ人が多かったためパスプロテクションが不安定なゲームも多かった。これだけOLにケガ人を出しながら強力パス攻撃を構築できたことの方が驚きだ。
オフェンス力のわりにタイムオブポゼッションがさほどでもないのは、ラン回数のせいではなく、ディフェンスが相手を止められないせいだろう。
ターンオーバー | 反則 | |||||||
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Takeaways | Giveaways | DIFF | 回数 | ヤード | ||||
Total | Int | FumRec | Total | Int | FumLos | |||
38回 | 31回 | 7回 | 14回 | 8回 | 6回 | +24 | 76回 | 591yds |
1位T | 1位 | 26位T | 2位 | 2位 | 5位T | 2位 | 1位T | 2位 |
ターンオーバーレシオは+24でNFL2位となり、15勝シーズンに大きく貢献した。もともとマッカーシーHCが非常に重視しているポイントだが、とくにQBロジャースが2008年に先発昇格して以来、6位、1位、4位、2位と常に上位に入っている。
QBロジャースによるインターセプト6回のうち3回はレシーバーのミスによるもの。自陣深くでのインターセプトは1回だけだった。QBフリンのインターセプト2回のうち1回はレシーバーの弾いたミス。
ファンブルの少なさは相変わらず優秀で、ロスト6回のうち3回はリターナーのWRコブによるものだった。RB/FB陣ではスタークスとグラントがわずか1回ずつ。QBロジャースは41回もサックされながらファンブルロストがゼロだった。(QBフリンが1回)
ディフェンスの奪ったインターセプトの内訳は、CBウッドソン7回(NFL最多タイ)、SSペプラー5回、CBトラモン・ウィリアムズ4回、CBシールズ4回、FSバーネット3回、OLBマシューズ3回、CBブッシュ2回、ILBフランソワ2回、ILB D.J.スミス1回となっている。ILBホークは昨季3回あったが今季はゼロ。
ディフェンスのファンブルリカバーは今季も少ない。主要なタックラーによるファンブルフォースが少なく(ILBホークは4年連続でゼロ)、しかもQBのブラインドサイドからのサック&ファンブルフォースが少ないために数字が伸びない。
昨季激減した反則は今季も非常に少なく、反則76回は1位タイ、591ydsは2位となっている。少ないのはディフェンス(18回)とスペシャルチーム(9回)で、オフェンスはマッカーシーHC時代に入って最多の49回だった。
オフェンスの反則49回のうちOL陣が29回を占めていて、多い方からLGラング(7)、RGシットン(6)、RTブラガ(4)、LTニューハウス(4)など。スキルポジションではTEフィンリーの5回(プロ3年目までゼロだった)、WRジェニングスの3回が目立っている。QBロジャースは先発最初の3年間は平均6回あったが、今季は3回だった。
今季レギュラーシーズンのチームスタッツのまとめ。今季前半終了時・2010年・2009年も参照のこと。
ディフェンス | |||||||||||||||
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Total | 失点 | ラン | ラン(1回) | ランTD | Fum | FumRec | パス | パス% | パスavg | パスTD | INT | Rating | サック | 3rd% | Red |
411.6 | 22.4 | 111.8 | 4.7 | 10回 | 19回 | 7回 | 299.8 | 61.2% | 7.8 | 29回 | 31回 | 80.6 | 29回 | 42.6 | 54.1 |
32位 | 19位 | 14位 | 26位 | 6位T | 20位T | 26位T | 32位 | 19位 | 27位 | 27位T | 1位 | 10位 | 27位T | 26位 | 18位 |
昨季は5位だったトータルディフェンスがNFL最下位に、2位だった失点が19位へと急降下。シーズン最後まで立て直すことができないどころか、やればやるほど悪くなる一方だった。
ヤーデージの割に失点が少ないのは、進まれてもインターセプト(1位)でしのいでいること、大量リードした終盤にプリベントディフェンスのために(大勢に影響のない)ヤードを許したこと、それにこちらのオフェンスが無駄なターンオーバーでピンチを招かないことも寄与しているだろう。
ラン守備はほぼ横ばい。1回平均4.7yds(26位)も許したわりに1試合あたりのランydsが少ないのは、大量リードされた相手がランをコールできなくなる試合が多かったせいだろう。NTピケットを除いてDL陣はプレー内容が悪くなった選手ばかりで、中でもB.J.ラジの伸び悩み(または悪化)がひどい。
ゴールライン守備はまずまずだったのでTDランは少ないが、TDパスを簡単に許すので相手はランで勝負する必要がなかったのかもしれない。ファンブルリカバーが少ない傾向はここ数年ずっと続いている。
昨季優勝の原動力だったパス守備の悪化はまるで悪夢のよう。ヤーデージは5位から最下位へ、パスTD数は4位から27位タイへ、パス成功率は4位から19位へ、パス1回あたりのゲインは5位タイから27位へ、3rdダウン成功率は9位から26位へとダウンしている。パス守備4796ydsはNFL史上最悪記録。
先日書いたようにサック数が2位タイから27位タイへと暴落。プレッシャー不足がパス守備悪化の最大の要因だった。FSコリンズの戦線離脱とCB陣の不調によるカバレッジ能力のダウンもたしかに大きかったが、あれだけQBに時間を与えてはいずれレシーバーに振り切られてしまう。二線級のQBたちがGB戦になるとシーズン最高クラスの数字を残したのはそのためだ。
唯一がんばったのはテイクアウェイ(1位タイ)で、1試合あたり2回ちかいインターセプト(31回で1位)を奪った点は素晴らしい。優れた"Ball Hawk"が揃っていることもあるが、ふつうに3rdダウンを止められないためにINT狙いのギャンブル的なカバレッッジに頼った面もある。「INTで止めなければ失点」というパターンは明らかだった。
スペシャルチーム | ||||||||||||||
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Kickoff | Punt | Kickoff Ret. | Punt Ret. | Field Goals | ||||||||||
Avg. | TB | TB率 | Coverage | Avg. | In20 | TB | Coverage | Net | Avg. | Long | Avg. | Long | 成功率 | 回数 |
64.8 | 49回 | 44.5% | 23.4 | 45.6 | 23回 | 4回 | 12.7 | 38.7 | 24.5 | 108 | 10.9 | 80 | 85.7% | 24回 |
19位 | 3位 | 15位 | 15位 | 15位 | 19位T | 8位T | 28位 | 19位 | 12位 | 1位 | 12位 | 6位T | 10位 | 17位T |
スペシャルチームは多くの部門で成績を向上させ、チームの足手まとい状態からついに脱却した。 Football Outsiders によるスペシャルチーム総合ランキングでは昨季の26位から8位へと躍進。フィールドポジションの向上がディフェンスの大不振をある程度補った。
キックオフのタッチバック率は昨季の29位(4.8%)から15位(44.5%)へと向上。昨季まではプレースメント重視でKクロスビーが短く高いボールを蹴らされる場面も多かったが、今季はキックオフ位置の5yds前進により、本来の飛距離を活かしたタッチバック狙いができるようになった。なお、今季NFL全体でキックオフのタッチバック(1120回)は全キックオフの43.5%にのぼり、昨季の16.4%から激増している。
Pマステイのパント成績はリーグ全体では真ん中あたりだが、寒冷地球団としては素晴らしい数字で、グロス45.6ydsもネット38.7ydsも球団新記録となった。タッチバックが4回しかなかったのも立派。Pクレイグ・ヘントリック移籍(1998年)以来のパンター問題にようやくピリオドを打つことができたようだ。開幕戦でRBスプロールズに許した72ydsのリターンTDだけが惜しまれる。
リターナーでは新人WRランドール・コブが活躍し、こちらもCBアレン・ロッサム移籍(2002年)以来の人材不足が解消した。同一年にキックオフリターンとパントリターンの両方でタッチダウンを挙げた選手は球団史上初めて。余計なダンスをせず、密集を恐れず縦に突っ込む勇気が素晴らしく、クイックネスやビジョンもいい。問題はボールセキュリティで、パントのマフによるロストが2回、キックオフリターンでのファンブルロストが1回。ただ、本来キャッチング自体は下手ではないので、経験を積んで判断が早くなっていけば問題ないのではないか。
なお、キックオフリターンはNFL全体で昨季より平均1.5yds伸びた(22.3→23.8)。ただし、前述のようにタッチバックが激増してリターンに至らないプレーばかりなので、実際の平均オフェンス開始ポジションはかなり下がったはず。(スタッツが見当たらない)
カバレッジチームはキックオフがほぼ昨年並み、パントが28位へと悪化している。50yds台後半のパントをまっすぐ蹴ってしまうとどうしてもカバーチームの足が追いつかず、相手リターナーは数字を稼ぎやすい。「パントが56yds飛んで16ydsリターンされてネット40ydsでオッケー」といった展開の多いシーズンだった。今後はもう少し飛距離よりハングタイムとコントロール重視にさせた方がよいのかもしれない。
フィールドゴールはKクロスビーがキャリア最高の成功率85.7%を記録。開幕から第10週まで23本連続成功の球団新記録も作った。ただ、失敗ゼロだったシーズン前半と違い、後半は9/13の69.2%へとダウンしている。4回のFG失敗はすべて屋外スタジアム(ホーム2回、アウェー2回)で、低温や強風のゲームが多かったのはたしか。
OCに昇格したトム・クレメンツの後任として、ベン・マカドゥーTEコーチがQBコーチに就任することになった。形の上では横滑りであっても実際は昇格人事であり、関係筋によると、新しい2年契約によりサラリーもアップするとのこと。先日はドルフィンズおよびバッカニアーズからOC候補としての面談要請があったが、パッカーズ側が拒否していた。OC就任のチャンスを逃したとはいえ、34歳の若さでQBコーチとなればかなりの出世街道と言える。
ベン・マカドゥーはペンシルヴェニア州出身の34歳。ペンシルヴェニア大で2つの学位を取得、ミシガン州立大で運動生理学の修士号を取得し、高校(4年間)でコーチのキャリアを始めた。ミシガン州立大、フェアチャイルド大、ピッツバーグ大で1年ずつアシスタントコーチを務めたあと、2004年にセインツでマイク・マッカーシー(当時OC)のスタッフに加わった。2005年にはマッカーシーとともに49ersに移り、OLおよびTEのアシスタントに。2006年にはまたもマッカーシーとともにパッカーズに移り、TEコーチとして6年間実績を積んできた。
TEコーチは最も地味なポジションコーチかもしれないが、パッカーズのTEコーチからはアンディ・リード、マイク・シャーマン、ジョー・フィルビンが後にヘッドコーチへと出世を果たしている。マカドゥーはフィンリーなど若手TEの成長に大きく寄与しただけでなく、そのシャープな頭脳とフットボールの深い知識により、コーチ界のライジングスターの1人と目されているらしい。
QBアーロン・ロジャースが2011年シーズンNFLのMost Valuable Playerに選出された。今季の彼はパス4643yds(球団新)、成功率68.3%(球団新)、45TD(球団新)、6INT、レーティング122.5(NFL新)の大活躍。全米のベテラン記者50人のうち48票を集め、2位QBドリュー・ブリーズ(2票)を大きく引き離した。もちろん彼にとっては初めての受賞で、現役で受賞している選手はQBペイトン・マニング、QBブレイディ、RBトムリンソン、QBロジャースの4人しかいない。
1957年に始まった同賞の歴史において、パッカーズではRBポール・ホーナング(1961)、FBジム・テイラー(1962)、QBバート・スター(1966)、QBブレット・ファーヴ(1995・96・97)に次いで球団史上5人目、7回目のMVP受賞となった。球団別ではコルツ(ボルチモア時代含む)の9回に次いで2番目に多い。また、同一球団のQBが2代続けてMVPに輝くのはコルツのジョニー・ユナイタス→アール・モラル、49ersのジョー・モンタナ→スティーヴ・ヤングに続いて3例目。
なお、AP通信による同賞は事実上NFLの公式MVPとなっている。投票はすでに1月3日に行われており、プレーオフは加味されない。今回は初めての試みとして、スーパーボウル前夜に"NFL Honors"と銘打った大イベントを開催し、NBCが2時間番組で録画放送した。昨年までは新人王やコーチ・オブ・ザ・イヤーなど各賞がスーパーボウル・ウィークに順次発表されていたが、今回はアカデミー賞やグラミー賞のような一挙発表となった。
式典にはQBアーロン・ロジャースの他、WRグレッグ・ジェニングスやWRランドール・コブも出席している。授賞式ではQBペイトン・マニング(史上最多の4回受賞)がMVPのプレゼンターを務めた。
ここ数日のパッカーズ関連ニュースをまとめて。
ジョー・フィルビンの後任オフェンシブ・コーディネーターとしてトム・クレメンツQBコーチを昇格させることをパッカーズが正式発表した。フィルビンがドルフィンズの新HCに就任した時点で予想されていたことであり、きわめて順当な人事と言える。オフェンスのプレーコーラーをマッカーシーHCが兼任するシステムにも変わりはなさそうだ。
「トムは我々の成功にとって不可欠な存在であり続けてきた。彼を昇格させるのは当然の選択であり、この機会は彼が実力で勝ち取ったものだ。2012年もオフェンスの成功を続けていけることを我々は期待している」とマッカーシーHCは声明の中で述べている。
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トム・クレメンツはペンシルヴェニア州出身の58歳。名門ノートルダム大のエースQBを3年間務め、通算29勝5敗、1973年には無敗での全米王座に貢献し、ハイズマン賞投票でも4位に入った。その後はCFLで12年間活躍し、新人王、MVP、グレイカップ制覇2回、オールスター選出7回。すでにCFLの殿堂入りも果たしている。
CFLでプレーするかたわら、ロースクールにも通って優秀な成績で卒業した。引退から4年間弁護士としてシカゴで働いたあと、1992年から母校ノートルダム大でQBコーチに。その後セインツ(1997-99)、チーフス(2000)、スティーラーズ(2001-03)でQBコーチを務めた。2004年からビルズのOCを務めたものの、2年目が終わるとマイク・ムラーキーHCとともに解雇され、それ以来パッカーズのQBコーチを務めていた。
妥協を許さぬ厳しいQB指導はアーロン・ロジャースやマット・フリンの成長に大きく寄与した、と最近とみに評価が高まっている。パッカーズ以前には、エルヴィス・ガーバック、コーデル・スチュワート、トミー・マドックスといった必ずしも一流と呼べないQBたちも彼の下でキャリア最高のシーズンを過ごした。
今オフはペン州立大とバッカニアーズのヘッドコーチ職を目指したものの、残念ながら選ばれず。「ヘッドコーチになれなかったことは後悔していないし、再びOCになれたことを喜んでいる。ジョー(フィルビン)がヘッドコーチになったことも、彼の後任になれたことも嬉しい。数年前には(ビルズで)やっていたし、ずっと戻りたかった仕事に、グリーンベイで就くことができて感謝している。素晴らしいチャンスだと思う。数年にわたって成功を収めているとはいえ、我々はまだ若いチームであり、成長の余地を大きく残している」
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問題は後任のQBコーチだが、こちらは依然として候補がはっきりしない。クレメンツが兼任する可能性もなくはないが、そうであれば今回一緒に発表されているはず。ベン・マカドゥーTEコーチの場合も同じだろう。となると、やはり外部からの招聘をマッカーシーHCは考えているのではないか。
パッカーズディフェンスのサック数は昨季の47回(NFL2位タイ)から今季は29回(27位タイ)へと激減し、パスラッシュ不振がディフェンス悪化の最大の原因となった。ポジション別の内訳(下表)を見てみると、通常のパスラッシュ要員であるDLおよびOLBがサックを奪えず、ブリッツに頼らざるをえない現状がよく表れている。
昨季はDL陣のサックが合計18回(うちDEジェンキンズ7回、NTラジ6.5回)もあり、全体の38.3%を占めたが、今季はわずか6回(ラジとDEウィンが3サックずつ)で全体の20.7%。逆にILB陣およびDB陣によるサックの割合が昨季の16.0%から37.9%へと大幅アップしている。
Journal Sentinel紙によると、ケイパースDCはブリッツの割合を昨季の33%から今季は42.2%へと大きくアップさせた(プレーオフを含む)。6メンラッシュの割合も3.7%から6.7%へと増加。少人数でプレッシャーをかけられずにパス成功を許し、やむなくブリッツを増やしてさらに痛い目に遭う、という悪循環はシーズンを通して変えられなかった。
2010 | 2011 | ||||
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Position | Sack | % | Sack | % | |
Defensive Line | 18.0 | 38.3% | → | 6.0 | 20.7% |
Outside Linebacker | 21.5 | 45.7% | → | 12.0 | 41.4% |
Inside Linebacker | 4.5 | 9.6% | → | 6.5 | 22.4% |
Defensive Back | 3.0 | 6.4% | → | 4.5 | 15.5% |
Total | 47.0 | → | 29.0 |
個人レベルではおおよそ以下のとおり。