グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2010年9月27日

QBアーロン・ロジャースの胸の内

Journal Sentinel紙の開幕特集に掲載されたQBアーロン・ロジャースのロングインタビューを紹介。7月の休暇中にサンディエゴの自宅で取材されたものだ。

ファーヴ退団に伴う大騒動の中で、アーロン・ロジャースがいかに勇敢に振る舞ってきたか、彼の成熟した品格と力強さを我々はこれまでにも称賛してきた。完璧なTDパスを成功させたり50回のサックをものともせず立ち上がる姿を目にする前から、あの夏の混乱の中で彼がいかに毅然と振る舞ってきたか、我々はすでに驚嘆してきたはずだ。しかし苦難がこれほどのものとは、誰も知らなかった。嫌がらせの手紙。悪意に満ちたコメント。敷地への不法侵入。面と向かっての悪罵。

2008年夏、グリーンベイは過去16年で初めての新クォーターバックを迎えていた。ファーヴが現役復帰を表明すると、背番号4番の再登板を望む怒れるファンがキャンプ練習でブーイングを繰り返した。自分の気質に反し、ロジャースはほとんどの打撃を心の中に閉じ込め、そして次に待ち受ける仕打ちに備えた。店先で、イベントで、インタビューで。心の中のガードを固め、次の卑劣な嫌がらせに備えた。

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いま彼はサンディエゴの美しい自宅の裏庭でリラックスしている。一年中靴が要らない家で、裸足で過ごしている。先週はレイク・タホのゴルフトーナメントでマイケル・ジョーダンたちとのプレーを楽しんできたばかり。とても明るい雰囲気で、普段より口も滑らかになっている。かつては立ち入り禁止だった話題、口を一文字に結んでノーコメントを通してきた話題にも、こちらが繰り返し質問すると答えてくれた。どれほどの仕打ちに耐えてきたか、というこの話題だ。

彼の耳に残っているのは、2008年キャンプ最初の練習でのブーイング。ニューヨーク・ジェッツを声援するパッカーズファンの声。パスを投げようとするたびにヤジを飛ばす連中。騒然とした雰囲気のパッカーズ・ファミリーナイト。小さな子供から口汚く罵られたショック。地元紙のサイトや全米のブログでの不快なコメント。ミルウォーキーのミラー・パークでわざと車に傷をつけられたこと。自宅のドライブウェイにチョークで書かれた不愉快な落書き。彼とWRルヴェル・マーティンがガソリンスタンドで受けた嫌がらせ。手紙となると数えきれない。

彼はほとんどの経験をチームメイトに話さず、2年経った今も多くの仲間はこれらの出来事を知らずにいる。

しかしWRグレッグ・ジェニングスは次のように振り返る。「本当に醜かった。すべてが悪意のものとは言えないけど、まったくひどいことをされたものだよ。ある女性が面と向かって言ったことを覚えてる。 『私はファーヴファン。アーロンを嫌いなわけじゃない。ただ彼が私たちのクォーターバックだということが気に入らないだけ』 だってさ。本気でそう思ってるの? 彼はまだ何もしていないじゃないか。彼が好んでここに来たわけじゃない。パッカーズにドラフトしてくれと頼んだわけじゃない。殿堂QBの後継者にしてくれと頼んだわけじゃない。ブレットに退団してくれと頼んだわけでもない」

やがてチームメイトたちは若きエースQBを守ろうと声を上げた。WRジェニングスは言う。「僕たちのサポートが大きくなるにつれ、外野の声は聞き流せるようになった。聞こえないわけじゃないよ。でも、彼はこれ以上ないほどのプレッシャーに、誰よりも立派に対処した。とんでもない状況だった」

「ブーイングを聞くのは本当に残念だった。いつかスーパーボウルに連れてってくれる選手をあなたたちはブーイングしたいのかい? 残念だったけれど、でも同時に、僕らは彼をサポートしなきゃいけないと分かっていた。彼の苦境を、いわば自分たちのこととして僕らは受け止めたんだ。僕らがいいプレーをしなきゃいけない、この男のためにいいプレーをしなきゃいけないと」

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高校・短大と苦労して這い上がってきたロジャースは、彼なりの打たれ強さと処世術を身に着けていた。本心を隠し、優等生的なコメントで押し通した。ケガと戦いつつ4000ydsを投げた。よいプレーを続け、彼を疑問視した人々を見返した。

しかし、みなさんはキャンプ中のあのむさくるしい髪形を覚えているだろうか。外見に関しても、ロジャースのすることに気まぐれはなく、必ず目的があるのだ。自分が笑いのネタになることで、多少なりともチームの結束に役立つかもしれないと。

「僕は身なりには構わないからね。トレーニングキャンプ中は髪もヒゲもボーボーに伸ばす。周りの緊張が和らげばそれでいい。これは僕の秘密だよ。あっもう秘密じゃなくなっちゃったけど。僕がとことん考えずに行動することはあまり多くない。気まぐれな人間じゃないんだ。2008年に人々がブレット・ファーヴでなく僕の変なヒゲのことを話題にしてくれれば、それは成功だろう。ある朝目が覚めて、今日はこれをやってみよう、なんてことじゃないんだよ」

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いつだってロジャースは魅力的な見せかけの笑顔を取り繕っていた。しかし心の中では、黙って耐えるサンドバッグの日々は終わりに向けてカウントダウンを始めていた。ボディブローを永遠に受け続けるつもりも、被害者であり続けるつもりも彼にはなかった。

「人々はさまざまな方法で僕の気持ちを苛立たせるものだ。一般的なのは僕とブレットを比べることだけど、それは気にならない。そうした比較に影響を受けることはまったくないよ。僕は彼になりたくはない」

「ただ、もう何もせず耐えてばかりはいられない、という気持ちになっていた。車のドアを開けて降りた瞬間に汚く罵られれば、そりゃあ傷つくよ。ずっと内に閉じ込めてきたけれど、すべてを内に抑え込むのは本当につらいものだ」

ようやく2008年シーズンが終わった。チームは6勝10敗と今ひとつだったが、彼はよいプレーをすることができ、少なくともQB交代の混乱を過去のものとすることができた。2009年に入ると、彼は自分のルールを変えた。「僕は本当に打ちのめされていた。チームメイトたちにどれだけ救われたことか。でも2009年になって僕は思った。『自分の人生を取り戻すんだ。自分の望む普通の暮らしを取り戻すんだ』 と」

「2008年はろくに何もできなかった。あまり出かけることもなかった。でも2009年になると、『チームが勝とうが負けようが、僕がよいプレーをしようがひどいプレーをしようが、僕は自分自身でいよう。行きたいレストランに行き、必要な店に買い物に行くんだ』 という気持ちになった」

こうして迎えた先発2年目の2009年シーズン、ロジャースのプレーは見事の一言だった。ファミリーナイトでのブーイングをいつか盛大なスタンディングオベーションに変えてみせる、という誓いを果たすこともできた。「あの役回りをアーロンほど見事にやってのけるヤツが他にいるとは思えないね。批判が彼をさらに刺激するんだと思う。彼はいつも怒りを秘めてプレーしていた」とRBライアン・グラントは言う。

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今では彼もファーヴの後任としてではなく、ひとりの一流QBとして見てもらえるようになった。これこそ彼の望んでいたことだ。力強く誇り高いフランチャイズのリーダーであり、カリフォルニア州チコの誇るべき息子であると、彼はほんとうに実感することができている。また彼は、さまざまな話題について積極的に発言することを自分に許すようになった。アーロン・キャンプマンと3-4ディフェンスの相性について発言したり、TVコメンテーターを批判して話題になったり、Twitterではファンに説教することさえある。(キャンプイン以後はTwitterを控えている)

彼はほとんど何事に対してもはっきりとした考えを持っている。今に始まったことではない。ただ、それを表に出すようになっただけのことだ。しかし話題は慎重に選んでいる。いまインタビューを受けている最中も、彼は先日のゴルフトーナメントでのエピソードをいったん話しかけて、そこでストップした。同情を買おうとしているように見られたくない、というのだ。

説得して無理に聞き出すと、次のような話だった。先週のタホでのゴルフの最中、あるファンが彼に食ってかかってきたというのだ。「以前彼のジャージにサインをしなかったから、お前は脚でも折っちまえ、ってね」と言うと、ロジャースは長いあいだ口を閉じた。ヤシの木の間を鳥が通り過ぎていくのが見える。やがて口を開いた。

「こんな出来事にどうして影響されずにいられる? 僕はものすごく影響されるよ。どうしてあれほどの厚かましさを持っていられるのか、僕には信じられない。そして彼がああ言えるのは、僕らの間にゲートがあって、僕が彼をぶちのめしたくても200人の目撃者がいるからだ。一般生活において、どんな種類の人間がそんなことを言えるんだろう? 僕が有名人で、訴えられるのが怖くて殴り返せないから、不適切なことを言ってもいいと?」

彼はサングラスを直したが、苛立ちは隠しきれていなかった。「僕が2008年の出来事を明らかにしたのも、同情を買うためじゃない。僕らだって人間だ、ということに気が付いてもらいたいからだ。こうしたことがいかに馬鹿げたことかと。僕はこれ以上、反撃もできないサンドバッグであり続けるべきじゃない、と思うようになった。誰かがきわめて不適当な発言をしたら、僕が反論できないなんて理由はない。本当に馬鹿げてる」

これで彼は話題を変えた。26歳のアーロン・ロジャースには話すべき話題が山ほどあるからだ。ソファーにくつろぎ、笑顔を見せ、リラックスしたものの、内心はそうでないことは明らかだった。彼はおそろしくタフで、どんな戦いにもひるむことはない。

CBチャールズ・ウッドソンは言う。「今もブレット・ファーヴびいきがいるのは無理もない。彼らはブレットへの忠誠心を示しているだけだからね。でもアーロンがプレーを始めてしまえば、そんなことは問題でなくなると僕には分かっていた。あれはもう終わったこと。完全に終わり。今はアーロンの時代だ」

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