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2010年2月28日

Notebook: OLBキャンプマンとも交渉

インディアナポリスのスカウティング・コンバイン会場に各球団の首脳や代理人が集結し、この日はトンプソンGMとマッカーシーHCの記者会見も行われた。

2010年2月27日

シーズン総括と展望 OLB編

3-4ディフェンスの初年度は左右両サイドで対照的なシーズンとなった。右サイドの新人クレイ・マシューズは第4週からスターターに定着するとチーム最多の10サックを挙げ、なんとプロボウラーにまで駆け上がってしまった。パスラッシュの主役となっただけでなく、ラン守備もパスカバレッジもそつがなく、ビッグプレー能力も高い。

いっぽうアーロン・キャンプマンは心配されたとおりDEからのコンバートに苦戦し、そのうえ第11週49ers戦でヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂してシーズンエンド。しかし代役スターターとなった7巡ルーキーのブラッド・ジョーンズがよく頑張り、シーズン後半のディフェンス向上に貢献した。

控えOLB陣では、ブレイディ・ポピンガはかつてのスターターの座から遠ざかるばかりで、ほぼスペシャルチーマー。キャンプでの先発争いに敗れたジェレミー・トンプソンが12月はじめに首を負傷し、現役続行がまだ確定していない。トンプソン負傷にともなってシリル・オビオザーがプラクティス・スクワッドから昇格し、スペシャルチームでプレーした。

来週末にはキャンプマンが無制限FAとなるが、大ケガと3-4適性の問題で移籍もやむなし、というのが世間の雰囲気。左サイドからのパスラッシュを強化し、スキームやブリッツに頼らずともプレッシャーをかけられるようにするのが、今年のディフェンス最大の課題だ。暫定スターターのブラッド・ジョーンズはその点で物足りないので、FA補強もドラフト上位指名も大いにありうる。

クレイ・マシューズ Clay Matthews | Outside Linebacker | Southern California
6-3 (191cm) | 250lbs (113kg) | 2年目 23歳 | 2009年ドラフト1巡

トンプソンGMがキャリア2回目のトレードアップを敢行。2巡9位に3巡9位と3巡19位を足して1巡26位と交換するのは、指名権バリューチャートを基準にすればかなりの損(1巡18位か19位に相当)だが、そこまで惚れ込んだことが結果的に大成功となった。キャンプではハムストリングの負傷で出遅れたものの、初先発の第4週ヴァイキングス戦でファンブルリターンTDを挙げると、シーズン10サック、45.5プレッシャー、35ノックダウンとすべてチーム最多。新人ながらプロボウル(繰り上げ)出場を果たした。

止まることのないモーター、スピードとトルクを落とさずに曲がることができるパスラッシュが最大の魅力。ラン守備はポイントオブアタックで力強く、パスカバレッジの動きもスムーズだ。すでにこれといった欠点は見当たらず、精神的にもしっかりしたハードワーカーなので、これから長く活躍してくれるはず。父クレイJr.(4回)、叔父ブルース(14回)と合わせ、マシューズ一族で19回目のプロボウル。ケヴィン・グリーンOLBコーチにとっても理想的な初弟子だろう。

アーロン・キャンプマン Aaron Kampman | Outside Linebacker | Iowa
6-4 (193cm) | 260lbs (118kg) | 9年目 30歳 | 2002年ドラフト5巡

NFL屈指の左DEとして活躍してきたが、3-4導入は彼のためになったとは言えない。心配されたとおりパスカバレッジがぎごちなく、パス守備の弱点になりがち。パスラッシュも、2ポイントスタンスで相手ラインから離れてセットするより、3ポイントから相手ラインマンに密着してラッシュする方が向いている。そのうえ第11週49ers戦でヒザのACLを断裂する大ケガを負い、わずか3.5サックでシーズン終了。代役のジョーンズが活躍し、「ジョーンズが入っている方がディフェンス全体が速く見える」との声も。

もうじき契約が切れて無制限FAとなる。トンプソンGMは「オファーをする」と明言したものの、プロボウル2回の実績に見合うような大型契約はオファーできないはず。逆に、来季が復活途上であるのを承知で高額オファーをする4-3のチームが現れてもおかしくない。本人は表向きスキームに不満を漏らしたことはないが、4-3のチームでDEをやりたいのが当然だろう。

ブラッド・ジョーンズ Brad Jones | Outside Linebacker | Colorado
6-3 (191cm) | 239lbs (108kg) | 2年目 23歳 | 2009年ドラフト7巡

コロラド大ではパッカーズに似たスキームでプレー。昨夏のキャンプでは背中を痛めて16日も出遅れたが、合流後のプレー内容は好調で、7巡指名ルーキーながら開幕ロースター入り。キャンプマンが戦線離脱すると、ポピンガやトンプソンを押しのけて7試合スターターを務めた。動きが非常にスムーズで、軽量のわりにポイントオブアタックでも弱くない。20yds以上のプレーを許さなかったチーム唯一のLBであり、ミスタックルわずか2回、反則ゼロ。

新人離れした安定感があったいっぽう、物足りないのはパスラッシュでの破壊力。先発7試合で4サックは悪くないが、彼自身が突破したというより、最後に彼が仕留めただけのカバレッジサックが多かった。今後の体作りで向上するかもしれないが、「パス守備強化のためにはもっと左サイドからのプレッシャーを」という見方が多く、来季スターターは確定ではない。

ブレイディ・ポピンガ Brady Poppinga | Outside Linebacker |  Brigham Young
6-3 (191cm) | 250lbs (113kg) | 5年目 30歳 | 2005年ドラフト4巡

先発ストロングサイドLBを3年間務めてきたが、3-4導入とともにスターターの座を失った。マシューズがハムストリング負傷で出遅れたため開幕3試合だけスターターを務め、その後はほぼスペシャルチーム専任に。ラン守備は迫力があるが、パスラッシュ能力が低く、パスカバレッジもよくない。伸びシロが残っていないので、スターター奪回はもう無理。今年の夏は若手とロースター枠ぎりぎりを争うことになりそうだ。

ジェレミー・トンプソン Jeremy Thompson | Outside Linebacker |  Wake Forest
6-4 (193cm) | 260lbs (118kg) | 3年目 24歳 | 2008年ドラフト4巡

キャンプでは新人マシューズと先発右OLBの座を争ったが、鼠蹊部を痛めたこともあり、チャンスをモノにできなかった。パス守備は非常にスムーズだが、ラン守備で力強さを欠き、パスラッシュも物足りない。12月4日の練習で首を負傷してインジャリーリザーブへ。現役続行が危ぶまれ、何人もの専門家の診断を仰いでいる。(この1ヶ月ほど情報がない)

シリル・オビオザー Cyril Obiozor | Outside Linebacker |  Texas A&M
6-4 (193cm) | 249lbs (113kg) | 2年目 23歳 | 2009年ドラフト外

テキサスA&Mでは4-3のDEをプレー。昨年ドラフト外でパッカーズに入団すると、OLBへのコンバートをスムーズにこなした。プラクティス・スクワッドから、上記トンプソンの戦線離脱にともなってロースターに昇格。主にスペシャルチームで5試合に出場した。頑張ればパスラッシャーとして頭角を現すかもしれない。

2010年2月26日

NTライアン・ピケットをフランチャイズ指名

昨日から予想されていたとおり、パッカーズはNTライアン・ピケットをフランチャイズプレーヤー(用語集へ)に指名したと発表した。今年の場合DT選手は$7.003ミリオン(契約ボーナスなしの1年契約)となる。選手側はこのオファーにすぐサインする必要はなく、サインするまではミニキャンプやトレーニングキャンプに参加する義務もない。パッカーズ側は今後も交渉を続けて複数年契約をまとめたい考え。

今年これまでフランチャイズ指名された5選手のうち、NTヴィンス・ウィルフォーク(NE)、NTオウブラヨ・フランクリン(SF)に続いて3人目のノーズタックルだ。NTケイシー・ハンプトン(PIT)もフランチャイズ指名と予想されていたが、3年契約に合意したと報道されている。ピケットとの交渉も、その金額がちょうどよい目安になるかもしれない。

シーズン総括と展望 DE編

「3-4経験のあるDE補強が必要では」と心配されていたが、それも杞憂に終わった。左DEジョニー・ジョリーと右DEカレン・ジェンキンズはNTピケットとともにNFL最重量ディフェンシブラインを構成し、期待を上回る働きでラン守備1位の原動力となった。3-4転換1年目から大きな成果を挙げたのは、選手たちの頑張りに加え、マイク・ターゴヴァックDLコーチの指導も高く評価されている。

DLは基本的に先発トリオにB.J.ラジを加えた4人だけでローテーションし、DE陣3番目のジャリアス・ウィンでもシーズンわずか75スナップしか出場しなかった。ジャスティン・ハレルはまたも腰痛で開幕前にインジャリーリザーブ入り。軽量のマイケル・モンゴメリーはやはり3-4に向いておらず、出場機会が激減した。6巡指名ルーキーのウィンはまだ体作りが不十分。

今年も両スターターは安泰だが、もしジョリーが出場停止となれば補強が必要になる。たとえ出場停止がなかったとしても、ハレルもモンゴメリーも頼りにならないので、今年は控えのレベルを向上させたいところだ。FAならば3-4経験のある安価なベテラン、ドラフトなら中位以降で。

ジョニー・ジョリー Johnny Jolly | Defensive End | Texas A&M
6-3 (191cm) | 325lbs (147kg) | 5年目 27歳 | 2006年ドラフト6巡

B.J.ラジの入団でスターターの座が危うくなったかと思われたが、先発左DEの座をがっちりキープ。初めての3-4ディフェンスで期待を大きく上回る活躍を見せ、入団以来最高のシーズンを過ごした。強烈な破壊力があり、やや雑だったギャップコントロールも3-4になってからは安定している。パスラッシュではジェンキンズに劣るが、パスを叩き落とす天性のセンスがあり、パスディフレクトは球団記録の11回。ターンオーバー・プレー4回も素晴らしい。

本来ならばもうじき無制限FAとなるはずだったが、労使交渉がまとまらないため、今春は制限つきFAにしかなれない不運な選手の1人。これほどの働きならばすぐにでも長期契約交渉をしたいところだが、問題は裁判沙汰。一昨年夏に鎮痛剤コデインの違法大量所持で逮捕され、もうじき裁判が始まることになっている。たとえ軽罪に切り替えて有罪答弁取引をしても、リーグからの処分は避けられない。

カレン・ジェンキンズ Cullen Jenkins | Defensive End | Central Michigan
6-2 (188cm) | 305lbs (138kg) | 7年目 29歳 | 2004年ドラフト外

2008年第4週に胸筋を断裂する大ケガを負ったが、昨年は見事に復活を果たし、慣れない3-4ディフェンスで期待以上の働きを見せた。4-3時代よりパスラッシュに不利なポジションのため4.5サックに減ったが、プレッシャー回数はキャリアハイの39回(チーム2位)。ロスタックルもチーム2位タイの7.5回。ただサイズが小さめのせいか、有力OL選手にシャットアウトされるゲームも何度かあった。

ジャリアス・ウィン Jarius Wynn | Defensive End | Georgia
6-3 (191cm) | 285lbs (129kg) | 2年目 26歳 | 2009年ドラフト6巡

昨年ドラフト6巡指名で入団し、下記ハレルの負傷もあって開幕ロースター入り。出場機会は少なかったが、それでも出場スナップ数は下記モンゴメリーを上回り、シーズン終盤にNTピケットが欠場したゲームで出番をもらった。キャンプではパスラッシュで時おり光るものを見せたが、まだ体作りが足りないせいか、実戦ではよいところを見せられなかった。2年目の成長に期待したい選手の1人だ。

マイケル・モンゴメリー Michael Montgomery | Defensive End |  Texas A&M
6-5 (196cm) | 282lbs (128kg) | 5年目 26歳 | 2005年ドラフト6巡

昨年の春FAとなったが他球団から買い手がつかず、安く再契約。しかし懸念されたとおり3-4ディフェンスのDEには線が細く、出場は前年の523スナップからわずか64スナップに激減した。足首や手のケガの影響もあったかもしれないが、よほどバルクアップでもしないかぎり、今年よくなることは考えにくい。やはり4-3ディフェンスのチームに移って控えDEとしてやっていく方が本人のためだろう。

ジャスティン・ハレル  Justin Harrell | Defensive End |  Tennessee
6-4 (193cm) | 320lbs (145kg) | 4年目 26歳 | 2007年ドラフト1巡

下位指名&ドラフト外ばかりの雑草軍団にひとり混じった1巡指名選手。またもや腰痛が再発してしまい、開幕前にインジャリーリザーブ入りとなった。入団3年間で出場15試合、わずか301スナップしかプレーしていない。ケガさえなければ3-4のDEは向いていそうに思えるのだが、腰痛が再発しない保証はない。今年の夏ダメなら今度こそ解雇ではないか。

2010年2月25日

シーズン総括と展望 NT編

3-4ディフェンスの要であるノーズタックルとしてライアン・ピケットが期待以上の頑張りを見せ、DEコンビとともにラン守備NFL1位に貢献した。ドラフト1巡9位指名のB.J.ラジはプレシーズンで負った足首の捻挫が長引き、インパクトを与えるには至らなかった。アンソニー・トリビオはピケットのハムストリング負傷にともない、シーズン終盤にプラクティス・スクワッドから昇格。

もうじき無制限フリーエージェント(UFA)となるピケットとの契約延長交渉が行われているが、「契約がまとまらなければフランチャイズ指名の見通し」との最新情報が流れたばかり。ピケットからラジへとすんなり世代交代出来ない理由は、DEジョニー・ジョリーの裁判の問題による。もしジョリーが出場停止等の処分を受けた場合、ラジをDEで使わなければならいからだ。もしピケットと再契約できれば大きな補強はなさそうだ。

ライアン・ピケット Ryan Pickett | Nose Tackle | Ohio State
6-2 (188cm) | 340lbs (154kg) | 10年目 30歳 | 2006年FA(ラムズで2001年1巡)

3-4のノーズタックルは初体験だったが、きわめてスムーズに適応し、ラン守備1位に大きく貢献した。ライン中央でダブルチームをしっかりと受け止め、後ろのインサイドLBたちがタックルを量産。パスラッシュの突破力はないため、パスシチュエーションではサイドラインに下がる。タックル数を出場スナップで割るとDL陣1位。ハムストリング負傷のためレギュラーシーズン最後の2試合を欠場し、プレーオフでも100%でなかったのは残念だった。

前述のとおりDEジョリーは出場停止のおそれがあるため、ピケットの残留を目指して12月あたりから契約延長交渉が続けられてきた。ここにきて「契約がまとまらなければフランチャイズ指名」という情報が流れたのは、ピケット側に圧力をかけるためのリークではないか。もしフランチャイズ指名されたら、$7.003ミリオン(DTの場合)の1年契約となる。フランチャイズ指名した後も契約延長交渉するかもしれない。

B.J.ラジ B.J. Raji | Nose Tackle | Boston College
6-2 (188cm) | 337lbs (153kg) | 2年目 23歳 | 2009年ドラフト1巡

ボストン・カレッジからドラフト1巡9位指名で入団したが、契約問題でキャンプ合流が2週間遅れ、さらにプレシーズンゲームで足首を捻挫し、その影響がシーズン後半まで残ってしまった。優れたバネを活かして時おり破壊力あるプレーを見せるものの、アサインメントミスなど安定感を欠き、スターターの座を脅かすには程遠かった。ピケットを明らかに上回っているのはパスラッシュ能力で、ラン守備の方はもう少し馬力をつける必要がありそう。

ポジション名表示はノーズタックルだが、じっさいはDEやパスシチュエーションでインサイドからラッシュする仕事が多い。今オフは「コーチ陣が減量を求めている」との一部情報もあり、それが本当ならば、来季も同じ起用法で行くつもりなのかもしれない。DEジョリーが出場停止処分になれば、左DEで即スターターとなるはず。

アンソニー・トリビオ Anthony Toribio | Nose Tackle | Carson-Newman
6-1 (185cm) | 315lbs (143kg) | 2年目 24歳 | 2008年ドラフト外

2008年11月にドルフィンズのプラクティス・スクワッドからパッカーズへ。昨年夏は開幕ロースターに残れなかったものの、実質3番手NTとしてプラクティス・スクワッドに控え、ピケットのハムストリング負傷に伴ってロースター昇格。シーズン最終戦でNFL初出場を果たした。ピケットが残留すれば今年も厳しい戦いになりそうで、ドラフト下位でライバルが入団してくる可能性も。

2010年2月24日

Sデリック・マーティンが2年契約に合意

もうじき制限つきフリーエージェント(RFA)となるはずだたSデリック・マーティンが2年契約に合意。代理人サイドが内容を明らかにしないところを見ると、自慢できるほどの金額ではないのだろう。おそらく数十万ドルの契約ボーナスに、RFA最低額オファー($1.176ミリオン)とさほど変わらないベースサラリー、といったところか。Sマーティンとしては、普通にRFAで再契約しても(ベースサラリーだけなので)開幕前に解雇されては一銭にもならないため、確実に契約ボーナスが手に入る安全策をを取ったものと思われる。

デンバー市出身のSデリック・マーティンは、ワイオミング大から2006年のドラフト6巡指名でレイヴンズに入団。3年間CB(兼スペシャルチーマー)をプレーしたあと、昨年夏からセーフティに挑戦。開幕前にT/Gトニー・モールとのトレードでパッカーズに移ってきた。先発セーフティを脅かす力はないものの、スペシャルチームの中核選手の1人として、チーム2位の21タックルを記録。アグレッシブな働きでチームを活気づけた。セーフティ経験が浅いだけに、まだ伸びシロはあるとチーム側は考えているのかもしれない。

2010年2月23日

シーズン総括と展望 G/C編

ガードは左右で対照的なシーズンだった。新先発RGジョシュ・シットンはラン・パスとも安定した働きを見せ、2009年のチーム最優秀ラインマンと評価されている。マルコ・リヴェラの退団以来不安定だった右ガードだが、シットンなら今後長きにわたって活躍してくれそうだ。いっぽうLGダリン・カレッジは2008年と打って変わって不振に陥り、制限つきフリーエージェント(RFA)となる今春はチームからオファーされない可能性さえ噂されている。

センターでは、開幕スターターの座をつかんだジェイソン・スピッツが序盤に腰を負傷してシーズンエンド。しかし、代わって先発の座を取り戻したスコット・ウェルズはむしろスピッツより高いレベルでプレーし、シーズン後半のチーム躍進に大きく貢献した。今年も当面はウェルズがスターターで行くものと見られている。

左ガードの問題は残っているが、若い選手が揃っているので、タックルと比べると補強の必要性は高くない。FA補強をするとしたら、LGダリン・カレッジとの再契約を見送った場合ではないか。ドラフトもタックルの方が優先で、ガードやセンターはあるとしても下位指名だろう。

ジョシュ・シットン Josh Sitton | Right Guard | Central Florida
6-3 (191cm) | 322lbs (146kg) | 3年目 23歳 | 2008年ドラフト4巡

入団1年目はケガのため先発RGの座をつかみ損ねたが、2年目の2009年は不動のスターターとなって全試合先発を果たした。ケガや不振に苦しむ仲間を尻目に高いレベルのプレーを続け、プロボウルの一歩手前とする評価も。ランブロックは明らかにチームNo.1で、アサインメントがたしかで、パスプロテクションも予想以上によかった。右サイドのスクリーンパスが効果的だったのも、彼の動きがよかったのが最大の理由。考えてみれば、来季スターターの座が確定しているOL選手はこのシットンだけだ。

ダリン・カレッジ Daryn Colledge | Left Guard | Boise State
6-4 (193cm) | 308lbs (140kg) | 5年目 28歳 | 2006年ドラフト2巡

山あり谷ありのキャリアを続け、ようやく2008年に一流ガードへの道を進み始めたかと思ったら、2009年は再び大不振に陥ってしまった。被サックやプレッシャーを許した回数ではOL陣最多で(RTバーバーは先発7試合のため)、"Bad Run"の原因を作ったのも彼がダントツ1位だった。クリフトンの代役LTをやらされたのは気の毒だが、いつまでたっても馬力がつかず、ブルラッシュに簡単にやられてしまう。

今春はRFAとなるが、チームが再契約オファーをしてくれる保証はない。代役LTとしてダメだったので、その点でもFA市場での価値が下がったことだろう。たとえ再契約したとしても、来季スターターになるためには、キャンプでポジション争いに勝たねばならないはず。

スコット・ウェルズ Scott Wells | Center | Tennessee
6-2 (188cm) | 300lbs (136kg) | 7年目 29歳 | 2004年ドラフト7巡

キャンプでの先発センター争いでスピッツに敗れたが、それはプレー内容の差ではなく、「スピッツの方がスケールが大きい」とコーチ陣が決めつけていた部分が大きいのでは。スピッツの戦線離脱によってスターターに戻るとキャリア6年間で最高のプレーを見せ、並みいる強力NTたちを相手に一歩も引かない活躍でオフェンスを支えた。サイズは小さいが体の使い方がうまく、スナップ前のコールも非常に的確。今年も決してスターター確定ではないが、彼からポジションを奪うのは昨年よりかなり難しそうだ。

ジェイソン・スピッツ Jason Spitz | Center/Guard |  Louisville
6-3 (191cm) | 307lbs (139kg) | 5年目 27歳 | 2006年ドラフト3巡

ウェルズとの先発センター争いに勝って開幕スターターとなったが、シーズンに入ってからのプレー内容はいまひとつ。そのうえ、4試合(センター2試合・代役左ガード2試合)出場したところで腰を負傷してインジャリーリザーブ入りとなってしまった。代わったウェルズが活躍したため、先発センターの座はさらに遠ざかってしまった。今春はRFAとなるが、すんなり再契約できそう。今年の夏は再びCウェルズと争わせるのか、左ガード争いをさせるのか。

イヴァン・ディートリック=スミス Evan Dietrich-Smith | Guard/Center | Idaho State
6-2 (188cm) | 305lbs (138kg) | 2年目 23歳 | 2009年ドラフト外

アイダホ州立大から昨年ドラフト外で入団し、ドラフト外としては唯一の開幕ロースター入り。スピッツの戦線離脱で2番手センターに昇格した。13試合に出場し、主にスペシャルチームでプレー。Cウェルズの負傷時など、1stチームで練習する機会はかなりあった。サイズが小さいので、ガードよりもセンターとしてやっていくことになりそうだ。「将来的にはNFLで先発センターになれる器かも」という声もあるが、まだ判断材料が少ない。

2010年2月22日

シーズン総括と展望 OT編

悪い意味で、オフェンスで最も注目を浴びたユニット。右タックルの新スターターとなったアレン・バーバーはパスプロテクションのミスを繰り返してQBロジャースを半殺しの目に遭わせ、左タックルのチャド・クリフトンは足首などの負傷で4回途中退場、欠場2試合。最初に代役LTに回ったLGダリン・カレッジの出来も悪く、新人T.J.ラングを投入してようやくパスプロ崩壊に歯止めがかかった。その後、ACLリハビリ完了間近のマーク・タウシャーを呼び戻し、シーズン半ばから先発RTに据えて後半の躍進につなげた。(2009年OLの変遷へ

こうして嵐のシーズンをなんとか乗り切ったが、LTクリフトン(33歳)とRTタウシャー(32歳)の同期コンビの後継者育成がオフェンス最大の課題であることに変わりはない。3年やってダメだったバーバーは(首脳陣は認めていないが)スターター失格、ブレノ・ジャコミニは成長がなく、LGカレッジに左タックルは務まらないこともわかった。唯一プラス評価できる若手はT.J.ラング。左タックルとなると疑問だが、右タックルなら先発でやっていけそうな器に見える。

このように若手のレベルの高くない現状では、ともに無制限フリーエージェント(UFA)となるLTクリフトンとRTタウシャーを手放すわけにはいかないため、トンプソンGMは再契約の意志を明確にしている。両ベテランを1年つなぎとめた上で、ドラフト1巡で後継LT候補を指名し、右タックルはタウシャーとラングが先発を争う、というのが理想のシナリオではないか。当面は再契約交渉が注目されるところだ。

チャド・クリフトン Chad Clifton | Left Tackle | Tennessee
6-5 (195cm) | 320lbs (145kg) | 11年目 33歳 | 2000年ドラフト2巡

一流左タックルとして活躍してきたクリフトンも最近はケガが多い。持病の両ヒザ腱炎に加えて昨年は足首の捻挫に悩まされ、4試合途中退場、2試合欠場とチームに迷惑をかけた。ランブロッキングやスクリーンパスでの機動力はないものの、元気で出ているときは高いレベルでパスプロテクトできており、彼に代わる左タックル候補はチーム内には見当たらない。

来季のオフェンスの安定を考えると手放すわけにはいかない選手だが、金額や契約年数で折り合えるのかは微妙なところ。かといっていったんFA市場に出てしまったら、希少価値の高い左タックルだけに高値がつきかねず、再契約はかなり難しくなるだろう。そうしないために、交渉が行き詰まったらフランチャイズ指名で1年引き留めるかもしれない。

マーク・タウシャー Mark Tauscher | Right Tackle | Wisconsin
6-3 (191cm) | 316lbs (143kg) | 11年目 32歳 | 2000年ドラフト7巡 (10月にFA再加入)

同期クリフトンとともに長らくスターターを務めてきたが、契約最終年の2008年12月にヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂する不運。そのためFA市場で買い手がつかず、個人でリハビリを進めた。後継RTとなったバーバーが大不振のため、10月半ばになってパッカーズと再契約。約1ヶ月かけてリハビリの仕上げを行い、第9週バッカニアーズ戦から先発RTに復帰してパスプロ向上に貢献した。試合中に足をひきずるなど、まだ100%でない様子もあった。

再契約したいとトンプソンGMは明言しているが、右タックルはT.J.ラングの存在もあり、クリフトンほど「どうしても再契約したい」存在とはいえない。ただ、ヒザの負傷から2年近く経つ来季は、昨季よりプレーがよくなる可能性がある。

T.J.ラング T.J. Lang | Tackle/Guard | Eastern Michigan
6-4 (193cm) | 316lbs (143kg) | 2年目 22歳 | 2009年ドラフト4巡

ドラフト4巡指名入団から即戦力となり、ケガ人の多いラインで代役スターターとしてよく持ちこたえた。OL変遷リストのとおり、左タックルで7試合、右タックルで2試合に出場。パスプロで大崩れすることがなく、ランブロッキングではベテラン2人よりもパワフルな働きをした。キャンプから彼に先発RT争いをさせればよかったものを、彼をガードに回し、バーバーとジャコミニのRT争いに絞ってしまった首脳陣の判断は責められていい。

今年の夏はいよいよスターター争いだが、どこでもこなしてしまう器用さがあるせいで、本来どこで使うべき選手なのか、判断が難しいのはたしか。ダリン・カレッジが大不振だった左ガードか、タウシャーの右タックルか。RGジョシュ・シットンのように、プロ2年目で大きく伸びてくれるとありがたいのだが。

アレン・バーバー Allen Barbre | Right Tackle |  Missouri Southern State
6-4 (193cm) | 305lbs (138kg) | 4年目 25歳 | 2007年ドラフト4巡

昨夏はタウシャーの抜けた先発RT争いで下記ジャコミニに勝利。しかしレギュラーシーズンに入ると相手の多様なパスラッシュに対応できず、ミスを繰り返してパスプロ崩壊の主犯となった。被サックもプレッシャーを許した回数も、出場スナップ数で割れば彼が最多。サイズも直線スピードもタウシャーより優れているはずが、やられるときは一瞬で抜かれてしまう。ラインマンとしてのセンスに欠け、フットワークや手の使い方など、基本技術がおろそかになりやすい。ただランブロッキングではよい仕事もあった。

あれだけひどいプレー内容を見せられると、プロ4年目に大きく成長すると期待するのはちょっと無理がある。今年は複数ポジションの控えを争い、場合によっては開幕前に解雇もありうる。

ブレノ・ジャコミニ Breno Giacomini | Right Tackle | Louisville
6-7 (201cm) | 311lbs (141kg) | 3年目 24歳 | 2008年ドラフト5巡

チームNo.1の長身選手。1年目はほとんど出場機会がなく、昨年もキャンプで先発RT争いに敗れ、出場ゼロに終わった。RT問題であれほど困っているのに彼を一度もアクティブ登録しなかったのは、コーチ陣の評価の低さを示している。フィルビンOCは、「GMが彼を気に入っているのだろう」と突き放したコメント。ふつうコーチはGMの人事をさりげなくかばうもので、これほどはっきり言うのは珍しい。バーバーと同様に今年の夏が正念場で、ルーキーたちとOL最後の枠を争うことになりそう。

2010年2月20日

シーズン総括と展望 TE編

プロ2年目のジャーマイケル・フィンリーがレシービングTEとして躍進し、55回676yds(13試合)を稼いでパスオフェンスの主役の1人となった。スピードでフィールドを縦にストレッチし、エンドゾーンでは高さ勝負で相手DBにことごとく競り勝った。パッカーズでこれほどアスレチック能力の高いTEは、1996年のキース・ジャクソン以来。プロボウル出場3回のババ・フランクスは一度も500yds以上キャッチしたことがない。

元スターターのドナルド・リーはわずか260yds、1TDと成績が落ち込み、イージーな落球も目立った。地味な役割に回されたのはたしかだが、それにしてもひどい不振だ。いっぽう、元ラインバッカーのスペンサー・ヘイヴナーが転向1年目で3番手TEの座をつかみ、少ない出番で4TDを決めたことがちょっとした話題となった。

フィンリーとヘイヴナーはまだ伸びシロがあると考えれば、補強の必要性は大きくない。リーもやや給料が割高とはいえ、それなりに実績もあるし、2番手TEとしてならそう悪くないだろう。FA補強するほどではなく、ドラフト下位で魅力的な素材がいれば、といったところ。

ジャーマイケル・フィンリー Jermichael Finley | Tight End | Texas
6-5 (195cm) | 247lbs (112kg) | 3年目 22歳 | 2008年ドラフト3巡

1年目は生意気発言ばかりが注目されたが、2年目に早くも大器が花開いた。ほぼ4試合を休みながら、プレーオフを含めてパスキャッチ61回835ydsを稼ぎ出し、QBロジャースのフェイバリット・ターゲットとなった。負傷欠場中にオフェンスが手詰まりになったことからも、彼のありがたみがよくわかる。難しいパスをいとも簡単に競り勝ち、イージーな落球も非常に少ない。まだ改善の余地があるとはいえ、ルート取りもよいセンスをしている。サイズとスピードを兼ね備え、相手コーディネーターにとってはマッチアップに頭が痛いはず。

実質WRとしての起用が目立つフィンリーだが、ブロッキングも努力を重ねてかなり向上してきている。2年間で一度も反則を犯していないのも立派。あとは慢心さえなければいずれプロボウラーになれるのではないか。

ドナルド・リー Donald Lee | Tight End | Mississippi State
6-4 (193cm) | 248lbs (112kg) | 8年目 29歳 | 2005年FA(MIAで2003年5巡)

2007年からスターターを務めてきたが、躍進のフィンリーにあっさり先発の座を奪われた。ワイドにセットするのはフィンリーばかりで、彼は通常のインラインにセットする仕事ばかり。集中力を欠いたのか、落球率はチーム最悪の14.6%。エンドゾーンで胸に当てて落とした失態が2回もあった。ブロッキングではまだフィンリーよりすこし上。先発の座を取り戻すのは無理にしても、来季は立ち直って、堅実な2番手として踏みとどまってほしいところだ。

スペンサー・ヘイヴナー  Spencer Havner | Tight End | UCLA
6-3 (191cm) | 250lbs (113kg) | 2年目 27歳 | 2007年ドラフト外

過去2年間はストロングサイドLBとして主にプラクティス・スクワッドにいたが(出場4試合)、昨年春にタイトエンドにコンバートされると、大方の予想を裏切って3番手TEの座をつかんだ。全試合に出場し、フィンリーの欠場時など4TDの活躍だった(シーズン7キャッチのうち4つがTD)。フィンリー復帰後はレシーバーとしての仕事は少なかったが、ブロッカーとしての出番は多かった。アスレチック能力はフィンリーに及ぶべくもないが、ゾーンのシームを見つけるところなどセンスを感じさせる。

スペシャルチームでも中心選手の1人で、チーム3位の20タックルを挙げている。シーズン中は"TE/LB"という表記だったが、今は"/LB"がとれているので、ようやくTE専任にさせてもらえたかもしれない。

2010年2月19日

シーズン総括と展望 WR編

2年連続で1000ydsレシーバー2人を輩出し、35歳のドナルド・ドライバーに全く衰えが見られなかったのは素晴らしいが、若手の成長にやや不満の残るシーズンでもあった。グレッグ・ジェニングスはプロボウラーになれず、3年目のジェームズ・ジョーンズと2年目のジョーディ・ネルソンは先発コンビをまったく脅かすことができなかった。

パスオフェンス成績の伸びはTEジャーマイケル・フィンリーの台頭によるもので、パスオフェンスにWR陣の占める割合は低下してしまった。2008年にはパスydsの76.5%、パスキャッチ数の64.7%をWR陣が担っていたが、2009年はそれぞれ70.6%と53.8%にダウン。パスプロ問題でTEやRBへのパスが増えた面は否めないが、昨年のWR陣はイージーな落球が目立ち、その点でもTEフィンリーより見劣りがした。

トップWR4人全員が残留するので、今春も大きな補強は必要なさそう。ただリターナー候補が不足しているので、リターナーのこなせるスピードのあるWRをドラフト中位以降で指名するかもしれない。RBとは違って育成に時間のかかるポジションであるため、トンプソンGMはこれまで早めのドラフト指名を繰り返してきた。

グレッグ・ジェニングス Greg Jennings | Wide Receiver | Western Michigan
5-11 (180cm) | 198lbs (90kg) | 5年目 26歳 | 2006年ドラフト2巡

順調に成績を伸ばしてきたジェニングスだが、前年よりも12回179yds少ない68回1113yds、タッチダウンも9回から4回に減ってしまった。チーム最多の118回パスターゲットになったが、それでも2008年より22回少ない。パスプロ不振で最も損をしたレシーバーが彼で、せっかくディープを走っても、そこに投げる時間がQBにないのだからどうにもならない。しかし終盤は調子を上げ、第15週PIT戦、第16週SEA戦、プレーオフARI戦と100yds超の活躍を見せた。

能力的には申し分ないので、あとは1300ydsを超えて初プロボウラーに選ばれること。落球率は前年より改善されたが、それでも試合序盤にやや集中力を欠く悪い癖がある。

ドナルド・ドライバー Donald Driver | Wide Receiver | Alcorn State
6-0 (183cm) | 194lbs (88kg) | 12年目 35歳 | 1999年ドラフト7巡

遅咲きの努力家ドライバーが6年連続7回目の1000ydsを達成し、通算パスキャッチ647回は球団史上1位、9656ydsは球団史上2位となった。あの歳になってもディープへのスピードやカットバックのキレが衰えないことには驚かされる。ただ彼らしからぬ落球(11回)が増え、プレーオフでも手痛いファンブルロストを犯すなど、シーズン終盤はやや失速気味だった。

オフシーズンの体作りはきわめて熱心なので、さほど急激に衰える心配は要らないかもしれない。それよりも、彼の先発の座を脅かすような若手がそろそろ台頭してほしいところ。

ジェームズ・ジョーンズ  James Jones | Wide Receiver | San Jose State
6-1 (185cm) | 208lbs (94kg) | 4年目 25歳 | 2007年ドラフト3巡

ドラフト3巡指名から3年目。ネルソンを退けて3番手WRの座を(ほぼ)確保し、32回440yds、5TDを記録した。スランプだった2年目よりはよくなったが、ルーキー年(676yds)の期待度からするとまだまだ物足りない。前年よりマシになったとはいえ落球率はWR陣で最も高く、ルート取りも先発コンビと比べるとかなり雑。ガタイは立派だがブロッキングは決してよくない。今年が契約最終年なので、伸び悩みが続くようだとパッカーズは今季かぎりになりかねない。

ジョーディ・ネルソン Jordy Nelson | Wide Receiver | Kansas State
6-3 (191cm) | 217lbs (98kg) | 3年目 24歳 | 2008年ドラフト2巡

期待された2年目シーズンだったが、ジョーンズから3番手の座を奪うことができず、わずか22回320yds。シーズン半ばにヒザを捻挫して3試合欠場している。直線スピードやルート取りはジョーンズよりやや上かもしれないが、スターターの器であるとまだ証明できていない。CBブラックモンが戦線離脱してからは、パントとキックオフの両方で正リターナーを務めた。キックオフリターンは25.4ydsと合格点(規定数以上としてはNFL11位)だが、パントリターンはわずか5.3ydsの不振だった。

ブレット・スウェイン Brett Swain | Wide Receiver | San Diego State
6-0 (183cm) | 203lbs (92kg) | 2年目 24歳 | 2008年ドラフト7巡

7巡指名から2年目にして初めて開幕ロースター入りを果たしたが、第7週ブラウンズ戦でヒザを負傷してシーズンエンド。詳細は明らかにされていないが、どうやら前十字靭帯(ACL)断裂らしい。負傷するまでは全試合でアクティブ登録され、パスキャッチはなかったものの、スペシャルチームでよく頑張っていた。開幕のシカゴ戦で相手パントチームのスペシャルプレーに素早く反応して好タックルを決めた。今年はヒザのリハビリを経てキャンプに間に合うかどうか。

2010年2月17日

シーズン総括と展望 FB編

2007年から続いてきたジョン・クーン&コーリー・ホールの組み合わせに新人クイン・ジョンソンを加え、きわめて珍しいFB3人体制のまま押し通したシーズンだった。その意図は戦術面でFBを多用したいというのではなく、先輩2人のスペシャルチーム能力を活かしながら、器の大きそうなジョンソンを育てたい、という考えによるもの。クーンの成長はもう頭打ち、ホールはそれなりに伸びているがケガが多く、新人ジョンソンは不安定でアテにしづらい。ランでもパスでもさほど大きく成長したユニットとは言えない。

9日の記事で述べたように、今春はジョン・クーンが制限つきフリーエージェント(RFA)になる。チームとしては2年目のクイン・ジョンソンを軸とし、開幕までにベテランのどちらかに見切りをつける、というのが既定路線のはず。FAでもドラフトでも補強はなさそう。

ジョン・クーン  John Kuhn | Fullback | Shippensburg
6-0 (183cm) | 250lbs (113kg) | 5年目 27歳 | 2007年ウェイバー (PITで2005年ドラフト外)

力の差はあまりないが、いちおうスターター。ショートヤーデージでボールキャリーでき、パスキャッチでも2TDを挙げた。スペシャルチームで頑張ってはいるものの、バッカニアーズ戦ではパントチームで致命的なミスを犯し、パントブロック・リターンTDを許した。どの面でもそこそこの力しかなく、もう伸びシロがなさそうなのが弱点。RFAとして最低額オファーにサインし、キャンプでロースター争いか。

コーリー・ホール  Korey Hall | Fullback | Boise State
6-0 (183cm) | 236lbs (107kg) | 4年目 26歳 | 2007年ドラフト6巡

入団と同時にLBからFBに転向。ブロッキングでは着実な進歩を見せ、以前よりも相手を押し込めるようになってきている。サイズは小さめだがアスレチック能力が高く、レシービングでも他の2人より頼りになる。スペシャルチームでは中核の1人。問題はケガの多さで、プロ入り3年間で一度もフル出場したことがない。昨年もふくらはぎとヒジのケガで10試合しか出場できなかった。今年こそスターターの座をつかみたい。

クイン・ジョンソン  Quinn Johnson | Fullback | Louisiana State
6-1 (185cm) | 255lbs (116kg) | 2年目 23歳 | 2009年ドラフト5巡

QBフリンと同じルイジアナ州立大から昨年のドラフト5巡指名で入団。サイズを活かしたパワフルなランブロッキングが魅力で、1試合に1回か2回は目をみはるようなブロックをぶちかますが、まだまだ粗削りで不安定。さらに大きな問題はレシービングが下手なことで、ウェストコーストオフェンスで頼りになるレシーバーに成長してくれるかどうか、まだわからない。スペシャルチーマーとしても上記2人に大きく見劣り、出場9試合でタックルを1回も決められなかった。

2010年2月16日

シーズン総括と展望 RB編

伝統的にパス主体のパッカーズにしては、ラッシングでかなりの成果を挙げたシーズンだった。チームラッシング1885yds(NFL14位)、ラン1回平均4.3yds(11位タイ)はどちらもマッカーシーHC就任以来最高の成績。RB陣のレシービング成績も前年を上回り、シーズン後半にはスクリーンパスでロングゲインが増えた。またファンブルの少なさは特筆モノで、RB陣全体でファンブルわずか2回、ロスト1回。

ライアン・グラントは不動のエースRBとしてタフに働き、プロボウル一歩手前の好成績。物足りなかった控えRB陣も、シーズン半ばにアーマン・グリーンが復帰してからは戦力がアップし、ランシチュエーションでもグラントを休ませられるようになった。3rdダウンバックのブランドン・ジャクソンはブロッキングが飛躍的に向上し、パス攻撃で重要な役割を果たした。

こうして比較的充実したシーズンを過ごしたRB陣だが、チームがさらに上を目指すためにはもうワンパンチ欲しい、という見方が少なくなく、場合によってはドラフト上位指名もあると予想されている。グラントと争えるような本格RBでもよいし、一発ホームランのある3rdダウンバックのタイプでもいい。グリーンとの再契約は、補強がうまく進まなかった場合に検討するのではないか。

ライアン・グラント Ryan Grant | Running Back | Notre Dame
6-1 (185cm) | 222lbs (101kg) | 4年目 27歳 | 2007年ドラフト2巡

エースRBとして3年目。2008年はハムストリングの問題に苦しんで平均3.9ydsだったが、2009年(とくに後半)は彼らしいロングゲインが復活して平均4.4ydsと活躍した。プロボウル投票はNFC5位で、あと1人辞退者が出れば初プロボウラーだった。落ち着いてブロッキングの展開を見極める能力も向上。全RB中7位の282回キャリーしてファンブルゼロ(唯一のファンブルはパスキャッチ後のもの)というボールセキュリティも素晴らしい。

レシービング成績はそれなりに伸びてはいるものの、キャッチング(落球率9.1%)はやはり今ひとつ。スクリーンパスを含め、ランアフターキャッチのセンスは下記ジャクソンに大きく見劣りする。3年間フル出場して3412ydsも走ってきたので、RBの耐用年数を考えると、そろそろ後継候補を確保すべきかもしれない。

ブランドン・ジャクソン Brandon Jackson | Running Back | Nebraska
5-10 (178cm) | 216lbs (98kg) | 4年目 24歳 | 2007年ドラフト2巡

2巡指名入団から3年目。先発RBの器ではないことははっきりしたものの、3rdダウンバックとしての能力に磨きをかけ、とくにパスプロテクションでの頑張りは特筆に値する。足首のケガのため序盤は4試合に欠場したが、復帰後はとくにブロッキングでパスオフェンスの立て直しに貢献した。スクリーンパスでもセンスのよい動きで、シーズン後半はロングゲインを連発した。いっぽうラッシングでは平均3.0ydsとキャリア最低の成績。

エドガー・ベネットRBコーチとの二人三脚でハードワークを続けてはきたものの、3rdダウンバックとしてはもっと一発の魅力のある選手を、という声は少なくない。今年はライバルが入団してくる可能性が高い。

アーマン・グリーン Ahman Green | Running Back | Nebraska
6-0 (183cm) | 217lbs (98kg) | 13年目 33歳 | 2009年FA再加入 (SEAで1998年3巡)

球団記録を塗り替えたかつての大エースが10月後半、2年半ぶりにチーム復帰を果たした。以前のような爆発的なスピードはないものの、ときにはタックラーをひきずるようなパワフルなランでRBグラントの負担軽減に貢献した。今日2月16日が33歳の誕生日。2年在籍したテキサンズではケガに苦しんで14試合しか出場出来ず(先発6試合)、昨年も鼠蹊部のケガで2試合を欠場。グラントの先発の座をプッシュするような働きはもう期待できない。

1年契約なので今春またFAとなるが、8日の記事で述べたように、球団側は今のところ再契約には慎重。おそらく今後の補強の成り行きを見極めた上で、(ケガ人など)展開しだいで夏になってから呼び戻せばいい、と考えているのではないか。

デショーン・ウィン DeShawn Wynn | Running Back | Florida
5-10 (178cm) | 232lbs (105kg) | 4年目 26歳 | 2007年ドラフト7巡

ブロッキング力で新人タイレル・サットン(その後パンサーズへ)に競り勝ち、3年連続開幕ロースター入りを果たしたが、4試合でヒザを負傷してインジャリーリザーブへ。穴が閉じてから突っ込む冴えないラッシング、イージーなパス落球など、負傷前のプレー内容も決してよくなかった。サイズとスピードに恵まれながら、熱意に欠け、キャンプには毎年オーバーウェイトで現れる。今夏よほど進歩を見せないかぎり、チームを去ることになるのでは。

クレッグ・ランプキン Kregg Lumpkin | Running Back | Georgia
5-11 (180cm) | 228lbs (103kg) | 3年目 25歳 | 2008年ドラフト外

2008年はロースター入りを果たして2試合に出場したが(その後ケガでIRへ)、昨年はまるまるプラクティス・スクワッドで過ごした。ケガ人の多かったシーズン前半も彼を昇格させずRB2人体制でゲームを乗り切ったことを考えると、チーム側の評価はあまり高くないのだろう。ウィンと同様、今年の夏が最後のチャンスになりそう。

2010年2月15日

シーズン総括と展望 QB編

先発昇格2年目のアーロン・ロジャースが期待通りの成長をとげ、プレーオフ出場の原動力に。さまざまな球団記録を作り、初プロボウルにも選ばれた充実のシーズンだった。唯一の問題はボールを持ちすぎて被サック量産の一因となってしまったことだが、その課題もシーズン後半はかなり改善された。

ロジャースがエリートQBとしての評価を確立するいっぽう、控えQB陣は今季も低レベルだった。2008年2巡指名のQBブライアン・ブロームは2年目も改善が見られず、開幕前に解雇されてプラクティス・スクワッドからビルズへ。2008年7巡指名のQBマット・フリンは2番手の座を確保し、数少ない出番で落ち着いたクォーターバッキングを見せた。

前年もそうだったが、控えQB問題(しかもQB2人体制)が露呈しなかったのは、サック、ヒットの嵐を浴びながらロジャースがフル出場を続けてくれたおかげ。フリンが成長したとはいえ、もしロジャースが骨折して1ヶ月休んだらとてもプレーオフは無理だったはず。

今年はQB2人体制を解消して3人目を獲得するものとすると、やはりドラフト下位指名の可能性が高い。実績あるベテランQBを獲ってもおかしくはないが、トンプソンGM/マッカーシーHC体制になってからベテランQBを獲得したのは2006年11月のQBトッド・バウマン(ロジャースがIR入りのため)が最後。マッカーシーHCの実績からいっても、若手育成を好む傾向ははっきりしている。また、先発QB争いの望めないパッカーズではベテランQBの側も魅力を感じないだろう。

アーロン・ロジャース Aaron Rodgers | Quarterback | California
6-2 (188cm) | 220lbs (100kg) | 6年目 26歳 | 2005年ドラフト1巡

先発1年目でフランチャイズQBにふさわしい働きを見せ、2年目はリーグ屈指のQBに成長してチームをプレーオフに導き、初プロボウル出場を果たした。パスのコントロール、ロングパスの精度、3rdダウンでの勝負強さ(レーティングNFL1位)、INT率の低さ、スクリメージでのディフェンスの読み、効果的なスクランブル、リーダーシップ、タフネスなど、もうほとんど注文をつけるところが見当たらない。2008年シーズン半ばに総額$65ミリオンの6年契約を結んだが、すでにお買い得感が感じられる。

唯一の欠点はボールを持ちすぎて被サックが増えたことだが、シーズン後半は球離れを早くしてパスプロ安定に貢献。それにインターセプトの少なさ(NFL1位)は、被サックによる後退を補ってあまりある。惜敗続きだった2008年とは打って変わって第4Q最後までもつれるゲームが少なく、そうしたゲームはプレーオフを含めて1勝2敗。開幕戦はロジャースのロングパス成功で勝ち、第15週PIT戦とプレーオフのARI戦はパス守備崩壊でオフェンスの頑張りを無駄にしてしまった。

そういったわけで、オフェンスの課題といえばロジャース自身のことよりもオフェンシブラインが彼に投げる時間を与えること。安全なクイックパスばかりでは宝の持ち腐れになってしまうし、彼が壊れないよう守ることはオフェンスの最重要課題だ。

マット・フリン Matt Flynn | Quarterback | Louisiana State
6-2 (188cm) | 225lbs (102kg) | 3年目 24歳 | 2008年ドラフト7巡

名門ルイジアナ州立大から7巡指名入団して2年目。2年連続で同期ブライアン・ブロームに勝って2番手QBの座を確保した。実戦での出番は少なかったが、プレッシャー下でも落ち着いたプレーぶりで的確なパスを通すなど、かなりの成長の跡が見られた。足があるので動きながらのパスも悪くない。とはいえ、肩の弱さなどスケールの小ささはいかんともしがたい。ロジャースと比べては気の毒だが、NFLでフランチャイズQBになれる器でないのははっきりしている。堅実な控えQBへとさらに成長していってほしいところ。

クリス・ピゾッティ Chris Pizzotti | Quarterback | Harvard
6-5 (196cm) | 226lbs (103kg) | 1年目 23歳 | 2009年ドラフト外

QB2人体制のため、プラクティス・スクワッド(以下PS)のQBが実質3番手だった。シーズン前半ずっとPSにいたQBブライアン・ブロームが11月19日にビルズと契約したため、パッカーズはQBマイク・ライリー(セントラル・ワシントン大)をPSに加えた。その後ライリーがラムズと契約すると、12月9日にQBクリス・ピゾッティがPSへ。

クリス・ピゾッティはハーヴァード大から昨年のドラフト外でジェッツに入団し、キャンプ半ばで解雇されている。身長6フィート5(196cm)のサイズがあり、大学通算5675yds、37TD、13INT。オール・アイビーリーグに2回選ばれている。それ以外はまるで情報がない。祖父のフランク・ダンスウィッツはノートルダム大で大活躍し、1946年のドラフト全体1位でボストン・ヤンクスに指名されたが、NFLでは活躍できずに終わったらしい。

2010年2月13日

Notebook: フランチャイズ指名期間始まる

2010 Franchise/Transition numbers
Pos. Franchise Transition
QB $16,405,000 $14,546,000
DE $12,398,000 $10,193,000
OL $10,731,000 $9,142,000
LB $9,680,000 $8,383,000
CB $9,566,000 $8,056,000
WR $9,521,000 $8,651,000
RB $8,156,000 $7,151,000
DT $7,003,000 $6,353,000
S $6,455,000 $6,011,000
TE $5,908,000 $5,248,000
P/K $2,814,000 $2,629,000

2010年2月10日

2000年代のチーム成績

2010年2月 9日

今年のフリーエージェント RFA編

今回は制限つきフリーエージェント(RFA)予定の選手のまとめ。(用語集のRFA解説へ)。

RFA選手へのQualifying Offerは4通りのランクがあり、高いランクをオファーするほど引き留める力が強くなる仕組み。今年は特殊な年で、NFL経験3年選手だけでなく4年・5年の選手もいるので、以下のように複雑になっている。いずれかのオファーをせずに放置すれば、その選手は無制限フリーエージェント(UFA)となる。

来季はサラリーキャップなしとなることがほぼ確実になったため(先月の解説へ)、プロ経験4年・5年で本来ならばUFAとなるはずだった選手も、RFAにしかなれないものと分類してしまうことにする。下記の全9選手のうちCBトラモン・ウィリアムズ以外の8人はすべてこうした不運な選手たちだ。 

ニック・コリンズ Nick Collins | Free Safety |  Bethune-Cookman
5-11 (180cm) | 207lbs (94kg) | 6年目 26歳 | 2005年ドラフト2巡

2巡指名から3年間は伸び悩んだが、この2シーズンで13インターセプトを挙げる活躍で2年連続プロボウルに選ばれた。入団時に5年契約を結んでいたのが不運なところで、4年契約で昨季UFAになっていれば、とっくにビッグマネーを手に入れていたところ。本人はすでに昨年春から契約延長を求めていたが、チーム側が乗り気ではないのは、2年連続プロボウラーという額面ほどには実力を評価していないからではないか。

球団側としては、RFAで1年引き留めたうえで、長期契約の交渉をするか、来年UFAとして手放すかを判断することになりそう。Qualifying Offerは上位2つのどちらかになるだろう。1年引き留めたとしても、このような成り行きでは本人がヘソを曲げて長期契約交渉が困難にならないかが心配なところだ。

アタリ・ビグビー Atari Bigby | Strong Safety | Central Florida
5-11 (180cm) | 213lbs (97kg) | 5年目 28歳 | 2005年ドラフト外

ケガに苦しんだ2008年シーズンよりはマシな内容だったが、ポラマル的な活躍には程遠く、「強力な3-4ディフェンスを作るにはストロングセーフティにもっと優秀な選手を」という声は少なくない。とはいえせっかくRFAなのだから、安価で引き留めたうえで、可能ならば補強を、という形になるだろう。ドラフト外入団なので最低オファーをするわけにはいかず、上から3番目のいわゆる「2巡オファー」が妥当ではないか。

ジョニー・ジョリー Johnny Jolly | Defensive End | Texas A&M
6-3 (191cm) | 325lbs (147kg) | 5年目 26歳 | 2006年ドラフト6巡

これまでのDTから3-4ディフェンスのDEとなったが、心配を吹き飛ばす大活躍で重量ディフェンシブラインの一翼を担った。本来ならばシーズン途中で契約延長の話が出ていてもおかしくない働きだったが、問題は実力面よりも私生活。2008年7月に鎮痛剤コデインの違法(大量)所持で逮捕され、もうじき裁判が始まる予定となっている。無罪になれば問題はないが、軽罪にランクを下げて有罪答弁取引をした場合でも、リーグ側からの処分は避けられない。

チームとしてはそうした情勢を見守りつつ、とりあえず今年はRFAとして引き留める見込み。最近の活躍からして、最低でも「2巡オファー」、または「1巡オファー」が必要ではないかと見られている。

ジェイソン・スピッツ  Jason Spitz | Center/Guard | Louisville
6-3 (191cm) | 307lbs (139kg) | 5年目 27歳 | 2006年ドラフト3巡

スコット・ウェルズから先発センターの座を奪って迎えたシーズン開幕だったが、序盤に腰を痛めてしまいシーズンエンド(その後の回復は順調)。代わったウェルズが安定感ある働きでオフェンス向上に貢献したため、ウェルズがスターターとして来夏のキャンプに入ることになりそう。スピッツとしては、(下記カレッジがだらしなかった)左ガードの先発争いの方が先発復帰の近道かもしれない。チームとしては、「2巡オファー」か最低オファー(3巡入団なので3巡)のどちらかで引き留められるだろう。

ダリン・カレッジ  Daryn Colledge | Guard | Boise State
6-4 (193cm) | 308lbs (140kg) | 5年目 27歳 | 2006年ドラフト2巡

2008年には最も安定した働きをしたラインマンだったが、昨年はさんざんで、最も期待を裏切ったラインマンだった。サックを許した回数もプレッシャーを許した回数もチーム最多。昨年夏の時点では「契約延長の最優先選手」だったが、交渉の話も立ち消えとなり、今では「RFAのオファーをせず手放すのでは」という噂さえある。そうはいっても、それなりに経験のある選手を控えに置くのは損ではないので、最低額オファーで引き留めるのではないか。さいわい2巡指名入団なので、獲りにくるチームはないはず。

ジョン・クーン  John Kuhn | Fullback | Shippensburg
6-0 (183cm) | 250lbs (113kg) | 5年目 27歳 | 2009年ウェイバー加入 (PITで2005年ドラフト外)

いちおう先発フルバックだが、控え2人との力の差はほとんどない。昨年フルバック3人をロースターに残したのは、(とくにスペシャルチームで)ベテラン2人を活用しつつ、スケールの大きい新人クイン・ジョンソンを育てるため。来季は、このクーンとコーリー・ホールのどちらかを手放すのが既定路線だろう。ショートヤーデージでボールキャリーできるのがクーンの特長だが、いなくなって惜しいほどの能力とも思えない。

おそらく最低額オファーをしておいて、手を伸ばしてくるチームがいれば引き留めないのではないか(ドラフト外入団なので代償は何ももらえないが)。たとえ移籍しなかったとしても、開幕までに彼とホールのどちらかがチームを去ることになるはず。

ウィル・ブラックモン  Will Blackmon | Cornerback | Boston College
6-0 (183cm) | 206lbs (93kg) | 5年目 25歳 | 2006年ドラフト4巡

4番手CB兼リターナーだったが、第4週ヴァイキングス戦でヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂してしまいシーズンエンド。非常にケガの多い選手で、プロ4年間で計32試合を欠場している。リハビリは大変だが、チームとしてはブラックモン、リー、アンダーウッドといった若手CBの中から誰かが一人前に育ってほしいところだろう。リハビリ途上の彼を獲るのに4巡指名権を手放すチームはないので、最低額オファーで大丈夫のはず。

デリック・マーティン  Derrick Martin | Safety | Wyoming
5-10 (178cm) | 198lbs (90kg) | 5年目 24歳 | 2009年FA加入 (BALで2006年6巡)

開幕直前にT/Gトニー・モールとのトレードでレイヴンズから移籍し、スペシャルチームのエース格としてエネルギッシュな働きをしてくれた。いっぽうセーフティとしては、代役出場したヴァイキングス戦でパスカバレッジのミスを重ねて敗因を作るなど、スターターに成長すると期待するのは無理がある。おそらく最低額オファーで引き留めて、来夏のキャンプでロースター枠を争うことになるだろう。

トラモン・ウィリアムズ  Tramon Williams | Cornerback | Louisiana Tech
5-11 (180cm) | 191lbs (87kg) | 4年目 26歳 | 2006年ドラフト外

3番手CB/ニッケルバックとして3シーズン目。CBアル・ハリスの負傷で代役スターターを務め、レイヴンズ戦ではインターフェアを連発したものの、全体としてはまずまずの働き。ブリッツァーとしての働きもよかった。ハリスがACLを断裂したいまウィリアムズを失うわけにはいかないので、必ず2巡オファーか1巡オファーで引き留めるはず。問題はその後。将来にわたってスターターを任せられると評価して高額の契約延長交渉に進むかどうかだ。

2010年2月 8日

今年のフリーエージェント UFA編

FA解禁までに新労使協定に合意できる可能性はますます低くなり、来季はサラリーキャップなしとなることがもはや確実視されている。そのため、本来なら無制限フリーエージェント(UFA)になれるはずだったプロ経験4年・5年の選手たちは制限つきフリーエージェント(RFA)にしかなれないものとして考えることにする。(先月の解説へ

今回はまず、労使交渉に関係なく今年UFAになれる選手のまとめ。ILBブランドン・チラーが昨年12月に契約延長したため、UFAは以下の5選手となった。RBアーマン・グリーン以外の4人については、トンプソンGMが再契約したい考えを明確にしている。 

チャド・クリフトン Chad Clifton | Offensive Tackle | Tennessee
6-5 (195cm) | 320lbs (145kg) | 11年目 33歳 | 2000年ドラフト2巡

一流左タックルとしてながらく活躍してきたが、最近はケガが非常に多い。慢性の両ヒザ腱炎に加え、昨年は足首の捻挫に苦しんで4試合も途中退場(記事へ)。すでに昨年から後継者候補の確保が重要課題だったが、昨年のドラフトでは新3-4ディフェンスのための人材確保を優先し、LT問題は先送りにせざるをえなかった。4巡指名のT.J.ラングが代役として健闘したため、「ラングにもチャンスあり」と見られてはいるものの、腕の短さなどスケールの点で本格LTにはやや物足りない印象。

というわけで、LTクリフトンの後継問題が今年のパッカーズ最大の課題、という点で衆目は一致している。しかしこのポジションの難しさからして、「必要だから1巡23位で指名しました」というだけでは、なかなか一発で当たりを引けるものではない。うっかりクリフトンを手放してドラフトで失敗したらオフェンスが崩壊してしまいかねない。逆に、クリフトンもケガさえなければまだ高いレベルでパスプロテクトできることは昨季すでに証明している。

先日のインタビューでトンプソンGMは再契約したいと明言しており、本気で引き留める努力をするのは間違いなさそう。ホームタウン・ディスカウントを期待したいところだが、左タックルの希少性からして、もしFA市場に出たらバカ高い値がつく可能性もある。しかしパッカーズには、期日までに契約延長の合意ができなくても、フランチャイズ指名して無理やり引き留める手が残っている。OL選手のフランチャイズ指名は、今年は$10.731ミリオン。決して安くはないが、1年ならばなんとかなるはず。

マーク・タウシャー Mark Tauscher | Offensive Tackle | Wisconsin
6-3 (191cm) | 316lbs (143kg) | 11年目 32歳 | 2000年ドラフト7巡 (2009年FA再加入)

2008年12月にヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂したため昨年春は再契約を見送り、若手のアレン・バーバーに後継右タックルを任せたが、その若返り策が大失敗。そのため10月半ばに再契約すると、リハビリを完了した第9週から先発復帰してパスプロ向上に貢献してくれた。復帰1年目なので明らかに100%の状態ではなかったが、(ヒザさえ完治してしまえば)もともとクリフトンのようにあちこち爆弾を抱えているわけではなく、年齢も1歳若い。

クリフトンと同様、トンプソンGMは再契約したい考え。ただし、右タックルではT.J.ラングがさほど力の差のない後継者候補として控えているため、どの程度本気で引き留めを図るのかはまだわからない。再契約したとしてもスターター確定ではなく、キャンプで先発争いをしなければならないだろう。

アーロン・キャンプマン Aaron Kampman | Outside Linebacker | Iowa
6-4 (193cm) | 260lbs (118kg) | 9年目 30歳 | 2002年ドラフト5巡

3年間で37サックを挙げたリーグ屈指の左DEが、3-4ディフェンス導入のため左アウトサイドLBに転向し、新ディフェンスで最も割を食った選手となった。懸念されたとおりパスカバレッジに苦しみ、2ポイントスタンスからのパスラッシュもイマイチで、出場9試合でわずか3.5サック。さらに悪いことに、第13週49ers戦でヒザのACLを断裂。FA市場で目玉になるはずの選手が契約最終年で大ケガとはなんとも運が悪い。来季開幕に間に合うかはかなり微妙だ。

先日のインタビューで「間違いなくオファーする」とトンプソンGMが語ったことが注目されているが、問題はどの程度の金額・年数なのか。本来なら4-3のチームから数十ミリオンのオファーが来るのが当然の選手であり、来季100%の状態でないのを承知で大型契約をオファーをする球団が現れてもおかしくない。それに対して、3-4適性を考えればパッカーズは大型オファーはできないはず。残留への現実的なシナリオとしては、本人がリハビリ期間として1年契約を受け入れ、頑張って実力を証明して来年またFA市場に出よう、と考えた場合ではないか。

ライアン・ピケット  Ryan Pickett | Nose Tackle | Ohio State
6-2 (188cm) | 340lbs (154kg) | 10年目 30歳 | 2006年FA加入 (STLで2001年1巡)

B.J.ラジの入団でパッカーズ最後のシーズンかと思われたが、3-4の要であるノーズタックルとして優秀な働きを見せ、存在感を示した。プレーオフ直前には、契約延長に向けて本格交渉に入ったことが明らかに。先発トリオにラジを加えた4人のDLローテーションはラン守備1位の原動力であり、チーム側は来季もそれを続けたい考えなのだろう。ただ、その後動きがないのはひょっとして、労使交渉の関係でFA市場が手薄になりそうな情勢を見て、ピケット側が強気に出ているのだろうか。

アーマン・グリーン Ahman Green | Running Back | Nebraska
6-0 (183cm) | 217lbs (98kg) | 13年目 32歳 | 2009年FA再加入 (SEAで1998年3巡)

球団記録を塗り替えたかつての大エースが10月後半、2年半ぶりにパッカーズ復帰。以前のような爆発的なスピードはないものの、タックラーをひきずるようなパワフルなランでRBグラントの負担軽減に貢献した。しかし来季も同じRB陣で行くべきかとなると、「もっと一発の魅力あるタレントが欲しい」という見方が世間には多い。じっさい、グリーンとの再契約について質問されたトンプソンGMも、「まだわからない。検討中だ」と言葉を濁している。

比較的安価な1年契約を結んだとしても、ドラフトでライバルが入団してくる可能性は高く、グリーンが開幕ロースターに残るには競争に勝ち残る必要がありそう。それがイヤでも、この年齢のRBが他球団から誘ってもらえる保証はない。これからは毎年が1年契約で、(ケガ人の出る)機会を待ちつつ、チャンスが来なければ引退も、といった段階に入ったのではないか。

2010年2月 4日

この10年のパッカーズ10大事件

Press-Gazette紙のマイク・ヴァンダーマウスの選ぶ2000年代パッカーズ10大事件を紹介する。(解説文はすべて管理人による)

10. 4thダウン26

2004年1月11日、NFCディビジョナル・プレーオフ@フィラデルフィア。パッカーズ3点リードで迎えたイーグルス最後の攻撃。サックで4thダウン26に追い込み、残り1分12秒。QBマクナブからWRフレディ・ミッチェルに28ydsパスを通されて1stダウンを許し、終了間際に37ydsFGが決まって延長へ。QBファーヴが直後にインターセプトを喰らってけっきょくサヨナラFG負け。(Gamebook

最終戦でヴァイキングスが劇的な逆転負けを喫したためにプレーオフに滑り込むことができたが、戦力的にはこの2003年シーズン後半がマイク・シャーマンHC時代の頂点だった。RBアーマン・グリーンが球団記録の1883ydsを走りまくり、2年目で急成長したWRジャヴォン・ウォーカーがディープスレットとして台頭。ただディフェンスがここ一番で勝負弱く、エド・ドナテルDCは数日後に解任されている。

9. NFC決勝敗退

2008年1月20日、NFC決勝@グリーンベイ。第2シードから10年ぶりのスーパーボウル出場を目前にしたパッカーズに対し、強力ディフェンシブラインのジャイアンツ。気温-18.3℃のなか両チームはシーソーゲームを繰り広げ、ジャイアンツのKローレンス・タインズが第4Q終了間際に36ydsFGを失敗して延長へ。しかし4年前と同じくQBファーヴのインターセプトでサヨナラFGの決着(Gamebook)。 プレーオフ初戦の相手がシーホークスという点も4年前と同じだった。

8. ドラフト1巡でQBを指名

2005年4月23日、ドラフト1巡24位でカリフォルニア大のQBアーロン・ロジャースを指名。いの一番指名の可能性もあったロジャースだが23球団から指名を見送られ、グリーン・ルームのTVカメラの前に5時間も取り残された(記事へ)。なおパッカーズの1巡QB指名は1981年のQBリッチ・キャンベル(これもカリフォルニア大)以来、24年ぶりの事件だった。大バストとなったキャンベルだが、NFL引退後は地方紙のコラムニストとして長く活躍している。

7. レイ・ローズHCを1年で解任

2000年1月3日にレイ・ローズHCの解任を発表。マイク・ホルムグレンの後任に選ばれたレイ・ローズHCだったが、8勝8敗シーズンを終えたその晩にロン・ウルフGMから解任を告げられた。成績じたいよりも、選手たちを掌握しきれず規律面でチームが崩壊したことが解任の理由となったようだ。ウルフGM自身が選んだHCとはいえ、過ちを公に認めて失敗を長引かせなかった、という点でむしろ評価されている。解任後のローズはディフェンシブコーディネーターとして活躍を続け、WAS、DEN、SEAでDCを務めた。

後任のマイク・シャーマンは、パッカーズでTEコーチを務めたあと、ホルムグレンHCとともにシーホークスに移ってオフェンシブコーディネーターを務めた。他の候補と比べて地味な存在だったが、ウルフGMとの面談の内容が非常によかったのが決め手となった。ヴィンス・ロンバルディに憧れ、子供の頃から夢見ていたのがグリーンベイ・パッカーズのヘッドコーチという仕事だった。

6. シャーマンHCからマッカーシーHCへ

2000年に就任したマイク・シャーマンHCは強力なオフェンシブラインを作り上げ、RBアーマン・グリーン中心のラン攻撃の確立に成功。2年目から4年連続でプレーオフ進出を果たしたものの、一度もNFC決勝に進むことができず、翌2005年シーズンは4勝12敗の大不振で解任。退任後のシャーマンはテキサンズでオフェンシブコーディネーターを務めたあと、2008年から古巣テキサスA&Mのヘッドコーチに。強力オフェンスを築きながらディフェンスの大量失点に苦しんでいて、なんとなくパッカーズ時代を彷彿とさせる。

後任ヘッドコーチに選ばれたマイク・マッカーシーは、短命に終わったレイ・ローズHC政権下でQBコーチを務めた人物。その後セインツと49ersのOCを務めた。ジョー・モンタナに始まって、スティーヴ・ボノ、リッチ・ギャノン、マット・ハッセルベック、アーロン・ブルックス、ジェイク・デローム、そしてアーロン・ロジャースと、QB指導の実績はNFL屈指だろう。就任4年間で2度のプレーオフ進出を果たし、「複数のQBを擁してプレーオフに進出」はパッカーズでは初代カーリー・ランボーHCしか成し遂げていなかった快挙。

5. 波乱のCEO交代

90年代のチーム再生とランボーフィールド大改修の功労者、ボブ・ハーラン社長兼CEOの定年退職に伴って、ジョン・ジョーンズ上級副社長が昇格するレールが数年前に敷かれていた。しかし球団職員たちから思わぬ反発の声が上がり、政権委譲の数日前になって苦渋のジョーンズ解任。経営委員会は半年かけて新たに新CEOを選び直し、ノースウェスタン大学体育局長のマーク・マーフィが新社長兼CEOとなった。

こうして2008年1月に就任したマーク・マーフィだが、その経歴がものすごい。ディビジョンI-AAのコルゲート大からドラフト外でレッドスキンズ入りし、頭脳派セーフティとしてプロボウラーまで上り詰めた。そのかたわらジョージタウン大のビジネススクールに通ってMBAを取得し、労使紛争の際には選手会副会長として団交の中心的役割を担った。引退後はロースクールに進んで弁護士資格を取り、NFL選手会の副事務局長を務めたあと、4年間司法省で弁護士として働いた。1992年からは母校コルゲート大の体育局長、2003年からはシカゴの名門ノースウェスタン大の体育局長。

パッカーズ社長に就任すると、特異な経歴からコミッショナーに請われてNFLの"Management Council" (オーナー会の中心的委員会)に加わり、いま進行中の労使交渉でもNFL側の中心的存在となっているらしい。80年代とはテーブルの逆側に座っているのが面白い。

4. ジェネラルマネージャー交代

2005年1月、4年連続プレーオフに進出したマイク・シャーマンHC兼GMだが、1人で両方を兼任するには荷が重すぎるとボブ・ハーラン社長は判断。GMの任を解き、後任にはシーホークス副社長のテッド・トンプソンが選ばれた。ロン・ウルフ元GMの強い推薦によるものだった。トンプソンとシャーマンは1年間ともに働いた結果、関係はやはり芳しくなく、4勝12敗の2005年シーズンを最後にシャーマンがチームを去ることになった。

FA補強に消極的なことで有名なトンプソンGMだが、若手中心のチーム作りの手腕はファンよりもむしろNFL関係者の間で評価が高い。ファーヴ騒動を乗り越えてわずか1年でプレーオフ復帰を果たし、あとはチームを優勝へ導けるかどうか。

3. ロン・ウルフGMの電撃引退

10年間パッカーズのGMを務め、チーム再建の立役者となったロン・ウルフGM(当時62歳)だったが、2001年2月1日に突如引退を発表。後任にマイク・シャーマンHCを選んだ。

ボブ・ハーラン社長に請われてロン・ウルフが就任した1991年当時、栄光の時代はすでに遠く、ロンバルディ退団後の24年間でプレーオフ進出はわずか2回、勝ち越しシーズン4回、146勝201敗9分(勝率.420)。ウルフは49ersのマイク・ホルムグレンOCをヘッドコーチに据え、ファルコンズで不遇の1年目を終えたばかりのブレット・ファーヴをドラフト1巡指名権と交換で獲得。1年目はプレーオフを逃したものの、2年目はDEレジー・ホワイトを獲得してプレーオフに進出し、1996年にはついにスーパーボウル制覇を果たした。在任10年間で負け越しなし。

彼の教え子たちはいまNFLで大きな成功を収めている。ざっと見渡しただけでも、パッカーズのテッド・トンプソンGM、タイタンズのマイク・ラインフェルトGM、シーホークスのジョン・シュナイダー新GM、ブラウンズのマイク・ホルムグレン新社長、49ersのスコット・マクルーハンGMなどが人事部門のトップとして活躍している。

2. 伝説のクォーターバック

16年にわたって球団の顔として大活躍してきたQBブレット・ファーヴが、2008年3月に涙の引退会見。数週間後に気持ちが変わって復帰を伝えたため球団側は受け入れたが、再び変心して引退に逆戻り。そのためチームはドラフト2巡でQBを獲得した。7月に3回目の変心をして現役復帰を決意したとき、パッカーズ側はもう付き合うつもりはなく、ファンを二分する第1次ファーヴ騒動の勃発となった。全米メディアを巻き込んだ大騒動の末、8月上旬にファーヴがグリーンベイを訪れたとき、チーム側は「ロジャースとの競争なら」と受け入れを容認する姿勢に転じたが、ファーヴにはもうパッカーズでプレーする気持ちはなく、パッカーズをトレードに追い込むためだけの最後の訪問だった。

パッカーズは本人の熱望したヴァイキングス移籍だけは許さず、直接対決のないジェッツへトレード。こうして新天地へ移り、ニューヨークでちょっとしたブームを巻き起こしたファーヴだったが、慣れないチームとケガにも苦しみ、NFL最多の22インターセプト。8勝3敗の地区首位からプレーオフを逃すA級戦犯となってしまった。そして昨年、いったん引退する形を作ってジェッツからの解雇を勝ち取ると、( - 中略 - )夏のトレーニングキャンプが終わったところで念願のヴァイキングス入り。プロボウラー軍団に囲まれてキャリア最高の成績を残し、チームをNFC決勝に導いた。

プレーオフ敗退直後に「引退の可能性が高い」と漏らしたファーヴだが、真に受ける者はさすがに少ない。たとえ引退を決意してもいずれ気持ちは変わるので、遅くとも夏にはまた騒動が巻き起こるはず。昨日は、セインツ戦でのケガがいかにひどかったか代理人経由で証拠写真をメディアに流し(前代未聞では?)、今夏もまたキャンプをサボる口実ができた。

1. 最大の勝利はランボーフィールド大改修

53-47 ・・・というのは試合のスコアではなく、2000年9月12日に行われたブラウン郡の住民投票での得票率(グリーンベイを含む人口22万人)。老朽化したランボーフィールドを拡張し、さまざまな施設を併設して収入の道を増やし、球団の競争力を維持しようという総工費$295ミリオンの計画のためには、0.5%の売り上げ税が承認されなければならない。「このままで何が悪い」と反対する住民も少なくなかったが、住民ひとりひとりを説得して回るボブ・ハーラン社長を中心とした精力的な運動が実を結び、53%の得票率で計画はかろうじて承認された。

まもなく始まった改修工事はフィールド使用を中断することなく少しずつ進められ、内部施設も完成しだい使用が開始された。2003年夏に竣工した新ランボーフィールドは、ファンを365日引きつける強力な磁石となり、直接収入の面でも地元経済への波及効果においても、大きな成功を収めている。かつて反対した住民の多くが「改修は正解だった」と口を揃える。 ビルズやヴァイキングスなど、新スタジアム建設ができずに苦しみ、球団移転の潜在的危機にある球団は少なくない。パッカーズも数年遅ければインフレで建設費用が2倍程度にふくらんだはずで、さらに数年遅ければこの不況でどうなっていたことか。

新ランボーフィールドとはいっても変わったのは主に外側の建物部分だけで、内側のボウル部分は昔の雰囲気そのままだ。ロンバルディHCがのし歩いたフィールドも、押しくらまんじゅうの狭苦しいベンチシートも昔のまま。シカゴの新ソルジャーフィールドは新たに建て直してしまったため、「現在使用されているNFL最古のスタジアム」の称号はランボーフィールドに移っている。

もしあのとき大改修を決断していなかったら。もし住民投票で否決されていたら。収入は先細りとなってチームの競争力は保てなくなり、スタジアムはけっきょく南のアップルトンあたりに建設されていたはず(アウタガミー郡は誘致する気まんまんだった)。聖地の魅力は半減し、グリーンベイの街じたいが衰退していったことだろう。「フランチャイズを救った決断」として、ボブ・ハーラン(現名誉会長)の功績の中でも最大のものと評価されている。

2010年2月 3日

CBチャールズ・ウッドソンとグリーンベイ

CBチャールズ・ウッドソンがグリーンベイに移籍した2006年シーズンのこと。彼が車でグリーンベイの街を走っていると、併走する車から必死で手を振る2人組がいる。信号で止まると彼らはウィンドウを下ろし、ウッドソンに言った。「アンタにはこれ以上何も望んじゃいない。ただ、アンタのプレーぶりをオレたちがどれだけリスペクトしてるか、知ってほしかったんだ」 それだけ言い終えると、彼らは去っていった。

当時チームは大きく負け越し、自分自身も負傷した肩をハーネスで守りながらなんとかフル出場を続け、パントリターナーまで兼任していた。傷ついた体とムシャクシャした心を抱えながら、「なぜオレはこんなところに来ちまったんだろう」とウィスコンシンの冬景色を眺めていたところだった。今あのときの2人組を思い出し、最高の笑顔でウッドソンは言う。「僕にとってあれこそがすべてだった」

◆ ◆ ◆

4年前の今ごろ、グリーンベイがウッドソンを獲得すると予想するNFL関係者は少なかった。ミシガン大とレイダーズで輝かしいキャリアを築いたウッドソンだが、当時彼の評価は地に墜ちていた。度重なるケガでかつてのようなシャットダウン・コーナーではなくなり、ワイルドな私生活の問題で、「若手に悪影響を与えかねない危険人物」と見なされるようになっていた。2年連続で彼をフランチャイズ指名したレイダーズも、3年目はついに引き留めなかった。

「噂はすべて本当のことだよ。間違いない。僕はパーティした。しまくったよ。僕はまだ若く、ポケットには使い切れないほどの金があった。夜通し遊び回って、一睡もせずに練習に来た。遅刻こそしなかったけどね。日曜になれば頼りになる選手であり続けたつもりだけれど、悪い噂はリーグ中に広まっていたはずだ。それがFA市場でアダになったのは間違いない。『彼には手を出すな』 ってね」

こうして、本来ならFA市場の目玉になるはずの選手が、買い手がつかないまま2ヶ月も棚ざらしとなった。「彼のパフォーマンスはトップクラスでなくなり、下り坂の選手と見なされていた。FAとなれば、フィールド外の要素も検討するものだ。その結果、自分のチームに欲しいような選手ではなかった。彼のフットボールに取り組む姿勢には問題があり、他にも問題があった。誰もが知っていたことだ」とあるAFC球団幹部は振り返る。

オークランドで3年間チームメイトだったCBナムディ・アソムワ。「(FAでの不人気は)見ていてつらかった。ウソを言うつもりはないよ。グリーンベイ移籍には首をひねらざるをえなかった。お金はたしかによかったんだろうけど・・・でもグリーンベイ? チャールズの個性に合わないよ。あそこで彼らしい生き方ができるのだろうか? でもいま、チャールズ本人に聞いてみるといい。あの移籍はこれまでで最高の出来事だった、と言うはずだ」

◆ ◆ ◆

まだまだ高いレベルでプレーできると判断したパッカーズは、ウッドソン側にオファーをしたまま、忍耐強く待ち続けた。匹敵するようなオファーが他球団から来ないことがわかり、ウッドソンは4月末になってようやく契約にサインした。他に選択肢がなかったからだ。1試合ごとのロースターボーナスとインセンティブを大きくした、チーム側にとっては低リスク志向の契約内容だった。そしてこれが、パッカーズにとってDEレジー・ホワイト以来最高のFA補強となった。

ウッドソンの悪評は当然パッカーズ側にも伝わっていた。「最初に訪問したときに、マイク(マッカーシーHC)と時間をかけて話し合った。『オークランドで君に何があった? なぜあんな評判が広まってる?』 と聞かれたよ」とウッドソン。じっさい入団後も、道のりはけっして平坦ではなかった。

マイク・マッカーシーHCも、あの契約はリスクがあったと認める。「私は心配した。最初はなかなかうまくいかなかったんだ。1年目はいろいろと軋轢があった。たくさんの話し合いが行われた。チャールズはことあるごとにチーム体制に楯突き、我々はそれを乗り越えなければならなかった」

ウッドソンは振り返る。「あの頃はまだ精神的にしっくり行っていなかった。僕はここに来たくなかったからだ。不幸な人間は他人の不幸を願う、ってやつだ。僕は惨めだった。グリーンベイ以外の球団が自分を誰も欲しがらなかったという事実に、まだとらわれていた。それに僕は、『自分はグリーンベイなんか行かないぜ』 っていう典型的なタイプだった。他の誰もが自分のように惨めになればいいと思った。マイクが求めることに、僕はことごとく反発した」

◆ ◆ ◆

やがてグリーンベイでCBアル・ハリスと組んでキャリアを再生したウッドソンは、インターセプトを量産してプロボウラーに返り咲き、今季ドム・ケイパースDCの新ディフェンスの中心的役割を担うようになった。たぐいまれなフットボールセンスをいかんなく発揮し、相手のエースWRからボールを奪い、スターTEをシャットアウトし、絶妙なブリッツで相手QBを疑心暗鬼に陥れた。

スターCBとして長く活躍してきた彼も、これほどディフェンスの中心として、相手オフェンシブコーディネーターの注目の的になることはなかった。「21番!」 「21番はどこだ!」と、スナップ前に相手選手たちの叫び声がフィールドに響き渡る。

こうして33歳にしてキャリアのピークを迎えたウッドソンは、今季のNFL最優秀ディフェンス選手に輝き、2000年代のAll-Decade Teamにも選出された。なぜあのとき自分たちもオファーをしなかったのかと、後悔しているGMは少なくない。

◆ ◆ ◆

今ではグリーンベイの落ち着いた暮らしにすっかり馴染み、昨年春には妻エイプリルとの間にチャールズJr.が誕生したばかり。慈善活動にも力を入れ、11月には母校ミシガン大付属小児病院に$2ミリオンもの寄付をして大きな称賛を集めた。

そうした彼が思い出すのは、やはり4年前のあの2人組のことだ。「ここグリーンベイにやってきて、人々は僕を温かく迎え入れてくれた。僕のプレーの仕方を彼らは心から尊敬してくれた。コミュニティ的にも、僕はこの地域に忠誠心を感じている。僕はここの人々から決して離れたくない。心からそう思う。彼らから離れたくない」

不承不承のグリーンベイ移籍から4年が経ち、ウッドソンはにっこり笑って言う。「誰もが僕をパッカーとしてだけ記憶することだろう」

2010年2月 1日

Packers Statistics Notebook 2

今回はディフェンスを中心にした雑多なスタッツ・記録集。