3-4ディフェンスの初年度は左右両サイドで対照的なシーズンとなった。右サイドの新人クレイ・マシューズは第4週からスターターに定着するとチーム最多の10サックを挙げ、なんとプロボウラーにまで駆け上がってしまった。パスラッシュの主役となっただけでなく、ラン守備もパスカバレッジもそつがなく、ビッグプレー能力も高い。
いっぽうアーロン・キャンプマンは心配されたとおりDEからのコンバートに苦戦し、そのうえ第11週49ers戦でヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂してシーズンエンド。しかし代役スターターとなった7巡ルーキーのブラッド・ジョーンズがよく頑張り、シーズン後半のディフェンス向上に貢献した。
控えOLB陣では、ブレイディ・ポピンガはかつてのスターターの座から遠ざかるばかりで、ほぼスペシャルチーマー。キャンプでの先発争いに敗れたジェレミー・トンプソンが12月はじめに首を負傷し、現役続行がまだ確定していない。トンプソン負傷にともなってシリル・オビオザーがプラクティス・スクワッドから昇格し、スペシャルチームでプレーした。
来週末にはキャンプマンが無制限FAとなるが、大ケガと3-4適性の問題で移籍もやむなし、というのが世間の雰囲気。左サイドからのパスラッシュを強化し、スキームやブリッツに頼らずともプレッシャーをかけられるようにするのが、今年のディフェンス最大の課題だ。暫定スターターのブラッド・ジョーンズはその点で物足りないので、FA補強もドラフト上位指名も大いにありうる。
トンプソンGMがキャリア2回目のトレードアップを敢行。2巡9位に3巡9位と3巡19位を足して1巡26位と交換するのは、指名権バリューチャートを基準にすればかなりの損(1巡18位か19位に相当)だが、そこまで惚れ込んだことが結果的に大成功となった。キャンプではハムストリングの負傷で出遅れたものの、初先発の第4週ヴァイキングス戦でファンブルリターンTDを挙げると、シーズン10サック、45.5プレッシャー、35ノックダウンとすべてチーム最多。新人ながらプロボウル(繰り上げ)出場を果たした。
止まることのないモーター、スピードとトルクを落とさずに曲がることができるパスラッシュが最大の魅力。ラン守備はポイントオブアタックで力強く、パスカバレッジの動きもスムーズだ。すでにこれといった欠点は見当たらず、精神的にもしっかりしたハードワーカーなので、これから長く活躍してくれるはず。父クレイJr.(4回)、叔父ブルース(14回)と合わせ、マシューズ一族で19回目のプロボウル。ケヴィン・グリーンOLBコーチにとっても理想的な初弟子だろう。
NFL屈指の左DEとして活躍してきたが、3-4導入は彼のためになったとは言えない。心配されたとおりパスカバレッジがぎごちなく、パス守備の弱点になりがち。パスラッシュも、2ポイントスタンスで相手ラインから離れてセットするより、3ポイントから相手ラインマンに密着してラッシュする方が向いている。そのうえ第11週49ers戦でヒザのACLを断裂する大ケガを負い、わずか3.5サックでシーズン終了。代役のジョーンズが活躍し、「ジョーンズが入っている方がディフェンス全体が速く見える」との声も。
もうじき契約が切れて無制限FAとなる。トンプソンGMは「オファーをする」と明言したものの、プロボウル2回の実績に見合うような大型契約はオファーできないはず。逆に、来季が復活途上であるのを承知で高額オファーをする4-3のチームが現れてもおかしくない。本人は表向きスキームに不満を漏らしたことはないが、4-3のチームでDEをやりたいのが当然だろう。
コロラド大ではパッカーズに似たスキームでプレー。昨夏のキャンプでは背中を痛めて16日も出遅れたが、合流後のプレー内容は好調で、7巡指名ルーキーながら開幕ロースター入り。キャンプマンが戦線離脱すると、ポピンガやトンプソンを押しのけて7試合スターターを務めた。動きが非常にスムーズで、軽量のわりにポイントオブアタックでも弱くない。20yds以上のプレーを許さなかったチーム唯一のLBであり、ミスタックルわずか2回、反則ゼロ。
新人離れした安定感があったいっぽう、物足りないのはパスラッシュでの破壊力。先発7試合で4サックは悪くないが、彼自身が突破したというより、最後に彼が仕留めただけのカバレッジサックが多かった。今後の体作りで向上するかもしれないが、「パス守備強化のためにはもっと左サイドからのプレッシャーを」という見方が多く、来季スターターは確定ではない。
先発ストロングサイドLBを3年間務めてきたが、3-4導入とともにスターターの座を失った。マシューズがハムストリング負傷で出遅れたため開幕3試合だけスターターを務め、その後はほぼスペシャルチーム専任に。ラン守備は迫力があるが、パスラッシュ能力が低く、パスカバレッジもよくない。伸びシロが残っていないので、スターター奪回はもう無理。今年の夏は若手とロースター枠ぎりぎりを争うことになりそうだ。
キャンプでは新人マシューズと先発右OLBの座を争ったが、鼠蹊部を痛めたこともあり、チャンスをモノにできなかった。パス守備は非常にスムーズだが、ラン守備で力強さを欠き、パスラッシュも物足りない。12月4日の練習で首を負傷してインジャリーリザーブへ。現役続行が危ぶまれ、何人もの専門家の診断を仰いでいる。(この1ヶ月ほど情報がない)
テキサスA&Mでは4-3のDEをプレー。昨年ドラフト外でパッカーズに入団すると、OLBへのコンバートをスムーズにこなした。プラクティス・スクワッドから、上記トンプソンの戦線離脱にともなってロースターに昇格。主にスペシャルチームで5試合に出場した。頑張ればパスラッシャーとして頭角を現すかもしれない。