≪ 前へ 1 2 3 4 5  次へ ≫

NPBのランボーフィールド巡礼記 5

■ 11月 12日 (月) 試合翌日

今日はグリーンベイでの最終日。ショップ巡りと、Packers Hall of Fame訪問がメインイベントである。あとは今日中にシカゴまでドライブして、明日は飛行機に乗るだけ。仕事で忙しいkobyさんは、すでに6時台の飛行機でサンフランシスコに帰っている。残った我々3人は、1階ロビーでのんびりと朝食。けんちゃんはホテルのおばちゃんに、「オレはライオンズファンだ」などと無茶な嘘を言って笑わせている。

外へ出ると相変わらずの曇天だが、気温はかなり低い(最高気温は4℃)。それでも今日は車から建物まで歩くだけだから、どうということもない。さて、ショッピングモール内にある "ShopKo"(「グリーンベイに行こう」参照)から、買い物行脚がスタートした。昨日の試合が載っている地元紙"Green Bay Press-Gazette"も購入。TDランを決めたRBダヴェンポートの写真がトップを飾っている。スポーツ欄が12頁あるうち、パッカーズが6頁、その他NFLが3頁、それ以外のNBA、カレッジスポーツ、NASCARなどが3頁。

ジャスティンさんは何度も来たことがある上にあまり物欲のない方で、身に着けるもの、使うもの以外はあまり手を出さない。しかしけんちゃんは、最初っからそのようなタガが完全に外れていて、ショップ袋の数が着実に増えていく。ロンバルディおじさんのバブルヘッド人形など、いったいどこに飾るのだ。あんなにデカい写真パネルを、いったいどうやって持って帰るのだ。「あの大きなロゴ入り時計、事務所にどうすか」とジャブを入れたら、「もう置いてあります」とカウンターが返ってきた。

私の場合、帰りの大荷物が心配で最初はセーブしていたのだが、「あそこにパッカーズのバッグ(3000円ぐらい)を売ってますから、あれ買って入れてけばいいじゃないですか」という有り難いアドバイスをジャスティンさんからいただき、容積の制限はめでたく撤廃になった。内側がフリースになったジャンパー、春秋用のウィンドブレーカー、長袖のラガーシャツ、Tシャツ2枚、自分用のキャップ、父がテニスするとき用のキャップ、義兄にTシャツ。小物はキーホルダー、冷蔵庫に張りつけるマグネット。もうやめよう。もうやめなければ。

クリックすると拡大しますパッカーズ関係の応援グッズやアクセサリーなど、小物が一番充実していたのは、"Party Perfect - Packer Headquarters"というショップだ(外観/店内)。本当にパッカーズグッズなら何でも揃っている。ネット通販もしている。店のおじさんが、「日本から来たのか、トイレもスゴイから見てみろ。ガハハ」と言う(トイレ写真)。全く、トイレまでパッカーズ一色だ。この店にいると、なんでもかんでも欲しくなってしまうので、煩悩を抑えこむのに苦労する。

アパレルはどの店でもたくさん扱っているが、やはり品揃えが一番充実しているのは、直営のPackersProShopだろうか。もちろん小物関係も種類は豊富。少しずつ割高なのかもしれないが、ここで上がった利益はパッカーズの運営資金になる。ネット通販もやっているので、ジャージなどアパレルを日本から買うならここがいいと思う。


クリックすると拡大しますもう一つの聖地、Packer Hall of Fameへ。NFL史上、単独チームのための殿堂を作った(1976年)のは、パッカーズが初めてだったらしい。来夏には新スタジアム内に移設されてしまうので、ここに来るのは最初で最後だろう。月曜日とあって、あまり混んではいないようだ。入ってすぐの部屋には、殿堂入りした人々のプレートが壁にびっしりと並んでいる。カーリー・ランボー、ドン・ハトソン、ヴィンス・ロンバルディ、バート・スター、レイ・ニチキ・・・。

クリックすると拡大しますスーパーボウル創設以前の、NFLチャンピオンのカップ。三度のロンバルディ・トロフィーのレプリカ。もちろんスーパーボウル・リングもある。60年代のロンバルディHCに宛てた、地元小学生たちの可愛らしい応援の手紙も展示されている。レイ・ニチキの眼鏡。ジム・テイラーのショルダーパッド。汗と泥の染み込んだジャージ。傷だらけのヘルメット。

ここに来るファンたちは、古い選手の記憶だけでなく、祖父や父の横でパッカーズを応援したことや、初めて息子を連れてランボーフィールドに来た日のことなども、きっと懐かしく思い出すのだろう。展示を見つめるけんちゃんの姿を眺めていても、三十数年という歳月の重みを感じずにはいられない。'60年代からのパッカーズファンである彼は、長年の宿願がようやく叶って、このグリーンベイに来ているのだ。学生時代にパッカーズに惚れ込んでからここに来るまで、どれほど多くのできごとがあったのだろう。「感無量」という言葉は、私のような若輩者のためにあるのではない、と思った。

クリックすると拡大します"STADIUM SPORTS & ANTIQUES"というショップへ(外観)。ここは特にユニークな店で、パッカーズ関係の古い新聞、雑誌、イヤーブック、メディアガイドなど、印刷物なら何でも揃っている。量も膨大だ。看板にも"BUY・SELL・TRADE"と書いてあるようにマニア向けだ。自称"活字中毒"のけんちゃんは、ここで動かなくなった。我々の他に客はおらず、長身のオヤジは、はるか日本からの客をとても喜んでくれているようだった。けんちゃんは古い時代の新聞や雑誌をたっぷりと買いこんで、オヤジと写真も撮った。


夢のような3日間の滞在もこれで終わり、グリーンベイを離れる時がきた。名残り惜しいけれど、来年また来ればいい。でも考えてみれば、これから何度でも訪れることはできても、「初めてのランボーフィールド」は今回一度きりしかない。そんなことを考えると、柄にもなく感傷的な気分になった。車窓から後ろを振り返ると、スタジアムの茶色い外壁がちらりと見え、やがて見えなくなった。


■ 終わりに

まず、お付き合いくださった御三方にお礼を言わなければならない。特にジャスティンさんにおいては、計画段階から、打ち合わせ、さまざまな手配、現地での道案内、交渉ごとに至るまで、ご多忙にもかかわらず尽力してくださった。旅行慣れしていて米国事情に通じた彼が、つきっきりでガイド役を務めてくれたことは、この上ない贅沢であったと思う。なにしろ私は薄ぼんやりしているものだから、どこへ行くにも御迷惑のかけ通しであった。

思えば、つい2年前の今頃は、「パッカーズファンなんて他にいるのかいな」などと呟きつつ、雑誌を眺めたり、テレビの前でひとり声を張り上げ応援するのが関の山だった。それが今では、インターネットのおかげで、遠く離れたファン同士が知り合って、パッカーズの成績に一喜一憂できるようになった。その上、このようにして遠くグリーンベイにまで一緒に観戦旅行ができるなんて、こんな幸せなことはない。

≪ 前へ 1 2 3 4 5  次へ ≫

updated : 2002/12/20