グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2012年3月12日

シーズン総括と展望 QB編

遅ればせながら各ポジション分析のスタート。

アーロン・ロジャースがスーパーボウルMVPに続いてシーズンMVPを獲得し、NFL史上に残る素晴らしいシーズンを過ごした。ヤーデージ、TD数とも球団記録ながらインターセプトがわずか6回しかなく、NFL新のレーティング122.5を記録した。完璧に近いコントロールと肩の強さ、ディフェンスの読みと判断の速さ、リーダーシップとすべてが揃い、もう何も注文をつけるところがない。

2010年に大きな成長を見せたマット・フリンが最終週DET戦で6TD(球団新)の大活躍を見せ、来たるFA市場に向けて大きくアピール。フランチャイズ指名を利用してのトレードを球団側が諦めたため、いよいよ今週フリーエージェントとなる。じっさい他球団からどの程度評価されているかはフタを開けてみなければわからないが、少なくともメディアからは大きく取り上げられる今春の注目選手となった。

3番手のグレアム・ハレルは2010年と同じく、プラクティス・スクワッドでシーズンをスタートして12月にロースター昇格する、というシーズンを過ごした。それなりに成長してきてはいるものの、プレシーズンでは合計5クォーター半出場してレーティング75.7。才能の限界は感じられ、NFLで代役スターターが務まる器かどうか疑問が残る。

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といったわけで、今年のテーマは2番手QB探し。最近のNFLでは脳震盪ポリシーが厳しいこともあり、長いシーズンを乗り切るために控えQBの存在がより重要になっている。普通の球団ならば安いベテランQBをFAで狙うところだろうが、たぶんパッカーズはしないだろう。オフシーズン練習でハレルが順調に伸びてくれればよいが、そうならなかったとき、ベアーズの悪夢のシナリオ(7勝3敗時点でQBカトラー負傷、代役QBヘイニーが散々な出来で8勝8敗に)はけっして他人事ではない。

今オフのパッカーズはすでにアリーナリーグのQBニック・ヒルと契約し(記事へ)、ドラフトでもQB指名が予想されている。下位指名、早ければ4巡あたりで指名があってもおかしくはない。キャンプではハレルとヒル(もっと早く脱落する可能性も)と新人が2番手QBを争うことになりそう。下位指名ルーキーを2番手QBにするのはなんとなく恐ろしいが、マッカーシーHCとトンプソンGMは2008年にもそれを敢行している。

アーロン・ロジャース Aaron Rodgers | Quarterback | California
6-2 (188cm) | 225lbs (102kg) | 8年目 28歳 | 2005年ドラフト1巡

プロ入り7年目、先発4年目のシーズンはきわめて充実したものになった。スーパーボウル制覇の立役者がさらに進歩し、NFL史上最高のレーティング122.5を記録してシーズンMVPに。それぞれキャリア最高クラスの成績だったドリュー・ブリーズ(5476yds)やトム・ブレイディ(5235yds)を退けての受賞だけに、なおさら価値が高い。パス主要部門の球団シーズン記録をあらかた塗り替え、ケガによる欠場もゼロだった。

判断力と正確なコントロール、強肩、完璧なメカニックによるクイックリリース、ポケットでの落ち着きと身のこなし、動いて時間を稼いでからのパスの脅威、ディフェンスの読み、オーディブルやノーハドルでのプレーコール能力、リーダーシップとすべて兼ね備えている。豊富なレシーバー陣にどうパスを配分するのかと心配されたが、パイを大きくする(45TD)ことで無理やり解決してしまった。(WRネルソンに12TD、WRジェニングスに9TD、TEフィンリーに7TD、WRジョーンズに7TD、WRドライバーに5TD)

相変わらず被サックだけは多く、被サック率6.7%はNFL21位。ただ前年(6.1%)より悪化したのは、純粋にOL陣のケガが多かったことによるものだろう(代役LTニューハウスだけで10.5サックを献上)。彼のの場合、無理投げ(6INTはNFL2位)せずにビッグプレーが多いことは、被サックの多さとセットになっている。サックを減らすに越したことはないが、ある程度は仕方がない。

モンタナ-ヤング以来の2代連続殿堂入りへ、きわめて順調なキャリアを築いている彼にとって、怖いのは大きなケガだけ。強力レシーバー陣は今季も健在だが、Cウェルズ(契約延長交渉が難航中)やLTクリフトン(サラリーキャップの犠牲候補)の去就がはっきりしないOL陣は不安要素だ。

マット・フリン Matt Flynn | Quarterback | Louisiana State
6-2 (188cm) | 225lbs (102kg) | 5年目 26歳 | 2008年ドラフト7巡

名門ルイジアナ州立大で全米王座に貢献し、2008年ドラフト7巡指名で入団して4年目。2010年は代役出場のペイトリオッツ戦で活躍して注目を集めたが、2011年は最終戦でライオンズ相手になんと480yds・6TD(球団新)を投げまくって週間MVPを獲得。今春のFA市場の目玉の1人と目される存在になってしまった。新天地での活躍をぜひ期待したい。

彼の良いところはポケットでの落ち着きと判断力とガッツ。肩は強くないがトレーニングによってそれなりに強化されてきた。ロングボールのコントロールも同様。スクランブル能力もあるが、左に流れながら強いパスを決めるような身体能力には欠けるようだ。

フランチャイズ指名を利用してのトレードを球団側が諦めたため、晴れて今週フリーエージェントとなる。コルツがドラフト1位でアンドリュー・ラック(スタンフォード大)、レッドスキンズが2位でロバート・グリフィン3世(ベイラー大)を指名するのが確実になったため、この2人とペイトン・マニングを獲得できなかった球団のどこか、ということになるだろう。

代役スターターで活躍してFA移籍したQBは失敗例も数多いが、高額FA移籍してさえくれれば、少なくとも来年パッカーズには Compensatory Draft Pick (用語集参照)が手に入る。おそらく3巡、悪くても4巡になるはず。もしフランチャイズ指名してトレードできた場合でも相場は2巡指名権なので、その差はあまり大きくないと言えるかもしれない。

グレアム・ハレル Graham Harrell | Quarterback | Texas Tech
6-2 (188cm) | 215lbs (98kg) | 3年目 26歳 | 2010年FA

スプレッドオフェンスのテキサス工科大でシーズン5111ydsを投げまくってハイズマン投票4位となったが、2009年ドラフトでは指名なし。CFLサスカチュワンからも解雇され、オクラホマ州立大のアシスタントとして働き始めた2010年5月、パッカーズのトライアウトを受けて入団となった。開幕ロースターには残れなかったものの実質3番手QBとしてプラクティス・スクワッドに残り、12月にロースター昇格。2011年もまったく同じパターンを繰り返した。

プレーぶりは率直にいってスケールが小さい。肩の強さはなく、緻密なコントロールもない。ウェストコーストオフェンス向きの器用を持っているのかもしれないが、少なくともプレシーズン(計5クォーター半出場してレーティング75.7)の実戦では示すことができないでいる。

昨年はロックアウトのためオフシーズン・ワークアウトも中止となり、マッカーシーHCらにによる”クォーターバック・スクール”に参加できなかったのが残念なところ。プレシーズンではそれなりに成長したところを見せたが、開幕前に解雇してもどこも獲りに来ないのだから他球団からの評価はその程度なのだろう。フリンがいた間はそれでもよかったが、彼が抜ける今年は2番手争いをしてもらわなければならない。

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