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Draft Notebook 5: TE D.J. Williams
グリーンベイ・パッカーズ ニュース
2011年5月 9日
今回は5巡23位(全体154位)指名のTE D.J.ウィリアムズ(アーカンソー大)について。指名直後の記事も参照のこと。
- テキサス州ダラス生まれ。彼が11歳のとき、母と彼と姉2人は暴力父から逃れてシェルターに飛び込み、そこからアーカンソー州都リトルロックへ移り住んだ。母が毎日殴打されるような荒れ果てた家庭生活に傷ついたD.J.が父の拳銃で自殺しようとし、それを知った母ヴィッキーがついに脱出を決意したのだ。しばらくシェルターに隠れたあと母ヴィッキーがテーブルに地図を広げ、D.J.が指差したのがリトルロックの街だった。
- 双極性障害かつ薬物乱用の父デイヴィッドは殺人未遂で禁固25年、警官への加重暴行で27年の刑を言い渡され、テキサスの刑務所で服役中。
- 母ヴィッキーは夫の振り下ろす鉄鍋から頭を守ろうとしたときのケガで、今でも小指が曲がってしまって動かない。しかし、「たぶんそのおかげで命が救われた」と医師に言われたという。
- 高校ではタイトエンドとラインバッカーの両方で3年間スターターとして活躍した。2年時は州大会優勝に貢献、3年時はパスキャッチ52回688yds・8TDを記録。4年時はケガで8試合しか出場できなかったが、それでも103タックル・8サックを挙げ、AP通信の選ぶアーカンソー州「スーパーチーム」に選ばれている。アーカンソー大の他にもオクラホマ州立大、ジョージア工科大、ミシシッピ大、ミシシッピ州立大から奨学金オファーがあった。
- アーカンソー大ではレッドシャツを経ず1年目から控えTEとして全試合に出場。SECのオール・フレッシュマン・チームにも選ばれた。2年目には早くも先発昇格してチーム最多のパスキャッチ61回723yds・3TDの大活躍。タイトエンドのキャッチ数としては同大史上最多。チームMVPにも選出された。
- 3年目からはライアン・マレット(3巡でNEへ)がクォーターバック。3年目はパスキャッチ32回411yds・3TDとダウンしたものの、4年目の昨季は54回(チーム最多)・627yds・4TDと盛り返し、同大の全米ランク12位、シュガーボウル進出に貢献している。
- パッカーズにとってアーカンソー大からのドラフト指名は2004年1巡のCBアマド・キャロル以来、通算20人目。過去にはDTデイヴ・ハナー(在籍1952-64・その後スカウトとして長く活躍)、OGグレッグ・コーク(1977-85)がパッカーズの殿堂入りを果たしている。現在のロースターにはLSブレット・グード(ドラフト外)がいる。
- 身長6フィート2⅛ (188cm)・体重245lbs(111kg)はTEドナルド・リー(3月に解雇)とほぼ同サイズ。TEとしては小さく、TEフィンリーより3インチ(約8cm)も小さい。
- コンバインでの40yds走4.67秒はかなり優秀なタイム。ただ、3コーンドリル(7.29秒)や20ydsシャトル(4.51秒)や60ydsシャトル(12.2秒)は下位に沈んでいて、ここが「直線スピードだけなのではないか」という懸念の根拠かもしれない。
- キャッチング能力では今年のTE中ベストかも、との声もある。大学4年間でファンブルわずか2回、ロスト0回とボールセキュリティはかなり良い。
- サイズが小さく機動力があることから、インライン・ブロッカー(OTの横につく通常のポジション)よりも、Hバック(フルバックとタイトエンドのハイブリッド)向きと見られている。じっさい大学ではそうした起用が多かった。
- ワンダーリックテスト26点は優秀。
- 背番号は未定。大学では45番だった。
- 本人のインタビューから。
- 「サイズが小さいことが多くの球団の懸念材料だったことは理解している。でもこれまでは何も足かせにならなかったし、NFLでもなることはないはずだ。 『テレビだと実際より大きく見えるね』 と言ってくれる人が多い。それはつまり僕のプレーが大きいからだと思う。NFLでどうなるか、とても楽しみだ」
- 「僕の過去はまるでサンドペーパーのようで、本当に厳しいものだった。でもそのサンドペーパーの方が擦り切れてしまい、それ以後は僕の家族はスムーズに暮らすことができた」
- 「この過去について、僕は感謝に近い気持ちを抱いている。それがあるおかげで、今の人生について心から感謝することができるから。母がしてくれたことには本当に感謝しているし、自分の気持ちが折れそうになるたび、母のことを思い出してなんとか持ちこたえることができた」
- 「スポーツのおかげで、僕らアスリートは社会に対して注意を喚起する機会が持てる。僕の場合は家庭内暴力についてだ。(スポーツで活躍したおかげで)僕が口を開けば、人々は耳を傾けてくれる。嫌な思い出話を繰り返すのがつらくても、長い目で見れば、それが人々を助けることになると思っているから」
- ドラフトされたといっても下位指名の契約ボーナスではぜいたくはできない。 「お祝いといっても内輪の、家族だけのディナーをするだけ。僕は5巡指名にすぎないから、母のために$50ミリオン使うなんてできない。僕が望むのは、リトルロックでいま住んでいる界隈から母を引越しさせることだけだ。家じゅうのカギをかけたかどうか、毎晩心配しなくて済むような地域へね」
- テッド・トンプソンGM。 「彼は素晴らしいパス・キャッチャーであり、ランアフターキャッチも非常にいい。あちこちのポジションに動かせるヴァーサティリティがあって、Hバックとか、いろいろな仕事ができる。すでに優秀なTEグループに加わっても、すぐに良い仕事ができると我々は考えている」
- マイク・マッカーシーHC。 「キャッチング能力とランアフターキャッチ能力で、我々が高い点をつけていた選手の1人だ。オフェンスのプレーコーラーとして言えば、フィールド中央を攻められる(スピードのある)タイトエンドやスロット・レシーバーはいくらいてもいいものだ。その点で彼にはドラフト準備段階から強い印象を受けていた」
- ベン・マカドゥーTEコーチの記者会見から。
- 「計測された数字を見れば、サイズもスピードもトップクラスではないかもしれない。しかしテープを見始めれば、彼がフィールド上で最高の選手の1人だったことがわかる」
- 「彼はパッシングゲームできわめて効果的な働きをするプレーヤーだ。おそらくキャッチングは今ドラフトのタイトエンドで最高だろう。天性の手を持っている。自信を持った(体で受けるのでなく)ハンド・キャッチャーだ」
- 過去の家庭の問題をさまざまな支援活動で話してきた事績について、昨年の Disney's Sports Spirit Award を受賞している。下はその表彰式のビデオ。