グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2008年5月27日

ドラフト指名選手紹介 2: QBブライアン・ブローム

2巡25位 | Brian Brohm | Quarterback | Louisville | Senior |
6-3 (191cm) | 228lb(103kg) | 40yds/4.79秒 | 1985年9月23日生 |

経歴 : ケンタッキー州ルイヴィルに生まれ、同州を代表するフットボール一家に育った。トリニティ高校では通算44試合に出場して10579yds・119TDを投げ、同校を三度の州大会優勝に導いた。同州のMr.Football はもちろんのこと、各メディアの全米最優秀オフェンス選手賞や全米最優秀QB賞などを受賞。バスケットボールでも活躍して同校初の地区大会優勝に貢献。野球でも州大会で準優勝し、コロラド・ロッキーズからドラフト指名されている。

全米の名門大から誘われたが、父や兄のプレーした地元のルイヴィル大を選び、ボビー・ペトリーノHCの下でプレーした。レッドシャツを経ず、1年目から控えQBとして11試合に出場。2年目からスターターとなり、大学通算10775yds(先発3年間の1試合平均は301.69yds)、成功率65.1%、71TD、24INTと素晴らしい成績を残した。特に3年目の2006年シーズンは同大をビッグイースト優勝、全米ランク6位、オレンジボウル勝利に導いた。

しかしペトリーノHCの去った2007年の同大はディフェンス不振に悩み、パス攻撃(全米4位)の奮闘およばず、成績は6勝6敗と落ち込んだ。ブローム自身もヤーデージやTDは増えたがインターセプトも5個から12個に増え、ドラフトでの評価が下がる結果となった。

Strengths : 十分な身長とがっちりしたガタイがあり、プロで必要な全てのパスを投げられる肩の強さと正確性がある。ポケットでの落ち着きがあり、2番目3番目のターゲットをしっかり見ることができる。優れたフィールドビジョンで相手カバレッジを見分け、正しい判断ができる。ポケットで素早くスライドして時間を稼ぐフットワークもある。先発経験がたっぷり3年間あり、完成度が高いタイプ。少年時代からよく鍛えられている。

Weakness : 手はそこそこ大きいが、腕が短め(30インチ弱)。ロケットアームの持ち主ではなく、実際は地肩の強さよりも優れたメカニックで投げている。しっかり踏み込めないときにダウンフィールドに投げ込める力があるかどうか。ボールを腹のあたりまで下げる癖があり、大きくあおるようなモーションになってしまうことがある。そのせいかパスをディフレクトされる回数が多く、過去3年連続で30回以上ディフレクトされている。

40yds走のタイムは悪くないが大学通算44ydsしか走っておらず、スクランブルの脅威には欠ける。右ヒザの前十字靭帯断裂、右手親指の腱断裂、左肩の手術と、ここ3年連続で大きなケガをしている。

メンタル面 : フィールドでのプレッシャーにも落ち着いて対処できる。ワンダーリックテスト32点と申し分ない頭脳があり、そのことはQBとしての判断のよさに表れている。真面目なハードワーカーでチームメイトからの尊敬も篤い。必要とあればリーダーシップを発揮するが、普段からどんどん声を出して引っ張るタイプではない。名門フットボール一家というプレッシャーの下で頑張ってきた経験も、チーム側は高く評価している。

指名の経緯 : ファーヴ引退にもかかわらずFA補強を見送り、控えQBは昨年のドラフト外選手2人(ドラフト後に解雇)しかいない状況だったので、QB指名は確実視されていた。ブロームを指名しようと2巡の途中でトレードアップしようとしたが、交渉がまとまらなかった、とトンプソンGMは明かしている。「全体56位では残っていないだろうと私は予測していた。ドラフトは予想どおりに行かないもので、彼が残っていてくれて本当に幸運だった」

1巡上位指名候補だった昨年、ブロームはカレッジ残留を選んだものの、ヘッドコーチ交代もあってインターセプトが増えて評価を落とした。1巡末から2巡半ばあたりの指名予想が多く、2巡25位なら十分おいしい、という見方が一般的。今年はややQB不作の年で、ブロームを2番目か3番目と評価する球団が多かったようだ(QB指名リスト)。たとえば1巡18位のジョー・フラッコは荒削りだがスケールが大きそうに見え、ブロームは経験豊富で完成度が高そうだが伸びシロが小さそうに見える、という印象をもたれているのだろう。

「昨年カレッジに残ったことを後悔はしていない。自分の心と相談して決めたことだ。僕はもう1年ルイヴィルに残りたかった。チームとしての目標を追い求め、それは達成できなかったけれど、自分としては選手として進歩できたと思うし、成熟したと思う。指名順位が下がったとしてもそれは関係ない。1年前よりよいクォーターバックになれたし、プロのレベルへとステップを上がる準備ができたと思う。この1年は本当によい勉強になって、今後の自分の助けになるだろう。だから、あの決断は全体としてみれば正しかったと思う」

パッカーズにとって : 必要だった2番手QBを獲得しつつ、ロジャースがコケた場合にも別のフランチャイズQB候補が控えている、という状況を作ることができた。後述のように、QBアーロン・ロジャースの先発の座に影響がないと首脳陣は強調しており、1巡でなく2巡末なのでロジャースにプレッシャーがかかりすぎることはなさそう。たとえブロームが控えQBどまりでも、しっかりした2番手QBになるのなら、2巡25位はけっして高くない、という見方もある。

エースはロジャース : 1巡指名入団から4年目にしてようやくスターターに昇格したロジャースに対して、さらにプレッシャーが増すという見方は少なくない。しかしトンプソンGMは、「チームにとってプラスになる選手だと思うし、我々が彼を鍛える間、アーロンの後ろでしっかりやってくれると思う。私にとってもマイク(マッカーシーHC)にとっても球団全体にとっても、エースはアーロンだ。ブライアン本人にも電話で伝えたし、それは理解してくれている」と語っている。マッカーシーHCともども、エースはロジャースであると、くどいほど繰り返している。

ドラフト初日終了後の会見で、QB指名についてロジャースに説明したか、と聞かれたトンプソンGM。「いや、私は特に必要を感じない。アーロンは大丈夫だ。彼はプロだし、今は自分が先発QBだとわかっている。たしかにメディアからはあれこれ言われることだろう。しかしこれがプロフェッショナル・フットボールであり、アーロンはプロだ。出場経験は少ないが、みなさん彼を取材しておわかりのように、非常にしっかりと振舞っている」

ブローム本人も立場を理解し、「まずしっかりとプレーブックを消化して、競争したいと思う。自分のなれる最高の選手になるため、ハードに努力するだけだ。グリーンベイはとても優れたチームだし、早く僕もその一員に加わりたい」と語っている。自分の指名がロジャースへのプレッシャーになるのでは、という質問には、「それはコーチが決めることだ。自分にできるのは、できる限りの努力をして最高の仕事をすること。そして自分の能力をコーチたちに見てもらい、判断してもらえばいい」

ブレット・ファーヴ : ファーヴが使っていたロッカーがまだ残されていて、その隣がロジャース、その隣がブロームとなっている。「ロッカーに"FARVE"の名前が掲げられていると、つい見に行っちゃうよ。彼の引退が自分の入団につながったのは、たしかにちょっと不思議な気持ちだね。彼の引退を見て僕はすごくがっかりした。彼のような伝説的人物が引退するのは見たくないよ。その彼のロースタースポットを自分が埋めることになるなんて、まったく思ってもいなかった。僕の世代の子たちはみんな彼を見て育った。彼のプレーを見るのが大好きだったし、誰もがそうだ。その彼がいたのと同じロッカールームに今こうしていられるなんてすごくいいね」

ルイヴィル大 : パッカーズがルイヴィル大の選手を指名するのはRGジェイソン・スピッツ以来2年ぶり6人目で、さらに5巡指名されたOTブレノ・ジャコミニが7人目となる。その他にルイヴィル大といえば、QBダン・マリーノ時代のドルフィンズで活躍(プロボウル5回)したWRマーク・クレイトンが、1993年に1年だけパッカーズでプレーしている。2002年にセインツから高額FA移籍して失敗に終わったDEジョー・ジョンソンもルイヴィル大。

フットボール一家 : 父オスカーも兄のグレッグとジェフも全てルイヴィル大で活躍した。長兄グレッグはWRとして活躍し、2006年からルイヴィル大の Director of Football Operations を務めている。次兄ジェフは同大でエースQBとして活躍(永久欠番)したあとNFLで控えQBを7年間務め、現在は同大のアシスタントHC兼オフェンシブコーディネーター。フットボール一家で育ち、大学で兄ジェフの指導を受けたことについては、5月12日の記事を参照のこと。

以下のビデオは、上が大学でのハイライト映像。下はトリニティ高校のヘッドコーチや長兄グレッグへのインタビュー映像。

カテゴリ : Draft, Player