スーパーボウルで鎖骨を骨折したCBチャールズ・ウッドソンは、ドクターの忠告に逆らって負傷後6週間でワークアウトを開始。これまでのボクシングに加え、今年はプールでの運動も取り入れたという。 「1か月半か2か月で腕立て伏せを始めた。そうせずにはいられなくてね。スイミングと、水中でのワークアウト。これはすごく便利だからかなりやって、とても役に立った。ロックアウトでグリーンベイに来られなかったから、ボクシングも例年より多めだった」
「今朝本人にも言ったけど、彼はまるで22歳に見えるよ。私がここに来て4年目になるが、これまでなかったほどよく動けている。新たなエネルギーの泉をどこで見つけたのかわからないが、あの飛び回り方はまるで22歳だ。私もすごくうれしい」とジョー・ウィットCBコーチ。
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素晴らしい体で戻ってきたことは後輩への影響も大きい。優勝で慢心して”fat and happy”にならない、というお手本になったからだ。またリーダーシップ面でも、以前より声を出して若手を引っ張るようになったのは明らかだとウィットCBコーチは言う。 「ここ数年で彼は見事なほどに脱皮した。クラスルームでも彼は若手の面倒をとてもよく見る。どうやってフィルムを分析するか、どうやって体調管理するかを教え、それは練習フィールドでも続いている。真のプロフェッショナルだ」
「以前の彼はそういうことをしたがらないところがあった。あまりに才能に恵まれているから、他の連中も同じようにできて当たり前、と思ってしまうんだな。しかし、『自分が助けてやればみんなマシになる』 という現実に気が付き、『わかった、オレが助けてやればいい。連中に話してやれば役に立つ』 と理解するようになった。それからの彼は素晴らしいのひとことだよ」
グリーンベイに移籍してきた当初、まだ問題児だった彼がマイク・マッカーシーHCにたびたび反抗したことは、よく報道されているとおり(昨年2月の記事へ)。当時の彼は若手の指導などまっぴら御免だった。しかしそれも過去の話。スーパーボウル制覇への道のりにおいてリーダーシップ上重要な役割を果たし、グリーンベイでは故DEレジー・ホワイトと並び称されるほどの存在になった。リーグ最高のDB陣を形成するのに、彼の指導力は不可欠だった。
今ではチームリーダーの役割を楽しんでいるが、自分にとって決して天性のものではなかったとウッドソンは言う。 「自分があまりいいコーチになれないと思うのはそこなんだ。自分と同じように理解させたいと思うほど、選手を教えるのは大変になる。だから僕は他の選手たちに無理強いはしない。適切だと思う程度に話はするけれど、無理にやらせようとはしない。わかるヤツもいれば、わからないヤツもいる。でも最初の部分だけ暗号の解読を手伝い、残りは自分たちで考えさせれば、それで僕は役割を果たしたことになる」
「ポジション・ミーティングでは自分の知識を教えようと努力はするけど、『お手本を体で示す』 アプローチに変わりはない。僕のフットボール理解の仕方や、相手が何をしてくるか98%ぐらい読んで好プレーを決めることを、彼らは見て学ぶわけだから。僕のプレーを見て、『いや待てよ、これは決して魔法じゃない。フィルムで学んだことを現場で見ているだけだ』 と彼らにはわかるんだと思う。ウッドソンにできるなら自分にもできるはずだとね」
「そんなわけで若手たちもミーティングでより注意を払うようになる。ときどき僕はジョー(ウィットCBコーチ)に映像を止めてもらい、『いいか、もし実戦のこのダウンでこのオフェンスのセットを見たら、オレならこう考える』 と教えるんだ。再びフィルムを再生すると、やはりその通りになる。実戦でそのセットを見たら、相手が同じことをしてくる可能性は高い」
「フィルムで学習すれば、相手は日曜に必ず同じことをやってくる。そのように一緒に学習したことは、実戦でものすごく彼らの役に立った。そうした経験を繰り返せば、自然ともっとフィルムを見ようという気になるものだ。フィルムから何を読み取ったか、フィールドで何を考えているか、僕は彼らに説明しているだけ。彼らは理解するかもしれないし、しないかもしれない。しかし僕が読みを活かして好結果を出し続けていれば、当然同じようにしたいと思うだろう?」
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2009年に就任したドム・ケイパースDCは、伝統的なコーナーバックの枠からはみ出して、ウッドソンを実質ラインバッカーのようにプレーさせることも少なくない。彼の多彩な才能をあらゆる場所で活用できることはプレーコールに大きな柔軟性を与え、相手オフェンスから見て予測不能にしている。
「不思議なのは、僕のカバレッジ能力が落ちたという人たちが他の要素をすべて無視していることだよ。これ以上何をやればいいって言うんだ? 僕はフィールドであらゆる仕事をこなしてるし、僕が毎回レシーバーに抜かれてるっていうならそれは間違いだ。僕はチームの望むようなプレーをし、それは僕の好きなプレーでもある。そりゃあ、(シャットダウンコーナーと呼ばれたければ)試合を通してアウトサイドでプレーしてもいいよ。でもそんな使い方じゃ宝の持ち腐れだろう? チーム全体に悪影響が出る。カバレッジ以外の仕事をすることで、僕はボールのありかを見つけることができるんだし」
「僕は(単なるコーナーバックでなく)フットボール・プレーヤーだ。とにかくゲームに出してくれ。それが僕のプレーだ。ドムは僕を複数のポジションで使ってくれる。ブリッツ、カバー、何でもやる。僕のビックプレー能力を活かしたパッケージを彼は作ることができる。僕にとってはものすごく楽しいよ」
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パーティ三昧の問題児から脱皮し、グリーンベイでの生活を楽しんでいるウッドソン。今週は妻エイプリルと子供たちも(オフシーズンの家から)グリーンベイに到着する。
「物事は変わっていくものだけど、いま僕はすごくいい状況に恵まれているし、過去を振り返ることは決してない。今よりハッピーなんてありえないよ。とにかく気分がいい。チーム、ファミリー、その他すべて。僕はいい場所にいるんだ」