パッカーズ10年間のドラフトを振り返る。後編は2005年から2009年まで。つまりトンプソンGMの時代であり、スーパーボウルへの道のりでもある。年度順全指名リストもご参考に。
ボブ・ハーラン社長はマイク・シャーマンHCからGM職の剥奪を決断し、後任にはロン・ウルフ元GMの愛弟子テッド・トンプソンを選んだ。シャーマン時代の失敗で選手層が薄くなったからか、トンプソンGMは最初の3年間でなんと34人の大量指名。なかでも、いちばん最初のドラフト指名が球団の歴史を変える最高の指名となった。
1巡QBロジャースと2巡FSコリンズはチームの中心選手として優勝の原動力となったが、3人目以降の指名は成功とはいえない。トップ2人も大活躍が始まったのはプロ4年目からで、即戦力が少なかったことが4勝12敗のチーム不振とシャーマンHCの解任にもつながった。
2005 Green Bay Packers Draft Picks | |||||
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Pick | 全体 | Pos. | Name | College | 備考 |
1巡24位 | 24位 | QB | Aaron Rodgers | California | いまやリーグを代表するQBの1人に |
2巡19位 | 51位 | S | Nick Collins | Bethune-Cookman | 3年連続プロボウル |
2巡26位 | 58位 | WR | Terrence Murphy | Texas A&M | 首のケガがあまりにも気の毒だった |
4巡14位 | 115位 | S | Marviel Underwood | San Diego State | ヒザのケガは不運だった |
4巡24位 | 125位 | LB | Brady Poppinga | Brigham Young | ストロングサイドLBで3シーズン先発 |
5巡 7位 | 143位 | C/G | Junius Coston | North Carolina A&T | 身体能力は高かったが |
5巡31位 | 167位 | CB | Mike Hawkins | Oklahoma | すべてにおいて粗削り |
6巡 6位 | 180位 | DE | Michael Montgomery | Texas A&M | 堅実な控えDEだが3-4は不向き |
6巡21位 | 195位 | WR | Craig Bragg | UCLA | プラクティス・スクワッド止まり |
7巡31位 | 245位 | LB | Kurt Campbell | Albany | 出場ゼロ |
7巡32位 | 246位 | OG | Will Whitticker | Michigan State | 1年目はスターターだがそれっきり |
1巡指名QBロジャース指名は決して狙っていたものではなく、運よく24位まで転がり落ちてくれたもの。ここで他球団と同じようにニーズを重視していたら現在の成功はなかった。2巡a指名(CBマッケンジーのトレードで獲得)のFSコリンズだけが1年目からスターターとなったが、3年目までは伸び悩んだ。前任者のFSダレン・シャーパーと同じく、4年目にブレークしてプロボウラーとなり、3年連続プロボウル選出を果たしている。
2巡b指名のWRマーフィはかなり良さそうな選手に見えたが、ルーキーシーズン序盤で首を負傷してそのまま引退。今は母校のある街で不動産業を営んでいる。彼が順調ならば翌年のWRジェニングス指名もなかったはず。4巡a指名Sアンダーウッドは2年目のプレシーズンでヒザの前十字靭帯を断裂し、その後は出場ゼロでキャリアを終えている。4巡b指名OLBポピンガは2年目から3年間先発ストロングサイドLBを務めたが、現在は一介のスペシャルチーマー。
5巡a指名C/Gコストンは恵まれた身体能力をフィールドで活かせず、3年目にRGスピッツの代役で7試合出場したのみ。2球団を経て昨年はUFLでプレーしていた。5巡b指名CBホーキンズはあまりにも粗削りで在籍は1年限り。身体能力が高いのでその後も6球団を渡り歩いたが、けっきょくモノにならなかったようだ。6巡a指名DEモンゴメリーは堅実な控えDEとして6年58試合に出場したが、3-4には不向きのため昨年退団している。
リターナーとしても期待された6巡b指名WRブラッグはプラクティス・スクワッド止まりで、けっきょく出場ゼロ。7巡a指名LBキャンベルも同様。7巡b指名のOGウィティカーは1年目こそ低レベルのベテランを押しのけてスターターに抜擢されたものの、2年目の成長がなかったため解雇。その後ドルフィンズとレッドスキンズに在籍したが出場機会なくNFLを去っている。
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マイク・シャーマンHCを解任し、マイク・マッカーシーを新HCに選んで迎えた2006年。1992年以来14年ぶりのトップ5指名となった。WRジャヴォン・ウォーカーのトレードで2巡4位指名権を手に入れ、それをさらにトレードダウンして指名権を増やしている。LBホーク、LGカレッジ、WRジェニングス、RGスピッツの4人が即スターターとなり、DEジョリーも2年目にスターター昇格。プロボウラーはWRジェニングス1人だが、実り多いドラフトだったのはたしか。
またこのオフにはCBチャールズ・ウッドソンとDEライアン・ピケットもFAで獲得している。就任以来6年間でトンプソンGMが獲得した高額FAはこの2人だけだ。
2006 Green Bay Packers Draft Picks | |||||
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Pick | 全体 | Pos. | Name | College | 備考 |
1巡 5位 | 5位 | LB | A.J. Hawk | Ohio State | 正直5位指名はもったいなかった |
2巡15位 | 47位 | OG | Daryn Colledge | Boise State | しぶとく先発LGの座を守る |
2巡20位 | 52位 | WR | Greg Jennings | Western Michigan | チームを代表するプレイメーカー |
3巡 3位 | 67位 | LB | Abdul Hodge | Iowa | センスに欠ける選手だった |
3巡11位 | 75位 | G/C | Jason Spitz | Louisville | 先発RGを務めたが先発C争いに敗れる |
4巡 7位 | 104位 | WR | Cory Rodgers | Texas Christian | (またも)キャッチできないリターナー |
4巡18位 | 115位 | CB | Will Blackmon | Boston College | 優れたリターナーだがケガに泣く |
5巡15位 | 148位 | QB | Ingle Martin | Furman | 2年目で解雇 |
5巡33位 | 165位 | T/G | Tony Moll | Nevada | トレードでレイヴンズへ |
6巡14位 | 183位 | DT | Johnny Jolly | Texas A&M | 3年先発したが薬物で出場停止中 |
6巡16位 | 185位 | S | Tyrone Culver | Fresno State | 現在ドルフィンズで控え |
7巡45位 | 253位 | DE | Dave Tollefson | NW Missouri State | 現在ジャイアンツで控え |
1巡指名LBホークは期待ほどのインパクト・プレーヤーではなかったが、ミスの少ない堅実な先発ウィークサイドLB(現在インサイドLB)として働き続けている。2巡a指名LGカレッジは山あり谷ありのキャリアながら、プロ5年間で欠場が一度もない。今年はFAで退団の見込み。この年最大のヒットは2巡b指名のWRジェニングスで、すでに5222yds・40TDを挙げて初プロボウルにも選ばれた。
3巡a指名のLBホッジは完全に期待外れで2年目の開幕ロースターに残れず、その後ベンガルズとパンサーズで控えLBを続けている。3巡b指名のG/Cスピッツは最初の3年間は先発右ガードとして安定した働きをしたものの、'09年にセンターに移ると腰のケガもあって不振に陥り、FAの今年は退団となりそう。4巡a指名WRロジャースはリターナー候補としての指名だったが、パントがキャッチできず開幕前に解雇されてCFLへ。4巡b指名のCBブラックモンは正リターナーとして活躍したシーズンもあったが、ケガに泣かされどおしで昨年退団。
5巡a指名QBマーティンは2年目のロースターに残れず、その後3球団を渡り歩いて最後はUFLへ。5巡b指名のT/Gモールは1年目こそ代役スターターとして10試合に先発したが、その後の成長が見られず、3年目にトレードでレイヴンズへ。6巡a指名DEジョリーは下位指名で最大の当たり。2年目途中からスターターの座をつかんだが、薬物絡みの不祥事で無期限の出場停止処分中。6巡b指名Sカルヴァーは2年目に解雇されてドルフィンズに移り、スペシャルチーマーとしてよく働いているようだ。7巡指名DEトルフソンも2年目に解雇され、現在ジャイアンツで控えとしてプレーしている。
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今回取り上げた5年間で最も残念なドラフトはこの年。1巡指名DEハレルはトンプソンGM時代最大のバストとなり、2位以下も中核選手に成長せず、ILBビショップが昨季ようやく先発の座を奪っただけ。デプス拡充には役立ったが、やはり低調な内容というべきだろう。契約延長を勝ち取ったのもILBビショップだけで、RBジャクソン、WRジョーンズ、FBホール、Kクロスビーの4人は今年FAとなる。
2007 Green Bay Packers Draft Picks | |||||
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Pick | 全体 | Pos. | Name | College | 備考 |
1巡16位 | 16位 | DT | Justin Harrell | Tennessee | トンプソンGM時代最大のBUST |
2巡29位 | 63位 | RB | Brandon Jackson | Nebraska | 3rdダウンバックとしてなら優秀 |
3巡14位 | 78位 | WR | James Jones | San Jose State | スターターにはちょっと物足りない |
3巡25位 | 89位 | S | Aaron Rouse | Virginia Tech | 長身セーフティの典型的失敗例 |
4巡20位 | 119位 | OT | Allen Barbre | Missouri Southern | ラインマンとしてのセンスに欠けた |
5巡20位 | 157位 | WR | David Clowney | Virginia Tech | 快速WRだがキャッチングに難あり |
6巡17位 | 191位 | FB | Korey Hall | Boise State | スペシャルチームでも頼りになる |
6巡18位 | 192位 | LB | Desmond Bishop | California | 4年目で先発ILBの座を奪った |
6巡19位 | 193位 | K | Mason Crosby | Colorado | もうちょっと勝負強さがほしい |
7巡18位 | 228位 | RB | Deshawn Wynn | Florida | 不熱心な問題児タイプ |
7巡33位 | 243位 | TE | Clark Harris | Rutgers | 現在ベンガルズでロングスナッパー |
1巡指名DEハレルは腰の問題に悩まされ続けたが、元気なときでも先発級の力はない。なんとかキャンプを乗り切った昨季は開幕戦でヒザの前十字靭帯を断裂。今夏が最後のチャンスか。2巡指名RBジャクソンはRBアーマン・グリーンの後任と期待されたが先発では物足りず、もっぱら小技を磨いて3rdダウンバックとして頑張っている。3巡a指名WRジョーンズは3番手としては悪くないが、WRドナルド・ドライバーの後継スターターには物足りない。3巡b指名Sラウスも明らかなバスト。計10試合で代役スターターを務めたがパスカバレッジが安定せず、3年目の序盤に解雇となった。
4巡指名OTバーバーは3年目に先発右タックルとなったがミスを繰り返してサックの山を築き、シーズン半ばで降格。昨年解雇され、シーホークスを経て現在ドルフィンズにいる。5巡指名WRクラウニーは不安定なプレーぶりで1年目のロースターに残れず。その後ジェッツでチャンスをもらったが結局芽が出なかった。6巡a指名FBホールはスターターとしてまずまずの働きを続け、スペシャルチームの中核でもある。6巡b指名ILBビショップは昨季ILBバーネットの負傷でチャンスをつかみ、スーパーボウル制覇に貢献して大型契約を手に入れた。
6巡c指名Kクロスビーは成功率8割を超えたシーズンがなく、FAとなる今年はチームにとって考えどころ。7巡a指名RBウィンは1年目に代役スターターとして平均4.1yds・4TDを記録したものの、精神面の甘さもあってオールラウンドな才能を活かせず、'09年かぎりで退団。7巡b指名TEハリスは1年目の開幕前に解雇されたがロングスナッパーとして活路を見出し、今はベンガルズで正ロングスナッパーを務める。
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1月にNFC決勝でジャイアンツに惜敗し、3月にはQBブレット・ファーヴが引退を発表。DTコーリー・ウィリアムズのトレードで2巡25位を獲得し、さらに1巡30位からトレードダウンしたので2巡指名権が3つとなった。QBブロームが完全なバスト、CBリーも期待外れ。しかしTEフィンリーとRGシットンがプロボウル級のタレントなので、全体としては合格点と言えるのではないか。
2008 Green Bay Packers Draft Picks | |||||
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Pick | 全体 | Pos. | Name | College | 備考 |
2巡 5位 | 36位 | WR | Jordy Nelson | Kansas State | 今年はスターター昇格なるか |
2巡25位 | 56位 | QB | Brian Brohm | Louisville | けっこう派手なBUST |
2巡29位 | 60位 | CB | Patrick Lee | Auburn | スーパーボウルではまずまずの働き |
3巡28位 | 91位 | TE | Jermichael Finley | Texas | ケガさえなければプロボウル |
4巡3位 | 102位 | DE | Jeremy Thompson | Wake Forest | 脊柱管狭窄症で早期引退は残念 |
4巡36位 | 135位 | OG | Josh Sitton | Central Florida | すでにチーム最高のOL |
5巡15位 | 150位 | OT | Breno Giacomini | Louisville | 長身OTの失敗例 |
7巡 2位 | 209位 | QB | Matt Flynn | Louisiana State | トレードのオファーがあるかも |
7巡10位 | 217位 | WR | Brett Swain | San Diego State | スペシャルチームで頑張っている |
2巡a指名WRネルソンは3番手として安定した働き。スターターに成長できるのか、来春FAとなって出ていくのか、今年が勝負の年になる。2巡b指名QBブロームはまったくの期待外れでQBフリンにも敗れ、2年目にプラクティス・スクワッドに入ったところをビルズが獲得。2年で2試合に先発してわずかレーティング26.0だった。2巡c指名CBリーもこれまでのところ期待外れで、昨季は5番手止まり。しかしCBにケガ人の出たスーパーボウルでは堅実な働きを見せた。
3巡指名TEフィンリーはWRに近いレシービングTEとしてNFLじゅうから恐れられる存在となり、昨季はヒザ半月板損傷さえなければプロボウルまっしぐらの活躍(4試合で301yds)だった。4巡a指名DEトンプソンは3-4ディフェンス移行とともにOLBへコンバートされたが、首を負傷して昨年春に引退を強いられている。4巡b指名RGシットンは知名度の低さで初プロボウルを逃したものの、すでにリーグ屈指のガードと見なされる存在に。TEフィンリー同様、今年は大型の契約延長が待っていそうだ。
5巡指名OTジャコミニは先発RT候補として期待されたが、けっきょくモノにならず昨年解雇され、現在はシーホークスにいる。7巡a指名のQBフリンは期待以上の進歩を見せ、昨年はペイトリオッツをアップセット寸前まで追いつめた。よいオファーが来ればトレードに出すのかどうか、今年の注目点の1つとなっている。7巡b指名のWRスウェインは控えWRの座を確保しているものの、トップ4とは力の差が大きく、スペシャルチーム以外の貢献はほとんどない。
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トレードアップして獲ったOLBマシューズが大当たりで、はやくもNFLを代表するディフェンス選手の1人に。NTラジも2年目に急成長し、彼ら1巡コンビがスーパーボウル制覇への重要な要素となった。T/GラングはOL4ポジションの控えをこなし、7巡OLBジョーンズも1年目から代役スターターとして活躍した。大ハズレだったのは5巡のOTメレディスぐらいで、その他の3人も控えでそれなりに貢献している。
2009 Green Bay Packers Draft Picks | |||||
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Pick | 全体 | Pos. | Name | College | 備考 |
1巡 9位 | 9位 | NT | B.J. Raji | Boston College | ディフェンシブラインの中心に |
1巡26位 | 26位 | OLB | Clay Matthews | Southern California | リーグを代表するディフェンス選手 |
4巡 9位 | 109位 | T/G | T.J. Lang | Eastern Michigan | 今年は先発LG争いに加わりたい |
5巡 9位 | 145位 | FB | Quinn Johnson | Louisiana State | 破壊力あるが成長がいまひとつ |
5巡26位 | 162位 | OT | Jamon Meredith | South Carolina | アスレチックだがOLのセンスなし |
6巡 9位 | 182位 | DE | Jarius Wynn | Georgia | 2年目はやや期待外れ |
6巡14位 | 187位 | CB | Brandon Underwood | Cincinnati | 昨年はちょっとした不祥事も |
7巡 9位 | 218位 | OLB | Brad Jones | Colorado | もう少しアグレッシブさが欲しい |
1巡a指名のNTラジは1年目こそケガで不本意な内容だったものの、先発ノーズタックルに固定された2年目はプロボウル補欠に選ばれる活躍。並外れた下半身のバネを活かしたパスラッシュも魅力だ。1巡b指名のOLBマシューズは今やスターの仲間入り。パスラッシュだけでなくラン守備やカバレッジにも優れたオールラウンドなところがいい。
4巡指名T/Gラングは1年目から代役LT/RTとして貢献。2年目は手首のケガで十分な成長が見せられなかったが、今年は左ガードでダリン・カレッジの後任スターター候補となっている。5巡a指名のFBジョンソンは時おり破壊力のあるランブロックを見せるが相変わらず不安定。先輩FB2人がFAとなる今年はスターターの座をつかめるか。5巡b指名のOTメレディスはアスレチック能力だけの選手で、開幕ロースターにさえ残れず解雇。ビルズ、ライオンズを経て現在はジャイアンツにいる。
6巡a指名のDEウィンはぎりぎりロースターに残っている。2年目の成長が期待ほどではなく、このままでは来季ロースター入りが危なくなる。6巡b指名のCBアンダーウッドは昨季3番手CB候補となったが期待を裏切り、スーパーボウルではアクティブ登録されず。伸び悩みが続くようだとそろそろクビが危ない。7巡指名OLBジョーンズは1年目に代役として7試合に先発(4サック)したが、昨年は肩のケガもあって伸び悩んだ。気が付けばゾンボやウォルデンの後塵を拝している。