開幕戦でエースRBライアン・グラントが大ケガを負って戦線離脱し、おかげでたいへん興味深いシーズンとなった。代役ブランドン・ジャクソンにやはりスターターの力はなく、その後マーショーン・リンチ(BUF→SEA)のトレードも検討したが、代償が高いためにけっきょく見送り。パスと見せてのドロー、かと思うとFB3人を投入しての超パワー隊形など、プレーコールの工夫によってなんとかラン回数を確保した。(ラン421回は'09年の438回からさほど減っていない)
今季はこのままかと諦めかけていたシーズン終盤、開幕から欠場を続けていた新人ジェームズ・スタークスが台頭し、タフな走りでプレーオフ快進撃に大きく貢献した。レギュラーシーズンに1試合20回以上キャリーしたのは第15週NE戦のジャクソンだけだったが、プレーオフではスタークスが4試合中3試合で20回以上キャリー。ラン守備1位のスティーラーズ戦だけは真っ向勝負を避けたものの、その他3試合では先行逃げ切りの形を作ることができた。
チームのラン1回平均は前年の4.3yds(11位タイ)から3.8yds(25位)へ、ランTD数も20回(5位)から11回(18位タイ)へと悪化。しかしボールセキュリティだけは今季も素晴らしく、なかでもジャクソンはラン190回・パスキャッチ43回でファンブルわずか1回、ロストはゼロだった。RB/FB陣全体のパスキャッチでは'09年の65回523ydsから67回519ydsへと横ばいだった。
今年はブランドン・ジャクソンが無制限FAとなるが、3rdダウンバックとしてのオールラウンドな能力、とくにパスプロテクションは非常によいので、できれば引き留めたいところ。スターター級のオファーは来ないはずなので、球団側がその気になれば再契約は比較的容易ではないか。スターターはグラントとスタークスの争いとなる見込み。ジャクソンが残留すれば補強の必要性は低く、あってもドラフト下位指名(できればリターナー能力がほしい)だろう。もし3巡以上で獲るようなことがあれば、高給のグラントの首が危なくなる。
グラントの代役として3年ぶりにスターターとなり、ラン703yds・パスキャッチ43回342ydsとキャリア最高の成績を残した。しかし1回平均では3.7ydsと苦しみ、平均3ydsを下回るゲームが7回、とくにシーズン後半は1回平均4ydsを超えたゲームが1回のみ。穴を選ぶときに慎重になりすぎ、その間に穴が閉じてしまう。逆に思い切りよく突っ込み過ぎてカットバック・レーンを見落とすことも。スターターの器でないことを改めて立証する形となり、プレーオフでは新人スタークスにスターターの座を譲った。
本来の3rdダウンバックの役割に限れば、ドロー、スクリーンパス、チェックダウンのパス、パスプロテクションとどれも申し分なく、とくにブリッツのピックアップとボールセキュリティには全身全霊で取り組んでいる。今年はFAとなるが、パス主体のチームだけに彼のような完成度の高い3rdダウンバックは重要。さほど問題なく再契約できると期待したい。
プロ入り直後のOTAでハムストリングを負傷、それが長引いてキャンプを全休し、開幕第6週までPUPリストに。ロースター合流後も実戦投入されず、このまま実質"レッドシャツ"でシーズンを終えるかと思われていた。しかし初登場の第13週SF戦で73ydsの活躍を見せると、プレーオフでは4試合すべて先発出場し、計315ydsを走ってシンデレラボーイとなった。恵まれたサイズを活かした縦への突破力にくわえ、力強く曲がることができ、なかなか倒れないタフなランナーだ。
大学時代は通算ファンブル19回・ロスト12回とかなりのファンブラーだったが、プロ入り後は7試合でファンブルゼロ。ただ危なっかしい瞬間は何度もあり、指導と努力でファンブル癖が改善されたのか、単に運がよかっただけなのか。パスキャッチ(大学通算127回898yds)はグラントよりずっと上手いが、パスプロテクションは不安定で、3rdダウンでの起用はまだ度胸が要る。コーチ陣は彼のポテンシャルを高く評価しており、今夏はグラントとの先発争いが期待される。
アリゾナ州立大からドラフト外でファルコンズに入団、開幕からプラクティス・スクワッドにいたところを、RBグラントを失ったパッカーズが獲得した。40yds走は4.63秒で、比較的がっしりしたパワー型に見える。ジャクソンがイマイチだけに彼をガンガン走らせるかと思われたが、使われたのはFBジョン・クーンの方だった。けっきょくラン36回95yds・パスキャッチ3回30ydsにとどまり、プレーオフも出場はPHI戦だけで、ラッシング機会なし。
今季あまり使われなかったのは、おそらくスキーム習得やボールセキュリティやプロテクションなど、細かい部分の不安もあったはず。フィールドに出てもモーションしてレシーバーになる場面が多く(ただし誰もひっかからない)、たまにボールを持てば力強いラッシングが何度か見られた。2年目の成長が楽しみな選手ではあるが、現時点ではロースター枠ぎりぎりにいる。
NYGからのトレード移籍以来3年間エースRBとして活躍したが、4年目の開幕戦で足首の腱を断裂する大ケガ。シーズン末に復帰できる可能性もあったが、本人の将来も考えてインジャリーリザーブ入りとなった。じっさいスーパーボウルの頃には「100%に近づいている」と本人が語っていたので、回復は順調なのだろう。今夏はスタークスと先発の座を争う。4年契約の大事な最終年を迎え、パッカーズだけでなく他球団に対しても能力をアピールする必要がある。