レッド・マコームズ現オーナーから、アリゾナの実業家レジー・ファウラー(率いる投資家グループ)へのヴァイキングス売却($625ミリオンと言われる)が2月に発表されてから、NFLの承認待ちの状態がこれまで続いてきた。黒人初のオーナーということもNFLとしては世間体への絶好のアピールになり、売却は順調に進むはずだった。
しかし最大の問題はファウラーの資金力がぎりぎりであることで、筆頭オーナーとなるには全体の3割を出資しなければならない、というNFL側の規定がクリアできないらしい。そこでファウラーの事業の一つ、飛行機操縦シミュレーターの会社を売却して資金を確保する、という話だったが、売却先とされた会社をStar Tribune紙が調べてみるとどうやら実態のない幽霊会社のようで、ややうさんくさい話だった。
そこで最近になって、ファウラーに代わって、ニュージャージーの不動産ディベロッパーのジグムント・ウィルフが浮上してきた。もともとこの投資家グループの一員だったったウィルフが筆頭オーナーに進み、ファウラーはマイノリティ・パートナーに退くことになったのだ。ウィルフ本人はまだ否定しているが、複数の情報筋が確認済みとしている。この交代によって、5月24日からのNFLオーナー会議で、売却が正式に承認されるものと予想されている。これももちろん、ウィルフの資産状況をリーグ側がチェックしてからの話だ。
ジグムント・ウィルフは、「ホロコーストの生き残りの息子」とのことなので、ユダヤ人。フットボールを非常に愛していて、30年にわたってNYジャイアンツのシーズンチケットホルダーだったとのこと。
いっぽう、新スタジアム建設の問題が、球団移転と絡んで注目されるところ。結論から言うと、今のところロサンゼルス等へ移転する心配はない。ウィルフ自身もこのほど、移転の可能性を強く否定したところだ。移転という言葉を口にすることがあっても、それはあくまで、自治体の側に圧力をかけるための手段にすぎないはずだ。
建設地の最有力候補として、1年半ほど前から、ミネアポリス北方のアノカ郡が誘致計画を推進してきた。アノカ郡ブレイン市の400エーカー(約1.6平方キロ)の土地に、ドーム球場、ホテル、医療施設、オフィススペース、マンションなどを建設しようという総額$1,600ミリオン(1.6ビリオン)の大プロジェクトだ。
ところが最近になって、新オーナーとなるジグムント・ウィルフが2回ほどミネソタを視察し、アノカ郡の東方(ミネアポリス東北方)にある「リノ・レイクスがいい」とか、「屋根なしスタジアムの方がいい」と言い出して、アノカ郡当局を当惑させている。建設予定地の地権者たちと用地買収交渉をする上での駆け引きとして言っているという見方もある。とにかく巨額の建設資金を誰がどのように負担するのかが焦点で、このスタジアム問題はまだまだ曲折が予想される。