グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2005年1月18日

少年のために

苦戦の続く試合をランボーフィールドのスタンドで観戦していた少年クリストファーは、隣の母にしきりと話しかけた。「ねえ、下に(フィールドに)行かなきゃ。ブレットと話さなきゃ・・・」。 母クリスティーンは、「ついさっき、サイドラインでファーヴと会って、抱きしめて貰ったばかりなのに、なぜそんなことを」と怪訝な顔をした。「僕と話をすれば、もっとうまくいくはずなんだ」とクリストファーは説明した。彼はそんな子だった。重い病と闘いながら、自分の境遇に文句を言うこともなく、笑顔で、いつも他人を心配している。

テキサス北部、ダラス近くのウェザフォードに住む8歳の少年クリストファー・フォピアノは、重い脳腫瘍に冒されている。5回の手術の甲斐もなく、残された命は6ヶ月、長くて1年、との宣告がこの12月に下されたばかりだ。クリストファーが大好きなブレット・ファーヴのプレーを見るためには、残された時間はあまりにも少ない。たぶんクリストファーに来シーズンは来ないのだ・・・・。母クリスティーンは、藁にもすがる気持ちで、ブレット・ファーヴ公式サイトの掲示板にメッセージを書き込んだ。(実物

熱心なパッカーズファンでシーズンチケット・ホルダーでもあるトリップ・ハーディンがこのメッセージを見かけたのは、すでに数日経った1月4日のこと。ファーヴ本人もその掲示板を時々チェックしていて、返信を書き込んでくれることもあるが、大事なプレーオフの時期に、そこまでは期待できない。そう思ったハーディンはパッカーズの地域活動部門に連絡を取り、ついにブレット・ファーヴへと希望の糸がつながった。パッカーズは"Make a Wish"プロジェクトに賛同し、これまでも体の不自由な子供の希望をたくさん叶えてきたが(12月の記事参照)、今回はファーヴ本人のリクエストによる特別な招待だ。試合のチケットは、ハーディンが自分のものをプレゼントした。飛行機については、ハーディンの父が貯めた"マイル"を寄付してくれた。

フィナンシャル・アドバイザーとして銀行で働く45歳のトリップ・ハーディンは、ようやく様々な手配を終え、クリストファーの母クリスティーンに連絡を取った。「彼女は電話のむこうで泣き出してしまい、もちろん私も同じようになってしまった。"泣いちゃいけない、銀行のオフィスで泣くもんじゃない"と自分に言い聞かせたよ」。 こうしてクリストファーとクリスティーンの母子は、金曜日にウィスコンシンへと飛んだ。夢のような週末の始まりだった。

土曜日の朝、2人はパッカーズの練習を見学した。ファーヴたちパッカーズ選手数人との昼食。1時間近く、ファーヴと話をすることができた。午後はランボーフィールドのツアー。最後には"サプライズ"が待っていた。ファーヴの隣に自分のロッカーが用意され、"FOPPIANO"の名前の本物のジャージーがかかっているのを見て、クリストファーがどれほど驚いたことか。

日曜日はさらに驚きの連続だった。試合前、母子はサイドラインに招待された。選手たちが次から次へとそばを通りかかり、クリストファーと話をしていく。いろいろなプレゼントももらった。そしてブレット・ファーヴがフィールドに現れた。彼はクリストファーの隣にヒザをつき、何分もの間、親しく話をしていた。試合が始まる前に、ファーヴはクリストファーを強く抱きしめた。

第3クォーターまで観戦したところで、体に障りがあるために観戦を切り上げ、母子2人はランボーフィールドを後にした。ハーディンが運転して、2人をホテルまで送り届けた。試合は残念な結果になったけれど、少年クリストファー・フォピアノにとって、生涯で最高の週末だった。

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