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けんちゃんの第32回スーパーボウル観戦記 (その3)

96年のシーズンインを前にしてグリーンベイの町は燃えに燃えていた(と、思います)。無理もありません、前年のNFCチャンピオンシップで宿敵カウボーイズをあわや、というところまで追い詰め、「スーパーボウルまで後15分」が合言葉になっていたのに加えてQBフアーヴは『スーパーボウルか、しからずんば死か』と吠えまくっていたんです。

でも、私は信用してなかったね。怪我だってあるし、カンファレンス内の熾烈さもNFC随一。そうは問屋が卸すものか。案の定、お約束通りメトロドームで負け。11月のチーフス、カウボーイズ戦がヤマなのは誰だってわかりますわね。これも負け・・・でも、負けたのはこれだけでした。たった、みっつ。

あとは・・大丈夫、12月にランボーフイールドでやるプレイオフ、負けるわきゃあねえ。いや、いや、こういう時って以外と・・。お願いだから、ここまで来て負けないでね。せっかく天敵がこけてんだから。グリーンベイの人たちは『うい・うをんと・だらす』なんて言ってたけど、余裕あんなあ。オレなんかもうスーパー行けるんだったら、贅沢言わない、もう敵は誰だっていい。不戦勝でもいい。

「大変だ、ニューオリンズ行かなきゃ」   でも、行けなかった。だって、呆けてしまって何も手につかなかったよ。

肩車されるホルムグレンHC

スーパードウムでホルムグレンが肩車されてた。優勝しちゃった。終わったなあ、あああ。嬉しい・・というより力が抜けました。意外とあっけなかったなあ・・いや、そんなことはない。29年が短い訳、あっけない訳ないじゃん。お前、ぼけちゃって何もわからなくなってんだよ。平凡だけど、29年間よりスーパーまでの2週間の方がずっと長かったような気がします。うそじゃありません。29年待ったことのある人にはわかります。そう言えば第4Qも長かったなあ。

その内、だんだん、だんだん嬉しくなりました。何度も何度もハワードのキックオフリターンが夢に出て来ました。春までビデオばっかり見てました。

先制TDパスを決めたQBファーヴ デズモンド・ハワードのキックオフリターンTD フリーマンへのTDパスを決めたQBファーヴ 3サックを挙げたDEレジー・ホワイト

◆ ◆ ◆

Packersとの約束を果たさなきゃいけない。去年、破っちゃったんだから。1997年のシーズンの下馬評は圧倒的でした。1972年のマイアミ以来のパーフエクトシーズンの噂さえありました。今度は私も疑いませんでした。1998年1月25日にはサンディエゴに行く。Packers、待っててね。今回は私も余裕がありました。第13週のランボーフイールド。『うい・うをんと・だらす。』  敢えて結果を知らずにBSで見ました。いやー、近藤アナのあの台詞、まだ耳朶に、残ってるなあ。

強いわあ、グリーンベイ」 ああ、気持ちええ。

全勝とはいかなかったけれど、この年も負けたのはみっつだけ。その3敗はちょっとひどかったけれど、これも「らしい」と言えば、らしい。予想通りデビジョン優勝、余裕のプレイオフです。去年の轍を踏む訳にはいきません。プレイオフ突入と同時に私もチケット入手の準備(まだ、あくまで「準備」です、勿論。)に突入しました。何しろ、名にし負うプラチナペーパー、スーパーボウルのチケットです。

この頃、奥田秀樹さんのホームページがあって、何度かお邪魔して言いたい事を言わせてもらっていた経緯があったので、奥田さんにお尋ねしてみました。ご存じの方も多いと思いますが、奥田秀樹さんは時々「フットボールマガジン」などにNFLの記事を寄稿されているアメリカ在住のフリーライターの方です。現在はGAORAに毎週NFLの勝敗予想を掲載されています。ご同情申し上げます(だって、NFLの勝敗予想って大変だと思わない?)。

奥田さんのお言葉は『スーパーボウルのチケットは必ず手に入ります。』という心強いものでした。ただし、『ただし』がついていいました(ややこしい)。『ただし、お金に糸目さえつけなければ。』

私がお金に糸目をつけたか、筋目をつけたか、はたまた切れ目をつけたかは敢えて言わないでおきます。ともかく、お忙しい中、奥田さんは業者の名前、連絡方法、注文する際の注意事項など事細かにアドバイスして下さいました。日本の業者にも連絡をとりました。言葉の不安もありましたし、聞けばチケットは試合前日に宿泊ホテルに届ける、と言うではありませんか。もしも、万一届かなかった場合、アメリカのエージェントでは文句も言えないじゃないですか。その点、日本の業者なら帰国後文句も言えます、その社屋に火をつける事もできます(「弘前」の犯人捕まって良かったあ、わたしゃ、知らんよ)。

日本の業者の代表の方もとても親切な方で、聞けばもともとNFL、Giantsの大ファンで病、膏肓に入る(古いなあ。そんな言葉、誰も知らんぞな、もし。)と言うのか、例の湾岸戦争のスーパーでチケット入手に大変な苦労されて、「いっそ、それならば」と、以来この世界に入ってしまった、とおっしゃっていました。年来のPackersファンだ、と言うと『おお、おお、それはそれは、大変なご苦労を・・』と同情されて、(電話でしたが)ひとしきり昔話に花が咲きました。この方なら大丈夫、帰国後火をつけなければならないような事にはならないでしょう。『あれ以来ウチはスーパーには縁がない』とおっしゃっていましたが、去年はタンパで悔しい思いをされたのでしょうか。

RBレヴェンズは114ydsの大活躍
そうこうするうちに鎧袖一触(楽勝、ね)、Packersはお約束通りタンパとサンフランをやっつけました。さあ、もう後にはひけません。あまり値段が違うようならそれでも考えようか、とも思っていましたが、僅かな手数料の違い程度でしたし、昔話につきあわさせた手前もあったので、奥田さんには充分にお礼を言った上で(サンディエゴにお饅頭も持って行った)、先の日本の業者の方のお世話になる事にしました。

肝心な価格は、プラチナペーパーの常で株と同様に上がり下がりするようです。業者の方のお話では対戦相手が決まった瞬間には高騰し、以後ますます値上がりしていくか、沈潜化するかは、そのカードの人気次第だ、と言う事でした。という事で、「ぎりぎりまで様子見」という判断もありそうでしたが、例のGiantsの大ファンの方の『こう言っちゃあ何ですが、30年も待たれたんですから、今さら僅かな値段の差を気にされるよりも、いっそ、もう決断されたら・・』と言う一言が私の背中を押しました。

その後もチケットは上がり続け、結果的に私の決断は正しかったことになりました。私が求めた時の価格は1000ドル以上、2000ドル以下だった、とだけ言っておきます。『たかが、3時間ばかりのフットボールの試合に1000ドル以上!』なんて、失礼なことを言う奴は私の友人にはいません。
『ほっといてんか、あんたに迷惑かけてへんやろ。』 
 勿論、敵がカミさんの場合はこの台詞も通用しません。

しかし、ウチのカミさんは独身時代の何度目かのデートの時(30年近く前の話です)、西宮北口の洋書屋さんで偶然「Vince Lombardi on football」を見つけた私が有り金はたいてもまだ足りず、カミさん、じゃない、その時は花も恥じらう乙女でしたが、に助けてもらい、重い2冊を小脇に抱え、その日のデートは上の空、何を言っても『ふん、ふん、ハイ、ハイ』しか言わず、電車が来るや、飛ぶように帰っていった私を知っている人です。とっくの昔に諦めている・・(と、思う)。

それにしても、これで一番安いチケットなんです。ジャスティンさんのプロボウルではないけれど、ファーヴもエルウェイも見分けがつかないかも知れないが、それもやむを得ない・・と思っていましたが、実はこれが後にとんでもないことになったんです。

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updated : 2002/03/10