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Draft Notebook 10: DE Lawrence Guy
グリーンベイ・パッカーズ ニュース
2011年6月 5日
ドラフト指名選手紹介の最後は7巡30位(全体233位)指名のDEローレンス・ガイ(アリゾナ州立大)について。指名直後の記事も参照のこと。高校・大学と主にDTをプレーしてきたが、パッカーズでは3-4のDEに挑戦することになる。
- ネヴァダ州ラスヴェガス出身。父は男手ひとつで3人の息子を育てた。末っ子のローレンスは高校では主にDTをプレーし、3年時は89タックル・12サック、4年時は102タックル・15.5サックの大活躍。卒業時は全米からも高く評価され(ESPNでは州内のDTランク1位、Scout.comではDLとして全米12位)、アリゾナ州立大のほかミシガン、ネブラスカ、オクラホマ、テネシー、オレゴンといった数々の有力大から誘いがあった。
- 注意欠陥障害と失読症のため、特殊学級に入れられた時期も(中学のころか)。太った典型的ないじめられっ子で、彼をいじめていた子を殴った兄が法的処分を受けたこともあった。父が学校を説得して一般学級に戻ったちょうどそのころ、彼の体は大きくなりはじめ、みるみるうちにフットボールで頭角を現した。
- アリゾナ州立大でも最初は学業で苦労し、いったんは落第寸前に。かつての特殊学級のようで嫌だと渋る彼をフットボール部の学業カウンセラーが説得し、同大の Disability Resource Center に通うことになった。同センターでは全クラスで個人チューターの指導を受けることができ、新しい勉強の仕方を教わり、試験では必要なだけ時間をかけてよくなった。懸命な努力の甲斐あって成績はぐんぐん向上し、昨年の春学期は平均成績点3.5点(4点満点)。同大が学業優秀なアスリートに与える"Scholar Baller"の称号も手に入れた。
- フットボールでは、レッドシャツを経ず大学1年目から8試合に先発(全試合出場)して44タックル・2サック。2年目は37タックル・4.5サック。3年目の昨季は41タックル・1.5サックと、数字的には3年間横ばいが続いている。ポジションは主にDT(3テクニック)で、パスシチュエーションではDEに入ったり、3-4隊形のノーズタックルをやることもあったらしい。
- 学習障害と闘ってきた経験を買われ、地元の子供たちにスピーチをする側に回ることに。周囲の目を恐れたり障害を恥じることなく、専門家の助けを積極的に受け入れよう、と訴えている。
- それだけに、大学卒業を棚上げにしてアーリー・エントリーする決断は、周囲の誰にとっても驚きだった。 「新しいことにチャレンジしたい。NFLは最大のチャレンジだ。僕にはすごい熱心さがある。自分ならやれる。3年間プレーしたチームと別れるのは一番難しい決断だった。いずれ学位を取る考えはまったく変わっていない。目標の1つとして、部屋に掲げてあるんだ」
- レッドシャツを経ず、3年プレーしてアーリー・エントリーしたのでまだ21歳2か月の若さ。
- パッカーズにとってアリゾナ州立大からのドラフト指名は、1995年1巡のCBクレイグ・ニューサム以来16年ぶり11人目。最も長く活躍したのは1985年5巡のLBブライアン・ノーブル(117試合出場)。現在のロースターにはRBディミトリ・ナンスがいる。
- コンバインでは40yds走4.96秒をはじめとして、DTとしては平均的な数字が並んでいる。コンバインでは多くの球団と各15分の面談をこなさなければならないが、理解に時間がかかるたちだけに、面談の出来は芳しくなかったらしい。4巡あたりの予想が多かったのが7巡まで落ちたのは、そういったことも理由か。
- 4-3ではDEとDTのトゥイーナー気味で、3-4のDEにはうってつけのタイプに見える。身体能力に頼ったプレーぶり、テクニック的にはやや未熟。それだけにもう1年大学に残るべきという声が多かった。
- パッカーズでは先発右DEのカレン・ジェンキンズがFA移籍の見込みなので、右OLBと並んで最重要補強ポイントと見られ、7巡まで指名がなかったのは意外なところ。現時点では、2年目のマイク・ニールが暫定スターター、控えをハワード・グリーン(NT兼任)、C.J.ウィルソン、ジャリアス・ウィン、そしてこのローレンス・ガイたちが争うことになりそう。
- 背番号は未定。大学時代は50番だった。
- 本人のコメントから。
- 「僕はクイックなプレーヤー。ハードヒットが好きだ。これがオレだ、と見せつけるようなね。それにプレー途中で諦めるのが嫌い」
- 几帳面にも全球団の電話番号を登録してあったので、パッカーズからの指名電話だとすぐにわかったという。 「ドラフト前に接触してこなかったから、パッカーズの指名は正直とても驚いた。ダラス、サンフランシスコ、マイアミ、ヒューストン、シアトルといった球団を考えてた。この2か月のうちにコンタクトがあった球団から指名されるものと。今は素晴らしい気分だし、スーパーボウル連覇に自分も貢献できると期待してる。(指名直前に)パッカーズから電話があって、グリーンベイ・パッカーズの一員になりたいかと聞かれ、『もちろんです!』って答えたよ。 よいチームどころじゃない、素晴らしいチームなんだから」
- 注意欠陥障害と失読症の影響は学業だけでなくフットボールにも及ぶ。 「プレーブックを見て、そのとおりに体を動かしてみて、またプレーブックを見る、というやり方。なんでも図に描いたりして、ビジュアル化するのがいい。何度も体を動かしてみて、完璧にしていく。すべてのプレーでそれを繰り返すんだ。頭の中とフィールド上で体を動かして。自由時間には自分の部屋でもそれをやっている」
- 「ネガティブなことを信じず、ポジティブな人間でいようと努めている。人から尊敬される人間になろうと。学習障害のある学生というステレオタイプを打ち破ろうと努力してる。アスリートについてのステレオタイプな見方が僕は好きじゃない。僕はフットボールだけの人間じゃない。そんな風に見られたくない」
- 学習障害を乗り越えて大学フットボールで成功を収めたため、問題児たちを前に講演をすることも少なくない。 「子供たちは僕の目を見て僕の物語を聞き、僕の経験したことを理解し、自分の人生に希望を持ってくれる。それを見て僕も胸がいっぱいになる」
- 指名直後、電話でパッカーズのコーチたちとひと通り話を終え、ようやくNFL入りの実感が湧いた彼はため息をついた。 「特殊学級にいた8年前、誰がこんなことを想像しただろう? これだけ多くの困難と闘わなければ、僕はいまこうしてここにいなかったと思う。おかげで僕はより強い人間になれた」
- テッド・トンプソンGM。 「彼はとても速く走れるビッグマンだ。アーリーエントリーでもあり、まだ成長途上だと思う。ディフェンスのスタッフ、とくにマイク・ターゴヴァックDLコーチが彼のことをよく研究した。ウチのディフェンスを向上させてくれる能力を彼は数多く持っている」
- アリゾナ州立大のクレイグ・ブレイDCは、かつてオレゴン州立大でILBニック・バーネットを指導したこともある。
- 「彼はウチの最高のインサイド・ガイ(つまりDT)だった。インサイドの選手がダブルチームされるのは普通だが、彼はその頻度がさらに高かった。相手はチョップ・ブロック(映像)やカット・ブロックを仕掛けてきた。そうしたことで結果を出せず、彼もフラストレーションをためていた。それもアーリー・エントリーの理由の1つだろう。自分ばかり狙われている、というのがね」
- 「40yds走のタイムだけでは(彼の速さは)十分表現できないと思う。なぜあれに追いつけるんだ、と驚かされる場面がこれまで何度もあった。モーターがフル回転しているときの彼はすごいよ。あと彼に必要なのは、よりクリエイティブなパスラッシュと、スクリメージでより激しくプレーすることだ」
- 「時間はかかるけど、彼はとてもよくフットボールを学んだよ。キャリアを通して非常にアサインメントがたしかだったし、アサインメント・ミスは滅多に犯さなかった。ウチはNFLのような複雑なディフェンスではなかったが、彼がよい仕事をしていたのはたしかだ」
- 「大学に入ったころと同じように、プロでは無名の存在に戻ることができる。キャンプで経験を積めば、きっとチャンスがあると思う。7巡指名選手としては、あらゆる機会をつかんでよい印象を与え、それを積み重ねていかなければならない。よい結果が出るのを期待している」
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