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2008 NFL Draft Notebook
グリーンベイ・パッカーズ ニュース
2008年4月26日
今週土日はいよいよ第73回NFLドラフト。今年は大きな変更がいくつかある。
- 会場は3年連続でニューヨークのRadio City Music Hall。マディソン・スクエア・ガーデンなど、長きにわたってニューヨークで開催されてきたNFLドラフトだが、今後は別の街で行うことも検討され始めたところ。TV中継は29年連続でESPNが担当する。
- これまでは初日にドラフト3巡まで行われていたが、今年から初日が2巡まで、2日目に3巡から7巡の指名が行われる。
- 開始時間がこれまでより3時間遅くなり、米東部時間の土曜午後3時(日本時間は日曜午前4時)にスタート。2日目は逆に1時間早くなり、日曜午前10時(日本時間午後11時)開始となっている。
- 指名までの持ち時間も変更。1巡が各球団15分から10分に、2巡が10分から7分に短縮された。3巡以降は5分のまま変更なし。
- 今年は合計252人の選手が指名される。
- ニューヨークのドラフト会場には、毎年5人か6人の上位指名候補が招待され、家族とともにグリーン・ルームと言われる部屋で指名を待つ。2005年にはQBアーロン・ロジャースが1巡24位まで下がったため数時間グリーン・ルームに取り残され、大きな同情を集めた。
- 日本のプロ野球とは違い、各球団の首脳はドラフト会場に姿を見せない。各球団本部にいわゆる"War Room" つまり作戦司令室を設営し、そこで戦略を話し合ったり、電話でトレードの交渉をしたりする。長丁場なので普段着でリラックスし、途中でサンドウィッチをパクついていたりする。ドラフト会場には球団の代表者(実際は下っ端)が派遣され、"War Room" からの電話による指示を待つ。指名選手が決まると、電話を受けたその代表者がカードに書いてリーグ側に提出する。
- 制限時間内に指名カードを提出しなかった場合、次のチームが先に指名してもよい。それでも元のチームがぐずぐずして指名しなければ、さらに次のチームが指名してもよい。実際にそのような事態が過去にはあったため、次に控えるチームの代表者は、最近ではカードを2枚持ち、「前のチームが時間切れとなったらこの選手を」とダッシュに備える。
- 指名に時間がかかるのは、たくさんのチームと常にトレード交渉をしているから。10以上のチームと話し合うのも珍しくないが、両者が条件を真剣に検討するような交渉になるとは限らない。指名が早いければ「最善の選手だとよほど確信があるのだろう」と推測できるが、制限時間いっぱい使ったからといって自信がないわけではなく、あらゆるオファーを検討しているだけ。
- たいていの場合、トレードアップよりもトレードダウンの需要が多い。少し詳しくなったファンであれば、なぜトレードダウンしないのかと不満を持つことが少なくないが、打診をしてもトレードアップしてくれる球団がないのだから仕方がない。
- 好選手が予想外の下位まで残っていた場合に、複数球団のトレード交渉が盛り上がりを見せることがある。しかし実際は、前日までに「もしウチの欲しい選手がその順位で残っていたら、この条件でトレードに応じるか?」といった内容の下交渉をたくさんのチームと進めておくのが普通で、外側から見るほどには当事者はヒートアップしないものらしい。
- 指名選手が決まると、球団からその選手のところに「これから君を指名する」と電話をするのが普通のようだ。家族や友人たちと集まってドキドキしながらドラフト中継を見ていた選手は、「友達からのイタズラではないか」と半分疑いながら、GMやヘッドコーチなど球団首脳からの電話を受けることになる。「見慣れない市外局番なので本物とわかった」という後日談が多い。
- ドラフト2日目が終了すると、ドラフト外選手の獲得が可能になる。これは全くの自由競争。複数球団から誘いのある選手は数千ドルから1万ドル以上の契約ボーナスを手にするが、ゼロのこともある。最近は全体に相場が上がっているようだ。
- ドラフト指名選手は、(通常7月キャンプ前に成立する)正式契約の前はロースター枠(80人)にカウントされない例外扱いとなっている。しかしドラフト外選手は契約したところでロースターにカウントされる。
- ドラフト当日のパッカーズの"War Room"は2006年・2007年のような雰囲気になっている。白髪のトンプソンGMが長テーブルの端に座り、その隣がマッカーシーHC、ジョン・ドーシー・カレッジ・スカウト部長、GM補佐のジョン・シュナイダー、レジー・マッケンジー・プロ人事部長の順になる。
- "War Room"の中核は上記のメンバーだが、話し合っている選手のポジションのコーチや(ドラフト前のスカウティングにも当然加わっている)やスカウトたち、ケガの前歴がある場合には、チームドクター(コンバインで診察をしている)も話し合いに加わることが少なくない。そのため"War Room"の周囲にはかなりの人数が常時たむろし、出たり入ったりしている。指名選手のグリーンベイ訪問の手配など、事務方もそのまわりで忙しく立ち働いている。
- 準備が終った"War Room"の壁の様子はこちら。2003年の写真なのでトンプソン体制になっても同じかどうかはわからないが、大きな違いはないはず。ロン・ウルフGM時代から今に至るまで、パッカーズのスカウティングはシステマティックかつ徹底しているとの定評がある。
- 上の写真を見ると、"War Room"の東側の壁には、最も重要な"Draft Board"がセットされている。数百人もの大学選手をランク付けした極秘リストであり、1年がかりのスカウティングと、果てしない会議の末に出来上がった努力の結晶。まさにトップシークレットなので、この写真ではカバーで覆われ、普段も漏洩しないよう厳重に鍵がかけられているらしい。選手名の書かれたカードの裏にはマグネットがついていて、実際に指名された選手から順に、一枚一枚、カードが外されていく。
- 南側の壁には現在行われているドラフト指名が表示される。西側の壁には、NFL全チームのロースター表が掲げられている。各選手の価値を評価したリストも揃っていて、トレードに備えている。北側の壁にはパッカーズのデプス・チャート。
- パッカーズは毎年Packers Draft Partyというイベントをランボーフィールドのアトリウムで開催する(2007年写真)。大画面の前で選手とファンが一緒になってドラフトを楽しみ、トンプソンGMやマッカーシーHCへのインタビューや選手サイン会など、さまざまなイベントが用意されている。
- 2005年にまとめたドラフト用語解説はこちら。