「まさに一生に一度の体験だったね。今でも胸がドキドキしてるよ」と語るのは、ウィスコンシン西部のモンロー郡に住むマッコイ夫妻。パッカーズファンにとって、ブレット・ファーヴに会うだけでも夢のようなことだが、そのブレット・ファーヴが自分の家にやってきたのだ。
農場を営むマッコイ夫妻の所有する森に、アーチェリー用品の会社のジョン・ダドリーが、何度か狩りに来たことがあった。ある日ダドリーに、「有名人を狩りに連れてきていいか」と聞かれ、アル・マッコイは、「その人に会わせてくれさえすればいいよ」と答えておいた。そして昨年10月17日の午後4時ごろ、男たちの乗ったトラックが敷地に入ってくるのが見えた。6時半ごろアルが乳絞りを済ますと、ひと仕事終えた男たちがトラックで家にやってきた。
アルとナンシーのマッコイ夫妻にとっては、まさにびっくり仰天だった。あのブレット・ファーヴがQBダグ・ピダーソンとTEウェスリー・ウォールズを連れて、キッチンに入ってくるではないか。彼ら南部出身の男たちは、シーズン真っただ中にもかかわらず、金曜日の空いた時間を利用して好きなハンティングを楽しみに来たのだった。
「ごく普通の男たちのように見えたよ。フットボールの話は全くしなかった。私も彼らをハンターとして扱ったんだ」とアル・マッコイ。この日、ピダーソンは8ポイントの大きさの牡鹿を仕留めた。ウォールズにもそのチャンスがあったが、矢は鹿の後ろに逸れたらしい。そのためにウォールズは、ファーヴとピダーソンに冷やかされていた。
ファーヴがこの辺りの丘の素晴らしさを褒めると、「しかし歳のせいで、年々、坂がきつくなる」とアルは答えた。するとファーヴも、「僕も年々、フィールドが広くなっていくんだ」と笑った。 ファーヴの連れてきたパイロットが、左上の写真をカメラに収めた。しかし、マッコイ夫妻の記念品はこの写真だけではない。「3人で、ウチのキッチンテーブルにサインしてくれたんだよ」
「みんなほんとうに体がデカかったなあ。この写真を見ればわかるだろう。ブレットと握手した時には、あの大きな手と比べると私の手なんかとてもちっぽけだった」とアル・マッコイは振り返る。
この日帰り旅行がまずかったわけでもなかろうが、2日後のラムズ戦でパッカーズは敗れ、しかもファーヴは大事な親指を骨折してしまう。「でも私はチームが負けたことも、ブレットが骨折したことも、責任を取るつもりはないよ」とアル・マッコイは嬉しそうに話すのだった。