グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2011年11月29日

仲間をモティベートする52通りの方法

2年前の@ラムズ戦の直前、WRドナルド・ドライバーのところへQBアーロン・ロジャースが「これ見て」とゲーム・プログラムを持ってきた。そこには、「盛りを過ぎたベテラン・レシーバー。年をとってもうインパクトはない」といったことが書かれていた。ドライバーは血が煮えたぎるのを感じた。ゲームでは95yds、1TDの活躍で侮辱に応えた。

「僕はアーロンのこういうところが大好きなんだ。僕が批判されることがどれだけ好きか、彼はよくわかってる。世間は僕にあれができないこれができないという。僕はそれが間違っていると証明する。アーロンがあれを見せてくれて、ものすごくモティベートされた。本番で高いレベルでプレーしてやろうというね。彼は今も僕をプッシュし続けてる」

ロジャースはモティベーションの力を知り抜いている。高校の通学バスで「お前など大学でやれるわけがない」と言われたこと、大学から奨学金を断られたこと、ドラフトで指名を見送られたこと、そして先発昇格最初のファミリーナイトで地元ファンからブーイングを浴びたこと。アスレチック能力が足りないと言われ、ケガがちだと言われ、第4Qで逆転勝ちできないと言われ、偉大な前任者に及ぶわけがないと言われた。彼はそのすべてをモティベーションの元にしてここまで成長してきた。

そして今度はそれをチームメイトに対して活かそうとしている。ちょっとした視線で、ちょっとした言葉で、サポートの言葉をかけることで、仲間のより大きな力を引き出していく。52人のチームメイトの心を動かすのに決まった方法はなく、それこそがロジャースにとっての秘訣といっていい。彼はチームメイトのことを学び、どこを押すのが最善なのか理解しようとしている。

「彼がこれほどの成功を収めているのはそのせいだよ。ただ自分自身がよいプレーをするだけじゃなく、自分の周りの選手によいプレーをさせることなんだ」とQBグレアム・ハレルは言う。

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練習ではDL選手と戯れているロジャースだが、オフェンス選手は彼の"The Look"(じっと見ること、にらむこと)の対象になりたくないと思っている。ある日の練習でTEトム・クラブトリーが珍しくブロッキングをミスしたとする。顔を上げると、ロジャースがじっと見ている。 「あの視線はすごく効くよ。とても役に立つ。練習で失敗しておけば、本番でやらかすことはないからね」

パスの落球、メンタル・エラー、気のないプレー。 すると、氷のようなコバルト・ブルーの瞳がその選手を見つめている。けっして長くはないが、罪悪感を感じさせるに十分な程度に。 「緊張感がなく75%の力でルートを走るなんて許されないからね。そんなことしてたらタイミングが合わず、彼は僕らに腹を立てる。そのおかげで僕は前進できるんだ。誰だって彼ににらまれたくない」とWRジョーディ・ネルソン。

RGジョシュ・シットンは言う。 「時どき彼の表情に現れる。おいしっかりしろ、とね。彼は怒鳴りつけたり、こきおろしたりするタイプじゃない。すごくポジティブなヤツだ。でも何か間違ったことが起きると、彼はあの目で見る。そしてあの目で見られるとこっちは・・・どうなるかわかるだろ」

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むろん、目つきだけで全て解決というわけにはいかない。天才肌のTEジャーマイケル・フィンリーに対しては「才能だけに頼らず全てのことを正しくやれ」と求め続けている。 「何度か批判されたけど、べつに厳しすぎるほどじゃなかったし、僕が対応できないほどじゃなかった。たとえばルート取りで深さが足りないと、彼はそう言ってくるんだ。クォーターバックは彼だ。ボールが欲しければ、ちゃんとやるしかない」

こうしたタイプは、良いところに気づいたらすぐに褒めることも大事だ。 「選手ごとに応用するところがすごいね。たとえばジャーマイケルのようなちょっと張り詰めたタイプは、ジョーディ(WRネルソン)やグレッグ(WRジェニングス)のようなリラックスした選手とは違う。個性に応じて使い分けることを彼はわきまえてる」とQBグレアム・ハレル。

やり方を間違ったこともある。昨年NFL初出場を目指していた時期のRBジェームズ・スタークスに対して、もっと練習でハードにやれと叱りつけてしまったのだとロジャースは振り返る。 「彼はたぶんロッカールームで最も人柄のいいヤツだ。それだけに、何度か彼を批判したことを気の毒に思った。だから彼のところに行って謝ったよ。9週間もフィールドに出られなかった彼がどれだけやる気に満ちているか、僕は理解し切れていなかった。必要なのは励まし続けることだった。気持ちを上向かせるように」

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チームメイトの能力を引き出すためには彼らをよく理解することだと学んだのは10年前、ビュート・カレッジに進んだ頃のことだとロジャースは言う。「僕は高校を出たての18歳。センターはカナダ出身の25歳。左タックルは陸軍あがり。親友のフリーセーフティは刑務所帰りだった。同年代の高校生を率いることと、それぞれ全く異なる経歴の連中を率いることとの違いを、身を持って学んだよ」

彼は時間をかけてチームメイトを観察し、できるだけ知ろうと努力する。昨年春、Pティム・マステイがグリーンベイに来た直後のオフシーズン・ワークアウトでのことだ。ドラフト外出身で、背番号だけはあるものの、まったく無名のパンター。その彼に先発クォーターバックがしきりとちょっかいを出してくるのだ。

「二度見、いや三度見してしまった。会ったこともなかった彼と自分が冗談を言って笑い合っているんだから。僕をファーストネームで呼んでくれた。僕は元ルーキーFAで、ストリートFAとして契約したばかり、そしてパンター。はっきり言って最下層民だよ。なのに彼は、入団すぐから僕がチームの一員として歓迎されている気分にさせてくれた」

話すだけでなくロジャースは調査も欠かさない。チームメイトがどこの出身か、どの大学出身か、そのほかに話題にできるような興味深いような経歴はないか。

ロジャースは言う。 「(昨季途中で加入した)OLBディーレル・ブリッグスや、OLBエリック・ウォルデンや、NTハワード・グリーンと、僕はすぐに話したかった。そうすることが僕らを向上させるからだ。チームの成功を語るとき、ケミストリーの部分が見過ごされがちだ。一緒に遊んだりして、相手がどんな人間か、どんな時に頼りになるか、どうやってやる気を引き出すかを知ること。周りの選手のことを知っておけば、いつどのボタンを押せばいいか理解できる」

苦しかった昨季序盤のことをPマステイは振り返る。 「ホームでのデトロイト戦のことだ。その前週、僕はよく蹴れたけどデヴィン・ヘスターにリターンTDを許し、大変なプレッシャーが僕のパントにのしかかってきた。そして最初のパントをシャンクしてしまいアウトオブバウンズ。ホームの観客からブーイングが聞こえた。サイドラインに戻ると、彼は僕を脇に連れて行き、落ち着かせてくれたんだ。オフェンス・シリーズの準備をしなきゃいけない時にだよ。 『とにかく自分のプレーをすればいい』って」

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ロジャースの落ち着いた物腰の効果は、とくにレシーバー陣に表れる。 「他のQBがやらないことってわかるかい? ハドルでのことなんだ。彼は 『1プレーずつ行こう』 と言う。 『俺はこの1回しかチャンスが来ないかも。必ず決めないと』 とナーバスになっているのを、彼は忘れさせてくれるんだ」とWRドライバーは言う。

「彼は 『どれだけボールが来るかは心配せずに行こう。ただプレーするんだ』って言う。けっきょくのところ、1000ydsシーズンなんて誰も気にしちゃいない。僕らにとって勝つことが全てなんだから」

とはいえ、プロ選手たちにとって個人成績も大事なものだ。これほどWR/TE陣が充実していると、全員を満足させるのは容易ではない。開幕戦で1キャッチに終わったWRジェームズ・ジョーンズが記者たちに不満を漏らすと、すぐにロジャースが話しにやってきた。

「僕がジェームズに知っておいてほしかったのは、まず第1に、僕は彼を信頼している。第2に、彼の意見に同意する。彼にはもっと機会が来るべきだ。第3に、フィールドに入るときは、必ずボールが来るつもりでルートを走ること。彼がその後よくなったこととあの会話が関係あるとは思わない。でも彼が理解してくれたことを僕は望んでる」

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ロジャースはチームメイトと共に過ごすことを楽しみ、個人でなくチームの一員であることに満足させる方法を心得ている。キャリアの絶頂期を迎え、MVP街道をひた走ってはいるが、彼は今でもチームメイトの気持ちを読み、注視し、耳を傾け、勇気づけている。

「自分にはもうわかったと思い込むのは、チームメイトの気持ちに注意を払わなくなるということだ。だってロッカールームは変わり続けるんだよ。選手の顔ぶれは変わる。彼らの(人生における物事の)優先順位も変わる。フィールド外の人生も変わる。結婚したり、子供が生まれたり、心に深い傷を残す出来事も起きるかもしれない。そうした経験を積み重ねていく相手に、以前と同じように話すことなどできないよ。彼らが何を求め、どんな状況にいるか、つねに敏感でいなければ」

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