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2014 NFL Draft Primer
グリーンベイ・パッカーズ ニュース
2014年5月 8日
日本時間金曜朝に迫った2014年NFLドラフトについて、概要をまとめておこう。内容は例年とほぼ同じ。
- 会場は9年連続でニューヨークのRadio City Music Hall。
- 2日制から3日制へと移行して今年で5年目。
- 1日目は5月9日(金)午前9時(米東部時間8日20時)から。1巡のみ。持ち時間は各10分。
- 2日目は5月10日(土)午前8時(米東部時間9日19時)から。2巡と3巡。持ち時間は2巡が各7分、3巡が各5分。
- 3日目は5月11日(日)午前1時(米東部時間10日正午)から。4巡から7巡。持ち時間は各5分。
- ずっと4月下旬に行われてきたドラフトが、今年は2週間遅れとなった。表向きは「会場のスケジュールの問題」となっているが、NFLの大方針は「ヒマなオフシーズンをできるだけ短くし、一年中ファンを興奮させておくのが業界の利益アップにつながる」というもの。ドラフト4日間制の検討をふくめ、これまで行われた、あるいは今後行われるスケジュール変更の多くはこうした考え方による。
- 2013年ドラフトの所要時間は以下のとおり。年によってかなりバラつきがある。一昨年は初日3時間と非常に短かったが、昨年はふたたび延びた。
- 1日目は終了まで3時間33分(1球団あたり6分39秒)。終わったのは日本時間12時半過ぎ。
- 2日目は終了まで3時間55分。
- 3日目は終了まで7時間26分。
- 昨年と同じペースであれば、今年のパッカーズ1巡21位は日本時間11時13分ごろになる計算。しかし1巡はトレード交渉が多いため時間が読みにくい。
- 持ち時間の間にトレードがあれば、残り時間のカウントダウンは数え直しになる。つまり、残り1分の時点でトレードアップしたチームでも、残り1分で指名する必要はない。
- アメリカでの生中継は例によって ESPN および NFL Network が担当。ESPNはこれが35年目とのこと。
- 日本では GAORA が初日を生放送してくれる(村田斉潔/近藤祐司/有馬隼人)。朝8時半放送スタート。
- これまでに成立した指名権トレードはウィキペディアで。
- アーリーエントリーした選手は過去最多の98人。リストはウィキペディアで。
- パッカーズの指名権は以下の9つ。
- 1巡21位
- 2巡21位 (全体53位)
- 3巡21位 (全体85位)
- 3巡34位 (全体98位) ← Compensatory Pick(トレード不可)
- 4巡21位 (全体121位)
- 5巡21位 (全体161位)
- 5巡36位 (全体176位) ← Compensatory Pick (トレード不可)
- 6巡21位 (全体197位)
- 7巡21位 (全体236位)
- パッカーズが21位なのは、プレーオフ初戦敗退4チームのうちもっともレギュラーシーズン勝率が低かったため。
- 今年ドラフト会場への招待を受諾したのは過去最多の30選手。
- ドラフト会場にはファンが無料で入場できる。前夜7時に同会場で受付を済ませなければならない(早い者勝ち)。
- 日本のプロ野球ドラフトとは違い、各球団首脳はドラフト会場に姿を見せない。球団本部に"War Room" つまり作戦司令室を設営し、そこで戦略を話し合ったり、電話でトレードの交渉をしたりする。長丁場を乗り切るために普段着でリラックスしている。途中で出てきてインタビューに応えることもある。
- ドラフト会場には球団の代表者(実際は使いっ走りの役)が派遣され、"War Room" からの電話指示を待つ。指名選手が決まると、電話を受けた代表者がカードに書いてリーグ側に提出する。直接コミッショナーに手渡すのではなく、球団代表者のそばにNFL職員2人が付き、彼らに手渡したカードがコミッショナーに渡る、という手順。
- 一昨年のパッカーズの"War Room"の写真はこちら。今年のパッカーズはライブ・カムも設置される。(以前にもあったが)
- "War room"では長テーブルの端にトンプソンGMが陣取り、その右にマッカーシーHC。その右にカレッジスカウト部長のブライアン・グートクンスト、その右にプロ人事部長のエリオット・ウルフといった並びになる。
- "War room"の壁の1つにはドラフト・ボード、つまり選手のランキング表が掲げられている。長い長いスカウティングと果てしない会議の末に作り上げた努力の結晶だ。現在進行中のドラフト指名を表示した壁、NFL全チームのロースター表を掲げた壁(トレードを検討するため)、パッカーズのデプスチャートを示した壁もある。大型モニタで中継を見ながら話し合っている。
- パッカーズの場合、電話をかけるのはスカウト部長クラス。トレード交渉というほど大げさなものではなく、常に多くの球団と連絡を取り合っているもの。断り切れないようなオファーが来るかどうか待つため、指名は制限時間ぎりぎりになることが多い。自信のほどを示すためか短時間に指名してしまう球団も中にはあるが、パッカーズは几帳面に時間を使い切ることが多い。
- 他のスポーツと比べてNFLではシーズン中のトレードが非常に少なく、ドラフト中の指名権トレードが最大のヤマ場と言える。
- 指名選手が決まると、電話で選手本人に連絡を取ってから正式指名を行うのが慣例となっている。アンドリュー・ブラント元交渉担当は、「我々が指名を行う直前、いつもロン・ウルフ(当時GM)が 『本人を電話で呼んで生きてるかどうか確かめろ』 と言ったものだ。2005年にはDEマイク・モンゴメリー(6巡)に電話をしたがなかなか出ず、もう少しで別の選手を指名するところだった」と振り返っている。
- ドラフト候補選手は親族や友人でホームパーティをしながらTV中継を観ることが多いが、指名を待つ苛立ちを嫌い、釣りなどをしてのんびり待つ選手も中にはいる。上記のような事情により、携帯電話だけは必要だ。充電は忘れずに。
- 日本のスポーツでは「これからが大事」「気が引き締まる思い」といったストイックなコメントが目立つが、アメリカの指名選手は家族全員で喜びを爆発させることが多い。ドラフト中位あたりまでなら(よほどの不祥事や不振がなければ)、今後数年で億単位のお金が保証されたようなものであり、貧しい家庭(一族で大学に行くのは彼が初めて、というような)にとって夢のような境遇が手に入る。彼らは高校・大学と多くを犠牲にしてプロを目指してきた。大学のキャリア終了後も代理人選び、コンバインやプロデイのためのトレーニング、個別面談の練習、ワンダーリック・テストのための勉強と、指名順位を少しでも上げる(大きな契約を手に入れる)ために努力をしてきている。指名自体が家族全員の夢の実現であり1つのゴールなのだ。
- いっぽう、先輩NFL選手たちもドラフトを注視している。余裕のある風をよそおっていても、自分のポジションにどんな選手が入ってくるか戦々恐々とするものだ。自分についてコーチやフロントが口でどう言おうと、本音は行動に、つまりドラフト指名に表れる。どれだけ実績を築いても、同ポジションの選手が高い順位で指名されたら、チームでの自分の立場や将来にいずれ影響が出てくる。今年のパッカーズの場合、まったく心配せずにいられるのはQBロジャース、RBレイシー、LGシットン、OLBマシューズ、CBシールズぐらいだろう。WRネルソンやWRコブでさえ、もしWRが上位指名されたら契約延長の行方に影響が出かねないからだ。