今年パッカーズから無制限FAとなる5人、制限付きFA(RFA)となる5人について詳しく見ていこう。
まず今年のサラリー状況をまとめておくと、サラリーキャップには現時点で$21ミリオンほど余裕があるようだ。しかし、RFA選手の引き留め、ドラフト指名選手との契約、シーズン中の緊急補強用を合わせると、大雑把に見積もって$10ミリオンほど必要のはず。
$11ミリオンが残るといっても、QBロジャースとOLBマシューズの契約延長はどうしても必要なので、この枠で十分とはとても言えない。QBロジャースはNFL史上最高額クラス、年平均$20ミリオン以上が当然。過去3年ほど市場価値を大幅に下回るサラリー(相場の半額ほどか)で文句を言わなかった彼に、いつまでも無理は言えない。OLBマシューズも年$10ミリオン級の巨額契約が必要となるだろう。なんとか2人を確保しても、さらにNTラジと再契約となると大変なことで、ましてや大物FAの獲得など今年はとても無理。
プロボウル2回のスターWRもここ2年間はケガに苦しみ、2011年はヒザの捻挫で3試合、2012年は鼠蹊部(スポーツヘルニア)の手術で8試合を欠場した。出場しているときも2010年のようなキレがなかったのはたしかで、パスキャッチ1回平均10.2ydsはキャリア最低、ランアフターキャッチ平均4.3ydsも彼にしては物足りない。昨年は試合でTVに映るよりもCMで映る方が多いシーズンだった。
コブ、ネルソン、ジョーンズとWRが一応3枚揃っているパッカーズにとって、9月に30歳になるジェニングスとの高額契約に二の足を踏むのは無理からぬところ。半年ほど前の交渉ではパッカーズ側の示した数字と本人の希望があまりにかけ離れていて、そこでFA退団の流れがほぼ決まったようだ。本人はグリーンベイの自宅を売りに出しており、コメントからして移籍する気マンマンといった様子。最新の噂では、本人は1年平均$12ミリオンあたりを望んでいるとのこと。
最近になって「フランチャイズ指名の可能性も残っている」との情報もリークされてきたが、WRのフランチャイズ選手のサラリーは$10.537ミリオンとなっており、球団側が本気で支払う気なのかどうかはよくわからない。FA市場での前評判は必ずしも高くなく、それを見たジェニングス側が軟化してくれるなら再契約する可能性もなくはない。ダメでも来年 Compensatory Draft Pick を手に入れることはできる。
プロ4年目の昨年春にアウトサイドからインサイドへコンバートされて成功した。OLBとしては伸び悩みが続いてがけっぷちのキャンプだったが、ILBビショップの大ケガもあってぎりぎり開幕ロースター入り。その代役D.J.スミスが第6週HOU戦でヒザを負傷してシーズンエンドとなると、フランソワなどを押しのけて彼がスターターとなった。ダイム隊形(1ILB)ではホークが退いて彼がフィールドに残る。
ややフィジカルさには欠けるものの、判断力と思い切りの良さ、アスレチック能力の高さを活かしたカバレッジ能力など、他のILBたちにない魅力があるのはたしか。ILBでの先発経験10試合ということで伸びシロもありそう。そういったわけで今年のFAの中で高く評価する声も一部にはあり、そこそこのオファーをする球団が現れてもおかしくない。パッカーズとしては、そうして市場に価格を決めさせたうえで再契約を検討するのではないか。
彼の再契約に関してはILB A.J.ホークの去就も大きな影響を与えそうだ。今年のILBホークのキャップ額はチーム4位の$7.05ミリオン。実際のプレー内容は最低額サラリーのILBジョーンズに劣っており、減俸あるいは解雇が必要とする意見が非常に多い。ILB陣は負傷から復帰してくるビショップとD.J.スミス、控えにラティモアと2年目のマニングがおり、デプスはそれなりにある。そのため、ホークとジョーンズが両方退団するシナリオもなくはない。
ベテラン最低額の1年契約でベンガルズからFA移籍。RBスタークスの負傷を受けて8月半ばに入団すると、開幕からエースRBとして起用された。弱体ランブロッキングに苦しみながらも彼らしい力強い走りを見せ、とくにブロッキングの流れを一瞬で見極めるのがうまい。心配されたパスプロテクションやパスキャッチも予想以上に頑張っていた。私生活のトラブル歴が懸念されたものの、研究熱心さなどチーム内での振る舞いは模範的だった。
順調にパッカーズオフェンスに馴染んできたと思われた矢先、第5週IND戦で足のリスフラン関節を負傷。復帰可能IR枠に入ったものの、やはり復帰は無理ということでシーズン終了となった。本人はパッカーズ残留を望んでいるが、再発しやすいリスフラン関節の負傷、30歳という年齢、RBドゥワン・ハリスの台頭、ドラフト指名の可能性といったことを考え合わせると、再契約の可能性は高くない。少なくとも、ベテラン最低額(9年目選手の場合$84万ドル)の1年契約を受け入れる必要はあるだろう。
昨年春にベテラン最低額付近で再契約。ローテーション起用の一員だった序盤はパスラッシュでよい働きを見せていた。しかしシーズン半ばにニック・ペリーの戦線離脱やクレイ・マシューズのハムストリング負傷によりフルタイムのスターターとなると、明らかにパフォーマンスが落ちた。パスラッシュはまったく届かず、以前より改善されたラン守備でもプレーオフではミスが目立った。
昨年の1巡指名ニック・ペリーが暫定スターターであり、ドラフト外のデズマン・モーゼスもポテンシャルの高そうなところを見せた。もう伸びシロのないウォルデンとは再契約するとしてもベテラン最低額だろう。ローテーションの一角として出番を絞ればそれなりの働きは見込める。
かつてのエースRBも2011年かぎりのはずだったが、RB陣にケガ人が続出した12月初めに再契約。第16週TEN戦こそキャリー20回と実質エースの役回りだったものの、その後首脳陣はドゥワン・ハリスをエースRBに選び、最後のディビジョナルプレーオフで彼の出番はゼロだった。かつてのキレはなくなっており、よほどのことがない限りもう再契約はない。
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制限付きフリーエージェント(RFA)に対しては、3月12日までに "Qualifying Offer" をしなければならない。そのオファーをした選手については、他球団が獲得に乗り出してきても、同額のオファーをすることで移籍を阻止できる仕組みだ。移籍が成立するのは、パッカーズが他球団からのオファーにマッチしないことを選んだ場合のみで、その場合もドラフト指名権を受け取ることができる。
今年の場合、最高額テンダー(引き抜きの代償は1巡指名権)が$2.879ミリオン、ミドル・テンダーが$2.023ミリオン(2巡指名権)、最低額テンダー(その選手のドラフト指名巡)が$1.323ミリオンとなっている。パッカーズのRFA選手はみなドラフト外入団なので、確実に引き留めるにはミドル・テンダー以上をオファーするしかない。なお、昨年はNFL全体でRFA選手の移籍成立がゼロだった。
3段階の "Qualifying Offer" をしない場合、その選手は無制限FAとなる。最近はRFA選手のサラリーがどんどん上がってしまい、ロースター底辺クラスのスペシャルチーマーには最低額テンダーでも高すぎるのが現状だ。4年目選手の最低年俸は$63万ドルなので、いったん無制限FAにしたうえで再契約するパターンが増えるのではないか。
伸び悩んだ2011年シーズンの後、昨夏のキャンプではヒジの負傷で出遅れてロースター残留の危機に。しかしプレシーズン終盤から調子を上げ、CBハウスの負傷もあって右アウトサイドでスターターとなった。足首の負傷でシーズン中盤に6試合欠場したものの、復帰すると新人CBヘイワードから先発の座を取り戻し、シーズン最後まで非常に安定したカバレッジを続けた。
Pro Football Focus のCB評価ではパスカバレッジ部門でNFL全体の8位。小兵ながらチーム最速の選手で、いったん離されてもすぐに追いつけるスピード、振り向いてパスに反応できるボールスキル、元WRらしいキャッチング能力がある。課題だったタックリングも向上した。
彼を引き留めるのは言うまでもないことで、問題はミドル・テンダーにするか最高額テンダーにするか。2巡指名権を差し出すチームはおそらくないと思われるが、念のため最高額テンダーにしておいた方が安全かもしれない。
2009年にドラフト外で入団し、毎年少しずつ地位を上げて昨年開幕時はインサイド3ポジションの控えに。RTブラガの戦線離脱で第10週から代役LGとなったものの、ガードとしては馬力不足だった。RTバークレーの台頭でいったん控えに戻ったが、首脳陣は衰えの目立つサタデーを降格させ、第16週から彼を先発センターに。「サタデーより良いのはたしか」という大方の評価を手に入れることができた。
許したサック3回、反則5回はすべて左ガード時のもの。ショットガンスナップのミスがなく、OL全体のアジャストメント・コールも問題なくこなしていたようだ。現時点では来季の暫定スターターであり、ミドルテンダーで引き留めるのが妥当なところか。現時点ではNFLの平均より少し下の存在と思われるが、実戦経験を重ねていけば伸びる余地は十分ある。OLでレベルアップが必要なのはセンターなのか左タックルなのかは見方が分かれるところ。
こちらも2009年のドラフト外入団。2010年からロースターに定着している。昨年はパスキャッチわずか8回ながら、203yds・3TDを稼いだ。第2週CHI戦ではFG隊形からのトリックプレーで、ホルダーからショベルパスを受けて27ydsのTD。第6週HOU戦ではブリッツの裏に入って48ydsのレシービングTD。第9週ARI戦ではプレーフェイクが効いて73ydsのTD。
基本的にはブロッキングTE兼スペシャルチーマーであり、たとえばフィンリーがいなくなった場合にどれだけレシービングで働けるかというと期待薄だろう。得意のブロッキングでも、負傷前のクウォレスに追いつかれていた。おそらく最低額テンダーで十分、場合によってはテンダーをオファーせずベテラン最低額で再契約するかもしれない。
2011年にはILBホーク欠場時に代役スターターを2試合務め、2インターセプトを記録。しかし昨年はILBジョーンズ(前述)に追い越され、ケガ人が2人出てもディフェンス出場のチャンスはもらえなかった。スペシャルチームでは中核選手の1人だが、ILB陣ではラティモアやマニングもスペシャルチーマーとして伸びてきている。テンダーはオファーせず、再契約するとしてもベテラン最低額ではないか。
ドラフト外ルーキーだった一昨年スーパーボウルではチーム唯一のサックを挙げたものの、その後は伸び悩んでいる。昨年はオフシーズンにハムストリングを大ケガし、復帰は第10週になってから。マシューズが欠場した時期にローテーションに加わったが、パスラッシュ・ラン守備ともいいところがなかった。おそらくテンダーはオファーせず退団となるのでは。