グリーンベイ・パッカーズ ニュース
2011年2月28日
いまインディアナポリスのルーカス・オイル・スタジアムでは、ドラフト候補生329人を集めたスカウティング・コンバインが開催されている。球団首脳まで集結しているのは各レベルの年次会合がここで開催されるためで、必ずしも選手を見に来るためとはかぎらない。代理人も周辺にうようよ集まっていて、タンパリングになりかねない内緒話もあちこちで交わされているはず。
参加選手はすべて招待によるもので、たとえば2002年のDEアーロン・キャンプマン(5巡指名)は招待されなかった。選手たちが行う種目は以下のとおり。ワークアウト種目は強制ではなく、たとえば40yds走だけは走らずにプロ・デイでやります、という選手もいる。なにかに怒って途中で帰ってしまう選手も稀にいるが、べつに罰則はない。
- 身体測定 : 身長・体重・腕の長さ・手の大きさ・体脂肪率などを測定する。長さは8分の1インチ(約3.2ミリ)単位。
- この測定が重要なのは、大学が発表している数字はサバを読んでいることが多いから。プロ入り後も球団が正確な数字を公表する義務はないため、正確な数字が明らかになるのは選手生活でこの時だけといっていい。
- 今年の1位指名候補のDTニック・フェアリー(オーバーン大)が、公称6フィート5インチより2インチも身長が低いことが判明した。
- たとえばQBは手の大きさ(小さいとファンブルしやすく、悪天候でグリップに問題が出やすい)、OTは腕の長さが話題になる。昨年はOTブライアン・ブラガの腕が短いことが問題になった。身長の低さを腕の長さで補えるポジションは少なくない。
- Injury evaluation : X線検査だけでなく、各球団のチームドクターが選手の体中を触りまくり、全身の状態や回復具合を詳しくチェックする。ケガから回復途上の選手、大ケガした経歴のある選手の評価はとくに重要になる。NFL球団がコンバインで最も重視している項目。
- Cybex Test : 柔軟性や可動域など、関節の動きをマシンで測定する。これもケガ歴のある選手の評価に重要。
- ドラッグ・テスト : マリファナ陽性の選手が毎年のように出る。
- NFLの薬物規定により結果は公表されない。各球団には告知されるので、それを承知の上でドラフト指名することになる。
- 違反が見つかればワンアウト(次に違反すると4試合出場停止)の状態でNFL入りすることに。ツーアウトで4試合出場停止処分を受けるまでは世間にはわからない。
- アメリカの大学生でマリファナ経験など珍しくないとはいえ、検査日がわかっているのに吸ってしまうような馬鹿なのか、という意味で、陽性反応はやはり問題だ。パッカーズでは'99年のDTクリディアス・ハントと'01年のLBトランス・マーシャルがマリファナ陽性で、プロ入り後にやはり問題を起こした。
- 結果が公表されないだけに、「○○選手が陽性だった」とデマが流れることがある。ライバル選手の評判を落としたい代理人が流すのか、意中の選手を低い順位で獲りたい球団が流すのか。
- ワンダーリック・テスト : 50問を12分間で解く、一種の知能テスト。読み書き能力と一般常識と頭の回転の速さなどを調べる。
- 以前にESPNが掲載した例題はこちら。
- NFLでは40年以上にわたって実施されている。NFLでの活躍度と相関はないという批判もあるが、長期的に見れば、頭がよい選手は不祥事や契約トラブルが少なく低リスクと言える。
- ドラッグ・テスト同様に点数は公表されず、各球団に通知されるだけ。以前と比べて点数がリークされにくくなった。
- 一般人の平均点が20点となるように作られていて、NFLでの平均もほぼ同じ。ポジションごとの平均点はこちら。
- QBはOLに次いで平均点が高く、昨年の先発QBたちのドラフト時のスコアはこちら。ファーヴは22点、ロジャースは35点だった。'06年のQBヴィンス・ヤングは1回目でわずか6点、やり直しをさせてもらって16点。
- 個別面接 : 各球団につき60人まで、1人15分ずつ面接を行うことができる。選手は次から次へと面接をこなすので大変だ。ただし、面接の機会はシニアボウルやドラフト直前にもある。
- 過去のトラブル歴など一般的な質問だけでなく、プレーの分析などフットボール頭脳のチェックも。
- 最近は代理人がコーチをつけて準備をさせるのが普通。優等生的な返答ばかりで役に立たん、と愚痴るスカウトたちも多い。
- 一般に人格面の懸念がある選手ほど面接の必要があるもの。'06年パッカーズはA.J.ホークが意中の人だったにもかかわらず、人格面は百点満点とわかっていたため面接を一切行わなかった。
- 昨年はドルフィンズがWRデズ・ブライアント(1巡でDAL)との面接で「母親は売春婦だったのか?」と質問してしまい大騒ぎに。キツい質問にどう答えるかで人柄がわかる、という考え方にしても、これは人間としてひどすぎる、と批判されてドルフィンズ側が謝罪した。
40yds走に限らず、コンバインでの数字で「評価」が上下するのは主にメディアやファンやブロガーの間のことで、プロは意外なほど左右されないもの。プロにとって大事なのはなんといってもゲーム映像やシニアボウル練習であり、コンバインやプロデイでの体力測定は多少修正するためのものにすぎない。NFLにとっては、ニュース枯れの時期にファンやメディアを盛り上げる一大イベントなので、そうした事情をわかった上で楽しむのがいい。
以下のワークアウト種目は、選手たちはシーズン終了以来専門のコーチについてみっちり練習を重ねてくる。2000年以降の各種目のトップ10記録はこちら。
- 40yds走 : 片手をついて、完全に静止したところからスタート。2回計測する。10ydsと20yds地点のタイムも発表され、たとえばOL選手は40ydsより10ydsの方が重要とも言われる。株が上下するのは、想定されたより速かったり遅かったりした場合。「遅い」と思われていた選手が遅いのは当たり前で、想定より遅かったり速かったりした場合に影響が出てくる。
- ベンチプレス : 225ポンド(約102kg)を何回挙げられるか。攻守ラインマンにとって重要。
- 垂直跳び : 下半身の瞬発力とパワー。我々には信じられない高さを跳ぶ選手も少なくない。
- 立ち幅跳び : 着地でぴったり止まれなければやり直しとなるので、バランスも必要。
- 3コーン・ドリル : 別名"L"ドリル。速い方向転換、スピードを落とさず曲がること、バランスなど、パスラッシャーの動きに近い。
- 20ydsシャトル(ショート・シャトル) : 往復で5-10-5ヤードを走る。低い姿勢を保ち、横方向のクイックネス、ショートエリアの加速が試される。OTのパスプロ能力を調べるのにも向いた種目。
- 60ydsシャトル(ロング・シャトル) : 往復で5-5-10-10-15-15ヤードを走る。
- ポジションドリル : パスを投げたり捕ったりブロックしたり、といった各ポジションのドリルを行う。パッドを着けないごく軽い内容で、この程度で実力がわかれば誰が苦労するかという気はするが、見ているだけでも面白い。(こちらのページから"POSITION DRILLS"をクリックしてポジションを選ぶと、内容の一部を映像付きで解説してくれる)