グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2009年12月11日

本当のグリーンベイ

先日レイヴンズのRBレイ・ライスがグリーンベイのことを「何もないところで最悪」と酷評したことについて、元パッカーズ副社長兼交渉担当のアンドリュー・ブラントが反論をコラムに書いている。

パッカーズ職員として9年間働いた私に言わせれば、RBレイ・ライスの発言はアンフェアではあるが、対戦相手の発言としてはさほど驚くには値しない。寒さの中で敗れた直後とあってはとくにだ。リーグで最も小さく最も寒いマーケットの球団を代表した経験から、私はNFL選手を惹きつける難しさをよく知っている。たとえ最もフットボールに熱狂的な雰囲気を持つ球団であっても。

当時GMだったロン・ウルフから電話がかかってきたのは10年前のことだ。選手たちの代理人をしていた私に、「サイドを替えてチームに加わらないか」と誘ってくれたのはとても名誉なことだったが、グリーンベイと聞いた私の最初の反応は他のみんなと同じ、(寒さを想像して)「ブルルル」と震えることだった。地図を見て場所を確認した。やがてグリーンベイ空港に降り立ち、最初に気がついたことがいくつかあった。見渡す限り地面が雪に覆われていること、そして人々の半分がパッカーズのウェアを着ていること。

面談で、私はロンの目を見て聞いた。「どうか気を悪くしないでいただきたいんですが、私はこの仕事をするのにここに住まなきゃいけないんでしょうか?」  彼はまばたきもせずこう答えた。 「気を悪くなどしないよ。そして答えはイエスだ」  2週間後、私はスタジアム駐車場に面したBest Western Midwayホテルで暮らし始めた。隣の部屋が新任ヘッドコーチのレイ・ローズ。2ヶ月ほどして新人のWRドナルド・ドライバーもそこに加わった。

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東海岸から来た私(ワシントンDC出身)にとって、最初は馴染みにくい部分もあったが、実際に住んで子供を育てるには素晴らしい所だとやがて気がついた。どこで暮らすにもプラス面とマイナス面はつきもので、グリーンベイでの暮らしにもその両方があった。他球団の選手や首脳からは「そこでどうやって暮らしてるんだ?」とよく聞かれたものだ。とくにその寒さについては。(今これを書いている時点でも激しいブリザードらしいね)

グリーンベイを経験した何百人の選手・コーチ・職員たちが主張するように、この地区は本当にユニークで、ロンバルディ時代から時が止まったようなところだ。グリーンベイほど、1つの球団を中心にまとまったコミュニティは、他のプロスポーツにはないだろう。そして、中西部独特の親切心というものがそこに加わっている。パッカーズファンのようなファンは他にないし、今でも私のところには彼らから毎日メールが届く。

グリーンベイの人々に関する逸話は数え切れないが、1つ挙げてみよう。ある夜、ジャイアンツ戦のあとのことだ。帰宅した私は、隣人がジャイアンツのウェアを着た人々を家に招いているのに気がついた。その隣人はランボーフィールドのスタンドでジャイアンツファンと知り合い、自宅でのディナーに招いたのだという。ジャイアンツファンの側も面食らったが、そうしたホスピタリティは昔からずっと続いてきている。

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他にも選択肢のあるFA選手をグリーンベイに誘うのは難しい課題だ。1993年にフリーエージェント制度ができたときも懸念はあった。もっと住みやすい気候の街に行けるなら、グリーンベイに有力FA選手は来てくれないのではないかと。しかしまさにその年、FA史上最高の獲物がもたらされた。あのレジー・ホワイトがパッカーズに加わってくれたのだ。ホワイトはフランチャイズの伝統を愛したのであって、パッカーズが最高額のオファーをしたことは関係がなかった。

私が忘れられないのは、2006年にCBチャールズ・ウッドソンと交渉したときのことだ。こちらは悪夢の4勝12敗シーズンを終えたばかりで、ブレット・ファーヴはまだ現役続行の決断を下していない時期。さらにひどい吹雪と寒さが重なって、彼をパッカーズに誘うのはかなりの難題に思われた。

こちらが最も高い額を提示してはいたが、チャールズとその代理人カール・ポストンを口説き落とせたのは、チャールズにとってグリーンベイが完璧にフィットする、ということだったように思う。チャールズ本人から「黒いスパイクを履いていいか」という質問が出るに至って、獲得成功の見込みがあるとわかった。彼にとってはフットボールが全てなのだ。締結までは少し時間がかかったが、やがてチャールズもあの地区のシンプルな暮らしを楽しむようになってきた。小さな友人の輪に加わり、ピアノのレッスンを受けている。

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たしかにグリーンベイは万人向けとは言えないだろう。そこからの移籍を望み、契約延長に目もくれなかった選手も数人いた。CBマイク・マッケンジーとWRジャヴォン・ウォーカーの2人は、退団希望の理由を決して語らず、こちらの契約オファーにも全く関係なく、ただ移籍したい希望だけがはっきりしていた。しかし彼らは例外的な存在だ。何らかの理由で退団した人たちから、どれほどグリーンベイが恋しいかという話を私はたくさん聞かされたものだ。

いま私は出身地の東海岸に戻り、RBレイ・ライスと遠くない街に住んでいる。グリーンベイを恋しく思う点とそうでない点があるにせよ、1日過ごしただけのライスの発言は明らかに的外れだ。そのライスも、ダメージコントロールの教科書から抜き出したような謝罪をした(Twitterだけどね)。あんな発言のままでは、彼のプラスにもならないだろうし。そしてライス自身だっていずれ望むかもしれない。フリーエージェント市場に出たとき、パッカーズが選択肢の1つになることを。

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