グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2009年7月25日

ロースター展望 ILB編

3-4ディフェンスへの転換により、ミドルラインバッカー単独からインサイドラインバッカー2人に増員される。アウトサイドLBと比べれば役割の変化は少ないが、これまでのようにDT2人が守ってはくれないので相手ブロッカーにさらされやすく、それをかきわけてタックルに行かなければならない(先月の記事参照)。

OLBとは違い、こちらはスターター2人がすでに決まっている。これまでミドルLBだったニック・バーネットがウィークサイドのILBとなり、ウィークサイドLBだったA.J.ホークがストロングサイドのILBに入る。ただし、有名選手2人が揃うからといって実力が伴うとは限らない。バーネットはヒザの前十字靭帯(ACL)断裂からリハビリ途上。ホークはプロ入りから3年間、1巡指名の期待には応えられていない。3-4のILBにフィットするかとなるとさらに未知数で、むしろILBが新ディフェンスの弱点になるのではないかと危惧する地元記者もいる。

昨日も書いたように、ロースター枠はLB陣全体で9人か10人が普通なので、ILBは4人か5人。ブランドン・チラーはインサイドとアウトサイドの両方の控えを兼ねる便利な選手で、デズモンド・ビショップは昨季代役出場で光るプレーがあった。現状ではここまでの4人が合格圏内で、ダニー・ランサナーとスペンサー・ヘイヴナーがOLBの選手たちと最後のイスを争うのではないか。

ニック・バーネット Nick Barnett

オレゴン州立大から2003年のドラフト1巡29位指名で入団、1年目からずっとミドルLBとしてディフェンスの中核を担ってきた。2007年にはプロボウルにあと一歩まで迫ったが、2008年は予想外の不振で、なぜかおとなしいプレーぶりだった。出場9試合でINTゼロ、サックゼロ、ファンブルリカバリーゼロ、ファンブルフォース1回のみ。おまけに第11週ヴァイキングス戦でヒザのACLを断裂してシーズンエンドとなった。

3-4となる今年はインサイドのウィークサイドでスターターを務めるが、軽量スピード派の彼にとって、ブロッカーの荒波にもまれやすい3-4は不向きという見方もある。いっぽうヒザのリハビリは順調で、トレーニングキャンプ初日から参加できる見込み。おそらく当分は1日1回の練習に制限されるだろう。

A.J.ホーク  A.J. Hawk

オハイオ州立大から2006年の1巡5位指名で入団、1年目からウィークサイドのスターターを務めてきた。しかし飛躍を期待された2008年はキャリア最低のシーズンに終わった。キャンプで胸部を負傷してプレシーズンを全休、シーズン序盤には鼠蹊部を痛めた。バーネットの戦線離脱のためウィークサイドからミドルに移ったが、よかったのは最初のベアーズ戦だけ。ラン守備では迫力を欠き、パスカバレッジも不安定。ブリッツ10.7回に1回しかサック(計3回)を挙げられなかったのはLB陣最低で、インターセプトもゼロ。

アサインメントをよく守り、シュアなタックラーでもある堅実なスターターではあるが、ビッグプレーの少なさはいかんともしがたい。ウィンストン・モスLBコーチも昨季チラリと漏らしたことがあるが、アサインメントを守ろうとするあまり、激しさや思い切りといった部分を抑えてしまうのかもしれない。そうはいっても今年でプロ4年目になるので、いっそうの成長を期待するより、「この程度の選手なのだろう」という諦めに似た見方が増えてきてしまった。

今年はウィークサイドからインサイドのストロングサイドに移る。相手ブロッカーの多いサイドであるため、それをかき分けていく強さが重要。コンバートは彼にうってつけ、という見方と、その逆の見方がある。同期入団組と違って6年契約なので2011年まで契約が残っているが、昨季のようなプレーぶりでは契約延長の話はなかなか出てこないだろう。

ブランドン・チラー  Brandon Chillar

UCLAから2004年のドラフト4巡でラムズに入団し、昨年パッカーズにFA移籍。ディフェンス習得に手間取ってポピンガとの先発争いには敗れたが、しだいに実力を発揮してパス守備で出場機会を増やし、バーネットの戦線離脱で7試合にわたって先発ウィークサイドLBを務めた。インサイドもアウトサイドもこなせるセンスのよいプレーヤーで、とくにパスカバレッジがいい。相手TEが昨季一度も100ydsレセプションできなかったのも彼の貢献によるもので、パスのブレークアップは9回もあった。(他のLBの合計がわずか6回)

いっぽうラン守備はパス守備に比べるといまひとつ地味で、ブロッカーを受け止めるより避けようとする傾向があるらしい。そのような彼にとって3-4への転換はマイナスのはずで、今年はインサイドのウィークサイドでバーネットの控えを務める見込み。それでもバーネットのヒザが万全でない現状では、パスカバレッジの安定感ではチラーがLB陣No.1のはず。昨季同様パスシチュエーションで彼を活かす起用法を工夫するかもしれない。

デズモンド・ビショップ  Desmond Bishop

カリフォルニア大から2007年のドラフト6巡で入団し、2年間控えミドルLBの座を守っている。チラーの欠場した昨季第14週テキサンズでは、ウィークサイドで初先発も果たした。少ない出番でチーム最多のファンブルフォース3回を挙げるなどビッグプレーが多かったが、ミスでビッグプレーを許した回数も多かった。古典的なハードヒッターで嗅覚にも優れ、まだ伸びシロもありそう。今年はインサイド専門でプレーし、ストロングサイドのA.J.ホークの控えとなる見込み。ILBが4人枠だとすれば、ロースター入りは合格圏内のはず。

ダニー・ランサナー Danny Lansanah

コネチカット大から昨年のドラフト外で入団し、キャンプやプレシーズンゲームで活躍を見せた。昨季中盤までプラクティス・スクワッドにいたが、ドルフィンズに奪われそうになったため、LBトレイシー・ホワイトを解雇して彼をロースターに昇格させた。それだけランサナーの将来性を評価したわけだが、有力なスペシャルチーマーであるホワイトの解雇がスペシャルチームの弱体化につながったという批判もある。出場は5試合、スペシャルチームでのタックルは2回だけだった。40yds走4.7秒前後の選手だが、ハードヒッターでパスラッシュ能力もあるらしい。今夏のキャンプではチラーやビショップとの差を縮めることができるか。

スペンサー・ヘイヴナー Spencer Havner

チラーと同じUCLAから2006年のドラフト外で入団。2年間プラクティス・スクワッドにいたが、昨年12月の初めにロースターに昇格し、スペシャルチームで3タックルを記録。大学を出て3年も経つので、伸びシロを考えると上記ランサナーに分があるのではないか。

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