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2008年6月30日

マイク・マッカーシーHCのファミリー・ライフ

引越し準備をするマイク・マッカーシーHCの口から、「おい、それはパトリック・ネイゲルの・・・」と思わず声が漏れる。しかし新妻のジェシカの希望とあればお蔵入りも仕方がない。だいいち独身貴族向けのセクシーなポップアートは、小さな子供たちの住む新居にふさわしくない。バツイチ同士の2人はこの2月に小さな結婚式を挙げ、ジェシカの家の改装が完了しだいそちらに引っ越すことになっている。マッカーシーには16歳の娘がいるが、あらたに7歳と5歳の息子ができ、さらに11月にはもう1人産まれてくる予定なのだ。

マイク・マッカーシー(44歳)がジェシカ・マーフィ(36歳)と出会ったのは2006年春のこと。男やもめのマッカーシーのためにブラインド・デートをセッティングしたのは、フットボール事業部長のジョン・シュナイダー夫妻だった。新HCを探すトンプソンGMにマッカーシーを推薦した人物でもあるシュナイダーは、地元グリーンベイのカトリック系男子校出身で、同じカトリック系女子高のジェシカと学校行事で知り合ったのだという(今は両校が合併して共学)。

「ジョンという友人がいなければ、この結婚はありえなかった。NFLコーチの仕事は文字通り早朝から深夜まで。あとはホテルに帰って倒れ込むように眠るだけ。コーチはみな同じだ。あの就任1年目は特にハードで、仕事以外のことは何も考えられなかった」とマッカーシーは振り返る。テキサスに住む16歳の娘アレックス(アレクサンドラ)もサッカーやバスケットボールで活躍していて、父娘がゆっくり会う時間などめったに確保できない。「私とアレックスは残念だがスケジュールに縛られている。シーズン中は金曜か土曜に会いに来てくれても、こちらは試合があるし、ろくに一緒に過ごせないうちに日曜か月曜には帰ってしまう」

いっぽうジェシカも2人の息子、ジャック(7歳)とジョージ(5歳)を抱えて離婚したばかりの小学校教師で、再婚など全く頭になかった。彼女は地元っ子のくせにフットボールをよく知らず、目の前にいる男がパッカーズの新ヘッドコーチということも知らなかったので、家に帰って慌ててネットで確認したという。最初はぎごちなかった2人だが、たまに会って話すうち、しだいに惹かれあうようになった。

息子たちがすぐにマッカーシーと打ち解け、父のように慕うようになったことも、結婚に踏み切る助けになった。「マイクは常に子供を最優先に考えていて、今まではアレックス、これからはそこにジャックとジョージが加わって。彼のおかげで私もとてもリラックスできるんです。母親の私が神経質になると、『男の子ってのはそういうものさ』と彼が言ってくれるから。子供たちは尊敬しているし、私はなんて幸運だろうと泣き出したくなるくらい」とジェシカ。

2人とも派手なことを嫌うタイプのため、アリゾナでの結婚式は身内だけの小さなもので、ウェディング・ドレスもごく質素なものだった。「ジェシカの周囲の人々の輪に、マイクはすでにすごくなじんでいる。ジェシカのおかげで、バーベキュー・パーティでも、QBアーロン・ロジャースについて次から次へと質問することのない友人たちとのんびり過ごすことができる。それに、仕事以外のことを話し合えるジェシカのような人がそばにいてくれるのはとても大きいことだ」とジョン・シュナイダーは言う。

シュナイダーの妻トレイシーは、子供のイベントでジェシカと知り合い、やがて家族ぐるみで付き合うようになっていた。最近はフットボール音痴のジェシカのために、フットボールのルールや、コーチの仕事の大変さをレクチャーしているという。「でも、彼女がフットボール通でないのは、マイクのためにはよいことだと思う」

小さな街の超有名人マイク・マッカーシーと一緒になることの心配はもう消えた、とジェシカは言う。「たとえば私たちがディナーに出かけても、彼のプライベート・タイムを周りの人たちがとてもよく尊重してくれるんです。彼の振る舞いはとても自然で、マイクがどんな仕事の人だったか、私が忘れてしまうぐらい。彼のような立場の人にとっては、とても暮らしやすいところだと思う」

2008年6月28日

強肩QBアーロン・ロジャース

2日続けてQBアーロン・ロジャースの話題を。 レシーバーの指を折るほどの剛速球で知られたファーヴと比べ、肩が弱いのではないかと見られがちなロジャースだが、練習ではかなり強いボールをビシビシと投げ込んでいる。もともとドラフト時は「同期QBではトップを争う強肩」と言われ、過去2年間はマッカーシーHCの指導で全身の筋力強化に力を入れ、またメカニックの改善にも取り組んできた。その甲斐あって、「入団時とは比べものにならない」と地元記者たちの見方も一致しているようだ。

ファーヴと比べてキャッチが楽なのでは? と聞かれたレシーバー陣は、とんでもない、ブレットと同じぐらいキツいボールが来ている、と口を揃えている。「もっとソフトに投げさせようとしているところだ。強肩で有名になる必要はない、他のことで知られるようになればいい、とね。僕らにとっても、手は大事なんだからさ」とWRグレッグ・ジェニングスは笑う。WRジェームズ・ジョーンズも、「去年ぼくが入団したときは、ブレットがハードに投げることをみんなから言われたものだけど、アーロンだってそうだよ。僕らのグローブを引き裂くぐらいだ」

ロジャースも笑って言い返している。「そう言われても別に驚かないね。彼らが捕らなきゃいけない。じっさいフィールドではちゃんとキャッチしてくれてるよ。なのに彼らときたら、ロッカールームではいつも文句ばかり言ってるんだ。グレッグはほんと文句を言いたがるよね。手が大事だというけど、料理もできないんだし、いったい何を心配してるんだか。僕が悪いパスを投げたとき、僕のせいにするのは構わない。でも彼らが(簡単なパスを)落球したときも、彼らによると、やはり僕のせいらしいんだ(笑)」

2008年6月27日

QBアーロン・ロジャースへの注目度

「結婚した」との誤報が流れたり、髪を切ったことだけで記事になったり、今年のQBアーロン・ロジャースへの注目度は過去2年とは比べ物にならない。練習が終われば彼のロッカーに何重もの人垣ができる。ESPNのジョン・クレイトンやショーン・サリスベリも、主にロジャースを取材するためにパッカーズのミニキャンプを訪れた。「クレイトンとは1回か2回話をしたことがあったけど、テレビの連中が自分のところに話をしにくるようになるなんてね。過去2年は誰も僕のところになんか来なかったのに」

「自分のことをテレビで見るのは好きじゃないんだ。不思議な気分になる。でもこれも仕事の一部だし、楽しんでこなすようにならないと。メディアを通して自分のメッセージを伝えることを理解しなきゃいけないし、メディアから好かれ、尊敬されたい」と語るロジャースだが、やはり腹立たしいこともある。「ブレットのロッカールームの話とかね。正直言って僕にはもっと大事な仕事があるし、そんな話題は考えたこともなかった。いちど誰かがそれを記事に書くと、それを読んだ誰かがまた別の記事を書く。大げさな話題が作られることがよくあるんだよ。僕のところに質問に来て、僕がその話題にあまり反応しなくても、やはり大げさな記事に仕立てるんだ」

「僕とブレットとの関係についての記事もそうだ。僕らはすごく仲良くやっていた。しかし一度そういう記事が書かれると、それを読んだ記者がまた別のところに書く。誰も僕に直接質問などしなかった。もし来ていたら、どれほどしっかりした関係を築いていたか説明したさ。仲良くやっていて、いつもふざけあっていたとね」

メディアとの付き合いについてアドバイザーがいるわけでなく、これまで独学で身に着けてきたとロジャースは言う。「子供の頃から、とにかく見て学んできた。有名人のインタビューを見て、その良し悪しを見分けるようにしていた。(北カリフォルニア育ちなので)僕はジョー・モンタナが大好きで、彼のインタビューをよく見たものだ。だから自分が大学に行くようになったとき、(エースQBたる自分が)どのようにメッセージを出すべきか、理解できていたと思う」

3年間の控えQB生活を経てついに先発に昇格することについて。「控えが3年間あったことは、僕の場合は利点の方が大きかった。唯一の難点は、競争心の強い自分がサイドラインからフィールドを見なければならなかった、ということだ。利点は、らくらく殿堂入りする名QBの後ろで学ぶことができたこと。すぐにスポットライトの下に押し出されなかったおかげで、大きなプレッシャーを受けることなく、ゆっくりと学ぶことができた。もう1つものすごく大きいのは、チームメイトとずっと付き合ってから僕がエースに昇格することだ。僕らは14勝4敗のチームで、あと1ゲーム、あと1クォーターでスーパーボウルだった。その優れたチームメイトに囲まれているというのは大きなプラスだよ」

ファーヴ関連の質問が今後も絶えることはないのでは?という質問にロジャース。「グリーンベイでそのような贅沢は許されないだろうと思う。僕は全然かまわないよ。これから常にブレットと比較されることは理解しているし、彼と同じ文章の中で語られるだけで、僕にとっては名誉なことだ。彼の名声はすなわちパッカーズの名声だ。今年しっかりしたプレーをして、その伝統を受け継いで行けたらと願っている」

マッカーシーHCからのアドバイス。「自分自身を見失わないことが鍵だ。彼は3年間ここで過ごしてきて、ロッカールームの仲間ともよくなじんでいる。彼自身が他の選手にとって素晴らしいチームメイトであり、それを変える必要は全くない。このチャンスのために本当によく準備してきたし、アーロンにとって大事なのはその集中を失わないようにすることだ。先発クォーターバックになること、ブレットの後継者となることのプレッシャーを彼はよく理解しているが、そのようなことを心配していてはいけない」

2005年ドラフト会場で何時間も指名を待ったとき、元49ersの名DBマートン・ハンクス(5巡指名入団から4回のプロボウル)に言われたことをよく覚えているとロジャースは言う。「キャリアを通して、自分はドラフト時の怒りを忘れずに全試合プレーした、と彼は話してくれた。それは僕にも少しあてはまる話だ。けっして涙の物語ではないけど、チャンスが来るのを待ち続け、そのチャンスに精一杯がんばるのがこれまでの僕の経歴だった。そして今こうしてチャンスを手に入れた。ドラフトでは多くのチームから見送られたけど、それから3年経って、すごくいい状況に僕は置かれている」

2008年6月26日

ドラフト指名選手紹介 6: OGジョシュ・シットン

4巡36位 | Josh Sitton | Guard | Central Florida  | Senior |
6-3 (192cm) | 324lbs (147kg) | 40yds/5.18秒 | 1986年6月6日生 |

経歴 : フロリダ州の西端、アラバマ州境にあるペンサコラ出身。高校ではOLで3年間スターターを務め、オール・フロリダ州の2ndチームに選出。DLとしても最後のシーズンには50タックル、6サックを決めている。オーバーン大など複数から奨学金オファーがあった中でセントラルフロリダ大を選んだのは、すぐに出番があると思ったから。その目論見どおり1年目から4試合に先発し、デビュー戦がウィスコンシン大のキャンプ・ランドール・スタジアムだった。

1年目は右ガードで4試合、2年目・3年目は右タックルで全試合先発し、全米9位のラッシング成績に貢献した。4年目の昨季は右タックルで8試合先発したほか、チームメイトのケガのために右ガードで3試合、左ガードで1試合に先発し、ヴァーサタイルな能力をプロのスカウトにアピール。コンバインには招かれなかったが、プロ・デイでは20ydsシャトル4.50秒(全OL中2位)など好タイムを出した。

Strengths : 肩幅が広く、フットワークのよい柔軟なアスリート。素早く外にスライドしてスピードラッシャーを封じ込める。よくヒザを曲げて持ちこたえることができる。しっかり脚を動かし続けドライブ・ブロックができる。TEの外への小さなプルブロックが上手く、セカンドレベルへのブロックも速い。大きなケガがなく、1年目の終盤から42試合連続先発出場した。レッドシャツの年がなかったため、今月22歳になったばかり。

Weakness : プロでタックルをやるには上背がなく、腕が短いずんぐり型。パスプロテクションではアグレッシブなハンドパンチがなく、相手を懐に入れてしまって押し込まれる傾向あり。激しい当たりに欠け、迫力が足りないところがある。柔らかそうな体つきからして、トレーニングが足りているのかどうか(そこがまたタウシャーに似ている)。

メンタル面 : オフェンシブライン向きのタフでアグレッシブなメンタリティを持っている。2004年に注意欠陥障害(ADHD)と診断されたことがあるが、ワンダーリックテスト25点は平均以上の数字で、OLとしては標準的。2006年に飲酒運転と駐車違反で免停処分を受けたことがある。

指名の経緯 : 無名選手だったが、RBケヴィン・スミス(3巡でDETへ)を見るためにセントラルフロリダ大のプロ・デイに集まったスカウトたちの前でよい動きを見せて注目された。とくに強い興味を示したチームの1つがパッカーズだった。トンプソンGMは、「一流のNFL選手であるマーク・タウシャーと比べるのはなんだが、マークと似ている点が多いのはたしかだ。あの動きや、相手の攻撃を吸収しブロックする能力がよく似ている」と評している。一見すごそうに見えない体格ながら、相手を丸め込むように仕留めてしまうテクニックが、タウシャーをほうふつとさせたらしい。

「ドラフト3週間前にパッカーズを訪問したときの面談の内容が素晴らしかった。黒板での演習も非常によく、彼の頭のよさを示した。フィールドでは、いったん彼が相手DLに触れるとまるでVelcro(日本で言うマジックテープ)のようで、彼を突き放すことはできない。そして最大の強みの1つが、あの激しい情熱と大きなエネルギー、ホイッスルが鳴るまでファイトするタフガイだ」とキャンペンOLコーチ。

パッカーズにとって : 入団すぐから先発ガードを争えるか、との質問にキャンペンOLコーチは、「もちろんだ。彼を含めて(先発両OTとCを除いた)13人が先発スポットを激しく争うことになる」と答えている。OGシットンにゾーンブロッキングの経験は?との質問には、「彼らはゾーンも多少やり、パワーギャップ的なスキームもやっていた。だから我々のスキームにうまくアジャストできると思う」

ドラフト直後にキャンペンOLコーチはガードとタックルの両方で考えていると語っていたが、その後のOTAやミニキャンプでは右ガード専業でプレーている。先日のミニキャンプでCウェルズの負傷によりRGスピッツがセンターに回ると、シットンが1stチームの右ガードに入った。昨年右ガードを争ったジュニアス・コストンやトニー・モールが現在それぞれ別のポジションをプレーしているのは、シットンにできるだけチャンスを与えて能力を見極めたい、とコーチたちが考えているからだろう。

パッドも着けないOTAやミニキャンプでラインマンの真価は評価できないとはいえ、先日のミニキャンプでの記者たちの評判はかなりよく、2巡のWRジョーディ・ネルソンと双璧だった。開幕ロースター入りは確実と見られている。「予想以上にアスレチックで、インサイド向きのタフガイだ。将来的にはスピッツをセンターにして彼を右ガードに据えるといいかも」と見る向きもある。

飲酒運転について : 4巡b指名OGシットンと5巡指名OTジャコミニの2人とも飲酒運転で逮捕歴があることについて、トンプソンGM。「まず第一に、飲酒運転というのは重い犯罪だ。両選手にとって大きな過ちであり、我々としてもその点は詳しくチェックした。2人とも過ちを重く受け止め、汚名返上しようと頑張っている。将来に向けて問題になるとは考えていない。我々は個々の人間についてケースバイケースで判断している。誰もが過ちを犯すものだ。よい人間と悪い人間がいて、もし悪い人間だと判断すれば、その選手はチームから取り除くだろう」

セントラルフロリダ大 : セントラルフロリダ大ではSSアタリ・ビグビーの3年後輩にあたり、2004年に1年だけ一緒にプレーしている。同大からのドラフト指名は2000年7巡のWRチャールズ・リー以来2人目。パッカーズでプレーするのはWRリー、Pライアン・フリン(2005年終盤に2試合だけ)、SSビグビー以来4人目となる。

パッカーズを含め3球団で6年間プレーしたWRチャールズ・リーは、すでにコカイン所持で保護観察処分を受けていたが、昨年12月に母校セントラルフロリダ大の学生を相手に拳銃強盗事件を起こし、5年の実刑が先月決まったばかり。

2008年6月24日

Notebook: アル・トゥーンが新理事候補に

2008年6月23日

球団経営は今年も堅調

7月の定例株主総会を前に、グリーンベイ・パッカーズの昨会計年度(3月まで)の収支報告をマーク・マーフィ社長が行った。NFL球団の中で収支が明らかになるのは市民所有であるパッカーズだけなので、毎年ちょっとした注目が集まるイベントだ。今回も堅調な内容ではあったが、プレーオフ2試合をホームで行ったにしては期待はずれの観があるのも否めない。総収入が$218ミリオンから$241ミリオンへと約10%アップしたにもかかわらず、支出の上昇はその2倍近い19.6%で、そのため利益は$22ミリオンから$23.4ミリオンへの伸びに留まっている。

他球団の数字がまだ出ていないので順位はわからないが、今年も総収入ランキングでNFLの9位から16位に入るものと見られている(昨年は11位)。レベニュー・シェアリングをさらに補完する仕組みとして、上位15位までの球団は下位の球団のために、順位に応じて何ミリオンかずつ支出しており、パッカーズは毎年支払う側に入っている。

支出増の最大の要因は、$110.7ミリオンから$124.7ミリオンへと増えた選手サラリー。サラリーキャップ額の上昇が各球団の収入増のペースを上回っているのだ。大物FAは補強しなかったパッカーズだが、WRドライバー、RTタウシャー、TEリー、DEジェンキンズ、LBバーネットといった中心選手との契約延長を積極的に行ったことでボーナスの支出が膨らみ、トンプソンGMとマッカーシーHCも今年1月と2月に契約延長をしている。

ナショナル・レベニューとはNFLの特徴であるレベニュー・シェアリングの対象となる収入で、NFLが一括して管理し、各球団に配分するもの。前年の$124ミリオンから$135ミリオンに増えている。そのうち64%の$87ミリオンがテレビ放映権によるものだ。

いっぽう独自の努力で他球団と差をつけられるのがローカル・レベニューで、チーム成績躍進のおかげもあり、前年の$93ミリオンから$105ミリオンへと大きくアップさせている。地元テレビ局(試合中継ではない)やラジオ局との契約、各種スポンサー契約などマーケティング収入、プロショップのグッズ販売、ランボーフィールドのアトリウムでの収入など。プロショップとアトリウム収入だけで、その半分近い$50.2ミリオンを稼ぎ出している。(前年の$40.7ミリオンから23%増)

マーク・マーフィ社長は、「収入の伸びを上回る勢いで支出が増えている。それはサラリーキャップ増がナショナル・レベニューの伸びを上回っているためで、我々にとって大きな懸念材料だ。オーナー側が現行の労使協約の早期終了を決めたのもそのためだ」と述べている。

2006年3月に締結された労使協約の期限は2013年までだったが、オーナー側が期間を短縮できるオプションが設定されていた。今のままでは経営を圧迫するとして、今年5月に行われたオーナー会議で、2010年限りで現労使協約を打ち切ることが全会一致で可決された。もしこのまま新協約が締結できなければ、最終年の2010年はサラリーキャップなしとなる規定なので、2009年シーズンのうちに新労使協約を締結することが重要となる。

大富豪オーナーを持たないパッカーズは、いざというとき(サラリーキャップなしの完全自由競争になるなど)にも球団が存続でき競争力を保てるよう "Packers Franchise Preservation Fund" という準備金制度を作っている。一昨年は$17.8ミリオン、昨年は$10ミリオンを積み増したが、今年の積み増しは$2ミリオンだけで、基金の総額は$127.5ミリオンとなっている。

チャリティ関連の支出が約$5ミリオンにも増えたことや、最近ランボーフィールド周辺(西側)の土地の取得を進めていることも支出増の要因とのこと。将来の拡張に備えたもので、その用地に今すぐ何を作るというわけではないようだ。

2008年6月21日

Minicamp - Day 3

2008年6月20日

Minicamp - Day 2

2008年6月19日

Minicamp - Day 1

2008年6月18日

ドラフト指名選手紹介 5: DEジェレミー・トンプソン

4巡3位 | Jeremy Thompson | Defensive End | Wake Forest  | Senior |
6-4 (194cm) | 264lbs(120kg) | 40yds/4.75秒 | 1985年10月9日生 |

経歴 : ノースカロライナ州シャーロット出身。子供の頃から兄のOTオーリン・トンプソンと競い合いながら育った。高校ではDEをプレーする以外に、バスケットボールでも活躍した(高校時代の情報があまりない)。同州のウェイクフォレスト大に進むと、レッドシャツを経ず1年目から全試合に出場して3試合に先発。しかし2年目シーズンの終盤にヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂し、3年目まで悪影響が残った。

4年目の昨季は肩のケガに悩まされながらも、シーズン6.5サック、46タックル、11ロスタックルの活躍を見せた。開幕戦ではボストン・カレッジのQBマット・ライアン(1巡3位でATL)を二度サックしている。大学では右サイドオンリーでプレーしていたようだ。

Strengths : 十分なサイズのある優れたアスリート。嗅覚に優れ、常にボールのそばにいる。素早いフットワークとフレキシブルなボディバランスで、相手OLに崩されにくい。腕が長く、見た目は細いが、ポイントオブアタックで持ちこたえる馬力もある。逆サイドへのランプレーでもしっかりコンテインする。3コーンドリルが6.97秒は全DE中2位のタイム。複雑なディフェンスでも問題なく理解できる頭脳がある。

Weakness : 爆発的な加速でOTの外を回り切るようなスピードラッシャーではない。パスラッシュ技術のバリエーションが少なく、コンスタントにQBにプレッシャーがかけられない。ときどき腰高になることがある。しっかりラップアップせずタックルミスすることがある。大学2年目でヒザの前十字靭帯(ACL)断裂、昨年は肩の打撲に苦しんだ。

メンタル面 : ハードワーカーで頭もよく、人格面は申し分ない。全米スポーツマンシップ賞のファイナリスト(10人)にも選ばれた。ワンダーリックテスト24点は、DL選手としては高いほう。学業も順調で、最後の科目の試験がドラフトの翌日とのこと。今日はお祝いを早めに切り上げて必死に勉強し、月曜に試験を受け、火曜からフットボールに集中する、と本人は指名直後のインタビューで語っていた。

指名の経緯 : 昨年は先発右DEのカレン・ジェンキンズがケガに苦しみ、バジャ=ビアミラがもう30歳、マイケル・モンゴメリーも伸び悩んでいるため、ドラフト中位でのDEはニーズに合った指名と言えそう。

ドラフト初日に1巡30位から2巡5位にトレードダウンし、ジェッツから4巡14位を手に入れていたパッカーズは、5巡27位指名権をジェッツに譲渡して4巡14位から4巡3位にトレードアップして彼を指名した。テッド・トンプソンGMはシーホークス時代を含めて昨年まで8回のドラフトを指揮し、トレードダウン14回、トレードアップゼロ。その彼が9回目のドラフトで初のトレードアップしたのだから、評価の高さがうかがえる。

ドラフト後のトンプソンGMの会見では、記者から「初トレードアップおめでとう」の声。「みなさんに見せるためにやったんだよ(笑)。本当のところ、我々が非常に気に入った選手がそこにいて、トレードアップも決して軽率でない、と考えたからだ。以前にもやろうとしたことはあるが、結果としてまとまらなかっただけだ。今回はジェレミーを手に入れることができて我々はとても喜んでいる。我々は彼を非常に高く評価していたので、4巡で残っていることに驚いた。そのことがトレードアップの原動力になった」

パッカーズにとって : 快速パスラッシャー的なタイプではなく、ラン守備もよい万能タイプ。メンタルのしっかりしたハードワーカーという点も含め、「アーロン・キャンプマンに似たタイプ」との評判がドラフト前から少なくなかった。キャンプマンの控えにうってつけと見られているが、大学では右サイド専門でプレーしていた。先日のOTAで左サイドばかりやらせていたのは、左右の適性を見極めるためかもしれない。

キャンプマンはケガも少なく、全スナップの90%以上プレーできるスタミナがあるので、控えの必要性は見過ごされがち。しかし今年はDTコーリー・ウィリアムズが抜け、インサイドからのパスラッシュ力のダウンが懸念されるため、パスシチュエーションではできるだけDEカレン・ジェンキンズをDTで使いたい。そのために、モンゴメリー、ジェイソン・ハンター、そしてこのトンプソンなど、若手DEの押し上げが重要となる。

サック数が物足りない : 大学通算32試合に先発してサックは計8.5回(昨季6.5回)。指名順位が4巡まで下がったのはそのせいかもしれない。しかし後述のように、大学2年目でのヒザの大ケガをしたことや、チームが戦術的に彼を自由にパスラッシュさせることが少なかったことが大きかったようだ。

担当地区スカウトのブライアン・グートクンスト。「普通の大学と違って、彼はサックを量産するような仕事には専念させてもらえなかった。カバレッジへのドロップバックなども含めてたくさんのread-and-react的な役割を担当していた。彼が1つのことに集中する機会を与えられたらどれだけやれるか楽しみだ。容易に倒されないところを非常に高く評価している。多くの選手と違って、地面に倒されずに残って追い続けることができる」

ヒザのACL断裂から2年半 : 2005年シーズンの終盤にヒザの前十字靭帯(ACL)を断裂したため、当然翌シーズンにも悪影響が残り、昨年はシーズンが進むうちにようやく完調に戻ってきた。彼についてのネガティブ評価は復調以前のものが多いようなので、期待できるかもしれない。左ヒザの大ケガから2年半が経ち、もう影響は全く残っていない、と本人。「リハビリの専門家のところで本当にハードに頑張ったからね。今では反対のヒザよりも強くなっているぐらいだ」

兄弟でパッカーズ : 兄のOTオーリン・トンプソン(デューク大出身)は一昨年パッカーズのプラクティス・スクワッド、昨年はついにロースター入りを果たした。しかしジェレミーはフットボールシーズンになれば自分も試合があるので、昨年までグリーンベイに来たことは一度もないとのこと。兄オーリンとは大学が違ったので、同じチームでプレーするのは高校時代以来となる。

大学では2004年10月30日に直接対決し、弟のウェイクフォレストが24-22で兄のデュークを下している。当時の兄オーリンはDTをプレーしていたので(ドルフィンズでOTにコンバート)、フィールド上で直接マッチアップしたわけではない。パッカーズではDEとOTなので、キャンプではたっぷりと対戦する機会がある。「弟が来たのは嬉しいね。小さかった弟が、見ている前で成長し、こうしてチャンスをもらい、自分と同じチームにいるなんて。本当に素晴らしいよ」と兄オーリン。

ウェイクフォレスト大 : パッカーズがウェイクフォレスト大の選手を指名するのは、1987年9巡のOGグレッグ・ハリス以来21年ぶり5人目。1980年3巡5位のOGシド・キトソンが4シーズンで計12試合に先発出場したぐらいで、あまり活躍した選手はいないようだ。しかしそれ以外に、かつてコーチやスカウトとして長く活躍したジョン・"レッド"・コクランが同校の出身。

2008年6月17日

チャリティ・ソフトボール・ゲーム

過去8年間ブレット・ファーヴ主催で行われてきたパッカーズ選手のチャリティ・ソフトボール・ゲームだが、彼が引退した今年はWRドナルド・ドライバーが引き継ぎ、"Donald Driver Charity Softball Game"として開催された。このところ大雨や洪水に悩まされてきたウィスコンシンだが、この父の日は好天に恵まれ、アップルトンの Fox Cities Stadium のスタンドは今年もたくさんのパッカーズファンで埋まった。(写真

オフェンス対ディフェンスの試合はディフェンス側が大きくリードしていたが、最終回にDEキャンプマン投手が打ち込まれて延長戦に。しかし延長8回裏にSタイロン・カルヴァーがRBノア・ヘロンからサヨナラ2ランホームランを放ち、まるでフットボールのような23-21のスコアでディフェンス側が勝利した。大学では野球に進む道も考えたというカルヴァーの強打を恐れ、それまで3回敬遠してきたオフェンスチームだったが、最後で勝負に出たのが裏目に出てしまった。「もちろん、大事な目的のあるチャリティイベントではあるんだけど、結局のところ、僕らはみなものすごく負けず嫌いなんだ」とCBチャールズ・ウッドソン。彼は移籍3年目にして初参加し、両軍最多の5安打、2ホームランを放っている。

最大のスタンディング・オベーションを受けたWRドライバーは、「観客数よりも、天気が心配だった。チームからは全員出場させられないほど出場希望者があったし、ファンもいつもどおり素晴らしかった」と嬉しそうに振り返っている。収益金はドナルド・ドライバー財団を通して、ウィスコンシンや(彼の故郷)ヒューストンのホームレスの人々、スペシャル・オリンピックス、救世軍などに寄付されることになっている。

始球式を行ったマーク・マーフィ社長。「ドナルドが進み出て、このイベントをブレットから引き継いでくれたことをとても嬉しく思う。素晴らしいコミュニティ・イベントであり、やめてしまうにはあまりにも惜しいからね。私の経験から言って、パッカーズは普通のNFL球団よりもずっと多く、コミュニティに貢献している。コミュニティが小さいために(相対的に)より大きなインパクトを与えることができる、という面もある。しかしもっと大きいのは、パッカーズが株主の所有、ファンの所有であるから、コミュニティにお返しすることが重要だと我々が考えていることだ」

スタンドを埋めたファンに挨拶するWRドナルド・ドライバー ファーヴの背番号4をつけている
豪快なスイングを見せるDEアーロン・キャンプマン

2008年6月16日

開幕週はESPNが異例の体制

開幕週のパッカーズはホームにヴァイキングスを迎え、ブレット・ファーヴの永久欠番セレモニーを行うとともに、QBアーロン・ロジャースの公式戦初先発という門出の日でもある。マンデーナイトゲームを中継するESPNは、まるで局がまるごとグリーンベイに移ってきたかのような異例の体制を組むことが明らかになった。ゲーム中継の Monday Night Football 、プリゲーム番組の Monday Night Countdown (90分)、スポーツ・トーク番組の Pardon the Interruption (30分)、それに SportsCenter Monday Kickoff (60分)の一部もランボーフィールドから生放送を行うとのこと。この日はダブルヘッダーで、パッカーズ戦の直後にDEN@OAKも行われるが、そのハーフタイム番組もランボーフィールドからの中継となる。

ゲーム中継は、はマイク・ティリコ、ロン・ジャウォースキ、トニー・コーンハイザーといういつもの放送席とレポーターたち。Monday Night Countdown は、司会者クリス・バーマン、元QBスティーヴ・ヤング、元RBエミット・スミス、元WRキーショーン・ジョンソン、クリス・モーテンセン、スチュアート・スコット、トム・ジャクソン。Pardon the Interruption は前述のコーンハイザーとマイケル・ウィルボーン。東部時間の午後3時半に Pardon the Interruption がスタートし、夜7時からのゲーム本体をはさんで、半日近くランボーフィールドからの生中継が行われることになる。

実はこの2年間パッカーズのマンデーナイトゲームは全てアウェーだったので、ESPNが放送を担当するようになってから初めてのランボーフィールドとなる。ESPNの広報担当は、「我々がこうした体制を組むのは、2006年にマンデーナイト中継を始めてから初めてのことだ。ブレット・ファーヴの永久欠番セレモニーが行われ、しかもESPNマンデーナイト初のランボーフィールド訪問なのだから、決断は極めて容易だった」と述べている。

2008年6月14日

OTA Notebook: 最終日

2008年6月13日

Notebook: 当分ルーキー契約はなし

2008年6月12日

進境著しいCBトラモン・ウィリアムズ

昨年の今頃は開幕ロースター入りさえ難しいと見られていたCBトラモン・ウィリアムズ。2006年にルイジアナ工科大からドラフト外入団し、1年目はプラクティス・スクワッドで過ごしたが、2007年は彼にとって素晴らしいシーズンになった。ライバルたちを退けて3番手CB/ニッケルバックの座をつかんだだけでなく、スペシャルチームでもビッグプレーを繰り出してチームの躍進に貢献した。ジャレット・ブッシュとは対照的にボールへのプレーがよく、決して受身にならないアグレッシブなメンタリティもCB向きだ。

「昨年の彼はウチで最も進歩した選手の1人だった。今年も非常によいオフシーズンを過ごし、さらに大きく進歩しているのは間違いない。とても強くなって、リリースでのバンプ・テクニックがよくなっている。最近のOTAでも、スクリメージ上のバンプだけでレシーバーを葬り去ったプレーが何度もあった」とマッカーシーHCは評価している。

今年のトラモン・ウィリアムズが取り組んでいるのが、スロット・レシーバーのカバレッジ。ニッケルバック(3WR隊形に対応する5人目のDB)はスロット・レシーバー(アウトサイドのレシーバーとOLの間に入る)をカバーするのが普通だが、過去2年のパッカーズはCBウッドソンをスロットにつけ、ニッケルバックは左CBに入ることが多かった。ウィリアムズがスロットを担当できるようになれば、ディフェンスの自由度が増す。CBハリスが常に相手エースWRとマッチアップするように、特定のレシーバーにウッドソンをぴったりつけておくことも可能になる。

スロットとアウトサイドの違いについて、トラモン・ウィリアムズ本人が解説する。「アウトサイド・レシーバーを相手にするときは、サイドラインが僕らを助けてくれる。サイドラインと2人で守るようなもので、ずっと易しいんだ。しかしスロット・レシーバーには大きなスペースがある。アクロス・ザ・フィールドでもいいし、アウトサイドへも行けるスペースがある。こちらが正しいテクニックでプレーしないと、弱みにつけこまれてしまう」

インサイドのレシーバーをカバーする上で重要なのは、自分のヘルプがどこにいるか認識していること。「常に自分のヘルプの位置を知っておくことだ。セーフティがフィールドの中央にいるのに、自分がレシーバーの内側についてしまうと、アウトサイドには誰もいないことになっちゃうからね」

ウィリアムズは今年のOTAでもプレー内容を向上させ、ウィル・ブラックモンやジャレット・ブッシュなどライバルとの差は広くばかり。将来スターターとなる可能性さえ地元メディアが取り沙汰するようになってきた。しかしCBパトリック・リーも2巡指名入団し、現在3番手の座をキープしているからといって今後も安泰とは限らない。「自分はまだ向上できる、と僕は常に考えている。これまでと同じように、毎日毎日ファイトしていくだけだ。この商売では、確かなことは何もない。何が起こるかわからないんだ。今後もしっかりと頑張って、全てが上手くいくよう願うだけだよ」

2008年6月10日

ドラフト指名選手紹介 4: TEジャーマイケル・フィンリー

3巡28位 | Jermichael Finley | Tight End | Texas | Sophomore |
6-5 (195cm) | 245lbs(111kg) | 40yds/4.76秒 | 1987年3月26日生 |

経歴 : テキサス州東部、人口5400人のディボール出身。高校では同校記録の通算2217yds、30TDレセプションを記録。TEだけでなくWRやDEやSやKやP(平均37.9yds)もプレーし、なんと1試合平均101スナップも出場(つまりほとんど出ずっぱり)していた。地区の最優秀オフェンス選手に選ばれたほか、バスケットボールでも平均24点20リバウンドの大活躍で、地区MVPに選ばれている。アリゾナ大からは両スポーツで奨学金をオファーされたが、結局地元の名門テキサス大でフットボールに専念することに。

大学入学時205ポンド(93kg)しかなかった彼は1年目はレッドシャツで過ごし、スカウトチームでプレーしつつ体作りに励んだ。デヴィッド・トーマス(3巡でNE)が抜けた2006年には全試合出場(4試合先発)して31キャッチ372yds・3TD。2年目の昨季は初めて全試合に先発して45キャッチ575ydsを挙げ、同大のTE史上3位の記録だった。出場資格はまだ2年も残っていたが、ドラフトへのアーリー・エントリーを発表し、惜しまれつつテキサス大を去った。

Strengths : 素晴らしいサイズとアスレチック能力に恵まれている。非常にキャッチがうまく、難しいボールを引き寄せるボディコントロールと集中力がある。クイックにリリースし、ライン取りも無駄な動きがなくスムーズ。フィールドをストレッチするスピードがあり、各種タイムよりもプレーぶりの方が速い。まだまだスリムなので、さらに20ポンドぐらいバルクアップできる余地がある。大学で出場した2年間に大きなケガをしていない。

Weakness : 実質的には大型のワイドレシーバーとしてしか貢献しておらず、ブロッキングが一人前になるためにはかなりハードな努力が必要。ランプレーのポイントオブアタックで相手DLを押し込むパンチも下半身の馬力も物足りない。レッドシャツのあと2年しかプレーせず、かなり荒削りなタイプなので、1年目からどれだけ使いものになるか。身長のわりに線が細く、汚れ仕事をこなすタフネスは疑問視されている。コンバインでの40yds走などの数字が予想よりも悪く、指名順位を下げた。

メンタル面 : ワンダーリックテストの点数は不明(受けていないのかも)だが、フットボール頭はよい方と見られている。ハードワーカーで、フィジカルなポジションに必要なだけの鼻っ柱の強さもある。すでに子供が2人いることや、プロ入りが早すぎたことは、NFLスカウトからはマイナス要素と見られている。

指名の経緯 : 昨年TEドナルド・リーをスターターに育てたパッカーズは、ベテランのTEババ・フランクスを2月に解雇した。昨季3番手を務めたTEライアン・クラウスとも再契約せず、TEトリー・ハンフリーは大きなケガからの復帰途上。FA市場で物色したタイトエンドもいたが結局獲得には至らなかった。そのためドラフトで2番手TE候補を指名することは確実視され、1巡指名の可能性も取り沙汰されていたほど。

実際1巡30位の時点ではTEが誰も指名されていなかったが、パッカーズはトレードダウンし、代わりにジェッツがTEダスティン・ケラー(パデュー大)を指名。くしくもTEババ・フランクスのFA移籍先もジェッツだった。パッカーズは最近タイトエンド指名が少なく、2000年1巡14位でフランクスを指名して以来、2001年6巡のデヴィッド・マーティン、昨年7巡のクラーク・ハリスしか指名していなかった。

パッカーズにとって : 前述のようにTEの層が薄いので、OTAではすでにドナルド・リーに次ぐ2番手。昨年ケガをしていたトリー・ハンフリーも復帰しているが、その他はドラフト外ルーキー3人なので、フィンリーが2番手を確保するにはハンフリーに勝つだけでよさそう。

もともとマッカーシーHCは複数タイトエンドをフレキシブルに動かすことを好むので、今年は昨年よりダブルTE隊形の出番が増えるのではないか。QBが若いロジャースにかわるだけに、セーフティバルブとなるTEの存在は重要のはず。ここ数年はフランクスのスピード不足に泣かされてきたパッカーズだが、フィンリーが評判通りの活躍をしてくれれば、優勝当時のマーク・チュムラ&キース・ジャクソンのようなコンビが期待できるかも。

課題はブロッキング : 大学ではレシーバーとして使われることが多く、本人によると、50%がインライン(つまり普通のTEの位置)、50%がフランカーだったという。ランブロッキングについては、「自分で評価するなら、Bマイナスだね。ランゲームについては努力が必要だ。グリーンベイに行ったら、必死で頑張るつもりだ」と認めている。

マカドゥーTEコーチは、「選手のフィルムを見るときは、コーチできない天性の才能を持っているかどうかをまず探すものだが、彼にはそういったものがいくつもあると思う。彼はまだ身体能力のごく一部をあらわしたにすぎない。あの身長にしてはスリムな243ポンドで、若く未熟な選手だ。向上の余地は大きく、トレーニングを続ければもっと体重を増やせるだけの骨格がある」

アーリー・エントリー : まだ21歳になったばかり。レッドシャツのあと2年しかプレーしていないので、2年も出場資格が残っていて、本人のためにも大学に残るべき、という見方が強かった。最近結婚して2人の子供がいるので、アーリー・エントリーは家族のためだと報道されていたが、フィンリー本人は家族のことととは関係ないとしている。「フィールドの中でも外でも、人生のより大きなチャンレンジへの準備ができていたからだ。だからNFLに入る決断をした。迷いはなかった。暮れのボウルゲーム(アリゾナ州立大に快勝)の前に決心はできていたし、やっていける自信はあった」

21歳という若さについて、トンプソンGM。「彼は非常に若いが、我々はさほど心配はしなかった。アーリーエントリーの選手で用心が必要なのは、4年生と比べてスカウティングの対象となる試合が少ないことだ。しかし彼はとても才能ある選手だと我々は思った。素晴らしいキャッチ力があり、非常にアスレチックだ。ドナルド(TEリー)とトリー(TEハンフリー)に彼を加えることができて、コーチたちはとても喜んでいる」

マルチ・アスリート : 高校時代バスケットボールでも大活躍し、平均24得点・20リバウンドを挙げて地区のMVPにも選出された。アリゾナ大からはバスケとフットボールの両方で奨学金をオファーされたという。「でもテキサス大を選んだときに、どちらかに絞るようにマック・ブラウンHCから言われ、フットボールに夢を賭けた」とのこと。

家族 : 妻コートニーとの間に息子ケイドン(4ヶ月)がいて、別の女性との間に娘ジェイラ(3歳)がいる。そちらは母親と一緒に暮らしているようだ。

テキサスA&M(今年からマイク・シャーマンがHCを務める)のRBジョヴォスキー・レーンは腹違いの兄で、生まれが2ヶ月弱しか違わない。フィンリーは珍しいことに両親の名前をプロフィールに載せておらず、RBレーンも両親でなく祖父母の名前をプロフィールに載せている。同じテキサス東部の5マイルほど離れた街で、それぞれの母方の祖母に育てられたらしい。子供の頃から毎日のように一緒に遊び、大学ではライバル校同士で、「1年間いばる権利」を賭けて毎年対戦した。

テキサス大 : パッカーズテキサス大選手をドラフトするのは、1991年8巡のWRジョニー・ウォーカー(プレーせず)以来17年ぶり10人目。1952年3巡指名のDBボビー・ディロンは94試合で52INTを挙げ、パッカーズの殿堂入りをしている。パッカーズ指名ではないが1985年から2年間在籍したSモシー・ケイドは、1987年に性的暴行事件を起こして15ヶ月服役している。2002年に在籍した名リターナーのエリック・メトカーフやCBブライアント・ウェストブルックもテキサス大の出身。

以下のビデオはYouTubeのハイライト映像。Rivals.comのハイライトビデオはこちら

2008年6月 9日

控えランニングバック

RBライアン・グラントが契約の問題でOTA練習に参加していないため、控えランニングバック争いがすでに盛り上がりを見せている。結論から言うと、ジャクソンはロースター入りがほぼ確実なので、例年どおりの3人枠(昨季開幕時は4人だった)とすれば、モレンシーとウィンとヘロンで最後の枠を争うことになりそうだ。

2巡指名入団のRBブランドン・ジャクソンは期待外れのルーキーシーズンだったが、今オフは進歩を見せている。10ポンドから15ポンドほどバルクアップし、現在は220ポンドぐらい。OTA練習では鋭い加速を見せ、グラント不在のRB陣では際立った動きを見せている。今年けっきょくRB補強をしなかったのも、第17週やプレーオフでの活躍はまぐれでないと首脳陣が判断しているからだろう。安心して先発を任せられる本格RBになれるかどうかはともかく、少なくとも3rdダウンバックとしてはやっていけそうだ。

エドガー・ベネットRBコーチは、「ブランドンは爆発力のあるランナーだ。プロのRBとして成功するのに必要な全てのものを持っていて、昨季終盤の活躍はその能力の高さを示したと私は思う。ウェイトルームでも日に日に強くなっているし、クラスルーム(オフェンスの理解)でも極めてよくやっている。細部まで意識が行き届いているし、熱心に居残りもしている。精神的にも成熟してきた。こういったことが今年フィールドでも表れるはずだ」と高く評価している。

「ブランドンは昨年と比べて最もキャッチが上手くなったRB」とQBアーロン・ロジャースも評価。「ウチのオフェンスへの理解が深まり、メンタル・エラーをしなくなったのが一番だろう。ブリッツのピックアップは昨年から悪くなかった。しかしスキームをよく理解し、誰がどこから来るのかがわかるようになったので、よりよい仕事ができると思う」

昨夏はそのジャクソンと先発の座を争ったRBヴァーナンド・モレンシー。アーマン・グリーンの控えだった一昨年は少ない出番で光るものを見せたが、昨年はキャンプ初日にヒザを負傷し、ようやく復帰できたのはシーズン第4週のこと。復帰後も動きはイマイチで、3rdダウンバックを務めるのがやっとだった。すでに28歳なので伸びシロはなさそうで、プロ4年目の今年はいよいよがけっぷち。なお、彼とのトレードでテキサンズに移ったRBサムコン・ガドーは昨年10月に解雇されてドルフィンズへ。両者ともあまり成功したとはいえない。

RBノア・ヘロンは昨年プレシーズン最終戦でヒザを負傷してシーズンエンド。本来なら2ヶ月ほどで復帰できるケガだったが、ロースターに置いて回復を待つほどの選手ではなく、仕方なくインジャリーリザーブに入ることになった。パスキャッチやブロッキングをそつなくこなす器用な3rdダウンバックで、相手の弱いところを突く戦術眼に優れる。下記のウィンとは対照的なハードワーカーで、その点でも首脳陣の信頼は厚い。彼もモレンシーも今年が契約最終年で、来年FAとなる。

RBデショーン・ウィンは昨年の7巡指名入団で、ヘロンとモレンシーの負傷によりかろうじて開幕ロースター入り。ジャクソン不振のため3試合に先発し、平均4.1ydsと十分な働きを見せたが、しっかりした体ができておらず、第8週ブロンコス戦で肩を負傷してインジャリーリザーブ入りとなった。身体能力に恵まれフットボールセンスもあるが、大学時代から問題児だったように、メンタル面が課題として残っている。

入団1年経ってウィンが成熟してきたか、と聞かれたベネットRBコーチは、「多少はね。しかしもっとコンスタントにならないと。毎日毎日、同じレベルの努力を続けられるようでなければならない。今日はは本気でやるが、明日はそうでない、というようではダメなのだ。プロになるとはそういうことだ」とかなり厳しいコメント。選手をほめるのが当たり前のアメリカプロスポーツ界で、ここまではっきり言われる選手は珍しい。

2008年6月 7日

フリーセーフティの争い

この夏ディフェンス陣で注目の先発争いといえば、ストロングサイドLBのポピンガとチラー、そしてフリーセーフティのコリンズとラウスだ。何年も伸び悩みを続けているFSニック・コリンズに、昨年の3巡指名のFSアーロン・ラウスが挑戦する。

2005年2巡指名入団のコリンズは1年目こそ期待を抱かせるプレー内容だったが、その後は、「いずれプロボウル級になる器」との首脳陣の期待を裏切っている。サックは3年間一度もなく(ブリッツに入らないので仕方ないが)、昨年はインターセプトもファンブルフォース/リカバーもゼロ。特にインターセプトチャンスでの落球が昨季チーム最多の3回、プロ3年間で8回もあり、CB並のスピードをビッグプレーにつなげられない。それなりに安定してミスは減っているものの、彼の責任で昨季TDを4つも許している。

「今年は大事な年だ。自分のプレーのレベルを上げ、全てを出し切らなきゃならない年だ。自分にはその能力があるとは思うけど、努力を続ける必要があるのはたしかだ。他の選手もそうだけど、僕も必死で勉強し、昨年のミスをすべて修正しようと努力している。きっと素晴らしい年になるはずだ」とコリンズは言う。自分の課題については、「決めるべき大きなプレーをしっかり決めなきゃいけない。過去2シーズンはインターセプトのチャンスに落球がたくさんあった。そうしたチャンスがあったら、しっかり成功させないと」

昨年は大腸がんの父を見舞うため、グリーンベイとフロリダを行ったりきたりするオフシーズンだったが、今年はグリーンベイに腰をすえてトレーニングできている。「去年は飛行機で行ったりきたりだったけど、今は親父もすごくよくなった。僕がオフシーズン全てをここで過ごすのは、じっさい今年が初めてなんだ」

ルーキーシーズンのFSアーロン・ラウスはコリンズと対照的なプレー内容で、コリンズ欠場時に3試合先発してインターセプトを2つ。見事な判断でパスコースに割って入った難易度の高いプレーだった。6フィート4(193cm)の長身で、今オフにはかなりバルクアップもしているようだ。「アーロン・ラウスは素晴らしいオフシーズンを過ごしている。彼は非常に嗅覚に優れていて、かならずボールに手が届く。2年目に入り、落ち着いてプレーできるようになっている」とマッカーシーHC。

バーバーがすでに1stチームに入っている左ガードとは違って、OTAではコリンズが1stチームでずっとプレーしており、ラウスはトレーニングキャンプのプレー内容でスターターの座を奪い取る必要がある。「そのことはあまり心配していない。フィールドに入ったらやるべき仕事があり、正しい判断を下さなきゃならないとわかっているし、そのとおりにできていると思う。僕は競争するためにここにいるのであって、2番手になるためにいるわけじゃない。ロースターの見栄えをよくするためにいるわけでもない」

2008年6月 6日

OTA Notebook: CBアル・ハリスも合流

2008年6月 5日

RBノア・ヘロンが泥棒をノックアウト

RBノア・ヘロンが自宅に押し入った泥棒をみごと倒し、彼のおかげで2人組の犯人が逮捕された。グリーンベイ西郊のハワードの自宅にいたヘロン(独身)が異変を感じたのは、5月30日深夜11時15分のこと。最初にドアベルが鳴ったが、訪問者の予定がないため無視していると、やがてガラスの割れる音がして、2人が押し入ってきた。2階にいたヘロンはすぐに警察に通報。数日前に解体したベッドの支柱がそばにあったので、寝室に入ってきた犯人を打ちのめし、もう1人の犯人も駆けつけた警官に家の外で逮捕された。

ヘロンに叩きのめされた犯人は病院送りとなったが、命に別状はなく順調に回復しているとのこと。盗まれた品物や車もすぐ近くで発見されている。ブラウン郡の保安官は、「ノア・ヘロンは生命と財産を守るため力をふるったのであり、必要かつ正当なことだった。彼は捜査に協力してくれており、みなさんも被害者としての彼のプライバシーに配慮されたい」と述べている。今回、事件の公表が数日遅れたのは、犯人の家を捜索するための措置とのこと。

屈強なフットボール選手とはいえ決して安全というわけではなく、昨年秋にはレッドスキンズのSショーン・テイラーが同じような状況で強盗に射殺されたばかり。捜査官によると、人相や手口からして過去5ヶ月間にブラウン郡で起きた十数件の窃盗事件に関わっている可能性があるというから、まさに感謝状モノの大手柄だ。ヘロンは昨年ヒザのケガでシーズンを棒に振り、今年も厳しい控えRB争いが待ち構えているが、周辺住民にとってみれば街の安全を守ってくれた恩人と言えるだろう。

2008年6月 4日

トレーニングキャンプは今年も夜間練習多し

7月28日から始まるトレーニングキャンプの詳細なスケジュールが発表され(リスト)、今年も夜間練習が数多く組まれていることが明らかになった。夕方6時半からの練習がほぼ1日おきにあり、それを挟む日は午後2時からの練習1回だけ。つまり、朝・夜・昼・朝・夜・昼のパターンを繰り返すことになる。練習の間隔を空けるのは体を休める意図の他に、練習の間にしっかりミーティングを行い、次の練習に反省を活かすため。涼しいウィスコンシンといってもかなりの暑さになる日もあるので、朝と夜に2回練習がある日は、必ず夜がフルパッド練習となっている。クラーク・ヒンクル・フィールドには照明設備がないため、夜間練習は仮設の照明灯を立てる。

パッカーズのトレーニングキャンプは基本的にファンに無料公開。"no practice" や "no public practice" とスケジュールに書かれている日を除き、誰でも観ることができる。練習はランボーフィールド東側のクラーク・ヒンクル・フィールドで行われ、選手たちは街の南にあるセント・ノーバート大で合宿生活を行い、毎朝バスでランボーフィールドにやってくる。子供たちの差し出す自転車に乗ってランボーフィールドから練習フィールドに向かうのが、ロンバルディ時代から続くグリーンベイの夏の風物詩だ(昨年の写真)。家族連れで夏休みをグリーンベイで過ごすファンが多いので、場所取りがなかなか大変だが、夜間練習は比較的すいているようだ。

今年の問題は、プレシーズン第1週が他のチームより遅い8月11日のマンデーナイトであること。「最初のプレシーズンゲームの2週間前にならなければキャンプを始めてはならない」というリーグ規定があるため、他のチームよりもキャンプ入りが遅れてしまう。そして、8月11日から28日のわずか18日のうちに4試合を行わなければならない。そのため、昨年よりもさらに少ない22回しか練習ができないことになった。

昨年から始まったもう1つの特徴は休養日が週1回程度組まれていることで、フットボールのキャンプの常識を打ち破るスケジュール構成が、昨年の好成績で裏打ちされたとマッカーシーHCが判断したのだろう。昔と違って今はオフシーズンのプログラムがみっちり行われ、1年を通して体作りができている選手が多い。トレーニングキャンプに来てから猛練習で体を絞るという意味合いは薄れ、オーバーワークを避けてケガを予防する方が重要になってきている。

マイク・マッカーシーHC。「選手たちがオフシーズン・プログラムに注力していることも、トレーニングキャンプに多少は反映させなければならない。必要な練習量のうち幾分かは、6月半ばのミニキャンプまでに達成できている。ヴァイキングスとの開幕戦までにフットボールチームとしての準備ができることに、私は自信を持っている」

トータルの練習時間が短いのは、NFLヨーロッパの廃止とも関係があるようだ。NFLヨーロッパ帰りの選手はロースター枠の例外扱いとされていたため、80人枠よりも10人から12人ほど多い人数で練習できていた。しかし今年はきっちり80人しかいないため、個々の選手の練習量は十数パーセント増える計算になる。「トレーニングキャンプのスケジュールは、選手ごとの練習量に応じて立てる必要がある。今年は80人しかいないのだから、そのぶん各選手は数多くプレーすることになる」

「就任1年目の2006年は、プレシーズン第3戦の前にチームをオーバーワークさせてしまったように思った。フルパッド練習が連続してしまい、1日2回練習を行う日が多すぎた。今は練習回数を減らしたし、幸いチームとしても3年目となってかなり成長してきた。今はウォーク・スルーやジョグ・スルー(軽いフォーメーションチェック)で成果を挙げることができるようになっている」

2008年6月 3日

ハイブリッド芝の状態はきわめて良好

10%ほどの人工繊維で天然芝を補強するハイブリッド型の DD GrassMaster を昨年導入したランボーフィールド。1年目にさっそく試練に見舞われ、ディビジョナル・プレーオフでは球団史上屈指の大雪ゲーム、そしてNFC決勝では-17℃の厳寒だったが、4ヶ月経った現在の状態はすこぶる良好だ。フィールド・マネージャーのアレン・ジョンソンはプレーオフの時に「春にどうなっているかが最大の問題だ」と心配していたが、今は笑顔で、「わたしがパッカーズに来て12年間で、春の状態としては今年がベストだ。これほど嬉しいことはないね。心から満足している」と語っている。

芝の状態がよいのは DD GrassMaster だけではなく、他にも3つほど新しく試したことがあるとジョンソンは言う。第一に、以前は10月になると新たに種を蒔き、地中のヒーターをつけて成長を促進させたが、昨年はそうした不自然なやり方をやめ、芝を休ませることにした。

第二に、極寒のNFC決勝の前はきわめて慎重に芝を扱った。地元のカーディーラーから車を10台借りてきてそれをテントの支柱とし、その下の空間を4℃まで暖めた。気温が極端に下がると湿気が奪われるため、フィールドを覆うシートが芝にくっついてしまい、シートを外す際に芝まではがれてしまう。そうしたことを避けるための措置だ。「球団のみなに説明したんだ。ためしに夕食の残り物にサランラップをかけ、冷めないうちに冷凍庫に入れてみろってね。極端に寒くなると水分がみな凍りついてしまい、保護シートをはがす際に芝まで剥ぎ取られてしまうんだ」

第三に、シーズンが終わると特別なシートをかけ、冬の間はそのままにした。Evergreen Turf Growth blankets という製品で、小さい穴がたくさんあいている半透明のシートらしい。こうしたいくつもの工夫が功を奏して、4月にシートを取り外すと、素晴らしい状態の芝がジョンソンを待っていた。毎年こうした嬉しいプレゼントを受け取れるわけではなく、たとえば2001年春には(前年プレーオフを逃したにもかかわらず)、全ての芝をはがして最初から敷きなおす必要があった。

DD GrassMaster を導入した球団が全てこのように喜んでいるかというとそうではない。たとえばスティーラーズのハインツフィールドは大雨ゲームのせいもあって芝の状態が芳しくなく、選手からも不満の声が上がった。ハインツフィールドはピッツバーグ大のホームでもあり、高校フットボールやサッカーやコンサートにも使われるが、ランボーフィールドは基本的にパッカーズの10試合(プレシーズン含む) + プレーオフしか使われない。傷みが少ないのは当然のことなのだ。

テッド・トンプソンGMが毎週芝の状態をチェックしにくるなど、球団側も熱心にサポートしてくれている、とジョンソンは言う。同じ DD GrassMaster を練習用のクラーク・ヒンクル・フィールドにも2005年に導入したが、7月末からのトレーニングキャンプで毎日使うため、OTAやミニキャンプでは使用しない。「練習フィールドは昨年10月にいったん芝を全てはがし、砂と人工繊維だけにして、そこから種を蒔いたんだ。だから今は全てが若い芝で、並んだ列がまだ見えるよ。とにかく使いすぎないのが一番。天然芝を満足できる状態で使おうと思ったら、今使っちゃダメなんだ。今だって悪い状態じゃない。これもメンテナンスのうちで、時間が必要なんだよ」

2008年6月 2日

OTA Notebook: LGバーバーの成長