テッド・トンプソンGMは以下のようにスカウティング部門の改組および新規採用を発表した。レジー・マッケンジーとジョン・シュナイダーの肩書きが変わったが、職掌が大きく変わるわけではないようだ。プロ人事部長のマッケンジーがカレッジ・スカウティングの仕事も手伝っていたので、実情を反映した肩書きに、というだけのことかもしれない。
「肩書きの変更はむしろ、すでに彼らが果たしているさまざまな役割を認めるためのものだ。レジーとジョン、それにカレッジスカウト部長のジョン・ドーシーが今後もパッカーズの人事部門のリーダーであることに変わりはない」とテッド・トンプソンGMは説明している。「エリオット・ウルフ、ティム・テリーの2人は非常にいい仕事をしてくれていて、肩書きだけでなく新しい職務が加わることになる」
経歴 : フロリダ州マイアミで生まれ育ち、カトリック系男子校クリストファー・コロンバス高校で活躍した。フロリダ州屈指のCBと評価される一方、高校最後の2年はFSをプレー。バスケットボールではディフェンスの鬼として活躍し、陸上でも走り幅跳びで州大会優勝(7m26cm)を果たしている。オーバーン大では陸上も続けたかったが、フットボールコーチの要求とスケジュール上の問題のため断念した。
レッドシャツ後の1年目は控えCBとしてプレーし、2年目にスターター昇格。しかしシーズン途中のケガをきっかけにニッケルバックに下がり、2005年は5試合、2006年は4試合の先発に留まった。有力な先輩の抜けた2007年に右CBとして初めて全試合に先発し、55タックル・4INTを記録。キックオフリターンを含めてビッグゲームでの活躍が目立ち、ドラフト上位指名候補へと頭角を現した。
Strengths : 6フィート強のサイズがありフィジカルなマンツーマンタイプの選手で、パッカーズのスキームにフィットする。コンパクトでクイックなバックペダルからのターン&ランがいい。レシーバーに対してアグレッシブにジャムする。ランサポートでも犠牲をいとわずタフにプレーする。10ydsまで1.47秒は今年のCBでトップクラス。
先発昇格まで時間がかかっただけにニッケルバックの経験が豊富で、そちらで即戦力になるかもしれない。キックオフリターナーとしても昨季は11回平均25.8ydsとよい数字を残し、ガンナーとしても優秀。大学時代はCBオンリーだったが、セーフティもプレーできると本人は主張している。
Weakness : 動きの柔軟さについては見方が分かれ、スムーズな方向転換にやや問題ありとする声もある。NFLのレシーバーの鋭いカットに苦労するかもしれない。フルタイムのスターターとなったのは昨年が初めてなので(先発は通算22試合)経験不足が心配され、一人前になるまで時間がかかるかもしれない。フットワークを磨く必要がある。ゾーンなどレシーバーから離れたカバレッジでの判断力に改善の余地あり。キャッチングがイマイチで、INTチャンスにも手で捕らずボールを胸に当ててしまう傾向がある。
メンタル面 : すでに犯罪学の学位を取得しているが、ワンダーリックテストはわずか10点だったらしく、学習に時間のかかるタイプという見方もある。パッカーズのプレスカバレッジに必要な、WRに真っ向勝負を挑むようなアグレッシブなメンタリティを備えている。
指名の経緯 : 控えCB陣が昨年それなりに成長を見せたとはいえ、CBアル・ハリス(33歳)やCBチャールズ・ウッドソン(31歳)の後継者となるには物足りないので、CBの上位指名は必至と見られていた。結果的には2巡末での指名となったが、1巡30位でCBアントワン・ケイソン(アリゾナ大)が残っていれば指名するつもりだったらしい。しかしチャージャーズが27位でケイソンを指名してしまったため、トレードダウンして4巡指名権(DEジェレミー・トンプソンを指名)を手に入れた。
2004年には小兵のCBアマド・キャロル(5フィート10)を1巡指名して失敗したパッカーズだが、トンプソンGM就任後はかつての大型CB路線に戻り、ホーキンズ(2005年)、ブラックモン(2006年)そしてリーと、大き目のCB指名を続けている。「彼はタフガイだ。バンプ&ランを好む。我々のディフェンスによくフィットすると思う。エネルギッシュで優れたアスリートだ。全体60位で指名できるとは思っていなかったし、非常によいバリュー・ピックだったと我々は感じている」とトンプソンGM。
パッカーズにとって : 今年の上位指名CBでは最もサイズに恵まれた選手の1人で、マンカバー、プレスカバレッジ向きとの評価が多い。オーバーン大でのパスカバレッジ戦術についてCBリー本人は、「オフカバレッジは全体の4%か5%ぐらいで、それ以外はプレスカバレッジだった。片側がゾーンで片側がマンであったり、いろいろと変化はつけたけど。強気で挑戦的なタイプのコーナーだと自分では思っている。WRのルート取りをラインで(ジャムして)混乱させる。相手を釘付けにする長い腕もある。だからグリーンベイのバンプ&ランはうってつけだよ」
「フィルムで分析して我々のスキームに求められる資質は見て取れたし、パトリックなら我々のディフェンスにフィットすると確信している。サイズがあって、フィジカルなところが非常にいい。タックリングやバンプ&ランでのアグレッシブさを見ても、あの気性や姿勢はウチのスタイルに合っている」とマッカーシーHCは評価している。
プロボウルCBが2人揃っているので、2巡指名選手とはいってもすぐに先発を任せるわけではなく、将来の後継者候補。さしあたって今年はトラモン・ウィリアムズやウィル・ブラックモンらと3番手・4番手を争うことになるだろう。「年上の選手たちをよく見て学び、言われたことはどんどん取り入れようと思う。アル・ハリスにチャールズ・ウッドソン、彼らはすごいよ。彼らから学んで最高の選手になりたい」
遅咲き : 大学4年目までフルタイムのスターターになれなかった理由について、「2004年はすごい先輩たちがいた(現WASのCBカーロス・ロジャースや現ATLのCBデヴィッド・アイアンズ)。2005年に5試合に先発した後でケガがいろいろあって、コーチたちは僕の健康を優先したんだ」と本人は説明している。トンプソンGMも、「オーバーン大は非常に優秀なチームなので、遅咲きと言えるかどうか。3年までもずっとニッケルやダイム・パッケージで出場していたし、フルタイムの先発となった昨年は素晴らしい内容だった」
オーバーン大 : パッカーズにとってオーバーン大選手のドラフト指名は1993年5巡のLBジェームズ・ウィリス以来15年ぶり12人目。1987年1巡4位のRBブレント・フルウッド指名は失敗に終わったが、TEエド・ウェスト(在籍1984-94)やKアル・デル・グレコ(在籍1984-87)は、ドラフト外入団してNFLで長く活躍している。
以下のビデオは昨年9月半ばのインタビュー映像。意外にソフトな話しぶり。
経歴 : ケンタッキー州ルイヴィルに生まれ、同州を代表するフットボール一家に育った。トリニティ高校では通算44試合に出場して10579yds・119TDを投げ、同校を三度の州大会優勝に導いた。同州のMr.Football はもちろんのこと、各メディアの全米最優秀オフェンス選手賞や全米最優秀QB賞などを受賞。バスケットボールでも活躍して同校初の地区大会優勝に貢献。野球でも州大会で準優勝し、コロラド・ロッキーズからドラフト指名されている。
全米の名門大から誘われたが、父や兄のプレーした地元のルイヴィル大を選び、ボビー・ペトリーノHCの下でプレーした。レッドシャツを経ず、1年目から控えQBとして11試合に出場。2年目からスターターとなり、大学通算10775yds(先発3年間の1試合平均は301.69yds)、成功率65.1%、71TD、24INTと素晴らしい成績を残した。特に3年目の2006年シーズンは同大をビッグイースト優勝、全米ランク6位、オレンジボウル勝利に導いた。
しかしペトリーノHCの去った2007年の同大はディフェンス不振に悩み、パス攻撃(全米4位)の奮闘およばず、成績は6勝6敗と落ち込んだ。ブローム自身もヤーデージやTDは増えたがインターセプトも5個から12個に増え、ドラフトでの評価が下がる結果となった。
Strengths : 十分な身長とがっちりしたガタイがあり、プロで必要な全てのパスを投げられる肩の強さと正確性がある。ポケットでの落ち着きがあり、2番目3番目のターゲットをしっかり見ることができる。優れたフィールドビジョンで相手カバレッジを見分け、正しい判断ができる。ポケットで素早くスライドして時間を稼ぐフットワークもある。先発経験がたっぷり3年間あり、完成度が高いタイプ。少年時代からよく鍛えられている。
Weakness : 手はそこそこ大きいが、腕が短め(30インチ弱)。ロケットアームの持ち主ではなく、実際は地肩の強さよりも優れたメカニックで投げている。しっかり踏み込めないときにダウンフィールドに投げ込める力があるかどうか。ボールを腹のあたりまで下げる癖があり、大きくあおるようなモーションになってしまうことがある。そのせいかパスをディフレクトされる回数が多く、過去3年連続で30回以上ディフレクトされている。
40yds走のタイムは悪くないが大学通算44ydsしか走っておらず、スクランブルの脅威には欠ける。右ヒザの前十字靭帯断裂、右手親指の腱断裂、左肩の手術と、ここ3年連続で大きなケガをしている。
メンタル面 : フィールドでのプレッシャーにも落ち着いて対処できる。ワンダーリックテスト32点と申し分ない頭脳があり、そのことはQBとしての判断のよさに表れている。真面目なハードワーカーでチームメイトからの尊敬も篤い。必要とあればリーダーシップを発揮するが、普段からどんどん声を出して引っ張るタイプではない。名門フットボール一家というプレッシャーの下で頑張ってきた経験も、チーム側は高く評価している。
指名の経緯 : ファーヴ引退にもかかわらずFA補強を見送り、控えQBは昨年のドラフト外選手2人(ドラフト後に解雇)しかいない状況だったので、QB指名は確実視されていた。ブロームを指名しようと2巡の途中でトレードアップしようとしたが、交渉がまとまらなかった、とトンプソンGMは明かしている。「全体56位では残っていないだろうと私は予測していた。ドラフトは予想どおりに行かないもので、彼が残っていてくれて本当に幸運だった」
1巡上位指名候補だった昨年、ブロームはカレッジ残留を選んだものの、ヘッドコーチ交代もあってインターセプトが増えて評価を落とした。1巡末から2巡半ばあたりの指名予想が多く、2巡25位なら十分おいしい、という見方が一般的。今年はややQB不作の年で、ブロームを2番目か3番目と評価する球団が多かったようだ(QB指名リスト)。たとえば1巡18位のジョー・フラッコは荒削りだがスケールが大きそうに見え、ブロームは経験豊富で完成度が高そうだが伸びシロが小さそうに見える、という印象をもたれているのだろう。
「昨年カレッジに残ったことを後悔はしていない。自分の心と相談して決めたことだ。僕はもう1年ルイヴィルに残りたかった。チームとしての目標を追い求め、それは達成できなかったけれど、自分としては選手として進歩できたと思うし、成熟したと思う。指名順位が下がったとしてもそれは関係ない。1年前よりよいクォーターバックになれたし、プロのレベルへとステップを上がる準備ができたと思う。この1年は本当によい勉強になって、今後の自分の助けになるだろう。だから、あの決断は全体としてみれば正しかったと思う」
パッカーズにとって : 必要だった2番手QBを獲得しつつ、ロジャースがコケた場合にも別のフランチャイズQB候補が控えている、という状況を作ることができた。後述のように、QBアーロン・ロジャースの先発の座に影響がないと首脳陣は強調しており、1巡でなく2巡末なのでロジャースにプレッシャーがかかりすぎることはなさそう。たとえブロームが控えQBどまりでも、しっかりした2番手QBになるのなら、2巡25位はけっして高くない、という見方もある。
エースはロジャース : 1巡指名入団から4年目にしてようやくスターターに昇格したロジャースに対して、さらにプレッシャーが増すという見方は少なくない。しかしトンプソンGMは、「チームにとってプラスになる選手だと思うし、我々が彼を鍛える間、アーロンの後ろでしっかりやってくれると思う。私にとってもマイク(マッカーシーHC)にとっても球団全体にとっても、エースはアーロンだ。ブライアン本人にも電話で伝えたし、それは理解してくれている」と語っている。マッカーシーHCともども、エースはロジャースであると、くどいほど繰り返している。
ドラフト初日終了後の会見で、QB指名についてロジャースに説明したか、と聞かれたトンプソンGM。「いや、私は特に必要を感じない。アーロンは大丈夫だ。彼はプロだし、今は自分が先発QBだとわかっている。たしかにメディアからはあれこれ言われることだろう。しかしこれがプロフェッショナル・フットボールであり、アーロンはプロだ。出場経験は少ないが、みなさん彼を取材しておわかりのように、非常にしっかりと振舞っている」
ブローム本人も立場を理解し、「まずしっかりとプレーブックを消化して、競争したいと思う。自分のなれる最高の選手になるため、ハードに努力するだけだ。グリーンベイはとても優れたチームだし、早く僕もその一員に加わりたい」と語っている。自分の指名がロジャースへのプレッシャーになるのでは、という質問には、「それはコーチが決めることだ。自分にできるのは、できる限りの努力をして最高の仕事をすること。そして自分の能力をコーチたちに見てもらい、判断してもらえばいい」
ブレット・ファーヴ : ファーヴが使っていたロッカーがまだ残されていて、その隣がロジャース、その隣がブロームとなっている。「ロッカーに"FARVE"の名前が掲げられていると、つい見に行っちゃうよ。彼の引退が自分の入団につながったのは、たしかにちょっと不思議な気持ちだね。彼の引退を見て僕はすごくがっかりした。彼のような伝説的人物が引退するのは見たくないよ。その彼のロースタースポットを自分が埋めることになるなんて、まったく思ってもいなかった。僕の世代の子たちはみんな彼を見て育った。彼のプレーを見るのが大好きだったし、誰もがそうだ。その彼がいたのと同じロッカールームに今こうしていられるなんてすごくいいね」
ルイヴィル大 : パッカーズがルイヴィル大の選手を指名するのはRGジェイソン・スピッツ以来2年ぶり6人目で、さらに5巡指名されたOTブレノ・ジャコミニが7人目となる。その他にルイヴィル大といえば、QBダン・マリーノ時代のドルフィンズで活躍(プロボウル5回)したWRマーク・クレイトンが、1993年に1年だけパッカーズでプレーしている。2002年にセインツから高額FA移籍して失敗に終わったDEジョー・ジョンソンもルイヴィル大。
フットボール一家 : 父オスカーも兄のグレッグとジェフも全てルイヴィル大で活躍した。長兄グレッグはWRとして活躍し、2006年からルイヴィル大の Director of Football Operations を務めている。次兄ジェフは同大でエースQBとして活躍(永久欠番)したあとNFLで控えQBを7年間務め、現在は同大のアシスタントHC兼オフェンシブコーディネーター。フットボール一家で育ち、大学で兄ジェフの指導を受けたことについては、5月12日の記事を参照のこと。
以下のビデオは、上が大学でのハイライト映像。下はトリニティ高校のヘッドコーチや長兄グレッグへのインタビュー映像。
ここ数年はファーヴがOTAを休みがちだったので決して不慣れではないが、今年のQBアーロン・ロジャースは名実ともにスターターとして初めてのOTAを迎えている。「気分はいいね。これまでにも1stチームでプレーする機会はあったけど、スターターとしてシーズンに入ることが決まっているというのはすごくエキサイティングだ。チームメイトも僕の周りに集まってきて、僕のリーダーシップのスタイルや物事の進め方にも慣れてきている。僕はこうした経験を、このチャンスを、生まれてからずっと待ち続けてきた。だから本当に嬉しいよ」
2年前のゴルフトーナメントでの、ブロンコスのマイク・シャナハンHCからのアドバイスをよく覚えているとロジャースは言う。「クォーターバックがウェストコーストオフェンスを本当に理解するには3年かかる、と彼に言われたんだ。そのときの僕は、はいはいわかりましたという感じだったんだけど、それが真実だったと今ではよくわかるよ。よく言われるように、周囲の動きがスローダウンして見えるようになったのは3年目(昨季)のことだった」
「今年でNFL4年目。オフシーズンの95%をここグリーンベイで過ごすようになって3年目になる。オフェンスを理解し、若い選手たちに教えられるようになったことが、来たるシーズンの助けになると思う。僕らは若いチームだし、QBがフィールド上で第ニのコーチのような存在であることが、このオフェンスにとっては非常に重要なんだ」
ロジャースを指導して3年目のトム・クレメンツQBコーチは、「アーロンは実戦でプレーした経験は多くないが、このオフェンスについては非常に経験豊富だ。このオフェンスを知り尽くしていて、自分の役割や、どのようなアジャストが必要かをわかっている。速いスピードの中でそれらを行うことができる」と高く評価している。
ドラフトでQBが2人も指名されたことについて、ロジャースは言う。「どちらもすごく頭のいい選手だし、大学で優れた実績を残してきた。僕は彼らに対して常にオープンでいるつもりだ。僕が(地位を脅かされるプレッシャーを感じて)彼らに対してよそよそしい態度を取るだろうというのは思い違いだ。彼らを助けることが、ウチがよりよいチームになる道でもあるんだから。必要とされればいつだって質問に答えるよ」
「ルーキーとはどういうものか僕はよくわかるし、分厚いプレーブックに彼らの頭はいま溺死しそうな状態になっているところだろう。だから必要があれば、僕の電話番号は渡してある。じっさい彼らは今夜僕の家に遊びにくることになっているんだ。アーロンがエースQBだとマイク(マッカーシーHC)が言い、僕がエースだとテッド(トンプソンGM)が言ってくれている。だから(ブライアン・ブロームの入団は)心配していない。ブライアンはよい選手で、頭がよくてオフェンス理解もとても早い。でも今はスターターの地位は僕の手にある」
ブレット・ファーヴはロジャースとあまり積極的に付き合おうとしなかったが、ロジャースの姿勢は対照的だ。その他にも毎週のようにチームメイトをたくさん家に招いている。「ブレットのときとは状況が違うよ。僕が21歳で入団したとき、彼は36歳だった。15歳も違ってはね。僕は24歳で、彼らQB2人は22歳。年齢的にも付き合いやすい。とにかく僕は自分のやり方を続けていくつもりだ」
チームリーダーとしての責任について。「僕のリーダーシップ的役割が増すのは嬉しいことだ。過去2年間も、スカウトチームでのリーダーシップは増してきていた。チームメイトを励ましたり、バックアップQBの自分にできる限りのことをしていた。でも今は自分が先発QBとなり、仲間も僕の言葉により説得力を感じてくれる。それはいい気分だけど、リーダーシップは言葉だけじゃダメだ。言行一致した安定感あるクォーターバックに、選手たちはついてくる。フィールド上のリーダーとして言行一致し、プレーもそうでなきゃいけない。全てのプレーでそうあろうと僕は努めている」
ファンからの期待、または期待されていないことについて。「自分へのプレッシャーについてはよくわかっている。自分が誰の後任であるか知ってるし、ロッカールームの外に出ればたくさんの人が僕の失敗を予想していることも知ってる。いやたぶん失敗を予想するというより、失敗を望んでいるのだろう。僕はそれでかまわない。気になどしていない。僕が心配するのは、自分を信じてくれている53人のチームメイト。僕がいいプレーをすれば、みんなついてきてくれる。そうすればいずれはファンも僕を好いてくれる、そう思うよ」
「こうした状況に身を置くメンタル的な準備を、だいぶ前から僕は重ねてきた。自分が1番手だと認められたのは本当に嬉しいし、自分の運命はいま自分の手の中にある。僕がいいプレーをすれば、全てのことは自然とうまく行く。いいプレーができなければ、そのときはブライアンか誰かが僕に取って代わるだろう」
これまでに紹介した内容と重複する部分が多いのはご容赦を。
経歴 : カンザス州ライリー出身。高校時代はQBとしてオールステートに選ばれ、バスケ(地区の最優秀選手)や陸上(100m・200m・400mと走り幅跳びで州大会優勝)でも大活躍。しかしパスで1029yds・8TD、ランで1572yds・25TD(ぜんぶ彼の成績)というラン主体のオフェンスのため、フットボールではディビジョンIの大学から奨学金のオファーがなく、ウォークオン(奨学金なし)で地元のカンザス州立大へ。
レッドシャツを経た大学1年目はSSとして出場ゼロ。2年目の2005年、WR不足のチーム事情からWRに転向すると、大学初出場の試合から7戦連続でタッチダウンを挙げる大活躍。全試合に先発して669yds・8TDを挙げ、ビッグ12カンファレンスのセカンドチームに選出された。翌2006年はヒザのケガに苦しんで成績を下げたが、4年目の昨季はカンファレンス記録の122キャッチ1606yds・11TDを挙げる大ブレーク。1試合平均10.17キャッチ、133.83ydsはどちらも全米2位の記録だった。ビッグ12のファーストチームに加えてオールアメリカンにも選出され、ドラフト上位指名候補に躍り出た。
Strengths : 191cmの大型レシーバーで、サイズのわりにはスピードやクイックネスに恵まれている万能タイプ。バランスがよくボディコントロールに優れる。本番に強く、タフで勝負強いキャッチを見せる。キレがよく安定したルート取りで、CBをうまく外してキャッチするセンスもいい。アクロス・ザ・ミドルの密集の中で難しい球をキャッチでき、優れたビジョンを活かした巧みなランアフターキャッチでロングゲインに変える。武器の少ないオフェンスの中で常に相手チームから徹底マークされながら、毎週安定した成績を残している。
パントリターナー(大学通算6回だけ)としても、何度もビッグリターンを繰り出して平均44.5yds・2TDととんでもない数字を残している。高校時代にQBをプレーしていたせいか、トリックプレーからのパスも6回投げて2TDを決めている。アスレチック能力はジェニングスとジェームズ・ジョーンズの中間かあたりで、ルヴェル・マーティンやコーレン・ロビンソン(すでに解雇)よりかなり速い。
Weakness : トップクラスの身体能力はなく、フィールドをストレッチしたり相手CBが警戒して大きなクッションを置くようなスピードには欠ける。スクリメージでのジャムに負けぬよう、手の使い方などテクニックに向上の余地あり。身長のわりに上半身の線がまだ細いので、バルクアップが必要。しかし、「今年ドラフトされたWRの中で最も欠点の少ない選手」と指摘するスカウトも。
メンタル面 : 人格的にすぐれたナイスガイで、精神面は文句のつけようがない。ワンダーリックテスト28点はWRとしては非常に高く、かなり頭のよい選手。SSからWRに転向してすぐに結果を出しているのは、彼のハードワーカーぶりとフットボール頭のよさを示しているのだろう。3年時はヒザのケガにも悩まされたが全試合に出場し、スペシャルチームでも頑張っている。
指名の経緯 : WRはパッカーズで最も層の厚いポジションだけに、2巡指名にはファンだけでなく選手の中からも驚きの声が挙がった。「我々は常に向上を目指している。このポジションはもう十分だから、優秀な選手が残っていても獲らない、ということは決してないのだ。このユニットは優秀だと思っていても、何人かケガ人が出ればダメになってしまう。特に最近のマイク(マッカーシーHC)たちは、5WRなどスプレッド隊形を好んで使っている」とトンプソンGM。指名後に"Packers Draft Party"会場に顔を見せると、今年もファンからのブーイングを浴びた。
WRネルソンに注目した経緯についてトンプソンGM。「彼の対戦相手を見るために、12月にはずいぶん彼のプレーを見る結果になり、そのたびに『この27番は誰だ?』と私は驚いてばかりいた。見れば見るほど彼を認めざるをえなくなった。あら探しをしようとしてもね。それに昨秋彼を見たスカウトたちが、みな熱烈に推薦し続けたので、我々としても真剣に検討を続けてきた」
パッカーズにとって : ショートからミドルレンジが得意でランアフターキャッチに優れる、ウェストコーストオフェンスにぴったりのタイプ。大型の白人レシーバーだからといって決してポゼッション型ではなく、むしろジェリー・ライスのようなオールラウンド型とパッカーズ側は評価しているようだ。サイズを活かしてスペシャルチームでの活躍も期待されている。
先日のルーキー・ミニキャンプでは、何ごとにも口うるさいことで知られるジミー・ロビンソンWRコーチがネルソンのプレーにだけには口を出さなかった、というエピソードからも完成度の高さがうかがえる。WRがだぶついたためコーレン・ロビンソンをすでに解雇し、現状ではネルソンが4番手あたり(ルヴェル・マーティンが5番手)。評判どおりであれば、3番手のジェームズ・ジョーンズをプッシュできるかもしれない。将来的にはジェニングス、ジョーンズとネルソンの3人でパッカーズのWR陣を担っていってほしいところ。
カンザス州立大 : カンザス州立大出身選手の指名はパッカーズとしては48年ぶり3人目。過去2人はあまり活躍できなかった選手のようだ。しかしそれ以外に、70年代から80年代にかけてパッカーズの強力パスオフェンスを担ったQBリン・ディッキーとTEポール・コフマンの2人がともにカンザス州立大の出身。QBディッキーはトレードでオイラーズから、TEコフマンはドラフト外でパッカーズに入団している。
田舎育ち : 人口886人のカンザス州ライリー(地図)で牧場を営む家庭に生まれ、わずか30kmほどの同州マンハッタン市にあるカンザス州立大へ。地元っ子の活躍にファンは大喜びし、非常に愛された。人口80人のアイオワ州ケルシーで製材所を経営する家庭に育ったDEアーロン・キャンプマンとタイプがよく似ている。どちらも浮ついたところがなく地に足のついた人柄で、高校時代からの恋人(ネルソンは6年生からの恋人)と結婚している。
万能アスリート : 彼が通ったのは学年70人ほどの小さな高校だが、6年前にはSジョン・マグロー(現KC)がドラフト2巡指名されている。ネルソンはそれと比べて見劣りしないアスリートだったので何とかディビジョンIの大学に進ませたかったが、QBとしてパス1029yds・ラン1572ydsいうラン主体のチームだったせいか、誘ってくれたのはディビジョンIIばかりだった、と高校のコーチは振り返っている。
バスケットボールではカンザス州のオール・ステートに選出され、通算325アシスト、225スチール、161ブロックは全て同校の記録となっている。陸上でもクラス3aの州大会で走り幅跳びや100m(10.63秒)や200m(21.64秒)や400mで優勝。しかし本人はフットボールがしたくて、ウォークオン(奨学金なし)でカンザス州立大に進む道を選んだ。
以下は、最初が彼の人となりを紹介するビデオで、両親も登場している。2番目のビデオにはワンハンドなどアクロバティックなパスキャッチの数々が紹介されている。
カリフォルニア州チコはサンフランシスコの北200kmほどのところにある小さな町だ(地図)。ファーヴを輩出したミシシッピ州南部がパッカーズびいきの "Green Bay South" となったように、ここチコも最近ではパッカー・カントリー "Green Bay West" に変わりつつある。QBアーロン・ロジャースはここで生まれ育ち、ここのジュニアカレッジでプレーし、それからバークレーまで南下してカリフォルニア大で大活躍した。それだけに、人々のアーロンへの愛情は並々ならぬものがある。
ロジャースは、5月10日に故郷チコでチャリティ・ゴルフトーナメントを開催した。ここ北カリフォルニアは本来49ersやレイダーズの地盤だが、今回はパッカーズの帽子をかぶってきたゴルファーも少なくない。「地元の人々がサポートしてくれるのは嬉しいものだ。みんなが僕を応援してくれてるとよくわかったよ。実際この町が過去2ヶ月でそれほど変わったわけじゃない。僕への観戦チケット入手の依頼がすごく増えたということ以外はね」
13歳の頃からのロジャースの友人、マット・ホックは、「ここはスモールタウンで人々の結びつきがとても強い。今年は明らかにちょっとした興奮が始まっていて、もういつでもフットボールシーズンを迎えられる状態さ。我々はみなアーロンとパッカーズが楽しみで仕方がない」と言う。ひざまずいてファーヴの引退撤回を懇願していない、数少ないパッカーズファン集団と言えるかもしれない。「我々のアーロンへの愛情は、ブレットの業績とは関係がない。みなアーロンの味方なんだ」
ロジャースの父エドも息子たちとともにトーナメントに参加している。「ブレットが引退して球団側の関心はアーロンに移ってきたし、そうあるべきだろうね。パッカーズファンのチャットルームを覗くと、今でも70%のファンがブレットを望んでいる。しかし彼はNFLを去ると決め、今度はアーロンの番だ。グリーンベイのファンたちも支持してくれていると思う。ドラフトでQBを2人指名したことは、さほど障害にはならないと思っている。若手QBは常に必要だし、若いQBたちが一緒に成長して行ける。ただ、カルペッパーのようにまだスターターの座を望んでいるベテランが来た場合には、(ケミストリーの点で)問題が出てくる可能性もある。だから今の形がベストだと思う」
ウィスコンシン出身でチコに16年住んでいるジョー・ホグランドは、今回一緒に行われたチャリティ・オークションでグリーンベイ旅行のチケットを競り落としたばかり。「ブレットが引退を決めたときはファンがみなとても落ち込んだが、我々だけはそうじゃなかった。我々としては、『ついにアーロンの出番がきた』 って感じだね。彼はこれから自分の手で歴史を作るんだ。アーロンの能力はチコの誰もがよく知っている。いまに国じゅうが知ることになるだろう」
キャロル・エドウィンは36シーズンにわたってパッカーズで働き、このたび引退することになった。年齢不詳だが、もうじき結婚46周年で19歳の孫がいるというから、おそらく60代の後半というところだろう。1967年にいったん辞職したが、育児が一段落した1975年にパッカーズに復帰し、1980年代後半にチケット・オフィスに移ると、1995年からチケット・オフィスのスーパーバイザーという要職にあった。
彼女がヴィンス・ロンバルディHC(兼GM)の受付係に採用されたのは1965年のこと。家がランボーフィールドのすぐ近くのため、夫のフレッドに説得されて新聞広告の募集に申し込んだのだが、すでに二度のNFL制覇を成し遂げていたロンバルディとの面接は胃の痛くなるような経験だった。
「ヴィンスが私を気に入っているのか嫌っているのか、私にはわからなかった。とにかく彼は人の名前が覚えられず、全くひどいものでした。でも私の名前はすぐに覚えて、間違うことはなかったですね。それがいいことなのか、悪い理由によるものか、わからなかったけれど」
「なにしろ家が近いものだから早く出勤できるのが私の取り柄で、たいていヴィンスより前に着くことができました。彼のそばにいるとどうしても失敗が怖いけれど、隠し立てをせず失敗を認めることが大事でした。たとえ自分のせいではないと内心思ったときでも」
「彼は本当に優しい人でした」というエドウィンだが、やはり独裁者の機嫌を見極めることは重要な仕事だったようだ。「当時のチーム・オフィスは旧ビルディングの2階にあったのですが、彼が階段を上がる足音で機嫌の良し悪しはわかりました。彼にはリアル・スマイルとフェイク・スマイルの2種類があって、もし出勤時に彼がフェイク・スマイルを浮かべていたら、その日は大変な1日になると覚悟しました。あちこちにカミナリが落ちたものです」
彼女が出産・育児のために最初の「引退」を決意したのは1967年シーズン終了後のことだった。まだ誰も自分の妊娠に気づいていないだろうと思っていたが、ロンバルディに辞職を申し出ると、「彼はすぐに私を祝福してくれたんです。やはり妊娠だと思っていた、とリアル・スマイルでね。最後の日には、私の幸運を祈ってハグまでしてくれた。だから、ひょっとしたら私を気に入ってくれていたのかも」
1967年1月の第1回スーパーボウル(当時はその名前さえなかった)は、30年後の第31回スーパーボウルと比べて、はるかに地味なイベントだったと彼女は振り返る。「第1回のときは、8人の職員と一緒にミルウォーキーまで列車で行き、そこからロサンゼルスに飛んだのです。当時は今のような大騒ぎではなかった。30年後のスーパーボウルでは、仕事もたいへんな長時間だったし、ろくに観光もできなかった。とても比較にはなりません。でもニューオーリンズではたくさんの経験をした上にゲームに勝つことができて、ほんとうに素晴らしかった」
「引退が楽しみなのは、一介のファンに戻れること。これまでゲームデイはいつも仕事をしていたけれど、これからはスタンドに座って1人のファンとして応援することができる。(部下だった)障害者支援のスタッフにスタンドの席から挨拶できるなんて、とても嬉しい」
今年パッカーズ・ホール・オブ・フェイム入りするのは、元センターのフランク・ウィンタース、元DTのギルバート・ブラウン、それに元ビデオ・ディレクターのアル・トレムルの3人が選ばれている。7月19日に開催されるその殿堂入り式典で、ウィンタースにはかつての相棒ブレット・ファーヴ、ブラウンには同僚の元DTサンタナ・ドットソン、トレムルにはQBとしてもHCとしても付き合ったバート・スターがプレゼンターを務めることになった。
パッカーズ史を代表する元QB2人が揃うとあって、式典のチケットはあっという間に売り切れ。「ファーヴは球団史上最高のQBではない」と主張するオールドファンも少数ながらいて、NFL制覇5回のバート・スターは今でも大きな尊敬を集めている。
今年のパッカーズで唯一スターターの内定していないポジションが、実はロングスナッパーだ。長年ロングスナッパーを務めてきたロブ・デイヴィスが引退し、25歳のトーマス・ギャフォードと新人のJ.J.ジャンセンが後任を争う。出場経験こそないもののギャフォードの能力は高く評価され、後継LSの座は有力と見られていたが、大学で優れた実績を残したJ.J.ジャンセンが先日入団。昨年のキッカー争いと同じように、キャンプでは激しい争いが行われるものと予想されている。
2005年にヒューストン大を出たギャフォードだが、1年目はどこからも声がかからず、シーズンが終わったところでパッカーズに入団した。2006年のキャンプでは大ベテランのLSロブ・デイヴィスを相手によく戦ったが、実績と経験それにロッカールームでのリーダーシップに優れたデイヴィスを引きずりおろすことはできず、開幕前に解雇となった。なにしろロングスナッパーは各球団に1人だけ、NFL全体で32人しかいない狭き門なのだ。
「ああいった状況だったし、解雇には驚かなかった。状況が違えばロースター入りもできただろうと思う。プレー内容は本当に満足のいく出来だったし、コーチもそう言ってくれた。ロブが早く引退すればこのチームで未来が開けるかも、という感触はあった。そのとおりになって嬉しいよ」とギャフォードは言う。それに、在籍8ヶ月の経験は決して無駄ではなかった。「'06年はロブのそばにいられて、ロッカールームでも、リーダーシップについても、仲間との付き合い方についても、多くを学ぶことができた。何がチームのために役に立つか、どんな細かいことも見逃さずに学んだよ」
パッカーズから解雇されたあと、数チームのトライアウトを受けたが、返事はいつも同じだった。「 『OK、もし誰か必要になったら、君に頼むことにするよ』ってね。だから僕は、何かが起こるのではないかと、椅子から身を乗り出すようにしてシーズンを見守った。しかし誰もケガをせず、ポカをすることもなかった」
トレーニングをしながら2006年シーズンを見守った彼は、シーズン終了後にシーホークスと契約。しかし今度はキャンプ前の6月に解雇されてしまった。高く評価してくれたスペシャルチームコーチが交代してしまったことが大きかったようだ。失意のギャフォードは故郷ヒューストンに帰り、建設の仕事に就いた。「ああ、オレのキャリアは始まる前に終わってしまったのか? これじゃあつらすぎる、と思った。まだ十分やれるとわかっているのに、とにかくチャンスがめぐってこない」
家族の励ましもあって、彼はあきらめずに努力を続けた。朝5時に起き、仕事の前に母校ヒューストン大の施設に行ってトレーニングをした。技術を錆びつかせぬよう、選手やスタッフを見つけてはロングスナップを受けてもらった。そうするうちに2007年シーズンが始まったが、やはりNFL球団から電話はかかってこなかった。
もう終わりかもしれない、これだけ必死で頑張っても、全て無駄に終わるのか。肩を落とす彼を父デイヴィッドが励ました。「いちばん勇気付けられたのは、『お前がまたチャンスをもらった時にもし準備ができていなかったとしたら、お前は一生自分のことを許せないだろう』 という父の言葉だった。まったくその通りだよ。チームに呼ばれてここに来ても、体が出来てなくて1年もスナップしていないのでは、たちどころにコーチにバレてしまう。まっすぐ家に帰されるのがオチさ。以前在籍したときよりもしっかりした体を作って、今すぐにでもプレーできる、と自信満々で乗り込むことが大事なんだ」
今年3月にパッカーズと契約すると、その3週間後にLSロブ・デイヴィスが引退を発表した。ギャフォードのスナップを全てキャッチすることになるPジョン・ライアンは、2年前のキャンプでルームメイトだった親しい友人だ。「前回うまくいかなかったとはいえ、彼は8月末までいたんだから、チームにはかなりなじんでいるよ。コーチングスタッフも同じだしね」
ノートルダム大からやってきた新人 J.J.ジャンセンは強力なライバルだが、これまでの苦労を思えば、という気持ちが当然ギャフォードにはある。「ここグリーンベイで成功するための状況は整ったという気がしている。仕事をしっかりやってハードに頑張れば、ね。ここまで長い道のりだったけれど、努力は報われたと思う。まだ目標を達成してはいないが、あと一歩のところまで来ている。努力してきた甲斐があったよ」
2巡b指名のQBブライアン・ブロームはケンタッキー州の有名なフットボール一家に育った。高校時代は父オスカーがQBコーチ、ルイヴィル大では兄ジェフがQBコーチそしてOCとして彼を教えたので、パッカーズに入団して初めて父や兄から離れてプレーすることになる。決して甘やかされてきたわけではなく、現実はその逆だった。彼は普通の選手より厳しい指導を受け、周囲からの大きな期待とプレッシャーの下で活躍を重ねてきた。
13歳年上の兄ジェフは、同じくルイヴィル大で3年間先発QBとして大活躍したあと、NFLでは7年間おもに控えQBとしてプレーした。90年代半ばに49ersに所属していたため、弟ブライアンもQBスティーヴ・ヤング、ジェリー・ライス、TEブレント・ジョーンズといった名選手たちと会うことができた。「8歳とか9歳の子供にとって、NFL選手の兄を持つというのは最高だったね。NFLのゲームを間近で見たり、ロッカールームにも入れて、ものすごくクールな経験だった」とブライアン。
プロ引退後の2003年に母校ルイヴィル大に戻ったジェフは、QBコーチを4年間、そして昨年からアシスタントHC兼オフェンシブコーディネーターを務めている。いっぽう、全米屈指の高校QBとして活躍したブライアンは、大学ならよりどりみどり選べる身分だったが、父や兄たちが活躍した地元のルイヴィル大を選んだ。一家の伝統を守るという意味では筋の通った選択だが、プレッシャーは半端でない。しかも、兄ジェフの鬼のような指導が待っていた。
「ブライアンを教えるのは他の選手よりも大変だった。おそらくブライアン自身は、入学前に思っていたほど(兄に指導されることを)好きになれなかったことだろう。彼のコーチになることで、2人が引き裂かれたとは思わない。しかし、より親密にしたわけでもないように思う。そのかわり、より深いところでの絆を作ることができた」とジェフは振り返っている。
「弟が自分と同じポジションをプレーするのだから、こちらとしては普通より高い水準を求めることになる。高すぎるぐらいにね。私はブライアンに対し、誰よりも多くのことを求めた。ほんのささいな失敗でも私は激怒したものだ。ブライアンにとってよかったのは、彼自身が最高の選手になりたいと望んだことだ。私の要求はときに高すぎることもあったが、もともと彼は自分自身に対して非常に厳しかった」
兄ジェフの指導についてブライアンは、「たしかに彼は僕に対しては他のQBよりも厳しかった。しかしそれはよいことだった。彼はNFLの経験もある。たいへんな知識を持っているし、僕は4年間できるかぎりのことを吸収した。いや大学以前からだ」と語っている。すでに8年生(中学2年)のときに、7ステップドロップのやり方などQBの正しいフットワークについて兄から教わったことを覚えているという。
「グレッグ(WRとして同大で活躍)やジェフの弟」という目でみられながら育ったブライアンだが、ルイヴィル大を率いて活躍するようになると、立場が逆になった。2007年のオレンジ・ボウルを勝つころには、「グレッグやジェフはブライアンの兄」という雰囲気になっていた。
「ブライアンは非常に口うるさく気難しいコーチ(ジェフ自身のこと)の下でプレーしたから、コーチとの付き合い方も少し上手くなっているはずだ。兄からコーチされるという経験は時にはつらいものだったろうけれど、我々は素晴らしい関係を築いている。これからは一歩下がったところから、私は彼の成長を見守ることができる。そして彼が必要としたときには、どんなことでもして彼を助けるだろう」とジェフは語っている。
パッカーズはWRコーレン・ロビンソンの解雇を発表した。出場停止処分を終えると昨季パッカーズの5WR攻撃の一翼を担ったロビンソンだが、ヒザ痛に悩まされ続け、フィールド上での働きにもシーホークス時代の輝きは見られなかった。有望な若手WRが揃っているうえ、先日のドラフトでWRが2人も指名されたことから、いずれロビンソンが弾き出されるだろうという見方が強まっていた。
2001年のドラフト1巡9位でノースカロライナ州立大からシーホークスに入団したロビンソンは、プロ2年目には1240ydsレセプションを記録したものの、次第にアルコール関連のトラブルが増え、フィールドでの成績も急降下した。2005年にはヴァイキングスに移ってキックオフリターナーとしてプロボウルに選ばれる活躍を見せたが、翌2006年夏に泥酔状態でのカーチェイス事件を起こして解雇。シアトル時代の縁でパッカーズのトンプソンGMに拾われ、同じく依存症の前歴を持つブレット・ファーヴからの熱烈なサポートもあった。1年の出場停止処分をはさんで2年計13試合に出場し、パスキャッチ28回330ydsキャッチ、キックオフリターンは37回平均22.9yds。
一昨年9月に問題児を獲得して大きな批判を浴びたトンプソンGMだが、今回の人事はあくまで戦力上の都合によるもので、私生活の問題が理由ではないと強調している。「非常に真剣に検討した結果、ロースター構成の問題から、パッカーズはコーレンを手放した方がよいと判断した。ご存知のように、私はコーレンのことをとても大事に思っている。現在もまだ戦い(アルコール依存の克服)は続いているが、彼がここグリーンベイで人生を立て直すのを見られて、私はとても誇らしく思っている。彼は忠実に約束を守った。ロッカールームでも、若手選手がプロへと成長する手助けをしてくれた」
「率直に言ってコーレン自身にとっても、いま解雇された方が移籍先を見つけるのが容易になる。ヒザの関節炎の問題を抱えてはいるが、それは我々にとって大きな問題ではなかった。リーグから復帰許可が下りたといっても昨年はまだ法的には保護観察期間中だった。しかし今オフに入ってからそれも終わり、もう保護観察期間ではない」
代理人によると、ドラフトの翌日にパッカーズ側から連絡があり、「トレーニングキャンプに参加してもロースター枠の当落線上になりそうだ。解雇を望むか?」と聞かれたという。パッカーズ側の許可を得てトレード先を探したが、合意に至らなかった。WRロビンソンに興味を示すチームが2、3あったが、ドラフト指名権を望むパッカーズに対し、相手チームはある選手をオファーし、パッカーズが気に入らなかったらしい。
今春ウィスコンシン大で先発QBを争っているアラン・エヴリッジは、2006年に転校する前はカンザス州立大でWRジョーディ・ネルソンのチームメイトだった。そのネルソンが2巡指名されると、彼はすぐにお祝いのメールを送っている。「僕はYouTubeでハイライト映像を見る必要などない。ジョーディの能力はよく知っているからね。このところ「このジョーディ・ネルソンってヤツはどうなんだ」と僕は質問攻めにされているんだけど、たしかに僕はよく知ってる。パッカーズはいい選手を手に入れたよ」
「まず第一に、人格的に彼以上の選手は見つけられない。フットボールフィールドでは、非常に恵まれたアスリート。6フィート3、220ポンドのデカさで、鹿のように走る。非常に力強く、フィジカルなプレーヤーだ。いい指名なのは間違いないよ」とQBエヴリッジは話している。ネルソンは最初のルーキー・ミニキャンプでも、新人離れした滑らかな動きと、しっかりしたキャッチ力でコーチ陣を喜ばせている。
セーフティからワイドレシーバーに転向して1年目の2005年にいきなり669yds・8TDを挙げたネルソンは、翌2006年はヒザのケガに苦しんだものの、2007年には1606yds・11TDと才能を開花させた。「彼は黙々と仕事をした。ヒザが万全でないときでも休まず出場し、スペシャルチームでもプレーし、全試合を頑張りぬいた」とカンザス州立大のロン・プリンスHCは振り返っている。
「我々は彼をオープンにさせるためあらゆる方法を使った。アウトサイド、スロット、イン・モーション・・・。だから、彼がパッカーズのオフェンスを習得するのに時間はかからないと思う。彼ほどのフットボール・インテリジェンスを持ち合わせている選手は滅多にいない。ウチは6通りか7通りのパーソネル・グループを使ったが、その全てが、彼をうまく動かしたり相手から見つけにくくするためのフォーメーションだった。彼はシャットアウトされたことが一度もない。どんな状況でもうまくやってのける。スラント、アウト、ポスト、ゴーといった全てのルートをこなせる。ゴー・ルートでCBアキーブ・タリーブ(1巡でTBへ)をぶち抜いたプレー? 全く勝負にならなかったよ」
しかしフィールド上での活躍にもまして魅力的なのはその人柄だ、とプリンスHCは絶賛している。「カンザスあたりの子供はみなパープルの27番(ネルソンの背番号)のジャージを着ているよ。自分の息子もあのようであってほしい、という姿そのものなんだ。彼は6年生のときからのガールフレンドと結婚した。そのエミリーは幼稚園の先生をしていて、私の子供たちも彼女に教わったんだ。まるで古きよきアメリカを見ているような、スモールタウンの物語さ。私の息子たちも、大きくなったらジョーディのようになってほしい」
先日のルーキー・ミニキャンプにトライアウト参加した19選手のうち、下記の3選手との正式契約が発表された。ウィスコンシン大ホワイトウォーター校(ディビジョンIII)のRBジャスティン・ビーヴァーは残念ながら惜しくも選ばれなかった。これでドラフト外入団選手は計14名。なお、先日いったん「契約」と報道されたDTフレッド・ブレッドソーだが、足首の関節鏡手術を受けたため、契約はおあずけとなった。
2008 Packers Rookie Free Agents | ||||||
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Pos. | Name | College | ht. | wt. | 40走 | 備考 |
OT | Ryan Considine | Louisiana Tech | 6-4 | 302 | 5.34 | ミニキャンプでは左タックルをプレーした |
CB | Kyle Ward | Louisiana-Lafayette | 6-1 | 199 | 4.57 | ドライバーの母校アルコーン州立大から転校 |
CB | Condrew Allen | Portland State | 6-1 | 199 | 4.51 | 上記ウォードと同サイズの大型CB |
NFLから各球団に課される今年の"Rookie Pool"(用語集へ)が、ESPNの記事で明らかになった。いわばルーキー・サラリーキャップのようなもので、各球団はこの金額内で新人選手(ドラフト外含む)と契約しなければならない。指名選手数が多く指名順位が高かった球団はそれだけ高額となり、今年の最高額はチーフス(1巡2つ、3巡3つ)の$8,221,790ドル。パッカーズは指名選手数こそ9人だが順位が低かったため、上から19番目の$4,076,190ドルとなっている。
Invited to Minicamp as Try-out | ||||||
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Pos. | Name | College | ht. | wt. | 40走 | 備考 |
RB | Lance Ball | Maryland | 5-9 | 220 | 4.57 | |
RB | Justin Beaver | Wisconsin - Whitewater | 5-8 | 196 | 4.45 | 地元のディビジョンIII校で大活躍 |
FB | Louie Runnels | Stephen F. Austin | 6-0 | 250 | 4.76 | |
OT | Ryan Considine | Louisiana Tech | 6-5 | 300 | 5.34 | |
C | Adam Hill | Louisiana-Monroe | 6-1 | 316 | 5.36 | |
DE | Marque Fountain | Oklahoma State | 6-0 | 255 | 5.09 | |
DT | Tui Alailefaleula | Washington | 6-3 | 350 | 5.34 | 新人でなく大学出て3年目 |
DT | Fred Bledsoe | Arkansas | 6-2 | 308 | 5.23 | |
DT | Ola Dagunduro | Nebraska | 6-2 | 313 | 5.12 | 新人でなく大学出て2年目 |
DT | Chris Walker | Western Kentucky | 6-3 | 295 | ||
LB | Josh Ferguson | Purdue | 6-1 | 234 | 4.89 | |
LB | Durrell Mapp | North Carolina | 6-1 | 227 | 4.71 | アウトサイドLB |
CB | Michael Medina | Wyoming | 5-11 | 188 | 4.44 | |
CB | Kyle Ward | Louisiana-Lafayette | 6-1 | 197 | 4.57 | |
CB | Condrew Allen | Portland State | 6-2 | 199 | 4.51 | |
S | Brandent Englemon | Michigan | 5-11 | 206 | 4.62 | |
S | Marlon Fair | Hampton | 6-1 | 211 | 新人でなく大学出て2年目 | |
S | Tierre Green | Nebraska | 6-1 | 198 | 4.32 | RBアーマン・グリーンの従弟 |
S | Matthew Harper | Oregon | 5-11 | 177 | 4.68 |
ドラフト外でパッカーズとの契約に合意した選手について、これまで報道されているのは以下のとおり。ただしフィジカルチェックでハネられて入団取り消しとなる場合もある。(球団側がなかなか正式発表しないのはそのため)
2008 Packers Rookie Free Agents | ||||||
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Pos. | Name | College | ht. | wt. | 40走 | 備考 |
RB | Kregg Lumpkin | Georgia | 5-11 | 227 | 4.64 | 高卒時は有名選手だったが大学ではヒザの大ケガに泣いた |
WR | Jake Allen | Mississippi College | 6-4 | 185 | 4.56 | ディビジョンIIIで通算記録をいくつも塗り替えた |
WR | Rod Harper | Murray State | 6-1 | 208 | 4.45 | 昨季10TD |
WR | Taj Smith | Syracuse | 6-1 | 180 | 4.58 | 大学では1年しかプレーしていない24歳 |
TE | Joey Haynos | Maryland | 6-8 | 259 | 4.87 | 超長身のブロッキングTE |
TE | Mike Peterson | Northwest Missouri St. | 6-2 | 247 | 4.59 | フットボールから3年離れた後に入学。すでに25歳 |
C | Brennan Carvalho | Portland State | 6-1 | 294 | 5.00 | ディビジョンI-AAで2年連続オールアメリカン。ガードもできる |
LB | Danny Lansanah | Connecticut | 6-0 | 243 | 4.72 | ミドルLB。昨季121タックル、4INTでオール・ビッグ12 |
LB | Marcus Riley | Fresno State | 6-0 | 224 | 4.66 | アウトサイドLB。カンファレンスのディフェンス最優秀選手 |
P | Ken Debauche | Wisconsin | 6-1 | 218 | 4.95 | グリーンベイ出身の地元っ子。Pライアンに挑戦 |
LS | J.J. Jansen | Notre Dame | 6-3 | 254 | 4.79 | 今年No.1のロングスナッパーとの声も。ギャフォードとの争いが見もの |
未契約ながらトライアウトとして今週末のルーキー・ミニキャンプに参加する選手について、現在明らかになっているのは下表のとおり。昨年はFBコーリー・ホワイトがトライアウト参加から契約し、ロースター入りはできなかったものの、プラクティス・スクワッド入りしている。
Invited to Minicamp as Try-out | ||||||
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Pos. | Name | College | ht. | wt. | 40走 | 備考 |
RB | Justin Beaver | Wisconsin - Whitewater | 5-8 | 196 | 4.45 | ディビジョンIIIのウィスコンシン大ホワイトウォーター校で大活躍 |
OT | Ryan Considine | Louisiana Tech | 6-5 | 300 | 5.34 | トライアウトでなく契約したとの情報もあるが詳細不明 |
LB | Durrell Mapp | North Carolina | 6-1 | 227 | 4.71 | アウトサイドLB。オールACCの2ndチーム |
S | Tierre Green | Nebraska | 6-1 | 198 | 4.32 | FS。RBアーマン・グリーンの従弟で大学途中にRBから転向。リターナーも |