グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2007年7月17日

ランボーフィールド大改築への道

ボブ・ハーラン会長兼CEOが回顧録"Green and Golden Moments"の中で、任期中最大の功績といえるランボーフィールド大改築工事に至る経緯を振り返っている。ときはホルムグレンが去ってレイ・ローズHCが不振に苦しんでいた1999年シーズン後半。ロン・ウルフGMはローズHCの解任を考え始め、会計担当からは次第に苦しくなる球団財政が報告され、折悪しくハーラン社長(当時)の最愛の母が重い脳梗塞に。ハーランは400マイル離れた故郷アイオワ州デモインとの間を自分の運転で毎週往復しつつ、大きな難局に対処しなければならなかった。

「1999年のシーズン中、『我々は大きな財政的な問題を抱えていて、来年はもっとずっと悪くなる』 と、会計担当ジョン・アンダーウッドから経営委員会そして理事会へと報告されて来ていた。98年には7ミリオン以上の黒字、99年は7ミリオンを少し下回る黒字、2000年にはその予想のとおり$419,000の赤字となった。10年以上なかった赤字になるとのジョンの報告には、我々も注目せざるをえなかった」

「手元の資金は枯渇しつつあり、スタジアムからの新たな収入の道を切り開かない限り、2005年には通常の運営を続けるだけで$10ミリオンもの借金が必要になってしまう。選手のサラリーやボーナスはどんどん高くなり、各球団がスタジアムの諸収入に頼る割合は上がってきていた。他の球団は新しいスタジアムに移り、我々の収益はNFLの底辺へと落ち込んできていた」

「われわれ理事会や経営委員会にとって大きなパニックだった。それは株主への年次報告にも表れた。『私たちは(ランボーフィールドを建設した)1950年代半ば以来最大の危機を迎えているのです』との私の書簡を、年次報告の冒頭に置いたほどだった。我々は新しい世代のパッカーズファンに対して、住民投票で$295ミリオンのスタジアム大改築を承認するよう求めることになった。2000年1月22日の記者会見でスタジアム大改築プランを発表したが、次の課題は、我々がどれほど真剣にこれを必要としているかを、人々に信じてもらうことだった」

「住民投票への道筋を決めたとき、『ボブ、これは悪夢のような戦いになるよ』 と人から言われたものだ。まさにそのとおりになった。あれほど厳しい戦いになろうとは夢にも思わなかった。特にこのブラウン郡で」

選挙戦さながらの運動が始まった。住民投票の内容は、スタジアム建設資金のためにブラウン郡の住民が0.5%の売上税を認めるかどうか。昔ながらのスタジアムで何が悪い、今風のぜいたくなスタジアムなど要らんだろう、というファンも少なくない。ハーランは精力的に歩き回り、早朝シフトの労働者のため朝5時に工場を訪れて説得にあたることもあった。街のほとんどのコーヒーショップ、ほとんどのレストランを歩き回り、気の遠くなるほどの握手をした。かなり汚い言葉を投げつけられることもしばしばだった。「私たちはとても傷ついた。それでも、フランチャイズが生き残るためにはこれが必要なのだと、人々に説き続けた」

そうして迎えた2000年9月12日の投票日。新任のマイク・シャーマンHCのもとで開幕2連敗という逆風もあったが、53%対47%でスタジアム案はかろうじて可決された。48,788票対42,580票だった。祝賀会で "Thank you, Bob." の合唱に応え、ハーランはスピーチをした。「今日は国じゅうの目がウィスコンシン州グリーンベイに集まった。ブラウン郡全てが、今日自分たちが救ったもののために祝うべきだと思う。決断は下った。これからはコミュニティが一体となって前に進むときだ。我々はNFLで最高のスタジアムを作ろう。 "America's team"はウィスコンシン州グリーンベイに残る。コミュニティとフットボールチームが1つになって、また新たな奇跡を成し遂げたのだ」

さらにハーランは、「ブラウン郡のかなりの人々が、自らの意思に反して売上税を納めることになる。できる限り早く課税を終わらせることが我々の義務だ。不満な人々もコミュニティには多いことを忘れてはならない」と付け加えることも忘れなかった。その言葉のとおり、1年365日営業となった新ランボーフィールドは、パッカーズ・ホール・オブ・フェイムの併設、NFL最高の売り上げを誇るプロショップや各種レストランなど新たな魅力を備え、グリーンベイ詣でに訪れる遠来のファンを引き付ける強力な磁石へと生まれ変わった。

もし住民投票で否決されていれば、今ごろは隣のアウタガミー郡アップルトン市あたりにスタジアムが新設され、豊かな歴史と切り離されて独特の魅力も半減していたかもしれない。今やパッカーズの収入はNFLの上位に名を連ね、$125.5ミリオンもの準備金を積み立てている。スタジアムの経済波及効果もあって地元の税収も好調、予定より早く課税期間を終えることができそうだ。2000年には47%が反対したスタジアム大改築だったが、今では圧倒的多数が「建設してよかった」と受け止めるようになっている。

カテゴリ : History, Lambeau Field