グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2006年10月17日

ジェリー・クレイマー

ジェリー・クレイマーは1960年代のパッカーズ黄金期を支えた名ガード。アイスボウルの決勝TDではバート・スターのQBスニークを成功に導く強烈なブロックを放ち、チーム名物パッカー・スウィープの中核(写真)でもあった。ヴィンス・ロンバルディHCの偉大さを伝える語り部としてOBの中でも重きをなし、いまだに地元ファンから親しまれている。(今年5月の記事も参照) 

ヴィンス・ロンバルディの死から36年。クレイマーは70歳となった今も、彼の写真をアイダホ州ボイジーの自宅の居間に飾っている。笑顔の写真ではない。近寄りすぎたカメラマンをにらみつける鬼コーチの顔だ。自分が惰性でやっていると感じたとき、その写真を見つめるのだとクレーマーは言う。「彼のおかげで、自分は細かいことでも必死でやらなければならない、という気持ちになる。留守電には全て自分から返事をする。細かい仕事も自分からやる。彼の顔を見るたびに、『OK、僕がやります、僕がやります』 と私は言ってしまうんだな」

クリックすると拡大しますそんなジェリー・クレイマーが38年前に出版した名著 Instant Replay がこのたび復刊されることになった。プロ10年目の彼が、時にはミーティングにテープレコーダーを内緒で持ち込み、ロンバルディHCのグリーンベイ最後の年となった1967年シーズンを、チームの内側から克明に記録したものだ。ワシントン・ポスト紙をはじめメディアからは絶賛を浴び、またアイスボウル勝利やスーパーボウル連覇というタイミングもあって、「スポーツ物は売れない」が常識だった当時としては驚異的なベストセラーとなった。

厳格で、辛らつで、時には暴君でもあったロンバルディの姿が余さず描かれているだけでなく、親しみやすく愛すべき指導者の様子も描かれている。どうやって選手たちの自信を回復し、背中を押すかにも長けていたロンバルディは、試合後のスピーチで感極まって話が途中で途切れてしまうこともあった。

あまりにも赤裸々に書いたので、ロンバルディのマリー夫人(1982年没)が気を悪くしないか、当時は心配したとクレイマーは言う。ヘッドコーチを "big, fat Italian" と呼んだ自分の台詞まで載せてしまったため、 彼女にこの本が渡らないよう画策もした。しかし結局は無駄に終わり、彼は夫人と対面することになった。ところがマリー夫人は気を悪くするどころか、「この本は素晴らしかった。理解する助けになりました」と彼に言ったのだ。「何を? フットボールのことを?」 「いいえ、彼のことをよ」

共著のディック・シャープの、「本にはできる限りサインしておけ。そうすれば返本できなくなるから」というアドバイスを、クレイマーは忠実に守ってきた。そうした何千回もの添え書きの中で、ロンバルディ本人にプレゼントする時ほど、何を書き添えるか悩んだことはない。しかし1週間以上も考えた末に選んだ言葉に、今でも満足していると彼は言う。 

For Coach Vince Lombardi, a man against whom all others shall forever be measured.

カテゴリ : History