グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2004年10月 7日

脳震盪について

頭を打った選手が、フラフラしたままフィールドに戻っていくような時代は、いまや遠い昔のことだ。先日のQBファーヴの例で言えば、パッカーズのトレーナーたちは"ImPACT"(脳震盪直後の評価および認識力テスト)と呼ばれるコンピュータ・プログラムを使い、脳震盪の程度を診断し、安全に競技に復帰できる時期を判断する。ほとんどのパッカーズ選手たちは、まずあらかじめテストを受けておき、健康時のデータを記録しておく。そして脳震盪が起きた時に、認知機能に何らかの損傷がないかをチェックするのだ。過去3年間に脳震盪を起こしたパッカーズ選手は全て、この20分ほどのテストを、脳震盪から24時間以内に受けている。

「反応時間テストを欺くのは難しい」と語るのはピッツバーグ大メディカルセンターのマーク・R・ロヴェル博士。この "ImPACT" を考案した人物だ。彼がこのシステムを設計したのは、たいていのアスリートたちは勝手にフィールドに戻ろうとするからだった。彼によると、ファーヴが脳震盪から2プレー後に「準備OKだ」とシャーマンHCに訴えたのは、決して珍しいことではないという。 ロヴェル博士自身も、何度か脳震盪を起こした経験があるからだ。

(脳震盪を起こした時は)まるで現実離れしていて、夢の世界にいるような感じだ。私は18歳のとき、自動車事故で脳震盪を起こしたことがある。重傷を負って出血もひどかった。それなのに私は救急隊員に、歩いて家に帰る、と言ったんだ。家までは何マイルも離れているというのに。判断力がおかしくなり、自分がどれだけの傷を負っているか実感できなかった。そういった混乱がアスリートにも起こり、正しい判断が下せなくなってしまう」

ロヴェル博士によると、正確には、脳震盪は化学的なものであって解剖学的なものではないという。人間の脳には数百万の神経細胞があり、神経伝達物質を介して互いに連絡を取り合っている。脳に激しい衝撃を受けると、脳内の化学成分が不調をきたす。「脳に、回復のための十分な時間をやれば、たいていの場合、比較的短期間に通常の状態に戻っていく」とロヴェル博士。脳震盪は脳挫傷などとは違い、神経細胞が裂けたり剥がれたりするわけではない。もしそのような物理的な損傷であれば、CTやMRI検査ではっきり確認できるが、脳震盪の場合はそうではない。

ロヴェル博士は、国立衛生研究所から300万ドルの補助金を受けて、NFL選手や全米の高校生アスリートの脳震盪のテストを実施している。それによると、過去5年間でNFL選手の起こした脳震盪は900回。彼ら専門家は、"functional MRI"の実験をしており、それを使えば、脳震盪前と後の脳の血流を記録することができるらしい。それが脳震盪診断における次のブレイクスルーになるのではないかと期待されている。

カテゴリ : NFL