グリーンベイ・パッカーズ ニュース

2003年5月12日

老スカウトの価値

比較的無名の大学選手が、「NFLのスカウトが見に来る」 と聞けば、若い下っ端のスカウトが見に来ると想像するのが普通だろう。ところがTEマット・ヒューブナーのもとに現れたのは、少し腰が曲がり、脚を引きずるように歩く80歳の老スカウト、ジョン "レッド" コクランだった。「あんなに年とった人が来たから驚いたよ。でも僕らはすぐに仲良くなった」。 誰でも最初は驚き、すぐにそれが尊敬の念に変わる。

1960年代のロンバルディ時代にコーチを務めたコクランは、隠れた才能を探し出す能力で尊敬を集めている。フルタイムではないものの、限りなくそれに近い。担当地域はウィスコンシン、ミネソタ、イリノイ、ダコタ。カレッジシーズンが始まれば、3週間のうち2週間は外回りだ。「体調さえ良ければ、運転も気にならないね。今でも大学を回る時は全部自分で運転していくんだ」とコクラン。48歳年下のショーン・ヘロック副部長が直属の上司ということになる。

ウェイク・フォレスト大で活躍し、1940年代にシカゴ・カーディナルスでプレーしたコクランは、ロンバルディHCの初年度、1959年にバックフィールド・コーチとしてグリーンベイにやってきた。それ以来、5年間を除いてすべてパッカーズで過ごしてきたのだ。なぜまだ現役でいるのかと聞かれると、「どうしてやめる必要がある?」とコクランは言い返す。「私はフットボールから離れたくない。それが一番だ。長年同じ地域を担当してきたから、友人もたくさんいるんだ。彼ら友人を訪れると、時たま魅力的な選手に出会えることもあるのさ」

地味なスカウト活動だけでなく、コクランはドラフトでも重要な役割を果たしている。先日のドラフトでも"War Room" に参加した。各選手についてのアドバイスを提供するだけでなく、暇な時間には昔話をして、ウォールームを明るい雰囲気に保つのも彼の役割。「『ロンバルディHCとドラフトの話をしてよ』 と彼に頼んだんだ。昔はコーチが4人とスカウトが2人だったんだってね。選手の移籍が少ないから、ドラフトは今ほど重要じゃなかったのだそうだ」とシャーマンHC。

コクランの真価はもちろん昔話などではなく、大学選手を評価する能力にある。プロ・スカウト部長のレジー・マッケンジーは、ドラフト中のコクランのことを "The voice of reason" と呼んでいる。「非常に実践的な評価をする人だ。もし彼が、『コイツはタックルができる』 と言えば、その選手はタックルができる。ドラフトになると、我々はいろんな数字に振り回されがちだ。脚が速いとか腕が長いとかね。でもそんな時に彼が来て言うんだ。『そりゃすごい。でもコイツにはいいプレーはできないぞ』ってね。彼は物事をシンプルにしてくれる」

コクランは今でもパッカーズの練習を欠かさず見に来て、ロースター上の選手は全て知っている。選手たちも彼のことを "Red" とニックネームで呼ぶが、ニックネームの理由となった赤い髪は、はるか昔にグレーになっている。「僕はここに来て10年経つけれど、全てのドラフトで彼の隣に座ってきた」と語るのはヘロック副部長。「彼が話してくれる、ロンバルディ時代やその他のこと、全てが驚くべきことだよ。チームの歴史そのものがそこにいるようなものだ。そんな彼が同じウォールームにいてくれるなんて素晴らしいよ」

カテゴリ : Coach/Front Office, History