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やすびさんのグリーンベイ滞在記 (1)

■ はじめに

もう何年前のことだろうか。当時San Diego, Californiaで大学生をしていた私はルールすら知らないフットボールというものを堪能したいと考えていた。アメリカで一番人気のあるというスポーツ。知らなきゃ損だろう。当時のルームメイトに教えてもらおうと頼むと「いいけど、俺がいいと言うまでどの試合も観るなよ」という答えが返ってきた。

そしてついに観ることの許された試合で目にしたのは、グリーン&ゴールドに身を包んだ選手達が躍動する姿だった。そう、まさに雛鳥が産まれて初めて目にしたものを親と思い込むかのように、この瞬間私の中でフットボール=パッカーズとなったのだ。ハ、ハメられた。待ちに待ったシーズンの開幕には身震いをし、シーズンの終わりを悟った時には泣くのを堪えるのが大変なほど好きになれたのだから感謝しているけども。しかしなんで近くのチャージャーズじゃなくて遙か彼方のパッカーズ・・・。まぁこの後NFLの面白さをパッカーズを通して学んだのだからやはりパッカーズは私の親鳥なのだろう。

そんな私が日本帰国を決断し、帰る前にグリーンベイに滞在してきた。滞在期間は3ヶ月。目的はグリーンベイという街をそれまでの「憧れの土地」からいつ帰ってきても懐かしく感じる「ホームタウン」に変えること。私のロングバケーションだ。これを読んでくださる方でかつての私のようにグリーンベイを憧れに感じていらっしゃる方に、もっと身近に感じていただき、そしてグリーンベイ訪問のきっかけになれたなら大変嬉しく思う。

■ 10月7日午前3時 LA出発

ついにこの日が来た。ぎりぎりまで仕事をしていたため多少ドタバタしたが、この日の為に Los Angeles の家の荷物を処分してきた。前日にルームメイトとも別れをすまし、ふたつの地図を持って車に乗り込む。ひとつは全米がドンと載っていて、LAからGBまでの道のりを蛍光ペンでなぞった偉大な地図。もうひとつは数日前にAAAで無料でもらってきたルートをもう少しだけ詳しくした地図だ。準備万端。おにぎりも持ったし、いざ出発する。

時間は明け方3時過ぎ。こんな時間に家を出る理由は、朝の大渋滞に巻き込まれる前にLAを抜けたかったのだ。これからグリーンベイまでの2400 mileちょい、kmにして4000 km弱の道のりを一人で運転だが、もう待ちに待った瞬間のため気分は高鳴っている。

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インターステート40号線をひたすら東へ

アメリカの車の多くにはクルーズコントロールという機能が付いている。使い方は簡単。自分の好みのスピードで走行中にボタンを押すとその後はアクセルを踏まなくても常にその速度を保ってくれるという優れものだ。設定解除方法はブレーキを一踏みすればOK。アメリカの平坦な高速道路では大変重宝するこのほぼ標準装備のクルーズコントロール、残念ながら我が愛車には装備されていなかった。

というわけで2400 mile、アクセル踏みっぱなし。さすがにこれはキツかった。初日はさすがに眠気に勝てずお昼過ぎに休憩がてら途中の駐車場で仮眠を取る。アメリカの田舎は広大なのでガソリンを入れたい時にスタンドがなかったらどうしようかと心配したが、なんてことはない。実際はガソリンが空になる前にこちらの休憩が必要になってしまい何の問題もなかった。初日は行けるところまで行こうと思っていたので850 mile走ることができ、小さな街のモーテルに辿り着いてすぐに眠りに落ちた。

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ひま・・・

ところでアメリカのモーテルではいちいち窓口で一晩いくらか聞いて回るのは結構面倒だったりする。そこで活躍するのがおなじみモーテル専用クーポン雑誌だ。これは高速道路の休憩所やコンビニ等で無料で手に入る情報誌で、これさえあれば値段を比べるのも楽チンなのだ。一人で運転している私はとにかくヒマ。地図を見てはどこまで行けるかどこに泊まろうか考えて時間を潰していた。独り言も増える増える。ラジオをつける際にもいちいち声に出して自分に聞いていたくらいだ。

2日目は750 mile走ることができ、着いたモーテルは室内プール付きだった。普通こういうところのプールはなかなか使っている人を見ることはないのだが、まさかここで自分が堪能することになるとは。車の中から水着を引っ張り出し、当然貸切の室内プールとスパで疲れを取ることができた。3日目はのんびり550 mile走行しChicagoの手前まで到着。この3日間でOklahomaやSt. Louisを通ったが休憩がてら一時間ほどフラっとしただけでここまで来た。「せっかくなんだからいろいろ観光していけばいいのに」 みんなに言われた。しかし私が行きたいのはグリーンベイのみ。Milwaukeeですら興味はない。

■ 10月10日午後5時 GB到着

そして4日目。残り250 mile。観光に興味がない私はChicagoにて3時間ほどしっかり観光する。やはりソルジャーフィールドだけは外せなかった。今年のクリスマス前のマンデーナイトで我がパッカーズはここで勝利し優勝を決めるのだな、と勝手に想いを馳せた後に車を停めた道の名前を忘れて焦る。やはりChicagoはあなどれない。

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ミルウォーキーあたりで ついに見えた!

Chicagoを出発するとすぐにグリーンベイ行きの看板が出てくる。ついにここまで来た。あとわずか3時間ほどの運転であの憧れのグリーンベイだ。初めてテレビで観たあの日からまさかこんな日が来るとは想像もしていなかった。感動。そして午後5時過ぎ、ついにグリーンベイに到着する。

今回のルームメイトはパッカーズファン。そうパッカーズファンなのだ。LA出発の1週間前にネットと電話で部屋を探したのだが、パッカーズの話で盛り上がったというだけで即決だった。家はグリーンベイより北にある一軒家で、空いている一室を貸してもらうRoom For Rent。3ヶ月の短期滞在ということで生活に必要なものは全て貸してもらえた。ルームメイトは電話で話した彼と彼の家族、他に間借りしているが学生2人いて結構な数となる。LAに住んでいた頃は一軒家を同年代7人でシェアしていて、大人数が楽しいことは実証済みだ。なんて素晴らしい日だろう。そして私のグリーンベイ滞在記が始まる。やっと。

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我が家へ続く一本道
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家の近くにはこんなところも

■ 10月11日 聖地ランボーフィールド

朝、目を覚ました私には行かなければならない場所がある。聖地ランボーフィールド。朝食を済まし、さっそく車を走らせる。緊張。ついに見えた。ついに来ました、ランボーフィールド。その堂々とした姿は本当に見入らせてくれる。きっと世界の中心はここなんだろうな、とか考えながらうっとりする。駐車場内は空いていたのでとりあえず車で駐車場内をぐるぐるし、いろいろな角度から眺めてみる。ランボーフィールド。素晴らしい。そしてしばらくして中へ。全てが輝いて見える。なんせあのランボーフィールドだ。ついに私は来たのだ。一通り満喫した後にお腹が空いたので昼食を取る為に外へ出る。Packer Zone御用達K-martへ行ってみた。なるほど、こんな所にもグッズがあるんだな。そしてしばらくしてまたランボーフィールドへ戻る。たまりません。

しばらくして街をぶらつくことにした私は適当に車を走らせる。まだ大雑把な地図しかないので当然迷う。でもいいのだ。だって迷った先もグリーンベイ。この街を日常にする為に私は来たのだ。一人でにやけながら迷子を堪能する私。そして日が暮れかかった頃、またまたランボーフィールドへ戻ってくる。本日3回目。しかし先ほどまでとは何かが違う。Oneida St. 側の駐車場の入り口におじさんがいる。「はい。7ドルね」 あ、あれ?お金取るの?そう、ランボーフィールドの駐車場はイベント時や時間帯によってちょこちょこ有料になる時があるのだ。もちろんまた次の日も来れるのでそこでUターンして帰ることにする。しかしこの日は気付かなかったのだが、実はLombardi St. 側の入り口にはそんな時でも誰もいなくていつも通り無料で入れたりするのだ。なんなんだ。

■ 最初の一週間

次の日12日は日曜日でゲームデーだ。ここまでパッカーズは3連敗中。アウェー戦とはいえ、今日の対戦相手は調子の悪いシーホークスとあってチームを建て直すには絶好の相手だ。昨日一昨日会ったばかりの新しいルームメイトとテレビの前に座る。彼は趣味でビールを造っているのでさっそく乾杯する。グリーンベイ住民が造るビールなんだからこれはきっと地ビールに分類してもいいんだろう。超地ビール。日曜の昼間っから一緒にビールを飲みながらはしゃぐはしゃぐ。

試合は私のグリーンベイ到着を祝うかのように勝利を収める(Box Score)。しかし勝った事ももちろん嬉しいのだが、こうしてパッカーズファンと一緒に応援できるということがどれだけ素晴らしいことか。全米中にパッカーズファンはいる、とは言うがたまたま隣に座った人、たまたま知り合った人がパッカーズファンだったなんて実際はそうあるものではない。しかしここは違う。道ですれ違った人、目の合った人皆が皆パッカーズファンなのだ。みんな仲間。本当にグリーンベイに来たんだと実感が沸いた一日だった。

そして次の日からは買い物巡りに繰り出す。私は物欲の低い方で基本的に使う物だけを買うタイプだがそれでも欲しい物はいっぱいある。ショッピングモールを始め、お土産屋さんやスーパーなどを片っ端から回りニット帽やスタジアムシートなどを購入する。なかでも面白かったのは大型安売り店Wal-Martのチーズヘッドだ。明らかに色が人工色っぽくてなんか何年も前に賞味期限の切れたチーズみたいだった。もちろんそういった正規品じゃないものを買うのも楽しいのだが、さすがにチーズヘッドはプロショップ(パッカーズ公式)で購入した。

この一週間は街中を探索した。Down Townに行ってみたが、人がいなさすぎて一体どこからどこまでがDown Townなのかもわからない。The Bay of Green Bayは、本当に水の色が緑色でびっくりした。なんでも長年の製紙産業の汚染が原因らしく、緑色なのがグリーンベイの名前の由来というわけではないらしい。ところで10月も半ばだというのにこの時は全然暖かかった。この初めの一週間以降急速に冷え込んでいったので、たぶんこの辺が季節の移り目なのかもしれない。

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updated : 2009/8/14