≪ 前へ 1 2 3 4 5 次へ ≫

チャーリーさんの@カロライナ観戦記 3

■ 出発

何はともあれすべての準備が整い、出発の日を迎えました。私は前日の夜、関空近くのホテルに泊まり、9月17日8時15分関空発成田行きに乗り、1時間25分の待ち合わせで11時成田発シカゴ行きに乗り込みました。海外旅行はちょくちょく行っており、半年前にはハワイへゴルフをしに行ってきましたが、アメリカ本土へは実に10年ぶりです。この間ESTAが必要になったりスーツケースがTSAロック付きのものでないといけなくなったり、9.11同時多発テロ以降アメリカは神経をとがらせ続けているのだなと感じます。

もう一つ大きく変わったことは飛行機の機内装備の充実ぶりです。MAGIC Ⅲといっていつでも好きな時に映画、音楽、ゲームなどが個人用のモニターで楽しめる機器がエコノミークラスにもついているのです。私はハワイへ行った時に初めて知り、楽しくて楽しくて、ついたらすぐにゴルフをするので寝ないといけないのに寝るのも忘れて遊んでいました。これだからJALはやっぱりいいなと改めて感動しつつ、今回も映画を4本も見てしまい、退屈する間もなく予定通り8時40分にシカゴにつきました。

■ シカゴ到着

ここからが頑張り時です。9時50分の便に乗るための律速段階はスーツケースの出てくる順番ではなく、入国審査がどれだけ早く済ませられるかにかかっていると考えていました。そのためには少しでも早く飛行機から降りて入国審査場まで走る必要がありました。シートベルトのサインが消えるやいなや仲良くなった隣のご夫婦に別れを告げ、狭い通路を走って前方へ、しかしビジネスクラスのところで行く手を阻まれ前へ進めません。

結局ファーストクラス、ビジネスクラスの乗客が降りた後にやっと機外へ脱出しました。そこから走った走った。日頃ジムで鍛えてあるので走ることは何ともない私は他の乗客が何事ぞと振り返るのを横目に脱兎のごとく疾走し、少なくとも100人は抜きさり、同じ便で到着した誰よりも早く入国審査場までやってきました。

そこで目にしたのはディズニーランドの人気アトラクション前の行列のごとく、張られたロープに従って列をなす人の群れ約100人でした。こんなに走ったのになんでこんなに人がおるんや、しかも日本人ばかり。おそらく日本から別の飛行機が我々の少し前に到着したのでしょう。その時、ロープをくぐって前に割り込んでやろうか、どうせ日本人ばかりやから文句言われやしないだろうし、と一瞬思ったのですが、イヤいかん、走って抜くことはフェアーだが、並んでいるところへ割り込むのはアンフェアーだともう一人の自分が制して列の最後尾に並びました。

おとなしく並んで10分ほど経ちましたが、行列は数メートル進んだだけです。これではとても間に合わないや、でもそれに備えてヒルトンホテルのジムで過ごすという第二のプランを用意しておいたので、気持ちはすっかりそちらへ傾いていました。手荷物のリュックサックの中にはトレーニングシューズと着替えのポロシャツをちゃんと入れていましたが、着替えの下着を入れるのを忘れたことに機内で気付いていたので、スーツケースを受け取ったらまず下着を1枚入れ替えないとと思っていた矢先、ビジネスクラスの乗客の入国審査が終わり、係員のおばさんがロープを空け、2列目の人達はこっちに来るよう手まねきを始めました。私は2列目から1列目に折り返す直前で、なんと3番目に並ぶことができたのです。なんという幸運、やっぱり正直者は報われると神に感謝し、間もなく私の順番が来ました。

「シカゴからシャーロットへ乗継だね、旅の目的は何だ? お決まりの質問が入国審査官のおじさんから発せられました。「観光」とお決まりの返事をしてもいいのですが、気分が高揚していた私は「フットボールを見にきた」と答えました。するとその審査官は 「どこのファンだ」 と聞いてきたので 「申し訳ないがベアーズではない、パッカーズのファンだ」 と答えました。「なるほど、それでシャーロットへ行くんだな」  おそらくベアーズファンであろうその審査官は、地区のライバルチームがその週どこと対戦するかわかっていたのでしょう。すると彼は3つ隣のブースで入国審査を行っていた別の審査官に向かって大声で言いました。 「オーイ○○さんよ、このジェントルマンはパッカーズの試合を見にわざわざ日本から来たんだとさ」  すると○○氏が言いました。 「そうかよく来た、楽しんで来い」  ○○氏はパッカーズファンなのかもしれません。

■ 最短の乗り継ぎならず

すっかり気分のよくなった私がbaggage claimへ行ったところ、自分のスーツケースがちょうど出てくるところでした。時計を見るとここまでわずか20分、まったくロスタイムなしです。スーツケースを持ってトラムに乗りターミナル5からターミナル3へ移動し、目指すアメリカン航空のチェックイン・カウンターへ急ぎました。そこでチェックインを待つ人は数人しか並んでいなく、カウンターでは3人の職員がチェックイン業務を行っていました。これは楽勝だと思いつつ待っていると、間もなく向っていちばん左のカウンターへ呼ばれました。

そこでは非常に立派な体型のおばさん(雰囲気はマツコ・デラックスに似ていなくもない、彼女?彼?の胴回りをさらに膨らませたような感じ)が業務を行っていました。「予約は14時10分なんだけど、9時50分の便に換えてもらえますか?」  答えはなんとノーだと言うのです。 「なんでや、まだたっぷり時間あるやないか」  するとスーツケースの運搬は出発の45分前までだと言うのです。時計を見ると10分過ぎていました。たったの10分でダメとは・・・。

「自分はどうしてもその便に乗らないといけないのだ、どうしてもだめなのか」  ひつこく食い下がってみましたが、マツコ・デラックス女史は早口でなにやらまくしたてるばかりで、首を縦に振りません。おまけに25ドル払えと言うのです。25ドル払えとは、またおかしなことを言うなと思いつつ、ここでチェックインするわけにはいかない、下着を入れ替えないといけないことを冷静に思い出し、「あとでチェックインする」 と言っていったんその場を離れました。

◆ ◆ ◆

ロビーの片隅でスーツケースを広げ、パンツと靴下1枚をリュックサックへ入れ、14時10分の便にチェックインするため再び列に並びました。今度は真ん中のカウンターへ呼ばれました。そこには体型が打って変ってスレンダーなおばさんが業務を行っていました。Eチケットを見せ、また25ドル払えと言われるのかなと思っていると、今度は要求されないのです。さっきの25ドルはなんだったのか、ひょっとして25ドル払えば9時50分の便に乗せてあげるよということではなかったのか。それなら絶対払ったよ。今更ながら自分のヒアリング能力のなさを嘆きました。

でもそれってワイロを要求したのだろうか。イヤよく考えてみると、カウンター業務を行っているということは、アルバイトではなく正規職員にちがいない。そんな人がすぐにバレてしまうであろうようなワイロを公然と要求するだろうか。そんなはずはないと思います。そこで25ドルというのは、その荷物を乗せるには人手を使ってもう一回余分に運ばないといけないので、それにかかる正当な料金だったのではないかと考えました。ところがその2日後、シカゴ経由でグリーンベイに行くためシャーロットの空港でチェックインした際、JTBで取ったkobaさんのチケットは問題ないが、私のチケットには荷物の運搬料が入っていないので25ドル払わされたのです。ということはスレンダー女史が請求するのを忘れただけのことだったのかもしれません。多分それが事実なのだと思います。

チェックインを済ませた後、地下道を通ってめざすヒルトンホテルはすぐに見つかりました。アスレチック・ジムへ行き、19ドル払ってタオルとロッカーの鍵を受け取り、着替えをすませて中に入りました。運動機器は日本でいつもやっているものとほとんど変わりません。土曜日の朝なので運動している人はまばらで、どの器械も使い放題です。テレビモニターではweek1でパッカーズの新人ランドール・コブがキックオフリターン・タッチダウンを決めたシーンを何度も繰り返し放送していました。そのうち運動にも飽きてシャワーを浴びた後、ジムのロビーで持ってきた文庫本を読みながら時間をつぶしました。

■ シャーロットへ

そろそろ行こうかと空港に戻り、昼食はスターバックスのコーヒーとそこで売っている菓子パンで済ませ、やっと時間が来てシャーロット行きの飛行機に乗り込みました。シャーロットはノース・カロライナ州の中心都市で人口70万、金融の街として知られ、いくつかの大銀行の本店があるということをネットで調べた以外は何の予備知識もありませんが、どうせ観光する時間もないので何でもいいやと思っていました。飛行機が飛び立つやいなや私は熟睡し、気がつくとシャーロットの空港に着いていました。

空港を出たのは午後5時半ごろで、日はかなり傾いていました。タクシーに乗ってウェスティンホテルと行先を告げると間もなく数キロ先にダウンタウンとおぼしき高層ビル群が見えました。この街に日本人はよく来るのか尋ねたところ、ほとんど来ないという答えでした。数分走ると大きなスタジアムの横を通り、そこには Bank of America Stadium と書かれていました。これが明日行くスタジアムだなと眺めていると間もなくホテルに着きました。

■ シャーロットの街にて

チェックインをすませ一息ついたところで街を散策し、ついでに食事をしようと思い、フロントのお兄さんにお勧めのレストランを尋ねたところ、何が食べたい?と聞くのでチャイニーズと答えました。ヨーロッパでもアメリカでもチャイニーズレストランに行けばまず大きなはずれがないことを経験的に知っているので、知らない街に行くと私はたいていチャイニーズを探すことにしているのです。ところが、この近くにもダウンタウンにもチャイニーズはないというのです。人口70万の街にチャイニーズレストランがないとはなんということでしょう。フロントのお兄さんは寿司バーがあるよと教えてくれて地図をくれました。こんなところまで来て寿司バーなんぞに行くものかと思いつつ、地図をたよりにダウンタウンに向かって歩き始めました。

シャーロットのダウンタウンは清潔感あふれる街で、ごみ一つ落ちていません。お決まりのホームレス風の人もいなく、歩いている人はスーツ姿が目立ちます。ここはほんとにアメリカなのかと思いつつ歩いていると、そこらじゅうでパッカーズの緑のユニフォームを着た人に出くわします。その背番号はほとんどが12番と52番で、たまに50番もいますが、意外なことに21番はほとんど見かけず、ロジャースとマシューズの人気に改めて驚かされます。パンサーズの青のユニフォームを来た人は数人しか見かけません。ダウンタウンに繰り出した人は遠くから来たパッカーズファンばかりで、多くの地元のファンは家で食事をしているのかもしれません。

中華がないなら韓国とかアジア系の店はないかと探しながら街を散策しましたが、あるのはステーキハウスとかファミレスかファーストフードの店ばかりです。どれもパッとしないなと思いつつ歩いていると、例の寿司バーがありました。一度は通り過ぎて他の店を探しましたが適当な店が見つからず、めんどくさくなってまあいいやと寿司バーに入りました。

カウンターに座ると若いお姉さんがメニューを持ってきました。ビールを頼んだ後メニューを見ましたが、全部英語で(当り前か)よくわかりません。お姉さんにこれは何だと聞いてもさっぱり内容がわかりません。ふとカウンターの中を見ると、日本人の若い寿司職人が数人います。なんだ日本人いるじゃないかと日本語で話しかけたところ、まったく反応しません。彼らはみんな韓国人だそうです。そのうちメニューにeelという単語を見つけました。これがウナギであることは私も知ってたのでそれを注文すると、8貫も出てきました。ウナギばかり8貫も食えるかよと思いましたが、これが意外にあっさりしていてうまいのです。

ウナギ8貫をペロリと平らげた後、メニューを見てもわからないので左隣りのカップルが食べている海苔巻き風のお皿を指し、同じものをくれと言うとまた8個出てきました。ふと右を見ると隣のおじさんが食べようとしているのは日本で言う上にぎりのセットで1貫ずつうまそうなネタが載っています。それがよかったのにと思いましたが時すでに遅く、8個の海苔巻きをやっとの思いで食べきり店を出ました。

ホテルへ帰る途中、スーパーがあったのでワインとナッツを買い、部屋に戻ってテレビを見ながらワインを飲んでいるといつの間にか眠ってしまっていましたが、けたたましい電話の音で目が覚めました。kobaさんがやっと着いたのです。一緒にワインを飲みながら無事シャーロットに着いたことを祝い、翌日の勝利を願って眠りにつきました。

≪ 前へ 1 2 3 4 5 次へ ≫

updated : 2012/01/06