2007年5月17日

ファーヴの現在とチームの将来

ブレット・ファーヴがランディ・モス獲得失敗に腹を立て、そんなことならトレードしてくれと言ったとか言わないとか、グリーンベイは3日間ほど大騒ぎとなった。おかげで私はニュースのネタ探しに困らなかったが、ファーヴの熱烈なファンとしてはやはり愉快でない騒動だった。

本人は公式には否定しているものの、まあ怒りのあまりトレードを口走ったのだろう。それを代理人サイドに利用されメディアにも暴露されて大騒ぎになってしまった。今は「激怒」レベルから「不満」レベルにまで収まり、現状で我慢してプレーする気になっている。同情の余地はあるけれど、今回の騒ぎは自業自得と言われても仕方がない。

いっぽうテッド・トンプソンGMの側は、WRジャヴォン・ウォーカーの件でもそうだったが、選手とのコミュニケーションにおいて不器用すぎると思う。単刀直入すぎ、ダメとなるとにべもないところがあるので、ヘソを曲げてしまう選手も出てくる。参謀格なら正しい戦略を生み出す頭脳があればいいけれど、今は親分なのだから、いまどきのわがままな選手たちを懐柔する手管も多少は必要というものだ。それに、いまの時代としてはメディア活用が下手すぎる。

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トンプソンGMのチーム作りを弁護すると、どのGMも「目先の勝敗」と「将来」の両にらみで二者択一というわけにはいかず、彼の場合は「将来寄りのタイプ」というだけにすぎない。ただ例外は優勝を目前にしたチームで、今年のペイトリオッツがそうだし、'96年のパッカーズもTEキース・ジャクソン、WRドン・ビービー、WRアンドレ・ライズン、DTサンタナ・ドットソン、Sユージーン・ロビンソンなど的確な補強が優勝に結びついた。

ファーヴは'90年代パッカーズのそうした補強を懐かしんでコメントしていたが、たとえ当時のロン・ウルフGMでも今の戦力だったら'96年のような補強はしないはずだ。それは断言できる。今回の件で言えば、コルツをあと一歩まで追い詰めたペイトリオッツとパッカーズでは身分が違うのだ。もうひとつ今年のFA市場で大活躍した49ersはといえば、スタジアム建設を推進するために大きな花火を打ち上げたい、というオトナの事情もあるのではないか。

「あと一歩」を目指した短期的補強で優勝に手が届いた例もあるが、失敗例の方がずっと多い。まだその時期ではない、というトンプソンGMの判断には私も賛成で、もしファーヴの現役中に間に合わないのなら、それはそれで仕方がないと諦めている。トンプソンGMが引退間近の英雄を特別扱いせず、現在のために将来を犠牲にしない、という方針を貫いているのはむしろ潔いほどだ。

ファーヴが勝ちたがっているのは、成し遂げていないものがある焦りではなく、いつだって彼は勝ちたいだけなのだ。もう一度や二度優勝してほしかったけれど、幾多の名選手が手に入れられなかったスーパーボウルリングを彼はすでに持っている。今年無事にプレーすればいくつかのNFL記録にも手が届く。たとえこのまま尻すぼみの成績に終わったところで、それはけっして痛恨事ではない。

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そうはいっても、今年のパッカーズはいくらなんでも補強しなさすぎじゃないの、というのがファーヴも我々ファンも共通した不満であるわけだが、今年FA補強に消極的なチームは、サラリー相場の高騰を強く意識しているのだと思う。今年のFA市場は空前の低レベルだったのに、この2年のサラリーキャップ枠増額により各チームともたっぷり余裕があるせいで、たいしたことのない選手に驚くほどの高値がついた。それだけで済むわけではなく、問題はいま契約下にある選手たちの潜在的なサラリー相場も一緒に高騰してしまったことなのだ。

いまいる有力選手と再契約するために、相当な額を残しておかなければならない。最近はどこも中心選手と早め早めの契約延長をするので、FA市場に出てくるのは、実力が低い、ケガが多い、首脳陣とのトラブル歴がある、素行に問題がある、といった要素を(複数)含んだ選手ばかり。いま慎重にやっておかないとすぐにサラリーキャップに余裕のない年がやってきて、大事な中核選手を手放すハメになってしまう。

どこもキャップに余裕があって気楽な年と思われがちだが、選択肢が幅広いだけにかえって難しい時期かもしれない。プロ将棋では、序盤の方が長考が多いのを思い出す。

派手なFA補強は過大評価されがちだが、毎年3月に話題を集めるチームは、秋になるとさっぱり目立たなくなるのがよくあるパターン。実際に1月を勝ち抜いてスーパーボウルに手が届いたのはどれも、何年もかけてドラフトを成功させ、しっかりした土台を築いたチームばかりだ。メンタルも含めて優秀な中核選手を育ててこそ、多少危なっかしいFAを獲ってもうまくいくのだろう。

投稿者 nagoyapackerbacker : 21:33