2001年2月26日
ヘッドコーチに求められるもの
今年は例年以上に大物コーチたちの移動が多かったが、どのチームもやっとコーチ組閣を終えたようだ。コーチが決まると最初の仕事は基本戦略を決めること、特に重要なのはスターターQBを決める事である。ヘッドコーチを解任するほど低迷したチームはたいていQBにも問題があることが多いもので、エースQBを指名することはオフェンス面での最初の仕事といっていい。ワシントンのショッテンハイマー新HCはジェフ・ジョージで行くことを決めたようだが、問題を抱えているのはバッファローのG・ウィリアムズ新HCだ。若くて才能もあるが昨季は非常に評価を下げたロブ・ジョンソンか、実績十分で人気もあるが38歳のフルーティか。いろいろ憶測は流れているが、いまだに決断がつかずにいるようだ。(2月26日時点)
前任のウェイド・フィリップス元HCは、1999シーズンにプレイオフ1回戦を目前にしてフルーティを下げてロブ・ジョンソンを起用するという驚くべき決断をした。その試合に負けた事じたいは不運もあってQBのせいとは言えないし、フルーティにもいろいろ問題があって決断したのだろう。それにあれほど重要な試合を前にして「ロブ・ジョンソンに賭ける」という決断をした以上、次のシーズンはロブ・ジョンソンで行くのは当然である。ただしそうするならなぜフルーティをチームに残したのか。確かにあれほど優秀な控えQBはほとんどいないし、単純に戦力分析をすれば残すべきかもしれないが、若いエースQBにはつまらない心配をさせず安定した精神状態でプレーさせることが何より重要だ。そのためには多少の戦力ダウンになってもフルーティを放出するべきではなかったろうか。結局はその決断、または「決断をしなかったこと」がフィリップスの命取りになった。
案の定、QB論争を次のシーズンに持ち越してチーム内がバラバラになった上に、ロブ・ジョンソンのプレーはひどいものになった。常にサイドラインのフルーティを意識して大きなミスをしないことばかり考えているせいで、全ての判断がおかしくなってしまった。QBとしてのポテンシャルは高く、本来ならそれほど判断力だって悪くはないと思うのだが。確かにロブ・ジョンソンが精神的に未熟だったということは否めないが、やはりフィリップスHCの責任は大きい。楽にプレイオフを狙えるチーム力を持っていたビルズが、この判断ミスのせいで1シーズンを棒に振ったようなものだ。解任はやむをえない。
デンバーでもバッファローでもHCとして成功したとはいえないフィリップスだが、ディフェンシブ・コーディネーターとしての手腕は確かなので、来年以降その気になればいくらでも仕事は見つかるはずだ。フィリップスの例を見てもわかるように、コーディネーター職で成功した人がHCとして成功するとは限らない。レイ・ローズもそうである。イーグルス、パッカーズのHCとしてはさっぱりだった彼が、レッドスキンズでDCに戻ったらやはり素晴らしい仕事をした。そのレッドスキンズのHCで失敗したノーヴ・ターナーもOCとしては優秀だ。
このへんが難しいところである。参謀として戦略・戦術を立案するのが仕事であるコーディネーター職とHCの仕事は全く違う。いろいろな方法で選手の士気を高めるモーティベーターでなければならないし、同時に全体のモラルを引き締める厳しい面も当然持ちあわせていなければならない。優れた戦術眼、勝負師としての嗅覚、実績に裏打ちされたカリスマ性。それにメディアに対してアピールしたり選手をかばったりするスポークスマンの役目もある。まあ全てを兼ね備えるというのは無理なので、HCとしてのタイプもいろいろなパターンに分類されるわけである。
「戦争に最も近いスポーツ」と言われるアメリカンフットボールのなかで、チームは軍隊である。確かにフットボールのヘッドコーチは司令官、将軍に最も近いように思う。ただし、戦争さえなければ無能であってもたいして問題がない軍隊の司令官と比べ、毎週が戦争であるHCは毎年いや毎週結果が求められる。勝てば英雄だが、低迷すれば地元メディアの袋叩きに遭う。プレッシャーは計り知れない。NYジェッツのアル・グローはプロのプレッシャーより大学コーチとしての安定性をえらんで大学に戻った。一方ディック・バーミールのようにいったんは引退しながらも、その強烈な充実感を求めて復帰する人もいる。そのようなドラマも、またたまらなく面白いと思う。
投稿者 nagoyapackerbacker : 00:00

